第59話 「‘イカサマ師’がいる! 1」

敵が3人も襲撃してきた次の日、あたし達は有希に付きっきりで看病するハルヒの
命令でペンションに閉じこもっていた。ちなみに昨日受けた怪我はハルヒの隙を
伺い治療をした。有希に負担をかけさせるようで気がすすまなかったが放置する
とハルヒにバレる危険がある。背に腹は抱えられないって奴だ。
「……にしても暇ねぇ」
ハルヒお手製の福笑いを終え、誰ともなしにそんな事を呟く。
「古泉君の推理ショーは雪が降らないと無理だって言って始まらないし、古泉君
準備で遊べないし、持ってきたゲームはほとんど全部やっちゃったし………」
「ゆっくりしとこうぜ、たまには休みもいいだろ」
ジジむさいな、キョン。
「うるせぇ」
「ねえ、有希何かマジックとかしてよ」
「なんで長門なんだ?」
「有希ならできそうじゃない、マジック」
マジックどころかほとんど何でも有りだけどな。
「あ、お茶いれましょうか?」
「朝比奈……酒持ってこい」
先程から負のオーラを放ち、部屋の隅っこでだんまりを決め込んでいたアナスイ
が言った。
「ア、アナスイ君何言ってるんですか!?」
「うるせぇ!さっきの福笑いといいすごろくといいトランプやUNO、全部俺ひ
どい目に会ってんだよ!」
「福笑いではあたし以外に妨害されてましたね………」
「大富豪はローカルルールをフルに使われて一枚も出せねえ………」
「七並べは徹底的に止められてましたし………」
「UNOではドロー2を一周させられて12枚も引かされる………」
「厄日だねイッ!アナスイ君ッ!」
「あれ?鶴屋さん、それにウェザーさん、今迄何処にいたんですか?」
そう、鶴屋さんとウェザーは今迄ゲームに参加していなかった。それは……
『徐倫、準備整ったぞ』
「サンキューな。古泉の推理ショーの前にあたしの推理ショーがあるわよ」
そう、二人には推理ショーの準備をしてもらっていたのだ。
「でかしたわ!徐倫!あなたには勲一等勲章を送ってもいいくらいよ!」
「何処の国の勲章だよ」
「んじゃ最後の仕上げといくとするか、悪いけどもう少し待ってもらえる?」
ハルヒは満面の笑顔を浮かべて言った。
「いいけど、待たせたらその分だけ面白くするのよ!」
「ま、期待には答えてみせるわよ」

sideofキョン
徐倫の準備が整ったとの報せを受け、俺達は隣の部屋へと移動した。ドアを開けるとそこには、
「カ……カジノ?」
天井には趣のある装飾電球、床には赤い絨毯がしかれ、スロット等が壁に一列で並んでいる。半円でルーレットやマットがしかれたテーブルの向こうに徐倫はいた。
いつもの服ではなくタキシードのような服を着ていた。女性用のって上着に袖が無いんだな。
「ねぇ、徐倫……これの何処が推理ショーなのよ?」
「あのなハルヒ、推理って言っても殺人事件が全てじゃないのよ」
どういう意味だ?
「まーまー気にするなッ!キョン君ッ!楽しんでいけばいいサッ!」
別の部屋に引っ込んでいた鶴屋さんが戻ってくる。
「はぁ……分かりました鶴屋さん……ってなんですかその格好は!?」
鶴屋さんはなんといつかのハルヒと朝比奈さんのごとく、バニーガールの格好をしていたのだった。うむ、ハルヒや朝比奈さんとは違ったよさがあ……って何を考えているんだ俺は。
「んふふ……似合ってるかいッ!」
「あ、ああ……はい」
「一回やってみたかったんだぁ、こういうカッコ!ハルニャンやみくるがよくコスプレしてる理由が何となく分かったさッ!病みつきになるねぃ」
「でしょ!さすがは鶴屋さんね!」
あいも変わらずハイテンションな奴等だ。見兼ねた徐倫が話を切り出す。
「……そろそろいいか?早くしないと時間無くなるわよ」
「分かったわよ、最初はスロットするわよキョン!」
え、あ、おい待てハルヒ!
「……有希、あたしとサシで勝負しないか?トランプ」
「………分かった」

ハルヒがいくらやっても当たらないスロットに飽き、徐倫と長門が大熱戦を終え、(結果はほぼ同じの勝率に終わったようだ)古泉を除く全員が半円テーブルに座った。
「……それじゃ今回の推理ゲームは……ズバリ‘イカサマ師を見つけろ’だ」
「何よそれ」
『これからポーカーの勝負を全員にしてもらう……ただし、メンバーの中に一人だけイカサマ師が混じっている。それが誰か当ててもらうのがゲームだ』
「ちょっと待ってくれよ、それだと勝ちまくってる奴がイカサマ師ってすぐに分かるんじゃねえのか?」
『イカサマ師側はそれを悟られないようにイカサマをする……つまりわざと負ける事もあるという事だ』
「ちょっと待てよウェザー、俺や鶴屋さんはともかく朝比奈やキョンにイカサマなんてできるのか?」
「ああ、その点は心配無い。イカサマ師って言っても役柄だけだ……実際にイカサマするのはあたしだ」
って事は………。
「イカサマ師はお前に何らかの指示を出すって事か」
「キョン、珍しく勘がいいじゃない……その通り、それがイカサマ師を見つけるポイントね」
なるほどな。イカサマ師側は怪しまれない程度に勝ちつつ、バレにくい指示の方法をするわけか………。
「質問はこれぐらいでいい?んじゃ改めてルール説明するわよ」
徐倫は一旦言葉を切り、トランプをシャッフルし始めた。
「まず、イカサマ師役はあたし以外のこのゲームに参加する誰か……アナスイ、ハルヒ、有希、みくる、キョン、鶴屋さん、ウェザーのうちの7人よ」
あれ?鶴屋さんやウェザーは準備をしてたんじゃあ………。
「準備だけなのさッ!細かい点は聞かせてもらって無いからねぃ」
「5回勝負を行ってその間にイカサマ師を見つけれたら見つけた奴の勝ちだ……賭けた金が全部もらえる」
「待て待て待て待て、金を賭けるなんて聞いてないぞ」
「その方が面白いじゃない、ああ、誰も当てれなかったら金はイカサマ師の取り分以外はあたしにいくから」
………単なるゲームと思っていたがそうはいかなさそうだ。横を見るとお金が絡むと聞いて皆目の色が変わった。……つうか長門までやる気になってるぞ?情報統合思念体は長門へのお小遣いの額を決めさせてるのか?
……だが俺も負けるわけにはいかねぇ。タダでさえ金欠なんだ、ここで勝って一発儲けないとな………。

こうして騙し騙されのイカサマ師探しのポーカーが始まったのだった………

To Be Continued・・・

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最終更新:2008年12月08日 15:27