第63話 「ファイヤーハウス 1」

年も開け、SOS団そうでの初詣でも終わり、珍しくハルヒから何も呼び出しが無い暇な冬休みの事だった。俺は本屋で雑誌を買い、駅前の商店街を特に意味も無くふらついていると、見知った顔を見掛けた。
「……徐倫じゃねえか」
声をかけられて徐倫は初めて俺に気付いたようだ。
「キョンか……何してるの?」
散歩だ。する事も無くて暇だったんでな。
「相変わらずジジむせえな………」
「うるせぇ。お前は買い物か?」
「まあな」
徐倫の持っている買い物袋には糸や針などが入っている。裁縫でもすんのか?
「……何か悪いかよ」
「いや……でも徐倫のイメージに合わないからな」
「裁縫するってのは正解だ……あたしのママがだけどな」
「そうかよ………」

互いに予定も無かったので徐倫の提案でアナスイの家でゲームでもしようということになり、徐倫の案内で商店街を歩いていた時の事だった。
「火事だあッ!」
「燃えているぞーーーーーッ!」
「ぼ、坊っちゃまのダニーがッ!」
「ダニィィィィーーーーーーーッ!」
どうやら近くのごみ捨て場で火事が起こったらしい。
「危ねえな……冬はやっぱ火元に注意しねえとな」
「そういや最近ニュースでごみ捨て場での放火事件が多発してるって言ってたな………」
「ハルヒが犯人探しをしようなんて言い出さなきゃいいけどな」
「……ふーん、犯人知りたくないんだ」

突然聞いた事の無い声が後ろから聞こえた。徐倫が俺の首ねっこを掴んで声と反対の方向へ飛ぶ。突然の事に買った雑誌を落としてしまう。すると誰かが雑誌を拾う。
「雑誌が燃えた………!?」
雑誌を拾ったのは俺達と同じくらいの年の女。黒い髪にウェーブをかけ、それをポニーテールにしている。身長は160ぐらい、地味なジャケットにデニムのジーンズをはいている。
「その連続放火事件の犯人は……あたしだよ」
「な!?」
「……と言っても別に組織の指示じゃあ無いけどね、あたしの趣味だから」
「要するに放火魔って事じゃない」
「そうかもね」
女に悪びれる様子は全く無い。どうも真性の放火魔のようだ。
「カメラ渡しとく……あいつのスタンドから逃げるのに役立つだろ」
徐倫から渡されたスタンドの見えるカメラで女の方を見る。
女のスタンドは無表情なアフリカの原住民のような仮面をつけ、肩から腕にかけてとげがあり、朱色を基調に刺青のような模様があちこちに入った人型のスタンドだった。
「オラァッ!」
徐倫が殴りかかる。が、女のスタンドは軽々と受け止めた。
「オラオラオラオラオラァッ!」
右フックからジャブ、左フックから右のストレート、徐倫が猛烈なラッシュを仕掛けるが、全てさばかれた。
「……スピードとパワーなら互角ってことか………」

「そうみたいね……殴り合いじゃあ決着つかなさそうねぇ」
そう言うと女はポケットから普通の紙を取り出した。女が振りかぶると紙が燃え始める。
「……それがお前のスタンド能力か………」
「ふふ……どんな能力か分かる?」
女はそう言いながら紙についた火をゴミ箱に入れる。すると、
「何ッ!?ゴミ箱が燃えたッ!?」
燃えたと言っても燃え方が普通じゃあ無い。火柱が上がっているのだ。
「さて、ここにこんな物を入れたらどうなるでしょう」
女は液体を取り出す。………まさか、あれ………
「ガソリンだな」
「それッ!」
「伏せろッ!キョンッ!」
俺達が伏せるのと爆発が起きるのとが同時だった。爆風にあおられ、吹っ飛ばされたものの、二人共あまり負傷はしていない。
「野郎はどうなった?」
あれだけの爆発だ、巻き込まれているに決っている。が、女は無事だった。
「これでも一応放火魔やってるのよ?燃やし方は計算してるわよ……それよりいつまでもここにいていいのかしら?」
「どういう意味だ………」
女の言葉の意味はすぐ分かった。見ると商店街のあちこちに火が燃えうつっている。
「嘘だろ!?」
「逃げるぞッ!キョンッ!狭い場所だと向こうが有利だ!」

が、逃げようとした矢先、俺達の目の前に燃え尽きた材木が落ちてくる。
「クソッ!火事ってこんなに早く燃え広がるもんだったっけな?」
「いや……いくらなんでも早すぎる……多分こいつの能力だ」
……んじゃ、どんな能力なんだ?
「さあな……火が燃えるって言っても色々な物が働いている……情報0で推理するのは無理だ」
「お喋りしてる暇なんてあるのかしらね?」
「オラァッ!」
徐倫は振り向かず、声の聞こえてきた方向だけで殴りかかる。勘は当たっていたらしく、女はスタンドで攻撃をガードしていた。
「……良い勘してるわね、ムカつくくらい」
「オラオラオラァッ!」
右、左、左とコンビネーションパンチを徐倫は放つ。女はガードしきれずに、最後の左をもらって仰向けに吹き飛ぶ、倒れながら近くのゴミ袋を掴んだ女はそれを投げ付ける。すると徐倫の目の前でいきなり燃え出した。
「……ちくしょおッ!」
「どう?叩き落とす?……腕を一本犠牲にしなきゃいけないけどね」
「その必要は無いわね」
そう言うと徐倫は上着をゴミ袋に被せ、糸で結んで包みこんだ。
「火が燃えるには酸素が必要だ……密閉すれば火は消えるのよ」
「……やるじゃない」
「伊達に場数ふんでるわけじゃあないわよ」

To Be Continued・・・

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最終更新:2009年01月28日 20:40