第64話 「ファイヤーハウス 2」
俺達は燃え盛る炎の中で敵と睨み合っていた。
「どうすんだよ……徐倫、このままじゃずっと向こうのペースだぞ」
「そんなの分かっている……あたしから離れんなよ」
「コソコソとした作戦会議は終わった?それじゃ行くわよ」
そう言うと女の持っている手頃な材木が燃え始める。
「フンッ!」
燃えている材木をスタンドが右手に持って殴りかかってくる。ガードするわけにはいかず、徐倫は後ろに下がってかわす。
「どうしたの?かわすだけ?」
「……………」
女は続け様にスタンドで攻撃を繰り出す。左のジャブから再び左フック、ガードした徐倫に今度は材木で袈裟斬りに斬りかかる。
「ちッ!」
再び徐倫は後ろに下がる、が
「……壁際か………」
狭い商店街では下がりきれず、壁へと追い詰められる。燃えている店じゃないのが救い物だろうか。
「さーて……これでかわせないっと………」
「徐倫ッ!」
「キョンッ!足元の棒をこいつに投げ付けろッ!」
言われて慌てて足元の棒を投げ付ける。が、難なくガードされる。
「わるあがきねぇ……見苦しいったらありゃしない」
「それはどうかな」
次の瞬間、地面に落ちた材木が再び飛び上がり女の頭に当たる。
「うぐっ……」
女がひるんだところに徐倫が強烈な一撃をボディに叩き込む。女はそのまま吹っ飛んだ。
「……なるほどね……さっきの材木には糸が結んであったって事?小細工してくれるじゃない………」
「オラオラオラァッ!」
間髪入れず、徐倫が攻撃を繰り出す。右フックから左ジャブ、そして右で脇を狙いに行くが、どれも見事に防がれる。
「これでもくらいなさいッ!」
女は落ちていた木材を拾って振りかぶる。やはり振りかぶった瞬間に木材が燃え出した。飛んできた木材を徐倫は横に飛んでかわす。
「なるほど……少し読めてきた……発火能力だな?単純にただ物を燃やすだけ………」
シンプルすぎじゃねえか?
「スタンドはシンプルな方が強い……それに発火能力って言ってもこいつは物そのものを燃やしている」
……すまん、イマイチよく分からん。
「自然発火だ……物には勝手に燃え出す温度ってのがある……多分火事の周りが早いのはこいつが本来燃えにくい木材の柱とかを燃やしたからだろう……木ってのは燃えにくいが、一度燃えたら長時間持つ……そういう事だろ?」
「……どうかしらねぇ……でも推理にばっかり熱中してないで周りも見てみたら?」
……そういえば、さっきから後ろが熱いな……振り向くと後ろの店が燃えていた。
「さっきの木材かッ!」
「よけられた時の事も考えるに決ってるじゃない……あ、そういえばァ……この近くにホームセンターがあったわねぇ」
「まさか、てめぇ………」
「何焦ってんだ?徐倫?」
「ホームセンターには普通灯油やシンナーとかいった引火性の高い物が置いてある、そこに火が点いてみろ……あたし達は御陀仏だ」
「考えたくもねえな………」
徐倫は女に突進し、一気に距離を詰めて殴りかかる。右の手刀から返す刀でバックハンド、防がれるがそれと同時に右足で低い蹴りを繰り出す。が、それも防がれた。
徐倫は後ろに飛び、距離を取る。
「どうしたのかしら?早くしないとホームセンターが大火事になるわよ?」
「……………」
次の瞬間、女は首あたりで突然何かを掴む動きを見せた。
「黙っていると思ったら……抜け目無いわね、私の首にいつ糸を巻き付けたの?」
見るとうっすらと糸が見える。徐倫は首を絞めおとすつもりだったようだ。
「さっきの殴り合いよ。それにしても隙だらけね、てめぇ」
「……ふん、でも気付いてないの?この糸を燃やせばあなたも燃えるのよ?」
「グッ!……ヤバい、ストーンフリーッ!糸を戻………」
が、徐倫が戻すより早く女は首の糸を切った。
「ファイヤーハウスッ!」
次の瞬間、糸が燃え始めた。やばい、徐倫に燃え移る……と思った時だった。
「ギギャアッ!な……なんであたしにィ?」
そう、炎は女の靴に燃えうつっていた。
「残念だったな、勝つために大切なのは見るんじゃなくて観る事だ……さっきの糸は既に腕から切ってあったのよ、その先端はあんたが撒き散らかしたガソリンにつけておいた……」
「グ……ウ………」
女は左足がほとんど炎に包まれていた、全身に周るのは時間の問題だろう。
「ま……あたしも鬼じゃあない……じっとしてな、即死させてやるよ」
「……し…た……」
なんだ?奴の様子が変だぞ?
「死んでたまるかッ!」
女はそう叫ぶと隠し持っていたらしい紙を燃やして投げ付けた。徐倫は軽くかわすが、女はその隙に逃げ出した。
「……馬鹿な野郎だ……どうせ火が全身に周るのが落ちなのにな……そろそろ逃げるぞ、キョン」
まあ、確かに徐倫の言う通りだ。いい加減火事もヤバくなってきている。勝ったのに逃げ遅れたなんてダサすぎるからな。
「……だけど組織も思い切った事仕掛けてきたな………」
「何がだ」
「今迄奴等はなるべく目立たないようにしていた……だが今回はそんなのお構いなしだ………」
窮鼠猫を噛むっていうように、冷静な奴より追い詰められてトチ狂った奴等の方が遥かに危険だ。これからは気をつけねえとな。
「でも、奴等はなんで急に焦りだしたんだ?」
「………分かったら苦労しないわよ」
「………そうだな」
「……空条徐倫………覚えていなさい……左足は無くしたけど、私はまだ再起不能じゃない……
いつかあたしにトドメを刺さなかった事、後悔させてやるわ………フフ……フフフフ……」
日吉静佳 ファイヤーハウス 左足を失うも逃走。尚、組織には死んだと思われているようだ。
To Be Continued・・・
最終更新:2009年01月28日 20:42