第65話 「スタンド使い ナルシソ・アナスイへの依頼 1」

1月も終わりを迎えつつある日の事、俺は掃除当番を終え、SOS団の部室へと向かっていた。1年である徐倫やキョン、涼宮がいるのかどうかは知らない。
……まあ朝比奈が先に教室を出ていたからいるだろう。ドアの前についた俺はノックをする。
「……………」
返事がねぇな。朝比奈は来てねーのか?そんな事を思いながらドアを開けると、
「……朝比奈……?」
朝比奈はいつものメイド服姿で部室にいた。が、いつもと感じがまるで違う。なんというか、憂いに満ちて、儚げな美しさを漂わせて普段の可愛い印象が消え去っている。
………悪くないかもな……って俺は何を考えているんだ、俺は徐倫一筋だ。ほら、今だって徐倫の姿を思い浮かべると心が綺麗に洗われ………
「あ、アナスイ君……?」
どうやら俺も朝比奈と同じくトリップしていたらしい。
「……わ、悪い……少しトリップしていたんだ」
「あ……はぁ……それじゃ、お茶淹れますね」
朝比奈はそう言っていつもどおりお茶を淹れ始めた……が、
「ハァ………」
いつもより遥かに手際が悪い。ため息までついて、何があったか知らんがかなり重症だ。さすがに可哀相に思った俺は聞いてみる事にした。
「……あのな、何をそんなに悩んでんだか知らねーが……なんなら相談にのるぜ?」

が、朝比奈は無理に作ったような笑顔を浮かべた。
「そんな事ないですよ。わたしはいつもどおりです」
「……どう見ても無理してるだろ」
「……………」
シュンとした顔になる。やばい、地雷踏んだか?
「……うぅん、悩んでたって何も変わらない……だったら……やっぱり………」
朝比奈がぶつくさと呟きだす。声が小さくてサッパリ聞き取れないが、
「アナスイ君、お願いがあります」
「……なんだ?」
「今度の日曜……わたしと一緒に買い物に行ってくれませんか?」
……一緒に買い物?それはデートと言うんじゃないか?………マズいぞ、別に朝比奈の頼みを聞くのは構わないんだが、今までの俺の経験からするとこういう事になると絶対に不幸な目に会う………俺だけが。
そう、神様はよっぽど俺が嫌いらしく、朝比奈と良い雰囲気になると大抵徐倫やハルヒに見つかる。恐らくこの頼みを聞くと間違いなく今迄と同じパターンになる………が、朝比奈の真剣な目を見ていると断るのは良心が痛む。
だが、引き受けると不幸な目に会う………そんなジレンマに陥り思考停止した俺は長門が部屋に入ってきた音で我にかえった。
「……………」
「……………」
「……………」
気まずい。朝比奈は長門が苦手だし、俺も長門とはそんなに親しくない。………どうしよう。

「長門……別に俺達はそんなんじゃないぞ、違うからな、絶対だぞ、違う、断じて違う」
……駄目だ……弁解したらよけい怪しくなった。………待てよ?今は長門だったからよかったものの、これが徐倫やハルヒだったらどうなった?………このまま悩んでいたら二人と鉢合わせする可能性は高い。よし、
「ああ、空いてるから大丈夫だ……行くか」
「ほんとですか!?ありがとうございます!」
朝比奈は嬉しそうだ。……俺の不幸は確定だろうがな。

日曜日、待ち合わせの場所に15分程前に来ると、朝比奈もほぼ同時に到着していた。
「すいません……待ちましたか?」
「いや、俺も今来たところだ」
「そうですか」
朝比奈の格好はシックてフェミニン、髪型もいつもと違い長い髪を後ろで一度団子にし、そこからポニーを作っている。正直かなり可愛い……が、俺は徐倫一筋。
この程度に惑わされる男では無い。ちなみに俺はお気に入りの網シャツにコートを着ている。朝比奈は少し目を白黒させた。
「アナスイ君、早く行きましょうよ」
朝比奈が袖を摘んで引っ張る。すげぇ可愛い。死ぬほど可愛い……って何考えてんだ俺は。そうだ……俺は……徐倫一筋なんだ………。気をしっかり保て、ナルシソ・アナスイ。

「へいらっしゃい!お嬢ちゃん、今日は彼氏連れかい?」
「そ、そそそ……そんなんじゃ、あああ……ありません!」
朝比奈が最初によったのはお茶の葉っぱとかを売る店だった。常連らしい朝比奈は店長と何か話しているが、俺にとってはどうでもいいのでコーヒーを探していた。

「アナスイ君?そのコーヒーが欲しいんですか?」
「んー?まあな」
店長と話を終えたらしい朝比奈が近寄って来た。
「……わたしが出しましょうか?」
「別にいい。金にはあんまし困ってないしな……なんなら俺が出してやってもいいぞ?」
朝比奈の性格なら遠慮しつつも受けるだろうと俺は思っていた。が、朝比奈は真剣な目をして言った。
「いえ、わたしに出させて下さい……アナスイ君の分も………お願い」
……そこまで言われると、さすがに俺も断れなかった。

この店は喫茶店もやっているらしく、朝比奈に誘われた俺は一服することにした。
「この和菓子うめぇな……紅茶と合う和菓子ってのも珍しいがな」
「えぇ……はい………」
「この店、クッキー無いのか?なけりゃスコーンでもいいんだが」
「………さあ………」
………俺は朝比奈といるはずだ。長門やウェザーを呼んだ覚えは無い。……無口な奴を相手にするって結構きついんだぞ?朝比奈、なんか言え。
「……え……あ、はい……すいません、ちょっと考え事を………」
そういえば、さっきから朝比奈は時計ばかり見ている。まるで待ち合わせの時間を気にしている奴のようだ。……やっぱなんか裏があるってわけか………。ま、そっちの方が気楽でいいか。
「それじゃ、そろそろ行きましょうか………」
「ああ」

To Be Continued・・・

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最終更新:2009年01月28日 20:46