第68話「未来からの第1指令“朝比奈みくるを保護せよ” 2」
学校を出た俺達はロッカーに入っていた手紙と共に俺の家へと向かっていた。
「……八日後から来たのか」
「はい……アナスイ君に指示されたんです………ほんとに何も知らないんですか?」
「神に誓って何にも知らねぇ……そういやお前はその八日間で自分と出合ったか?」
「いえ、会ってません」
家への道中に聞き出した話をまとめると、未来から来た朝比奈が来ていた事は表向きSOS団員は知らなかったそうだ。その間に行った事は次の祝日に宝探しと称して鶴屋さんの山で穴掘り、後は不思議探索を土日続けて連続で行ったくらいだという。
「……特に変わった点は無えな」
そうこうしているうちに俺達はアパートへとたどり着いた。が、朝比奈は妙にオドオドして上がろうとしない。
「……どうかしたか?」
「あ……はい……何でも無いです……ここがアナスイ君の家………」
変な奴だな。リビングに上がって、さてどうするかと思った時だった。携帯電話が鳴り始めた。
「……涼宮からだ………」
「出た方がいいですよ……実際に出てましたし」
電話を取る。
「もしも………」
「クオラァッ!アナスイィィィィィィィィィィィイイイイイイッ!」
目茶苦茶巻き舌でハルヒの怒鳴り声が聞こえた。
「……ナンデスカ?」
「なんですか?じゃないわよッ!団長であるあたしに黙って帰るなんていい度胸ね……SOS団員は団長に絶対服従なのよッ!」
「おい、涼宮。この際だから言っとくが……俺はSOS団に入った覚えは………」
「だまらっしゃいッ!」
「………ハイ」
「いい?明日は顔出すのよ?でなきゃ……そうだ、こないだ商店街のくじ引きで花火が当たったのよねー……ウフフ………」
「分かった、行く、明日は絶対行く、だからちょっとはこっちの言い分も聞いて………」
「問答無用!」
「ひでェ!」
涼宮は言いたい事だけ言うと電話を切ってしまった。
「フ……ファイトです!アナスイ君!」
「……………」
まあ後ろばかり見ていても仕方が無い………。
「んでまあ……今一番の問題はだ………」
「わたしの寝床ですよね………」
金があるならそこいらのカプセルホテルにでも行けるが、どうもこの朝比奈は金を持っていないようだ。
「確か涼宮のくじ引き大会中に連れ出されたんだよな………」
「はい」
念の為確認したが学校から直接送り込まれたのならやはり金は持っていないだろう。
「お前以外の未来人の知り合いはいねーのか?」
「いるのかもしれませんが……わたしは知りません」
未来の連中は随分と不親切だな。
「………仕方ねえ……俺ん家に居るか?」
「え……ふぇ!?」
「やっぱ嫌だよな……まあ俺も女が一人暮らしの男の家に泊まるのもどうかと思うしな」
「わたしは……別に………全然……か………いませ………ど」
朝比奈は何か喋っていたが、顔を赤くしながらどんどん声を小さくしていったので何を言っているのかさっぱりだった。
「……そうだ……長門の家はどうだ?」
「長門さん……ですか?だけど、この状況を理解してるんでしょうか………」
「理解してるだろ。でなきゃあの時部室で助けてくれねえよ」
「……でも、アナスイ君長門さんと仲良かったですか?」
「……………」
長門と仲が良いのは俺や朝比奈よりキョンや徐倫だ。……二人のうちどっちかに頼めばいいのだろうが、俺の本能がそれはヤバいと告げていた。
「……しょうがない、暫く泊まってけ」
「え!?こ…こここ……こちらこそ!ふつつか者ですが………」
「朝比奈……何言ってんだ?」
「……何でもないです」
「……………」
「……………」
会話が終わると途端に気まずい。
「め、飯でも作るかなー」
「わ、わたし手伝いますよー」
「あ、ああ………」
「……………」
「……………」
結局互いに気恥ずかしさは抜けず、寝るまで会話はろくに無かった。
互いに異様に気恥ずかしいまま朝を向かえ、(当然だが朝比奈は寝室、俺はリビングと別々の部屋で寝た。)朝飯を二人で食っていた。
「その………」
「………なんだ?」
「ありがとうございます……パジャマも……布団も貸してもらって………」
一枚しか布団は無かったので俺はソファーでタオルと共に寝る事となっていた。多分朝比奈はそれを気にしていたんだろう。
「別に構わねーよ……それよりも人のパジャマを着せて悪かったな」
「あ、大丈夫です……それにしてもこのパジャマ綺麗ですね……まるで新品みたい」
「そりゃ新品だからな」
「え?」
朝比奈は心底驚いたような顔をする。
「徐倫へプレゼントしようと思って買ったんだ」
「そうですか………」
朝比奈は少しむくれた。珍しいな、人の良い朝比奈がそんな顔するなんて意外だ。
「わたしだって不機嫌になる事くらいあります。……アナスイ君っていっつも徐倫さんの事ばっかりなんだもん………」
朝比奈の言葉は前半は聞こえたが後半は聞こえなかった。ただ……まぁ、なんだ。朝比奈はいつもより少しテンションが高い気がする。………心当たりはあるがあえて考えないようにする。ふと、時計を見ると
「やべ、こんな時間か……朝比奈、昼飯は勝手に食べ……」
「作っちゃいました」
「……ハ?」
「アナスイ君っていっつも購買じゃないですか、だからわたしが作りました。はい、アナスイ君の分」
……やべえ、本格的に朝比奈を家から追い出す術を考えねーと……このままだと……いや、その先は考えないようにしよう………。
学校についてロッカーを開けると
「2枚目の手紙か………」
例の命令だろう。中を見ると、
「んだこりゃ………?」
To Be Continued・・・
最終更新:2009年03月06日 15:11