第69話 「未来からの第2指令」

2通目の手紙が届いたその日、俺は授業の間ずっとその命令について考えていた。
「アナスイ君……?どうかしましたか?」
「あれ?朝比奈……?確か俺の………」
いや、違う。これは現行時間の朝比奈だ。今俺の家にいる未来から来た朝比奈とは別人だ。……やべえ、今朝の事思いだしちまった………。
「お昼食べないんですか?」
「そうだな」
朝比奈が作って押しつけやがった弁当を取り出す。……待てよ?これ、このまま開けたらマズいんじゃないか?朝比奈が作った弁当だ。その朝比奈が見たら違和感を抱くのでは?俺は急にじっとりとした脂汗が流れるのを感じていた。
「うわぁー……アナスイ君今日はお弁当ですかぁ。いつもは購買なのに」
「あぁ………」
「そっか……お弁当ですか……あれ?開けないんですか?」
開けれないんだよ!などと言えるわけが無く、固まってしまう。頼む。誰か助けてくれぇ!
「みくるッ!一緒に食べよッ!」
鶴屋だ。助かった………。鶴屋は朝比奈を少々強引に引っ張っていく。が、教室から出ようとしたところで立ち止まり、大声で叫んだ。
「ところでアナスイ君ッ!それ、自分で作ったんじゃないだろッ!」
「え?」
「ふふんッ!彼女さんによろしくさッ!」
そう言って鶴屋はびっくりしている朝比奈と共に去って行ってしまった。
「あいつ……まさか全部気がついてんのか………?」
相変わらず謎だらけの奴だ………。

学校が終わり、家に帰りつく。鍵を使ってドアを開けると、
「あ、おかえりなさいアナスイ君」
「………なんだこりゃ?」
「なんだこりゃって……掃除ですよ。アナスイ君家散らかしすぎです」
朝比奈は頭にタオルを巻き、エプロンをつけて掃除をしていた。確かに一人暮らしだと整理整頓がずさんになるのは認める……が、
「何も床にワックスまでかけなくても………」
これじゃまるで大掃除だ。
「その必要があるんです。この部屋掃除機かけるだけなんでしょ?」
確かにそうだ。めんどくさいからな。
「しかも掃除機のかけ方がいい加減です。端に埃が沢山溜まってます……一回思い切った事する方がいいですよ」
なんというか朝比奈の気迫がいつもと違う。本気というか、覚悟があるというか……何となく逆らえない雰囲気だ。ふとベランダを見ると、
「……洗濯物まで………」
「かなりたまってたみたいですからね、あと布団も干しておきました、食器やお風呂も洗いましたし、ゴミ出しもしちゃいました……ほんとは買い物にも行きたかったんですけどお金を使うのはちょっとと思って……
あ、今日の晩ご飯はシチューにしました、半日かけて煮込んだからきっと美味しいですよ」
………何故だろう、軒先かして母屋取られるとか、押しかけ女房とかいう言葉が脳内を駆け抜けていった。

「……分かった。だけどその前にやる事ができたぜ」
俺はそう言うと未来からの手紙を見せる。
「………何ですか?これ」
「俺が聞きてーよ」

朝比奈と共に指定された場所に指定された時間にやって来た。
「これを……ここに打つんですか」
「ああ」
俺達が受けとった手紙には時間と場所、そして一つの図が記してあった。
「だけどなんだよこれ……釘を打って、それに空き缶を被せるって……ガキのイタズラじゃねーか」
「誰かが蹴ったら危ないですよね………」
イタズラだからそれが目的だろうがな。しかし一体どこのどいつに怪我させようってんだ?
「そろそろ時間だな………」
「あ、誰か来ましたよ」
二人で慌てて近くの茂みに隠れる。やってきた男はサラリーマン風の男だ。携帯で誰かと通話している。
『吉岡、これからお前に2分後その電話に1億円の取り引きがいく。社運をかけた取り引きだ。よろしく頼むぞ!』
「はい!この吉岡めにおまかせ下さい!……あだっ!」
吉岡と名乗った男は空き缶につまづいて転んでしまった。
「ちくしょー……誰だよこんなとこに空き缶置きやがった奴は……携帯は………」
が、落とした携帯を吉岡が取ろうとした瞬間、何者かがその携帯を踏み付けた。

「ふ、ふぇ!?携帯が一人で壊れちゃいましたよ!」
「……違うッ!スタンドだッ!」
現われたスタンドは人型で、四角い顔に瞳の無い目を持ち、青を基調とした警備員のような姿だった。
「キサマ、ハイッタナ」
「お……俺の携帯が……取り引きが………」
スタンドが男に話しかけているが、スタンドが見えない男は何も気付かない。
「ハイジョスル」
スタンドはいきなり男の腹に回し蹴りをいれた。男は派手に吹っ飛び、気を失った。
「ハイジョスル」
が、スタンドは追撃の手を全く休めず、気絶した男をさらに蹴り続ける。
「アナスイ君ッ!あのままじゃあの人………」
「分かってるぜ……だが妙だな、なんで一般人を狙う?……まあいいや、ダイバーダウンッ!」
不意打ちで仕留めようと手刀で頭を狙う。攻撃に気付いたらしいスタンドは、首を傾けてかわす。が、そのまま振り下ろした手刀はスタンドの左肘から先を見事に奪った。
「随分と弱いじゃねーか……じゃあな」
トドメを刺そうとする。が、放った右ストレートは見事にガードされた。
「んな!?左肘から先をもらったんだぞ!?動けるわけが………」
「ハイッタナ……キサマモハイジョスル」
スタンドが俺の腕を振り払い、ローキックを繰り出してくる。咄嗟に後ろに飛んでかわした。
「……こいつは厄介そうだな………」
「ハイジョスルハイジョスルハイジョスル………」

To Be Continued・・・

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最終更新:2009年03月06日 15:13