第71話 「ブロック・パーティ 2」
「ハイジョスル………」
「ダイバーダウンッ!」
突如として強くなった敵に疑問を抱きつつも、攻撃をしかける。もちろんさっきより速く強く殴った。が、
「ノロマガ」
止められる。とっさに後ろに飛んで離れるが、さっきまでとは比べ物にならないスピードで距離を詰められた。
「グッ………」
「アナスイ君ッ!」
「朝比奈ッ!俺の心配よりもウェザー達の状況を伝えろッ!」
「……敵本体の位置は分かったそうです、ただ……たどり着くまでに30分はかかると」
「随分と遠い所にいやがるな」
「キサマタチガワタシノホンタイヲサガスコトハヨソウシテイタ……トウゼンダ」
「……ダイバーダウンッ!」
右のストレート、が、かわされてしまう。その瞬間、ガラ空きになったボディに強烈なボディーブローをくらい、地面に倒れてしまう。
「トドメダ」
その瞬間、北校の制服を着た男が通りかかった。確か谷口と言う奴だ。
「WAWAWA、WASUREMNO……ん?あいつ……北校か?あッ!あれに見るは朝比奈さん!まさかあいつ………」
谷口は俺達を見つけると鬼のような形相を浮かべた。……なるほど、おそらくあいつは俺が朝比奈を襲っていると勘違いしたに違いない。……ちくしょう、なんで俺の周りはこんな奴ばっかりなんだ?
「覚悟しやがれえええェェェェェッ!」
谷口はそう叫ぶとドロップキックで襲いかかってくる。……しょうがねえ、正当防衛だ。怪我をしてもらうか、が………
「ハイッタナ……ハイジョスル」
敵スタンドが俺を無視して谷口を攻撃した。もちろんスタンドが見えない谷口はその右の膝蹴りをもろにくらって気を失う。
「また一般人を攻撃だと?」
そういえばさっきもそうだった。ただのサラリーマンを襲っていた……そうか、こいつの能力は………。
「俺は勘違いしていたみてぇだな……お前は特定の条件で攻撃をしてきているんじゃねえ……特定の状況で攻撃をしているんだ」
「……………」
「え?……どういう意味ですか?」
「こいつはある特定の場所に入った奴を攻撃しているんだ……最初のサラリーマンは空き缶に近付いたら攻撃された、谷口も俺達に近付いて空き缶の側へとやって来た」
「……つまり………」
「こいつはある特定の定められた場所……今回はこの空き缶だな……誰かが近付くとそいつを問答無用で攻撃するんだ!」
「ナルホドナ……ダガワカッタカラトイッテドウナル?」
「……………」
「キサマノスタンドデハイマノワタシニハカテナイ………」
「どういう意味だ?」
「ワタシノモウヒトツノノウリョクダ……ワタシハテキガシンニュウスルタビニツヨクナル……サッキヨリモスコシズツ……ナ」
「それがどうした?スタンド勝負では単純なパワーやスピードよりも能力をいかに使うが大切だって知ってんのか?マヌケ」
「ダカライッテイルノダ!ワタシノノウリョクニキサマノノウリョクデハカテナイトナ!」
「そいつはどうかな……ダイバーダウンッ!」
右の手刀で襲いかかる。が、かわされ空を切った右手は地面へと突き刺さる。
「オワリダ」
体勢を立て直した瞬間、敵スタンドにローキックをくらい、そのまま地面に押さえ付けられる。
「トドメヲサストシヨウカ………」
「アナスイ君ッ!」
「とどめか……ならこっちも準備は万端だ」
「カクゴヲキメタカ」
「ああ……てめぇを倒す覚悟をな」
「ナ!?」
「ダイバーダウンッ!」
次の瞬間、谷口から現われたダイバーダウンの拳が敵の頭に突き刺さる。
「バ……バカナ………」
「さっきの手刀が空振った時にそいつに潜行させておいた……やっぱりてめぇ、能力をいかしきれてねえじゃねえか」
「ソンナ……バカナ………」
そう呟くと敵スタンドは消えていった。時計を見るともう20分近くたっていた。
「そろそろウェザー達が本体を見つけだしてくれるかな………」
それから15分程すると、一台の車が俺達の目の前で停車した。
『大丈夫か!?アナスイ、朝比奈!』
「朝比奈さんッ!無事ですか?」
キョンにウェザーだ。慌ただしく出てきた二人の後ろから長門が無表情で車から降りてくる。
「だ、大丈夫ですよ………」
「よかったあ……ん?谷口?なんでこいつがここに?」
「色々あってな………」
『敵の本体は倒した、後部座席にいる奴だ』
見ると髪をオールバックにした金髪の男が後部座席で気絶して、縛り上げられていた。顔は痣だらけでよく分からない。
「あ、ところで朝比奈さん」
「はい?」
「今……何処に泊まっているんですか?」
キョンの野郎……こういう時に限って変に勘がいいな……朝比奈にアイコンタクトで「言うな」と伝える。
「そ……それは………」
「アナスイのところですね?」
キョンが凄まじい怒気をはらんで言う。
「ち……違いますよ」
朝比奈は嘘を付くのが苦手だ。もちろん今回もバレバレである。
「朝比奈さん、若い男女がたった二人で一つ屋根の下はよくないと思うんですよ」
「そ……そうですね」
「俺、朝比奈さんが泊まるのにピッタリな場所、知ってます」
「で……でも………」
が、キョンは渋る朝比奈の両肩を掴み、有無を言わせぬ声で続けた。
「いい、ですね?そこに、泊まって、下さい」
「……………ハイ」
少し意外な形で朝比奈は俺の家を去る事となった。……安心した反面、なんだか少しモヤモヤと………ええい、考えるな、ナルシソ・アナスイ。
「そうだ、俺は徐倫一筋だ………」
そんなてんやわんやを繰り広げていた俺達は、ウェザーの呟きを聞き逃していた。
『青春だな………』
To Be Continued・・・
最終更新:2009年03月06日 15:21