第75話 「マンドゥ・ディアオ 2」
「か……かかって来な!」
キョンが棒を持って勇敢に叫ぶ。なかなか決っている……足が震えているのに目をつぶればだが。
「どうやら自殺志願者みてえだな……マンドゥ・ディアオッ!」
敵のスタンドがキョンに向けて襲いかかる。
「そうはいくかよッ!」
ダイバーダウンで襲いかかろうとしたスタンドをはがいじめにする。
「グッ………」
江口は身動きが取れなくなったスタンドに代わり、自分自身でキョンへと突進した。
「て……ていッ!」
朝比奈がその江口へと泣け無しの勇気を振り絞り、殴りかかる。非力なせいか簡単にガードされたが、キョンがその隙に再び殴りかかった。
「グフウッ………」
「情けねーな……スタンド使いが一般人相手にボコボコにされるなんてな………」
「貴様……マンドゥ・ディアオッ!そいつを八つ裂きにしろッ!」
敵スタンドが殴りかかってきた。右のニーキックをかわすと左のフックが飛んで来る。ガードしたところに今度は左右のワンツーパンチで攻め立てられる。
「どうだッ!どうだッ!どうだッ!」
「悪くねえが……それほどでもねえな」
相手が続け様に仕掛けてくるラッシュは簡単にさばききった。やはりこいつのスタンド、格闘は苦手のようだ。
「こいつで終わりだッ!」
ラッシュで怯んだ隙をつき、右の踵落としでトドメを狙う。が、
「マンドゥ・ディアオッ!」
「ふん……てめぇのスタンドじゃあ俺の攻撃は防げねえ……終わりだッ!」
「違うな……俺がいつお前の攻撃を防ぐっつったんだ?」
江口がそう言うと共に足がさらにぬかるみへと沈み始めた。
「なッ!?」
「俺の能力を忘れたかあ?固めた泥を元に戻して、さらに深くまで泥にした……まあ、あそこの二人には逃げられちまうが……そのまま沈みなぁ!」
「ア、アナスイ君ッ!」
朝比奈とキョンは江口の言葉通り沼から脱出していた。
「粘れアナスイ!今助けに行くぞッ!」
「そうはいくかッ!マンドゥ・ディアオッ!奴等を足止めしろ!」
「させるかッ!ダイバーダウンッ!」
敵のスタンドを防ぐ事には成功する。が、自分が沈んでいくのは防げそうにない。万事休すか………?と思った時だった。
「アナスイ君ッ!これを使って下さい!」
「朝比奈……?」
朝比奈が投げてよこした物。それは
「木の板………?」
「それなら泥に浮くはずです!」
なるほど……考え自体は悪く無い。ただまあ……
「朝比奈、こんな小さい板じゃあ人一人浮かべるなんて無理だ」
朝比奈が投げてよこした板は片手で軽く持ち上げられるレベルの軽い板だった。正直なんの役にもたちそうにない。
「……ごめんなさい」
「いや、別に謝る必要は無えよ」
「茶番はそれぐらいにしとけよ……終わりだッ!マンドゥ・ディアオッ!」
江口のスタンドが右のローキックでトドメをさしにくる。かなりやばい……今度こそ万事休すだな………待てよ?
「ダイバーダウンッ!」
「無駄だぜェ!沈んでいってるてめぇの攻撃が俺に当たるかよおッ!」
「いや、今のはお前を狙ったわけじゃない……朝比奈の板を殴った」
「……だからどうした……あとお前っていうな……江口って……ウゲッ!?」
そう江口が愚痴り始めた瞬間、朝比奈の投げた板からダイバーダウンの腕が飛び出し、江口の足に引っ掛かった。キックを繰り出していた江口は、受け身もとれずに泥の中に倒れこむ。
「ち……ちくしょおッ!」
「さて……どうする?我慢比べだ……どっちが長く泥の中で粘れるかのな………」
「てめぇぇぇぇぇぇぇええええ!」
江口がスタンドで次々と攻撃を繰り出してくる。が、遅い上にパワーが無い。楽にさばける。
「その程度か……」
「……だ、だがこのままだと相打ちだぞ!?」
「俺は別に構わねーがな」
「な………!?」
再び攻撃の手を強めてきた江口のスタンドの腕を掴む。
「腕を取ったぜ……どうする?」
「ぐ……て……てめぇ!放しやがれえええぇぇぇぇぇ!」
そうしているうちに俺達の体は腰辺りまで沈んでいた。と、その時だった。
「これでもくらえッ!」
「キョンッ!?」
キョンが江口の頭を棒で殴り付けた。
「アナスイ君ッ!今助けます!」
なんと朝比奈は俺の肩に腕を回し、引き上げようとしていた。
「朝比奈もか!?危ないから下がってろ!」
「嫌ですッ!」
「……………」
「わたし達はお荷物じゃありませんから……アナスイ君の力になりたいんです!」
……やれやれ。どうやら俺はこいつらを過小評価していたらしい。
「ぐ……させねえッ!」
朝比奈に助け出された俺を止めようと江口が襲いかかる。が、
「ちょっとは後ろに気いつけろよ」
再びキョンに後ろから棒で殴られ、怯む。
「トドメだッ!ダイバーダウンッ!」
怯んだ隙に右の回し蹴りをお見舞いする。意識を失った江口はそのまま泥の中に沈んでいった。
「……あー……死ぬかと思った………」
「アナスイ君ッ!」
「なんだ?朝比奈」
そう言って朝比奈を見ると、朝比奈は泣いていた。
「無茶しないで下さいッ!アナスイ君が死んじゃったらって思うと………」
そう泣きじゃくる朝比奈の頭に俺は手を乗せてやる。
「無茶なんかしてねーよ」
「で……でも!」
「ピンチになったらお前らが助けてくれるって分かってたからな」
キザな台詞はあまり柄では無いが、こんな時ぐらいはいいだろう。泣く子と地頭には勝てないって言うしな。
「………うん!……うん!」
「朝比奈……泣くか笑うかどっちかにしろ」
「だって……だって………」
「………フン」
そして俺は、たまにはこんな感じも悪く無いと……そう思った。
「………アナスイー……俺は?ねえ俺は?俺の事忘れてない?………ちくしょーーーーーッ!」
江口政木 マンドゥ・ディアオ 再起不能
To Be Continued・・・
最終更新:2009年04月25日 01:16