第20話 「映画制作中異常発生中 1」

土日が過ぎ、月曜日。俺はまるでハイキングのような通学路をこれから電気椅子に座る死刑囚のような気分、もしくは自殺願望のあるどこぞのアメリカの囚人のような気分で上っていた。それもそのはずだ。
この土日はハルヒが散々馬鹿やった上に極め付けはハルヒと大喧嘩しちまった。早く仲直りした方がいいと理性では分かっているが、感情的な部分が絶対に駄目だと譲らない。
そんなムシャクシャした気分で歩いていると、
「ハァ………」
ため息が聞こえてきた。横を見ると170cm近い女が一人。
「徐倫か」
「あ、キョン」
なんでため息なんてついてんだ?なんかあったのか?
「いや……この土日に撮影をしてたらもう沢山のスタンドに襲われてね……ちょっとまいってんのよ………あんた達は?」
「……目からビーム………」
「………大変そうね………そういえば、さっきハルヒを見たんだけど……なんか怒ってなかった?あんた何か知ってる?」
「………………別に……」
「知ってるのね」
凄まじい剣幕で睨まれた。流石に黙っているわけにはいかず、ハルヒが朝比奈さんに酒を飲ませた挙げ句、
みくるはあたしのおもちゃなの!と言い放った事を言った。
「……なるほどね、ま、ハルヒにも非はあるけどとりあえず反省してるかどうか位は確かめておいていいんじゃない?」
そう………だな………。

その日、俺はハルヒととりあえず話そうと思い、何度か声をかけたがそのたびにハルヒは無視した。
タダでさえなんだかイライラしているのにこんな態度をとられて頭にこない奴はいねぇ!
こうなりゃこっちも意地だ。徐倫や古泉には悪いが無視する事にした。

「それは実に困ります」
昼休み、SOS団の部室で俺はその決意を古泉と徐倫にブチまけた。
「どういう意味だよ」
「涼宮さんを不安定にしておくのはよくないという意味です」
「何言ってんだ?ハルヒがナーバスになってりゃ映画を作ろうなんて思わない。そうなれば変な事が起こらなくてすむんじゃない?」
「いえ、そういう訳にもいきません。今、涼宮さんは映画を撮るという行為を通じて自分の思い通りの世界を作り上げている訳です。
つまり涼宮さんにとっては今が一番楽しい訳です」
………だからなんだよ。
「ですから、もし映画撮影を中止させて涼宮さんが機嫌を曲げたらどうなるでしょう?」
異変が収まるんじゃねーの?
「えぇ、収まるでしょう。ただし、収まりすぎるという可能性もあります」
「それって………」
「涼宮さんが世界なんか無くなってしまえばいい……そう考えるかもしれないという事です」
バカバカしい、ハルヒのわがままに振り回されるならそうなったっていいじゃねえか。
「………とにかく、涼宮さんとは早く仲直りして下さいね………」

たっく……何が世界が滅びるだ。ハルヒのわがまま程度で世界が無くなっちまうならいっそ無くなった方がましだ。
………どっかの電波神父でもいい、世界を一巡させてハルヒのいない世界を作り出してくれねーか?
そんな事を思って廊下を歩いていると誰かとぶつかった。
「痛てーな……って、なんだ、キョンか」
ぶつかった相手は谷口だった。すると、谷口は俺の顔を見て思い出したように愚痴を言い始めた。
「しかしよ、キョン。昨日の映画撮影、何なんだ?あいつのやる事は大抵くだらないけど今度のは目茶苦茶酷いぜ。ハッキリ言ってむちゃくちゃだ」
谷口がそう言うのを聞いて俺は何故か腹が立ってきた。
俺だってハルヒが今やってる事はむちゃくちゃだし、くだらないと思っている。が、俺はどうやら自分で思った以上の天の邪鬼のようだ。
気がついたら俺は友を助ける為に三日だか四日だか走り続けたとかいうメロスみてーに走り出していた。
そしてハルヒを見つけ出すとこう言い放った。
「今度の映画は絶対成功させよう」
するとハルヒはびっくりしたような表情を浮かべたが、すぐにいつもの根拠のない自信に満ちあふれた笑顔を浮かべて言った。
「当たり前でしょ!あたしがやるからには成功間違いなしよ!」
そうだぜ。ハルヒ、お前はそうやって根拠のない自信をみなぎらせて、皇帝か帝王みたいにふん反り反っていればいいんだ。
………と、この時、俺は思った。暫くして後悔する事になるがな。

翌日、
「仲直りおめでとうございます」
「……………」
「ま、今回はよくやってくれたと褒めてもいいでしょう」
「……………」
「ただ……もう少しいい考えがなかったんですか?」
「………すまん」
俺がハルヒに謝って全て解決……とは行かなかったようで、状況はさらに悪化の一途を辿っていた。
「ちょうど良かったわ!桜のシーンが撮りたかったのよ!たまには地球もいい事してくれるじゃない!」
そう、ハルヒの沈んでいた気持ちを元に戻せたのは良かったが、元に戻るどころかギアがトップに入ったらしく、その結果が季節外れの満開の桜という訳だ。
「なぁ……徐倫……これ新手のスタンド攻撃だよな?」
「残念だけどこういう事の出来るスタンドは……あ、あいつなら……や、でもあいつは来てないから無理ね………いないわ。………いまんとこ」
時々小さく怪しげな事を呟いているが、スタンドの仕業では無いらしい。
『徐倫……あたし達もそろそろ撮影に戻ろうぜ』
エルメェスが何かを徐倫に言った瞬間だった。桜の木がいきなり何かにえぐられた。
「なッ……!?」
「伏せろッ!キョンッ!」
徐倫に頭を掴まれ、地面に叩き付けられると同時に桜が何かによって蜂の巣にされる。
『徐倫ッ!あそこにいるぞッ!敵スタンドだぜッ!』

To Be Continued・・・

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年01月10日 12:51