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対 焼酎 - (2006/08/07 (月) 21:56:55) の1つ前との変更点
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身近な話題から勝ち方の原理原則を考えるコラム
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■ランチェスターで斬る~【焼酎VS日本酒】~■■■
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マツケンサンバに若手芸人と最近のブームを連続して斬りましたが、今回は、ここ数年続いている焼酎ブームについて語りたいと思います。
昨年、課税数量ベースでついに焼酎が日本酒を抜き去りました。
これはアルコール飲料業界の歴史的な「下克上」です。
なにしろ30年前、焼酎は日本酒のわずか1/10程度の市場規模しかなかったのですから。
30年前、日本酒は我が国の酒の代名詞・国酒だったから日本酒といわれているのです。私などは日本酒のことを単に「酒」と呼んでいました。お父さんたちもそうでしょう。
酒といえば日本酒でした。
その座を焼酎が奪ったのです。
下克上された以上は日本酒のことを「清酒」と呼ぶべきなのかもしれません。
ただし、この下克上は30年間かけて起こったことなのです。
焼酎はこの30年を均すと年率6%成長しました。
日本酒は2%マイナス成長し続けました。
今回の焼酎ブームがなくても、いずれ日本酒が焼酎を抜き去るのは明らかでしたが、ブームによって急にその日が訪れたのです。
では、なぜ焼酎は日本酒を下克上できたのか?
ランチェスターで斬ってみましょう。
▼焼酎ブームとは▼
ここ2年で見ると焼酎は年率10%づつ成長しています。
ですが中身を見ると大手メーカーの「純」や「大五郎」などの主に酎ハイにして呑む無味無臭の「甲種」は3%程度しか伸びていません。
ですから、今の焼酎ブームは主に南九州の地場の蒸留所がつくる個性的な味や香りのする「乙種」が引っ張っているのです。
今の焼酎ブームは「芋焼酎ブーム」といってよいでしょう。
一方、日本酒も大手メーカーの「普通酒」と地場の醸造所の「吟醸酒に代表される特定名称酒」に分けてとらえるべきです。
日本酒の2/3を占める普通酒は年率マイナス6%です。
1/3の吟醸酒は年率マイナス3%。
ここ2年では両者均してマイナス5%です。
つまり、今回の焼酎ブームは芋焼酎ブームであり日本酒が下克上されたのは、普通酒の低落傾向に拍車がかかったということです。
▼焼酎下克上の理由▼
では、なぜそうなったのか?私が思うに理由は6つ。
1)焼酎の方が日本酒より安いから
2)焼酎の方が日本酒よりも翌日に残らないから、悪酔いしないから
3)私たちの味の好みが「すっきり系」へシフトしているから
4)芋焼酎が旨くなったから、個性が楽しめるから
5)吟醸酒がもうこれ以上旨くならないから、画一化しているから
6)ブームがブームを呼び、芋焼酎を呑む機会が増えたから
私は大の日本酒党です。
一番好きな酒蔵は加賀の菊姫。
最近、感動した酒は奥三河の酒倉・蓬莱泉の「吟」です。
首都圏では入手困難です。
入手できたとしても一升で最低でも1万円です。
だから、吟醸酒ブームは去ったとはいえ、本当に旨くて希少なものは相変わらず、プレミアム価格で流通しているのです。
ですが、こんな高いお酒を夜な夜な晩酌で呑めるわけがありません。
やはり晩酌用となると一升3千円未満のもの、と自らルールを作らないと我が家は破産してしまいます(苦笑)
晩酌は一升2~3千円というのが、日本酒党・焼酎党を問わず味にこだわるヘビーユーザーのボリュームゾーンではないでしょうか。
ところが、この価格帯で手ごろで旨い日本酒というのが、少ないのです。
2千円未満で安くて不味い日本酒なら、いくらでもあります。
3千円以上で高くて旨い日本酒なら、いくらでもあります。
バブル期から90年代に起こった地酒(吟醸酒)ブームを経験して日本酒党になった人にとっては、今さら安いけど不味い普通酒を呑む気にはなれないでしょう。
かといって焼酎は好んでは呑みたくありませんでした。
私にとって焼酎とは味も香りもない、文字通り味も素っ気もない何の文化も感じない甲種と、匂いがきつすぎて肴の味もわからなくなる乙種というイメージでした。
近年までは。
ところが、最近の乙種は匂いがマイルドとなって「個性的な香り」といえるものになってきました。
味わいがあり、文化を感じます。
のどごしも吟醸酒に近いすっきり系です。
普通酒(日本酒)にあるくどさ、べとつき感もありません。
しかも、一部の幻の・・・というやつは別にすると2~3千円台の晩酌価格で、それなりのものが容易に手に入ります。
そんな味にこだわるヘビーユーザーが芋焼酎に流れたのだと思います。
▼武器の磨き方▼
それにしてもなぜ、日本酒業界は2~3千円のボリュームゾーンにそれなりに旨い酒を投入しないのか(できないのか)?
吟醸酒というのは米を磨いて米の芯だけを原料にしています。
旨い吟醸酒を作ろうとすると米をどんどん磨くことになるのです。
よって、原価が高いものになってしまいます。
だから、お手頃価格の吟醸酒はコスト的に成り立ちにくいのです。
また、旨い酒づくり競争が米磨き競争になってしまって味が均質化して、地酒本来がもつ土着的個性がなくなっています。
これが一部のブランド吟醸酒を除いてブランド化できない原因ともなっています。
あなたのビジネスに置き換えて考えてみましょう。
ランチェスターでは常に「武器を磨け!特に弱者は」と申しております。
ただ、その武器を磨くとは「差別化せよ」という意味で言っているのであって同質化競争を煽っているわけでは決してありません。
武器の磨き方がライバルと同じであれば、それは差別化戦略ではなく同質化戦略であって、弱者はやるべきではないのです。
また、武器を磨きすぎてコスト高となればブランド化して高級路線を目指すしかないのですがブランドには個性が不可欠です。
最近、私の晩酌は予算一升2~3千円で、芋焼酎と日本酒をバランスよく楽しんでいます。
お手頃価格で満足感のある日本酒も、あるにはあります。
好みの問題ですが、たとえば吟醸ではない酒の原酒、ふなくちとか。
北越後の菊水「ふなぐち」は史上最強のカップ酒だと思います。
出張のお供に最高!
にごり酒、どぶろくも私は好きです。
こういった味にこだわるヘビーユーザーのボリュームゾーン商品を開発せず米を磨いてばっかりいたから下克上されたのです。