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術伝流一本鍼no.50 - (2014/03/06 (木) 07:16:41) の編集履歴(バックアップ)


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術伝流一本鍼no.50 (術伝流・養生の一本鍼・応用編(2))

古い病、古いツボ

1.基本的に

 鍼灸で慢性期の養生をしていくときは、古い病に関係した古いツボ
を改善していくと、効果が出やすいです。 そこで、今回は、古い病に
関係した古いツボについて、書いていきます。

1.1.古いツボは、虚のツボ

 古いツボは、虚のツボです(図1)。表面は、ベコベコしていて、
しばらくズブズブした状態が続きます。そして、ずうっと奥に、た
いへん硬い板のようなシコリがあります。また、奥が弦のようなス
ジバリになっていることもあります。

 板状のシコリを鍼灸で弛めるとスジバリが出てくることも多いで
す。実のツボにくらべると、見つけにくいものが多いです。

 生命力あふれる所は、元気な赤ちゃんの体のように弾力がありま
す。カチカチ硬いだけでなく、ベコベコ・ズブズブ・フニャフニャ
の所も、生命力が低いところです。

 奥の硬いシコリは、治療を続けると、少しずつ表面へ上昇してき
ます。じっくり時間をかけて、消していきます。

図1

1.2.丁度よい治療を心がける

 古いツボを動かすと、腹の邪毒が動き排出されることが多いです。
「瞑眩」とよばれる現象です。あまり急に変えると、多量の邪毒の排
出が一度に起こり、患者さんを必要以上に苦しませることにもなりか
ねません。

 そこで、少しずつ変えていきます。その日の治療で、どのくらい動
かしたらいいか、見極めることが大切になります。私は、「次の日の
朝の目覚めがスッキリしている」ことを目安にしています。

 また、古いツボで古い病を変え、しかも、患者さんにあまりツラサ
を感じさせない、そういう意味で丁度よい治療のためには、後始末も
大事です。頭(や表位)の熱へ散鍼し、手陽経に強めに引き鍼をしま
す。灸の場合には、手指の骨空、井穴、指端などに、熱めの糸状灸を
します。

1.3.実のシコリと虚のツボ

 古い虚したツボの左右反対側、同一経絡上や動作時連動筋肉内には、
実のツボが在ることが多いです。左右反対側の例は、脊柱をはさんで
同じ高さの左右などによく見られます。同一経絡内の場合は、背中の
上下などに見られます。動作時連動筋肉内の例は、手の運動器疾患に
おける軸足に多く、例えばテニス肘のときの反対側下腿外側などです。

 ですから、逆に、実のツボや実のシコリの左右反対側、同一経絡上
や動作時連動筋肉内を丁寧に探すと、虚のツボは見付けやすいです。

 例えば「術伝流一本鍼no.22 運動器偏補足 ムチウチ」に書いたよ
うに、背中に大きな実のシコリがあった人の腰椎部分に虚のツボが在
りました(写真1)。そこへの刺鍼で、実のシコリも目立たなくなり
ました。

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写真1

1.4.虚すぎて痛まないものもある

 虚のツボで古くなったものには、押しても痛みを自覚できないもの
もあります。

 そういうときには、患者さんに了解を得た上で、刺鍼や灸頭鍼など
をしていきます。そうすると、初め自覚痛のなかった虚のツボに痛み
が出てくることが多いです。

 また、古い、虚のツボが消えると、もう一つ前の古いツボが出てく
ることがあります。順に消していきます。

1.5.甘い物の食べ過ぎは、ツボが消えにくい

 甘い物(白砂糖など)の過食者は、ツボが消えにくいです。化学調
味料、精製塩、添加物も同じです。また、消えても、復活しやすいで
す。

 鍼をしてシコリが弛んでも、ゼリー状の物がシコリと同じ形・大き
さで残り、直ぐにまたツボになることが多いです。また、鍼をしたと
きに筋肉が粘っこい感じを受けます。そのため、そういう人は、銀鍼
を痛がることもおおいです。人間の体と銀鍼の親和性がかえってアダ
になってしまうようです。

 ですから、食養生の指導も必要です。10数年前に、30代の女性で
1か月甘い物を断ったら体質が変わり、ツボが消えやすくなったこと
もあります。

1.6.補の灸、灸頭鍼、自己養生も必要

 鍼のみで変わりにくいときは、補の灸・灸頭鍼を併用したほうが変
わりやすいです。

 できれば自宅施灸もしたほうがよいです。施灸してくれる人がいな
いときは、自分でできる指端など指への灸を勧めます。

2.ツボが出やすいところ(図2)


図2

2.1.体の境目に近い所に出やすい

 ツボは、初めは筋肉の太い所に出ます。背中では1行線、腹側では
胃経。病が古くなると、そこだけでは支えきれなくなり、横へ横へと
ズレていきます。腹側では、脾経から、やがて少陽経へ、そして、章
門、そして、腰骨に張りつくような感じで、五枢〜維道など。背中側
では、2行線へ、そして、脊柱起立筋の外端の痞根・腰徹腹など。

 また、それらが関係する手足の少陽と厥陰にも出やすいです。小陽
と厥陰は、前後の境界でもありますね。

 左右境界にも出やすいので、任脈、督脈、華陀経を探します。基本
的には、慢性症状の関連する臓器の高さに多いです。たとえば、喘息
に定喘など。

 それと、臍まわりは、様々な慢性症状のときに出るので、よく探し
ます。

 上下の境界は、横隔膜ラインです。背中側の督兪、膈兪、膏肓の下
よりなどに出やすいです。比較すると、左側が多いです。

 前後、左右、上下の境界の組み合わせにも出ます。百会、尾骨〜会
陰のまわり、大包、鳩尾〜巨闕あたりなど。

 体と手足、頭と首の境目にも出ます。手と体では、雲門、肩貞。足
と体では、衝門、居髎、環跳、足徹腹など。後頭骨下縁の天柱、風池、
完骨。

2.2.立ち姿勢で負荷がかかりやすい土台部分

 膝裏から脹ら脛(フクラハギ)、両踝(クルブシ)まわりにもツボ
が出やすいです。膝裏のH字状の窪みの両端のラインと中央のライン
上で、特に、脹ら脛側に多いです。下委陽、飛揚〜外丘、承筋、承山、
下陰谷、築賓など。

 古くなると、大腿側にも出ます。

2.3.古い打撲、手術痕

 古い打撲や手術痕も古いツボになりやすく、瘀血を伴うことが多い
です。季節の変わり目、寒い時期、疲れたときや、汗をかいて冷房に
当たったときなどに痛みます。また、50過ぎて初めて痛み出すことも
あります。若いころスポーツマンだった人は、こういう外傷性瘀血症
で、脳梗塞などを起こしやすくなるので、注意が必要です。

 打撲したら、炎症が治まったときにすぐ、灸・灸頭鍼で瘀血を散ら
しておくと良いです。うまくいくと、青黒い瘀血が黄色い輪になって
広がり、やがて消えていきます。ヘモグロビンがビビルビンに変わっ
ていくのかなと思いました。

 特に、打撲したとき痛まずに、次の日以降に痛み出したときは、必
ず施術したほうが良いです…古傷になりやすいので。数日してから痛
み出したものは、特に注意が必要です。漢方薬の駆瘀血剤(治打撲一
方など)を飲んでおいたほうがよいことも多いです。漢方の専門医に
相談してください。

 治療継続中に、それまで隠れていた古い打撲が痛み出すこともあり
ます。そのときは、そこに灸・灸頭鍼をします。また、この場合も、
漢方の専門医に相談し、駆瘀血剤(桂枝茯苓丸など)を併用したほう
がよいと思います。

 打撲の治療は、「術伝流一本鍼no.18 頭部の打撲に灸など」を参考
にしてください。

 古い打撲の場合は、いちばん虚したポイントに補の灸・灸頭鍼をす
るのが効果的です。

2.4.指端など指のツボに灸

 指端など指に出ているツボに灸をするのは、よい自己養生になりま
す。手足の指端20カ所に試しに小灸をして、熱くないところに多壮灸
します。経絡的な変動の調整に向きます。

 また、片麻痺など脳血管障害後遺症の麻痺のときにも使います。足
指端は、体の重心調整、中心軸調整にもなります。特に、足1指は、
フォームが決まらない人などの正中線作りに効果的なことが多いです。

 指端の灸で効果が出にくいときは、その指の裏側関節部の横紋の端
(節紋)にある小さなシコリをみつけ、灸をします。また、井穴、骨
空なども使えます。

3.手順

 初めは、ツボを考慮して慢性期の型をします。そして、古いツボが
見つかったら、灸や灸頭鍼をします。

 古いツボが定まってきたら、灸や灸頭鍼を中心に施術します。特に
古く変わりにくいツボには、枇杷葉エキスも利用した灸頭鍼もします。

 「補の灸」や灸頭鍼については、「術伝流一本鍼no.33腰の慢性期
の養生、灸頭鍼」などを参考にしてください。

4.手術痕の治療

 手術痕は、手術痕と普通の皮膚の間に出ているツボに鍼灸すると、
だんだん小さくなっていきます。腫れに対する「四畔の灸」と同じよ
うな方法です。繰り返していくと、腫れと同じように、だんだん小さ
くなっていきます。

 手術痕のすぐ近くは、シコリになっています。そういうシコリと、
シコリになっていないところとの境目をさがすと、1cmおき位にツボ
が出ています(写真2)。

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写真2

 慢性期の養生として刺鍼するときは、手術痕の場所に経絡的に関係
する手のツボに陰陽の順で引いて準備します。そして、その手術痕の
周囲に出ていたツボに順に刺鍼します(写真3、4)。手術痕の周囲の
シコリが改善され柔らかくなったことを患者さんにも確認してもらい
ます。

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写真3

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写真4

注: 写真を撮るために押し手を離しましたが、術伝流では、灸頭鍼な
どの時を除いては、押し手は、普通、離しません。

 それから、手術痕に関連しそうな足のツボに、陰陽の順で引きます。
手術痕の背中側にツボが出ていれば、そこにも引きます(写真5)。座
位で、頭に散鍼し、手甲に引いて仕上げます。

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写真5

 もちろん、他の病・症状やそれに関連するツボと組み合わせて鍼灸
していくこともできます。

5.自己養生

5.1.自己施灸と温法など

 自宅での施灸もしてもらったほうが変化が早いです。古いツボの中
で、その時に動かしたい所と、手足の指のツボにします。

 一人暮らしなどで目標のシコリに灸がしにくいときには、指のツボ
に灸し、目標のシコリに円皮鍼が貼れれば貼ります。

 指のツボの探し方や施灸法などは「術伝流一本鍼no.14指まわりの
痛みに糸状灸」、「術伝流一本鍼no.21表位陽明経の急性期」などを
参考にしてください。

 臍まわりにツボが出ていれば、そこにもします。また、臍まわりに
は、蒸しタオル温法でも良いです。

蒸しタオル温法:
 ①濡れタオルをレンジパックにいれ、レンジでチンする
 ②レンジパックの口を閉じ、乾いたタオルで包む
 ③ ②を患部に乗せる

 古い虚したツボには、足湯・半身浴や砂浴なども向きます。枇杷エ
キスを入れた湯は、ぬるめでも温まりやすいです。

5.2.食養

 食養としては、白砂糖、精製塩、添加物を減らしていくこと、和食
を中心にすることを、先ず、すすめます。次に、パン、スパゲッティ、
ドリアなどのカタカナ主食は少なくすることを薦めます。そして、ス
イーツも和菓子をすすめます。

 『粗食で生き返る』(幕内秀夫著)、『日本食長寿健康法』(川島
四郎著)などを参考にしてください。

 また、手抜きして料理できる工夫も必要です。特に、ひとり暮らし
で自炊する場合には、そのほうが長続きします。『ズボラ人間の料理
術』(奥薗壽子著)、『クッキングパパの絶品ひとり暮らしレシピ』
(うえやまとち著)などを参考にしてください。


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