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術伝流一本鍼no.67 - (2017/01/27 (金) 23:53:12) のソース

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&color(green){術伝流一本鍼no.67 (術伝流・体得篇(7))}

&bold(){&size(24){&color(green){引き鍼のコツ、痛くない刺鍼のための練習}}}&bold(){&size(15){&color(green){}}}
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#contents
*1.はじめに
 今回は、引き鍼で効果が出しやすいコツを始め、痛くなく刺
すため、色々な状態に合わせるための練習法を紹介していきま
す。

 細かいことですし、「そんなこと知ってる」という人も多い
かと思いますが、初心者で躓(つまづ)いた人に伝えているこ
と、私自身が工夫してきたことなどを書いていきます。

*2.引き鍼で邪気を引き出すために
 術伝流では、鍼の「邪気を引く道具」という側面を重視し、
初心者には、先ず「体幹部の邪気を手足に引く」ことを身に付
けてもらっています。大抵、すんなりと身に付けてもらえるの
ですが、時々は習得できない人が出ます。

 置鍼中心の臨床を身に付けた人に多いです。置鍼中心の場合
は、刺鍼後に押手や刺手は離してしまうので、刺鍼中の押手や
刺手の使い方には、それほど気を使わないからかなと思ってい
ます。
 
 時には、施術後に刺鍼した所が炎症のように腫れてしまうこ
ともあると聞きました。体幹部の邪気を刺鍼した所までは引い
てくることができたが、そこから体の外には出せなかった状態
です。

 抜鍼時の押手や刺手の使い方を身に付けると、こういう現象
は起きなくなります。「体幹部の邪気を手足に引く」場合の押
手や刺し手の細かい使い方を書いてみます。

**2.1.弾入のときは、皮膚を張る
 先ず、弾入のときには、ツボの上の皮膚を少し広げるような
指使いをします(写真1)。こうすると、ツボの上の皮膚が張っ
た状態になるので、弾入しやすくなりますし、痛みも出にくく
なります。皮膚に張りがなくタルんだ状態だと、弾入もしにく
く、痛みも出やすいです。 

&ref(DSCF5587.jpg)写真1

 もう少し具体的に書くと、鍼管を置いた後、押手の上側(皮
膚から遠い側)を支点に、指の皮膚側を鍼体から離すように動
かし、ツボの上の皮膚を少し広げ、張りを作ります。

**2.2.刺入と抜鍼時点の判断
 弾入の後は、静かに鍼を刺入していきます。横に揺らしたり
しながら手の重みを掛けていくと、スーッと吸い込まれるよう
に刺入できることが多いです。

 急いで刺入したい場合は送り込みでも良いと思います。刺入
しにくいときには撚鍼するのも良い手段と思います。

 何か感じたら、深さを変えずに弾鍼(写真2)などをして、
邪気を引きます。何か感じるのは、患者さんでも、鍼師でも、
どちらでも良いです。効果が出ていれば、腹の息や瞬きなどが
変化するので、その辺りを目安に十分に邪気を引き出します。

&ref(DSCF5591.jpg)写真2

 瞬きが少なくなったり、腹の息が普通に戻ったら、抜く時期
と判断します。刺鍼中や抜く時期を判断する目安は、他にも色々
あります。少しずつ自分が使える目安を増やしていきましょう。

**2.3.抜鍼時に抜けにくかったら弾鍼
 抜鍼の時には、途中で抜きにくくなることがあるので、注意
してください。この時に無理して抜鍼しようとすると、患者さ
んに痛がられてしまいます。

 抜けにくい感じがしたら、押手を少し引き気味にして、弾鍼
などをします。押手を引き気味にするというのは、極端に言え
ば、皮膚が少し持ち上がったような状態を作るということです
(写真3)。

&ref(DSCF5593.jpg)写真3

 しばらく弾鍼していると、スッと抜ける方向に動き出します。
そしたら、抜いていきます。手甲など浅い所でも2,3度抜けに
くくなることがあります。その度に、押手を引き気味にして弾
鍼します。

 この押手を引き気味にしながら弾鍼というのが、邪気を体の
外に引き出すコツです。

 大抵は意識しなくても、指が自然にそういう感じに動いて上
手くいくことの方が多いのですが、上手くいかなかったら意識
して身に付けてください。また、初心者が他人に刺鍼するとき
には、意識して、こういう風にした方がよいでしょう。

 これが上手くいかないときには、経絡的に関連する末端の指
を反らせると(写真4)同じような効果が出せます。反らす方
向によって効果の出方が違います。

&ref(DSCF5599.jpg)写真4

 患者さんがピリピリビリビリ感じる方向、鍼師が抵抗感を感
じる方向が効果的なことが多いです。また、その反らした指を
瞬間脱力させたりしてもよいです。 ここで言う瞬間脱力という
のは、指を反らせてからパッと離すことです。

 井穴を揉んだり(写真5)、指の関節部や爪を細かく叩いた
りしても、似たような効果が出ることも多いです。試してみて、
効果が出やすい方法を選びます。他にも、似たような効果を出
せる方法があるかもしれません。工夫してみてください。

&ref(DSCF5597.jpg)写真5

*3.痛くなく刺せるようになるために
 刺鍼で痛さが出てしまうと、効果が出にくいです。特に、初
心者が家族や友人に鍼をして痛みが出てしまうと、それ以降は
鍼をさせてもらえなくなってしまうことが多いですね。

 そういう時には、自分に刺せる鍼をだんだん太くしていきま
しょう。そうすると、痛みを出さない鍼の動かし方が自然に身
に付いていきます。

 私も、初めはディスポの1番しか、自分に痛くなく刺せませ
んでした。2番だと少し痛みを感じました。毎日30分ほど自分
に鍼をして、少しずつ太い鍼を刺していきました。

 鍼灸学校を卒業したころ8番位の太さの中国鍼が刺せるよう
になり、その年の夏に30番の銀鍼を自分に刺せるようになり
ました。毎日自分に鍼を刺し始めたのは、鍼灸学校1年の夏休
みからなので、丸3年かかったことになります。

 30番の鍼は、鍼管を使い弾入で切皮すると、痛いです。鍼
管なしに鍼をツボの上の皮膚に立て、横に揺らしていると、痛
くなく切皮ができます。皮膚の細胞と細胞の隙間を探していく
感じで横に揺らすのがコツです。

 切皮ができてからは、撚鍼のほうが刺入しやすいです。が、
この時も、筋肉の細胞と細胞の隙間を探していく感じで鍼先の
向きも少し動かした方が上手く行きます。筋肉に5mmほど刺
入できれば、そこからはツボの底のシコリまで比較的簡単に刺
入できます。

 自分の体に30番の鍼が刺せれば、かなり敏感な人にも、痛み
を余り感じさせずに刺入することができるようになります。 

*4.細い鍼も刺してみよう
 逆に、細い鍼を自分に刺せるようになると、硬いシコリにも
刺しやすくなります。

 こちらも、自分に刺せる鍼をだんだん細くしていきます。私
は、銀の霞鍼まで刺せるように練習しました。

 銀の霞も、弾入での切皮は難しいです。鍼が細く柔らかいの
で、弾入すると曲がりやすいからです。撚鍼、特に、操体の橋
本敬三先生が刺入練習法として紹介している片手撚鍼法がやり
やすかったです(片手撚鍼法→[[術伝流一本鍼no.63]])。

 鍼先から1cmほどの鍼体をもって撚鍼していく方法です。た
だし、鍼柄が重いと難しいので、青木実意商店の細軸など、鍼
柄が軽い鍼が使いやすいです。

 2,3mm刺入できたら押手をして、普通に撚鍼していきます。

*5.おわりに
 刺鍼練習器、缶などに糠を詰めたもの、浮きもの通し、桐板
通しなど刺鍼練習法は、色々ありますね。 また、半熟ゆで卵、
皮付きバラ肉、豚足などに刺したという人もいました。ペット
の猫や犬で練習した人もいるようです。

 そういうのも、練習になると思いますが、私は、自分の体に
色々な鍼を刺すのが一番練習になるような気がしています。

 特に、自分のちょっとした不調、ケガ、病の時に刺鍼すると
良いです。そういう時に、色々な鍼で様々な刺し方をしてみる
と、体の状態に合わせた鍼の動かし方が、だんだん身に付いて
いきます。

追記:2016.11.28ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 銀鍼の霞から30番まで自分に刺せるようにすることが「上達
コツ」、特に「色々な患者さんに合わせるための"手の内"を広
げるコツ」ということは、講座でも伝えるようにしています。

 が、今の所、霞も30番も自分に刺せるように成りました。と
言う報告は有りません。20年以上続けて講座をしているのです
が。

 もし、私の講座を受講した人と、私に差が有るとしたら、そ
ういう点が一番関係しているかなと思ってしまいます。

 そして、術伝の講座に通えなくても、銀の霞〜30番を自分に
刺せるように成っていれば、このHPを見て、術伝講座に見学か
通し稽古に来れば、このHPに書いてあることを身に付けること
は可能なような気がしています。
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