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168 : ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 21:43:34.86 ID:Qgdk9uOTO
-桜が丘高校。 
その屋上に1人、喇叭を吹く少女が。- 

ぼくの名は細野凪。 
と言っても、それはあくまでも表の世界での名だ。 
元々その名前ではあるが、ぼくにはもうひとつの名がある。 
尤も、その名を知る者は、裏の世界に生きる者、若しくは表と裏の仲介役、という事になる。 
つまり、普通に暮らしていれば、その名を聞く事などまずないし、知る事もないだろう。 
…前置きが長くなった。 
そろそろ名乗るとしよう、ぼくのもうひとつの名を…。

182 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 22:04:56.17 ID:Qgdk9uOTO
2ヶ月前、某所 
巨樹の前に、1人の少女が跪いている。 
「新たな召喚師を目指す者よ。我が葛葉の一族となり働けるか否か……。今よりそれを裁断す。汝の召喚師としての力、見事示してみよ!」 
少女は試練の場へと赴いた。 
…………… 
「汝の腕、見せて貰った。その力を認め、約束通り、新たなる葛葉の分家として生きる事を許そう。葛葉としての名を名乗るがいい。」 
「私は…。」 

数時間前、桜が丘高校 

律「なあ聞いたか?転校生が来るらしいぜ!」 
唯「そうそう!しかもうちのクラスだって!」 
澪「しかし、変な時期に転校してくるもんだな、その子も。」 
紬「どんな人か楽しみだわ~。」 

188 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 22:30:37.25 ID:Qgdk9uOTO
さわ子「はーいみんな静かにー!ホームルーム始めるわよー。」 
唯「きりーつ!れー!着陸!」 
ズコッ 
澪「お約束なボケかますな!」 
律「てか古っ!」 
唯「てへへ、間違えちゃった。」 
さわ子「え、えーと…早速だけど、転校生を紹介するわ。入って来て。」 
ぼくは教室の中に入り、黒板に名前を書いた。 
無論、表の名を。 
凪「細野凪です。宜しく。」 
さわ子「じゃあ凪ちゃんの席は…。」 
唯「せんせー!私の隣があいてまーす!」 
さわ子「じゃあ、あそこに座ってちょうだい。」 
凪「分かりました。」 
廊下側から2列目、後ろから2番目。 
悪くない位置だ。 

206 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 23:12:00.97 ID:Qgdk9uOTO
ホームルームが終わると、クラスメート達がぼくを取り囲んでの質問タイムが始まる。 
恒例行事、というやつだろうか。 
ひと通り質問に答え、ほっと一息つき、授業の準備に取り掛かる。 
…………… 
そして現在、屋上にて。 
喇叭を吹くぼくのもとに、小さな光が近寄って来る。 
???「な~ぎ!ガッコにはもう慣れた?」 
凪「学校には、ね。で?何か用?アカネ。」 
アカネ「ぶー!相変わらず無愛想なんだから!」 
今アカネと呼んだ彼女は、ぼくのパートナーとして師匠から頂いた、ハイピクシーという悪魔だ。 
アカネ「てか、人見知りも相変わらずなのね。」 

224 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 23:48:24.70 ID:Qgdk9uOTO
凪「…用件は?」 
アカネ「オヤゴコロってやつが分かんないのかな~この子には…。」 
凪「貴女を親に持った覚えは無いけど?」 
アカネ「そ~んな事分かって…!誰か来た!じゃね!」 
そう言うとアカネは彼方へと飛び去った。 
その僅か後、屋上の扉が開く。 
律「お、やっぱここにいたか。」 
凪「田井中律さん…だっけ?何か用?」 
律「ラッパの音したから、ここじゃねーかと思ったんだ。」 
凪「…用件は?」 
律「なあ、凪は軽音楽とかきょ 

259 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 02:15:00.87 ID:WD4LdIzuO
おっとミス 

律「なあ、凪は軽音楽とか興味ないか?」 
凪「無い。」 
律「(バッサリだ~!)でも、なんかしら部活には入りたいだろ?」 
部活…か。 

525 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 21:20:48.64 ID:WD4LdIzuO

学生の本分とも言えようそれも、残念ながらぼくには体験する暇もない。 
凪「実は住み込みでバイトをしていてね。学校が終わったら直ぐ帰らなきゃならないんだ。」 
詳しい内容は敢えて話さず、端的に事情を説明した。 
まあ、どの道そう深く追及しては…。 
律「なになに?どんなバイト?住み込みって事は…まさかの新聞奨学生!?」 
しまった。 
まさか、食い付いて来るタイプだとは思ってもみなかった。 
人を見た目で判断するのは、ぼくの悪い癖だ。 
凪「否、そうじゃないよ。実家が遠くてね。この学校の近くで働き口があったんで、事情を説明して、住み込みで働かせて貰うことになったんだ。」

536 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 21:35:53.82 ID:WD4LdIzuO
律「ん~、残念。うちの部に入ってもらおうと思ったんだけどなあ。そういう事ならしゃーねーか。」 
律は踵を返すと、そのまま出入り口まで歩いていった。 
途中で此方を振り返り、一言。 
律「気が向いたら覗きに来てくれよ。音楽室でやってるから。一曲演奏してやるよ。」 
そう言って、再び出入り口に向かう。 
凪「うん。いつかお邪魔するよ。」 
律は軽く手を挙げて応える。 
律が見えなくなった直後、再びアカネが姿を現す。 
アカネ「な~んだ、もう友達いるんじゃない。心配してソンした。」 
凪「あの子は、紬さんと仲が良いみたいなんだ。友達の友達も友達…だろ?」 

546 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 21:44:46.44 ID:WD4LdIzuO
放課後、音楽室 

律「やっぱダメだったわ。住み込みのバイトしてるんだと。」 
澪「へー、あの子仕事熱心なんだな。」 
唯「まさか、新聞奨学生!?」 
律「あたしと同じ事言ってるし。」 
唯「で、新聞奨学生って何?」 
律「知らねーで言ったのかよ。」 
紬「そうそう、言い忘れてたけど、実は凪ちゃん、探偵さんの助手をやってるのよ。」 
唯「おお!カッコイイ!」 
澪「探偵?あの、ペット探しとか浮気調査とかする?」 
紬「そうそうのもやってるみたいだけど、所長さんいわく、本来は『変わったの専門』なんだって。」 
律「変わったのって?」 

578 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 22:10:19.05 ID:WD4LdIzuO
紬「幽霊騒ぎとかのいかがわしい系の調査ね。実は私も、それが縁で凪ちゃんと知り合ったの。」 
梓「たまたまそうそう場所に居合わせた、とかですか?」 
紬「う~ん、ちょっと違うかしら。あまり詳しくは話せないけど。」 
梓「なるほど、守秘義務ってやつですね。」 
紬「そうなるわね。」 

同時刻、大瀧探偵事務所 

凪「ただ今戻りました。」 
???「お~う、お帰り~。学校はどうだったよ?」 
何処からか言葉が返ってくる。 
この声の主こそ、我が探偵事務所の所長にして、自称敏腕探偵の大瀧氏である。

594 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 22:23:29.50 ID:WD4LdIzuO
大瀧「自称は余計だよ~?」 
凪「ナレーションに突っ込まないで下さい。そう言えば、久々に紬さんに会いましたよ。桜が丘に通っているとは知りませんでした。」 
大瀧「ああ、あの琴吹のお嬢さんね。調査不足だよ~。」 
???「ドキドキ、多いがいい、だから、わざと、調べなかった、そうか?」 
この片言で話す人物は、ぼくの先輩であるジョー・マツモト氏である。 
凪「御明察です、ジョー。」 
大瀧「ふ~ん。ま、どっちでも良いけどね~。で?他に友達は出来たの~?」 
凪「紬さんの友達の方々と仲良く成りましたよ。」 
大瀧「ほ~。そんなら、人見知りは克服出来そうだね。」

623 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 02:13:18.62 ID:8TOudOSYO

資料室から所長が出てくる。 
資料室の整理をするなんて、随分と所長らしからぬ行動だ。 
大瀧「普段怠けてるみたいな言い方しないの。」 
凪「だからナレーションに…。」 
大瀧「それはそうと…ハヅキ。」 
ぼくは姿勢を正す。 
そう…ハヅキ。 
ぼくのもうひとつの名-葛葉ハヅキ-その名で所長が呼ぶ時は、依頼調査の報告を求める時だ。 
この時ばかりは、所長に威厳を感じ、背筋をピンと張ってしまう。 
何だかんだ言っても、やはり所長を尊敬しているぼくなのである。 
大瀧「学校の幽霊騒ぎの件…何か分かったことは?」


902 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 21:37:34.51 ID:8TOudOSYO
凪「聞き込みを行った所、幽霊を見たと言っているのは男性教諭が多いようです。出会うのは午後8時頃で、見た目は丁度ぼく等生徒と同い年位の少女だそうです。」 
大瀧「自殺した生徒の霊って可能性は?」 
凪「校長先生には、そういった事は包み隠さずに話して戴きました。無論、その様な事実はない、との事です。」 
大瀧「だとすると、悪魔である可能性もあるって事か。遭遇現場は見てみたのかい?」 
凪「はい。しかし、その時点では怪しい気配は感じられませんでした。やはり、遭遇時刻まで待ってみる必要が有りそうです。」 


913 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 21:57:56.67 ID:8TOudOSYO
大瀧「…そうか。まあ、そうじゃないかとは思ったけどな。…よし、ハヅキ。この件、明日から全面的にお前に任せる!報告は調査完了後に書類にして提出するように。しっかり頼むぞ!」 
凪「有難う御座います。精一杯調査に当たらせて頂きます。」 
ぼくは一礼して、自分の部屋に戻ろうとした。 
すると、所長がぼくを呼び止めて言った。 
大瀧「時間になるまで暇になっちゃうだろ?部活にでも入って、青春を謳歌するといいよ。」 
凪「しかし、依頼が…。」 
ジョー「怠け者扱い、イヤ。だから、他の依頼は、自分がやる。所長、そう言いたい。」 
大瀧「…言うんじゃないの。ま、そういう事だからさ。」 


935 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 22:26:40.62 ID:8TOudOSYO
さっきの一言が効いたのか、単にぼくに気を使ってくれたのか。 
どちらにせよ、部活が出来るのは正直嬉しい。 
ぼくにとっては憧れだからな。 

次の日 
放課後、音楽室前 

ぼくは迷っていた。 
律は昨日は気にしない素振りをしていた様だが、「興味が無い」と言い切ってしまったし、入部を渋られたりしないだろうか? 
梓「軽音部にご用ですか?」 
凪「あ、ああ。ええと…。」 
梓「はじめまして、中野梓です。私も軽音部員なんですよ。細野先輩…ですよね。よろしくです。」 
凪「ああ。よろしく。」 
律「お~、やっと来たか凪~。」 
音楽室から律の声が響く。 


966 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 23:11:46.01 ID:8TOudOSYO
梓さんに促され、音楽室に入る。 
律「待ちくたびれて練習やめるとこだったぜ!」 
澪「そもそもやってなかっただろ?」 
唯「ティータイムがうちの売りだもんね~。」 
律「そんな事より!ムギから聞いたぜ~!凪って探偵なんだってな!」 
凪「助手だけどね。」 
ふと紬さんを見ると、申し訳無さそうに手を合わせていた。 
まあ、隠す様な事でもないし、どの道いつかは話そうと思っていたから、むしろ手間が省けたというものだ。 
彼女に怒っていない事を伝える為、笑顔で応える。 
澪「幽霊騒ぎとかを調査するんだよな…怖くないのか?」 
凪「幽霊は小さい頃から見えていたから、怖いって感覚はないかな。」 

復元してよろしいですか?