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168 : ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 21:43:34.86 ID:Qgdk9uOTO
-桜が丘高校。 
その屋上に1人、喇叭を吹く少女が。- 

ぼくの名は細野凪。 
と言っても、それはあくまでも表の世界での名だ。 
元々その名前ではあるが、ぼくにはもうひとつの名がある。 
尤も、その名を知る者は、裏の世界に生きる者、若しくは表と裏の仲介役、という事になる。 
つまり、普通に暮らしていれば、その名を聞く事などまずないし、知る事もないだろう。 
…前置きが長くなった。 
そろそろ名乗るとしよう、ぼくのもうひとつの名を…。

182 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 22:04:56.17 ID:Qgdk9uOTO
2ヶ月前、某所 
巨樹の前に、1人の少女が跪いている。 
「新たな召喚師を目指す者よ。我が葛葉の一族となり働けるか否か……。今よりそれを裁断す。汝の召喚師としての力、見事示してみよ!」 
少女は試練の場へと赴いた。 
…………… 
「汝の腕、見せて貰った。その力を認め、約束通り、新たなる葛葉の分家として生きる事を許そう。葛葉としての名を名乗るがいい。」 
「私は…。」 

数時間前、桜が丘高校 

律「なあ聞いたか?転校生が来るらしいぜ!」 
唯「そうそう!しかもうちのクラスだって!」 
澪「しかし、変な時期に転校してくるもんだな、その子も。」 
紬「どんな人か楽しみだわ~。」 

188 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 22:30:37.25 ID:Qgdk9uOTO
さわ子「はーいみんな静かにー!ホームルーム始めるわよー。」 
唯「きりーつ!れー!着陸!」 
ズコッ 
澪「お約束なボケかますな!」 
律「てか古っ!」 
唯「てへへ、間違えちゃった。」 
さわ子「え、えーと…早速だけど、転校生を紹介するわ。入って来て。」 
ぼくは教室の中に入り、黒板に名前を書いた。 
無論、表の名を。 
凪「細野凪です。宜しく。」 
さわ子「じゃあ凪ちゃんの席は…。」 
唯「せんせー!私の隣があいてまーす!」 
さわ子「じゃあ、あそこに座ってちょうだい。」 
凪「分かりました。」 
廊下側から2列目、後ろから2番目。 
悪くない位置だ。 

206 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 23:12:00.97 ID:Qgdk9uOTO
ホームルームが終わると、クラスメート達がぼくを取り囲んでの質問タイムが始まる。 
恒例行事、というやつだろうか。 
ひと通り質問に答え、ほっと一息つき、授業の準備に取り掛かる。 
…………… 
そして現在、屋上にて。 
喇叭を吹くぼくのもとに、小さな光が近寄って来る。 
???「な~ぎ!ガッコにはもう慣れた?」 
凪「学校には、ね。で?何か用?アカネ。」 
アカネ「ぶー!相変わらず無愛想なんだから!」 
今アカネと呼んだ彼女は、ぼくのパートナーとして師匠から頂いた、ハイピクシーという悪魔だ。 
アカネ「てか、人見知りも相変わらずなのね。」 

224 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 23:48:24.70 ID:Qgdk9uOTO
凪「…用件は?」 
アカネ「オヤゴコロってやつが分かんないのかな~この子には…。」 
凪「貴女を親に持った覚えは無いけど?」 
アカネ「そ~んな事分かって…!誰か来た!じゃね!」 
そう言うとアカネは彼方へと飛び去った。 
その僅か後、屋上の扉が開く。 
律「お、やっぱここにいたか。」 
凪「田井中律さん…だっけ?何か用?」 
律「ラッパの音したから、ここじゃねーかと思ったんだ。」 
凪「…用件は?」 
律「なあ、凪は軽音楽とかきょ 

259 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 02:15:00.87 ID:WD4LdIzuO
おっとミス 

律「なあ、凪は軽音楽とか興味ないか?」 
凪「無い。」 
律「(バッサリだ~!)でも、なんかしら部活には入りたいだろ?」 
部活…か。 

525 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 21:20:48.64 ID:WD4LdIzuO

学生の本分とも言えようそれも、残念ながらぼくには体験する暇もない。 
凪「実は住み込みでバイトをしていてね。学校が終わったら直ぐ帰らなきゃならないんだ。」 
詳しい内容は敢えて話さず、端的に事情を説明した。 
まあ、どの道そう深く追及しては…。 
律「なになに?どんなバイト?住み込みって事は…まさかの新聞奨学生!?」 
しまった。 
まさか、食い付いて来るタイプだとは思ってもみなかった。 
人を見た目で判断するのは、ぼくの悪い癖だ。 
凪「否、そうじゃないよ。実家が遠くてね。この学校の近くで働き口があったんで、事情を説明して、住み込みで働かせて貰うことになったんだ。」

536 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 21:35:53.82 ID:WD4LdIzuO
律「ん~、残念。うちの部に入ってもらおうと思ったんだけどなあ。そういう事ならしゃーねーか。」 
律は踵を返すと、そのまま出入り口まで歩いていった。 
途中で此方を振り返り、一言。 
律「気が向いたら覗きに来てくれよ。音楽室でやってるから。一曲演奏してやるよ。」 
そう言って、再び出入り口に向かう。 
凪「うん。いつかお邪魔するよ。」 
律は軽く手を挙げて応える。 
律が見えなくなった直後、再びアカネが姿を現す。 
アカネ「な~んだ、もう友達いるんじゃない。心配してソンした。」 
凪「あの子は、紬さんと仲が良いみたいなんだ。友達の友達も友達…だろ?」 

546 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 21:44:46.44 ID:WD4LdIzuO
放課後、音楽室 

律「やっぱダメだったわ。住み込みのバイトしてるんだと。」 
澪「へー、あの子仕事熱心なんだな。」 
唯「まさか、新聞奨学生!?」 
律「あたしと同じ事言ってるし。」 
唯「で、新聞奨学生って何?」 
律「知らねーで言ったのかよ。」 
紬「そうそう、言い忘れてたけど、実は凪ちゃん、探偵さんの助手をやってるのよ。」 
唯「おお!カッコイイ!」 
澪「探偵?あの、ペット探しとか浮気調査とかする?」 
紬「そうそうのもやってるみたいだけど、所長さんいわく、本来は『変わったの専門』なんだって。」 
律「変わったのって?」 

578 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 22:10:19.05 ID:WD4LdIzuO
紬「幽霊騒ぎとかのいかがわしい系の調査ね。実は私も、それが縁で凪ちゃんと知り合ったの。」 
梓「たまたまそうそう場所に居合わせた、とかですか?」 
紬「う~ん、ちょっと違うかしら。あまり詳しくは話せないけど。」 
梓「なるほど、守秘義務ってやつですね。」 
紬「そうなるわね。」 

同時刻、大瀧探偵事務所 

凪「ただ今戻りました。」 
???「お~う、お帰り~。学校はどうだったよ?」 
何処からか言葉が返ってくる。 
この声の主こそ、我が探偵事務所の所長にして、自称敏腕探偵の大瀧氏である。

594 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 22:23:29.50 ID:WD4LdIzuO
大瀧「自称は余計だよ~?」 
凪「ナレーションに突っ込まないで下さい。そう言えば、久々に紬さんに会いましたよ。桜が丘に通っているとは知りませんでした。」 
大瀧「ああ、あの琴吹のお嬢さんね。調査不足だよ~。」 
???「ドキドキ、多いがいい、だから、わざと、調べなかった、そうか?」 
この片言で話す人物は、ぼくの先輩であるジョー・マツモト氏である。 
凪「御明察です、ジョー。」 
大瀧「ふ~ん。ま、どっちでも良いけどね~。で?他に友達は出来たの~?」 
凪「紬さんの友達の方々と仲良く成りましたよ。」 
大瀧「ほ~。そんなら、人見知りは克服出来そうだね。」

623 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 02:13:18.62 ID:8TOudOSYO

資料室から所長が出てくる。 
資料室の整理をするなんて、随分と所長らしからぬ行動だ。 
大瀧「普段怠けてるみたいな言い方しないの。」 
凪「だからナレーションに…。」 
大瀧「それはそうと…ハヅキ。」 
ぼくは姿勢を正す。 
そう…ハヅキ。 
ぼくのもうひとつの名-葛葉ハヅキ-その名で所長が呼ぶ時は、依頼調査の報告を求める時だ。 
この時ばかりは、所長に威厳を感じ、背筋をピンと張ってしまう。 
何だかんだ言っても、やはり所長を尊敬しているぼくなのである。 
大瀧「学校の幽霊騒ぎの件…何か分かったことは?」


902 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 21:37:34.51 ID:8TOudOSYO
凪「聞き込みを行った所、幽霊を見たと言っているのは男性教諭が多いようです。出会うのは午後8時頃で、見た目は丁度ぼく等生徒と同い年位の少女だそうです。」 
大瀧「自殺した生徒の霊って可能性は?」 
凪「校長先生には、そういった事は包み隠さずに話して戴きました。無論、その様な事実はない、との事です。」 
大瀧「だとすると、悪魔である可能性もあるって事か。遭遇現場は見てみたのかい?」 
凪「はい。しかし、その時点では怪しい気配は感じられませんでした。やはり、遭遇時刻まで待ってみる必要が有りそうです。」 


913 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 21:57:56.67 ID:8TOudOSYO
大瀧「…そうか。まあ、そうじゃないかとは思ったけどな。…よし、ハヅキ。この件、明日から全面的にお前に任せる!報告は調査完了後に書類にして提出するように。しっかり頼むぞ!」 
凪「有難う御座います。精一杯調査に当たらせて頂きます。」 
ぼくは一礼して、自分の部屋に戻ろうとした。 
すると、所長がぼくを呼び止めて言った。 
大瀧「時間になるまで暇になっちゃうだろ?部活にでも入って、青春を謳歌するといいよ。」 
凪「しかし、依頼が…。」 
ジョー「怠け者扱い、イヤ。だから、他の依頼は、自分がやる。所長、そう言いたい。」 
大瀧「…言うんじゃないの。ま、そういう事だからさ。」 


935 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 22:26:40.62 ID:8TOudOSYO
さっきの一言が効いたのか、単にぼくに気を使ってくれたのか。 
どちらにせよ、部活が出来るのは正直嬉しい。 
ぼくにとっては憧れだからな。 

次の日 
放課後、音楽室前 

ぼくは迷っていた。 
律は昨日は気にしない素振りをしていた様だが、「興味が無い」と言い切ってしまったし、入部を渋られたりしないだろうか? 
梓「軽音部にご用ですか?」 
凪「あ、ああ。ええと…。」 
梓「はじめまして、中野梓です。私も軽音部員なんですよ。細野先輩…ですよね。よろしくです。」 
凪「ああ。よろしく。」 
律「お~、やっと来たか凪~。」 
音楽室から律の声が響く。 


966 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 23:11:46.01 ID:8TOudOSYO
梓さんに促され、音楽室に入る。 
律「待ちくたびれて練習やめるとこだったぜ!」 
澪「そもそもやってなかっただろ?」 
唯「ティータイムがうちの売りだもんね~。」 
律「そんな事より!ムギから聞いたぜ~!凪って探偵なんだってな!」 
凪「助手だけどね。」 
ふと紬さんを見ると、申し訳無さそうに手を合わせていた。 
まあ、隠す様な事でもないし、どの道いつかは話そうと思っていたから、むしろ手間が省けたというものだ。 
彼女に怒っていない事を伝える為、笑顔で応える。 
澪「幽霊騒ぎとかを調査するんだよな…怖くないのか?」 
凪「幽霊は小さい頃から見えていたから、怖いって感覚はないかな。」 


113 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 01:29:13.46 ID:SKTnXKvqO
唯「ムギちゃんとはどこで知り合ったの?」 
凪「それは…。」 
梓「唯先輩。それは凪先輩でも話せませんよ。守秘義務があるんですから。」 
唯「ぶ~!あずにゃんのケチー!」 
梓「なんでそうなるんですか!?」 
唯「だって知りたいんだもん!」 
ぼくは紬さんに目配せをして、話しても問題無いか確認を取る。 
紬さんはその意味を理解したのだろう、笑顔で応えた。 
凪「実はね。ひと月前、紬さんの家からの依頼があったんだ。紬さんが夜な夜な奇怪な行動を取るようになった為、原因を調べて欲しい、とね。」 


201 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 02:55:09.18 ID:SKTnXKvqO
澪「えっ?そうなの?全然気づかなかった。」 
紬「私自身もその行動の事覚えてないの。でも、夜中に何してたのかを斉藤に尋ねられて、自分の奇行に気づいたのよ。」 
律「それで怖くなって、凪んとこの探偵事務所に依頼したんだな。」 
紬「そうなのよ。」 
490 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 19:14:30.49 ID:SKTnXKvqO
唯「それで、原因って結局何だったの?」 
凪「それについては…。」 
友達の一大事だったのだ、やはり知っておきたいというのは有るんだろう。 
紬さんに目配せで同意を求め、頷くのを確認して言葉を続ける。 
凪「そうだな、明日報告書の写しを持ってくるよ。口で説明するよりは分かり易いだろうからね。」 
唯「ほ、報告書…。」 
梓「助手とは言っても、きっちり仕事をこなしてるんですね。」 
凪「まあね。そう言えば、律。」 
律「ん?」 
凪「来たら一曲演奏してくれるんだったよな?」 
律「お~そうだった。すっかり忘れてたぜ。」 
澪「オイ!」 


503 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 19:41:07.78 ID:SKTnXKvqO
…………… 
驚いた。 
ついさっきまで怠けていたとは思えない、素晴らしい演奏だ。 
思わず立ち上がり、惜しみない拍手を送る。 
律「どーだ!怠けてたのがウソみてーだろ!」 
凪「君は超能力者か。」 
律「見りゃわかるよ。だってもうあたし達、友達だからな。」 
澪「怠けてるって自覚はあったのかよ。」 
紬「澪ちゃん、ツッコんだら負けよ。」 
唯「そう言えば、ずっと気になってたんだけど、それって何のケースなの?」 
唯はぼくが持つケースに興味津々な様子だ。 
凪「これはトランペットのケースだよ。ほら。」 
ぼくはトランペットを取り出すと、顔の前に構えた。 


510 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 19:56:24.26 ID:SKTnXKvqO
唯「ぐはあ!」 
!? 
何故か銃で撃たれた様な素振りをして倒れ込む唯。 
律「ゆ、唯!」 
血相を変えて唯に駆け寄る律。 
唯「りっちゃん…私…もう…ダメかも…。」 
律「バカ!弱気になるんじゃねー!今救急車を呼ぶから!」 
え…ええっと。 
唯「もう…いいから…最期に…クッキー…食べたいな…。」 
律「最期なんて言うなよ!そんな悲しい事言うなよ!」 
これは…一体…。 
律「お、おい!唯!しっかりしろ!唯ー!」 
何事…? 
梓「気にしないで下さい。いつもの事ですから。」 
澪「こらこら、その辺にしとけよ。凪が困ってるだろ?」 


519 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 20:28:30.36 ID:SKTnXKvqO
…何故演劇部に入らなかったのか、という疑問は、そっと胸にしまっておくとしよう。 
紬「ところで、どうしてここに来たの?」 
凪「ああ、実は、所長からしばらくは遅くなっても構わないと言われてね。せっかくだから、部活に入ってみようと思ったんだ。その…軽音部に。」 
律「あれ~?興味無いんじゃなかったっけ~?」ニヤニヤ 
凪「意地悪だな…あんな演奏見せられたら、興味が湧かない訳無いだろう?」 
どうやら、大して根に持っていないようで安心した。 
律「んじゃあ、今後ともよろしくな、凪。」 
紬「そう言えば、凪ちゃんのパートはどうしようかしら。」 
唯律澪梓「あ。」 


525 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 21:11:29.85 ID:SKTnXKvqO
律「盲点だったぜ。必要なパートはだいたい揃ってるからな…。」 
唯「あ、そうだ!マネージャーとして、とかどうかな?」 
梓「運動部じゃないんですから…。」 
律「ここは凪にベースやってもらって、澪にはメインボーカル…。」 
澪「絶対ヤダ!!」 
律「ですよね~…。」 
やはりか。 
まあ、大方予想はしていたが。 
ふむ。だとしたら…。 
凪「ぼくはサブメンバーでもいいよ。一応、使う楽器をひと通り練習しておくから。」 
律「わりいな、こっちから誘っといて。」 
紬「じゃあ私、トランペットが入れられそうな曲を考えてみるわ~。」 
凪「有難う、紬さん。」 


547 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 23:13:07.01 ID:B8YSvq8oO
皆も練習するだろうし、楽器を借りて練習する訳にもいかない。 
という訳で、今日は取り敢えず見学だ。 
…と思ったが、結局は皆とのティータイムに費やしてしまった。 

午後5時半過ぎ 

律「ん~、そろそろ帰るか!」 
澪「いつの間にか暗くなってきてるな。」 
唯「今日の晩ご飯何かな~?」ワクワク 
各々帰り支度を始めるメンバー達。 
律「凪、どうした?帰んないのか?」 
凪「ちょっと野暮用があってね。また明日ね。」 
律「? おう、じゃーな。」 

午後7時半、宿直室 

教師「ごめんな、わざわざ残ってもらって。」 
凪「気にしないで下さい。仕事ですから。」 


553 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 23:30:03.58 ID:B8YSvq8oO
教師「例の幽霊が出る場所は分かるよな?」 
凪「はい。放課後そこに行きましたが、昨日の授業の時と同様、やはりそれらしい気配は有りませんでした。」 
教師「他の先生が言ってたんだが、あそこにしか出ないみたいでさ。…ヤバそうだったら、すぐ引き返して来いよ。」 
凪「大丈夫です。鍛えてますから。」 
そう言ってぼくは、宿直室を出る。 
ふと、小さな光が近寄って来る。 
アカネ「調査は順調?」 
凪「まあね。これから出没ポイントに向かう所だよ。」 
アカネ「悪魔の仕業って可能性もあるんだから、準備は怠らないようにね。健闘を祈るわ、ハヅキ。」 
そう言ってアカネは去っていった。 
そしてぼくは、幽霊の出没ポイント、音楽室に辿り着く。 


566 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 23:53:43.84 ID:B8YSvq8oO
意を決し、扉に手を掛ける。 
ポンッ 
凪「ひっ!」ビクッ 
突然肩を叩かれ、思わず声を上げて驚いてしまった。 
律「わ、わりい。驚かしちまったか。」 
凪「律!どうして…。」 
律「いやあ、探偵の仕事ってやつがどーしても気になってさ。迷惑はかけねーから、しばらく付き合わさせてくれよ。」 
凪「全く…仕様が無いな。今回だけだぞ?」 
気を取り直して、音楽室の扉を開く。 

午後8時 

さて、いよいよ幽霊が出る時間だ。 
ぼくは周囲に警戒し、何時現れてもいいよう、刀に手を掛ける。 
ポーン 
突如、キーボードが鳴る。 


591 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 01:10:06.53 ID:dfLKJWMWO
キーボードの方を見ると、桜高の制服に身を包んだ少女が佇んでいる。 
少女「今日は女の人か~。残念。」 
凪「何が残念なんだい?」 
少女「精気を吸えないのが。」 
律「精気…?」 
少女が宙に浮く。 
見ると、その髪が鳥の翼となって羽ばたいていた。 
凪「モー・ショボーか。」 
ぼくは刀を抜く。 
赤光葛葉。 
葛葉の者ならば必ず携行している、基本装備の1つ。 
凪「たあっ!」 
ぼくはモー・ショボーに斬りかかる。 
彼女はヒラリとそれを避けて、小さな風の渦を生み、それをぼくではなく、律に向けて撃ち出してきた。 
律「うわあ!」 
ぼくはすかさず懐から管を取り出し、それに封印された『仲魔』を喚び出す。 
凪「ポルターガイスト!」 


599 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 01:34:08.09 ID:dfLKJWMWO
緑色の光の筋が律の前に落ち、其処に愛くるしい姿の悪魔、ポルターガイストが現れる。 
ポルターガイストはモー・ショボーが放った風の渦を受け止めて掻き消した。 
律「悪魔を…喚んだ…!」 
ぼくは更にもう1体の悪魔を喚び出す。 
凪「ウコバク!」 
ぼくのすぐ傍に、スプーンの上に炎を湛えた小人、ウコバクが現れる。 
凪「さあ、行くよ!」 
ぼくが刀を構えると、ウコバクはその刃に炎の力を宿す。 
そして、ぼくは再びモー・ショボーに斬りかかる。 
今度はポルターガイスト、ウコバクとの連携攻撃でモー・ショボーを追い詰めていく。 


879 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 18:16:55.55 ID:dfLKJWMWO
今日はいつもより早く投下再開 
深い理由はない 



ぼくはトドメの一撃を加えんと刀を振りかぶる。 
律「ちょーっと待ったー!」 
突然、ぼくとモー・ショボーの間に律が割って入る。 
凪「律…!どいて!」 
律「もうそのくらいにしといてやれよ!この子だって悪気があってやってたんじゃねーんだろーしさ!」 
律はモー・ショボーの方に向き直る。 
律「君もさ、こんだけやられたらもう懲りたよな?これからはもう誰も襲わねーって約束できるな?」 
モー・ショボー「うん…ごめんなさい。」 
律「よしよし。」ナデナデ 
………。 
ぼくは仲魔達を管に戻し、刀を納めた。 
直ぐに斬りかかった自分が少し恥ずかしくなった。 
全く…律には適わないな。話し合いでも解決出来ただろうに、ぼくって奴は…。 


896 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 18:45:17.45 ID:dfLKJWMWO
律「悪いな。仕事とっちゃってさ。」 
凪「否、要は解決すればいいんだ。…律には礼を言わなくちゃな。」 
律「いいよ、お礼言われるような事してないし。」 
凪「ぼくは頭に血が上ってたみたいだ。律のお陰で冷静になれたよ。有難う。」 
律「だからいいって~!照れるだろ~!」 
そんなこんなで、桜高の幽霊騒ぎは終わりを告げた。 

2日後、大瀧探偵事務所 

凪「桜高の件の報告書です。」 
大瀧「おう、ご苦労さん。」 
朝起きて直ぐ、昨日作った報告書を所長に手渡す。 
凪「では、行ってきます。」 
大瀧「行ってらっしゃ~い。」 
ジョー「気を、つけて。」 
身支度を整え、ぼくは学校へと向かう。 


911 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 19:08:14.84 ID:dfLKJWMWO
昼休み 

律「なあ凪、ちょっと音楽室行かないか?」 
凪「良いけど…?」 
紬(2人きりで何するつもりなのかしら?)ワクワク 

音楽室 

律「うし、誰も来てないな。」 
凪「ぼくだけ連れて来たのには、何か理由があるんだよね?」 
律「ああ…実はさ…。出ておいで!」 
律がそう言うと、小さな風の渦とともに、モー・ショボーが現れた。 
モー・ショボー「わ~い!りつおねーちゃんだー!…あ!こないだのこわいおねーちゃん…。」 
凪「モー・ショボー!どうして…?」 
律「この子、どうもここから出られないみたいなんだ。凪に相談すれば、いい解決策が見つかると思ってさ。」 


927 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 19:33:06.20 ID:dfLKJWMWO
ぼくはモー・ショボーをよく見た。 
怯えて律の後ろに隠れるモー・ショボー。 
凪「御免よ、もうあんな事はしないから。…その子、随分律に懐いてるね。」 
律「あの一件以来、どうも気に入られちゃったみたいでさ。」 
凪「…そうだな。律、彼女と契約してみたらどうだろう?」 
律「契約?でもやり方知らねーぞ?」 
凪「方法はぼくが教えるよ。尤も、その必要はないかも知れないけど。」 
律「あとは封印するだけ、とか?」 
凪「ご明察。…律ってさ、ひょっとしてぼく以外のデビルサマナーに会った事ある?」 
律「ん?なんだそれ?」 

復元してよろしいですか?