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じゅけん! 目次 - (2009/09/12 (土) 05:45:30) の編集履歴(バックアップ)


819 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/08/29(土) 01:43:47.68 ID:6Y4y7c0O0
じゅけん!
この物語は目次をオリジナルキャラとしてけいおん!の世界に組み込み『 受 験 に は 全 く 役 に 立 た な い 』SSです。
高校時代の実生活を元にしたフィクションであり、実在する団体、組織、個人とは一切関係ありません。
また、このSSを読んで実践した結果、例え『落選』しようが、『滑ろう』が、『内定取り消し』されようが一切の責任は負いません。
では、お楽しみください。

 -じゅけん!- 4月
 春。儂は惰性半分に高校3年になっていた。けいおん部に入り浸るものの、何もせず基本的には『バックアップ』として高校3年までやるつもりだ。そしてある日、パソコン部からゲーム製作の手伝いをして欲しいと申し出があり、
けいおん部に加え、パソコン部の手伝いもするようになっていた。
 そんなある日。
「目次君って、大学何処にするの?」
 話をかけてきたのは平沢唯。けいおん部のリードギター兼ボーカルで独特の感性を持った女の子だった。
「いや、決めてない。儂自身も大学なんてそもそも行く気自体が今もないしな」
「ふーん。でも大学行かないと就職とかって厳しいって聞くよ?」
「就職ねぇ……大学行くのはネームバリューとしてそのブランド欲しさに行くんだろ? だったら儂は資格とか免許とかそういうものを取って『何でも屋』にでもなった方がマシだな」
「そっか……」
 後輩たちにも自分は大学に行くつもりは更々ないと言い、それを担任や顧問にも明言してきた。勿論まだ春の時点では『何処の大学に行こうか』なんてものも考えておらず、進路調査票にも『未定』としか書かなかった。
が、そんなものも長続きはせず、ある日のこと担任から呼び出された。
「目次。お前いい加減に進路を考えたらどうだ?」
「だから言ってるじゃないですか『大学に行くつもりはない』と。儂は資格や免許を取るのに1年費やして、それで就職します」
「それなんだよ。今の時代、大学卒業しないと厳しいって言ってるんだよ」
「大学卒業しても就職難の今に? 大学卒業よりも資格重視の現代社会だと言うのにですか?」
 学校の本音がどういうものかは知っている。元より県内でも有名な公立進学校である以上、『難関大学に受からず、浪人』でもない限り無理にでも進学させたいのだ。それが見えていたからこそ儂は頑なにソレを拒んだ。
「話がそれだけなら、進路は未定じゃなくて『国公立大学希望』とでも書いておいてください。東大か埼大あたりでも」
 儂は言い終えるとそのまま踵を返し職員室を後にする。
「せめて、本音を言えば納得をするというに」
 職員室からけいおん部の部室に戻ると皆が練習していた。
「目次君どうだった?」
826 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/08/29(土) 02:06:19.96 ID:6Y4y7c0O0
 心配そうに声をかけてくる唯。そんな心配を払拭できるように薄ら笑いを浮かべる。
「どうだったも何も。何時も通りの事だよ。何を言おうと儂は考えを変えるつもりはないっての」
「とはいえ目次、本気で1年フリーターでやるつもりなの?」
 今、声をかけてきたのは田井中律。元気に溢れた性格でこのけいおん部の部長だ。
「そうだよ。幾ら目次が良いって言ってもそこまで頑なに拒む必要もないだろ?」
「そうよ?」
 律の質問に重ねて来たのが秋山澪そして、琴吹紬だ。彼女たちも同じくけいおん部でベース、キーボードを担当している。
「正直な話、追加で4年間も勉強することに何の意味があるんだって話。高校まで朝から夕まで勉強漬けにされた挙句に更に4年間も。しかも穴だらけのカリキュラムだぞ? なんの意味があるよ?」
「わ、私思うんですけど。その空いた時間に好きなことすれば……良いと思うんです。そうすれば大学で仲間も新しく出来たり、それに先輩にも彼女だって……」
「彼女? 要らん」
 けいおん部の後輩で2ndギターの中野梓の意見を正面から否定する。
「なんでですか? 私が初めて目次先輩と会って告白したときだって断って……」
「「「「えぇ!?」」」」
 部室内が戦慄する。
「え? 梓、目次に告白したの? え、一目惚れ?」
「どういうことなの目次君! あずにゃんみたいな可愛い子フるなんて! しかもこんなに今も気楽に話してるなんて頭おかしいんじゃない?」
 梓が過去の事を言ってしまったがばかりに質問攻めを喰う羽目になってしまった。
「いや、儂の話も少しは聞いてく……」
「話を聞くも何もフっておきながら気安く話かけてるお前の頭が不思議でしかたないんだよ!?」
「だからだな……」
「先輩達! 落ち着いてください」
 梓の一言で静まり返る。
「だからな、今の儂には彼女なんて身分不相応なんだよ。だから梓には悪いがフらせて貰ったってだけの話だよ」
「……身分不相応ねぇ……」
832 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/08/29(土) 02:20:59.18 ID:6Y4y7c0O0
「そ、身分不相応。大体、儂がどういう生活してるか知ってるだろう?」
「どういう生活って……」
「オタク」
 答えたのは律。
「万年徹夜」
 答えたのは澪。
「努力をしないことを努力する生活」
 答えたのは紬。
「能はあって爪を隠しても爪を磨かない」
 答えたのは梓。
「何より、色々と勿体ない生活」
 答えたのは唯。
 容赦のない回答に全くその通りとしか言い様ががない。
「……まぁ間違っちゃいないし、否定するつもりも更々ないんで構わないが、もう少しポジティブな捉え方は出来ないのかお前らは」
「だって、目次君普段から何もしないじゃん。音楽聞いたり、漫画読んだり、ゲームしたりで。もう少しクラスの為に動くとかすれば良いのに」
「そんなことしたら儂が全部取り仕切らなきゃいかんだろ。面倒事は全部お偉いさんに任せて、儂は自由に生活するんだよ」
 そんなことをいう儂だったが、高校1年の時にクラスの連中が前もって話を合わせていた様に男子から一同から推薦されてHR委員長にされたことがある。その時は半分仕方ないと思った反面で推薦したことを後悔させようとした。
まず基本的に委員長であるという事で君主政治のように基本的な方針や決め事は儂が決め、それに対して反論は基本させなかったり、またクラスの出し物についても女子と男子全員にメイドの格好をさせメイド喫茶を強行しようとしたが、
流石に担任が止めた為、学校初となるメイド喫茶は泡沫となった。
「流石にこればかりはどうしようもないって事かな」
「そゆこと」
 ソファに倒れ込み、リュックサックの中から持ってきた解説本を読む。
「さて、練習始めようか。目次、聞いて貰える……って、何その緑色の本は……」
「 毒 草 大 百 科 」
「……突っ込まないでおく。まぁ何時も通りお願いね」
「あいよ」
 ソファに寝転がりながらページを捲る儂を横に彼女達の演奏が始まる。

…………
928 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/08/29(土) 09:22:01.01 ID:6Y4y7c0O0
 ジャーン……
 彼女達の演奏が終わり、唯が感想を求める。
「どうだった?」
「『どうだった?』と聞かれば『良かった』と返せるかな」
「そっか。なら悪かった?」
「悪くはない。が、強いて言うなら律が相変わらず。で、澪と梓も音がほんの少しズレてる。唯は自由すぎる」
「え? 音ズレてた?」
「あぁ、本当にほんの少しな。チューナーでもっかい計ってみ」
 儂からの助言に彼女達はチューナーを取り付けて調音する。
「あ、3弦の音が若干高い……」
「こっちも6弦の音が若干低いです」
「な? 言った通りだろ?」
 そんな感じで1年の新入りが入ることはなく5月を迎えるのだった。

5月へ続く。

269 :目次@携帯 ◆index/9a7s :2009/08/30(日) 04:58:27.96 ID:u48bDgRnO
5月
 中間試験を中旬に構え、新入生の真新しい制服の糊も幾らか取れて、体に馴染み始める頃。とうとうというべきだろうか。親が呼び出された。
「……ねぇ、目次。貴方、何で進路書かないの?」
担任を待つ生徒指導室の中で母親が話し掛けて来る。
「書かないも何も書けないんだよ」
「その歳にもなってまだなりたい職業もないの?」
「言ったって反対しかしないんだから、言うだけ無駄でしょ? だから書きたくても書けない」
 そんな問答をしていると担任がやってくる。
「本日はお忙しい中、学校にお越しいただき有難うございます。今回は目次君の進路相談についてというこで、よろしくお願いします」
518 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/08/30(日) 23:57:21.84 ID:SK74RcuR0
 在り来たりな社交辞令。どうせ心にも思ってないことを言ってるのだろう。寧ろ本音は『コイツがまともに書かないからこんなこと言わなきゃならないんだ』とでもだろうか。
「もう3年生になって1ヶ月以上経つのに『未定』のままなので、考えてないことはないと思うのですが、流石にこの場で少し考えてもらって方向性を決めてもらおうかと思いまして」
「それならば親を呼ぶ理由にはならないでしょう? 他にも理由があるんじゃないんですか?」
「……目次君。少し外で考えててくれる?」
 担任に外に出すように促され、部屋の外に出る。と、そこには紬が来ていた
「練習は如何したよ? 紬」
「うーん、練習も練習でなんだけど流石に部員の一大事とあると困るから、少し様子見にね?」
「そうけ。まぁ今まで『未定』で出してただけの話なんだけどな。それを今更になってここまでやるとは思わなかったよ」
「まぁ、それだけこの学校で浮いてるからじゃないのかしら?」
「そりゃないよ。これだけの人数いるのにその中のたった一人にこんなにやるなんて正気の沙汰とは思えない行動」
「そう? ……ま、頑張って。部室で皆待ってるからね」
「出来るだけ早く終わらせるよ」
 そして紬に別れを告げてから5分後。
「目次、入れ」
 母親の眼前とでは全く違った態度の担任が儂を呼んだ。
「はいはい。先生様」
 部屋に戻ると、こちらを睨む母親と机の上には紙が置いてあった。無論、進路調査票だ。それを見た儂は咄嗟に言った。
「進路なんですが、国立行きます」
 そんなことを言ったものだから二人は驚いた。
521 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/08/31(月) 00:33:20.10 ID:LuFvtack0
「国立って、今から勉強してどうにかなるレベルじゃないこと位分かってるだろう?」
 言われるまでもない。こんな時期から勉強したって合格出来るようならば予備校も塾も何も要らない。
「えぇ、普通に国立を目指せば今から勉強したって無理ですし、当然推薦取れるような成績でも僕はありませんしね」
「なら分かっててそんな世迷い事を?」
「ならもしも五教科七科目から三教科三科目まで国立のセンターが減らせるとしたら?」
「そんな事出来るわけないだろう」
「いや、有るんですよ実は。国立で一校だけですけどね。しかもこの埼玉県に」
 ニヤリと笑いながら担任を見据える。
「埼玉大学? いやいや、そんな情報知らないぞ?」
「ちゃんと調べてみると良いですよ」
「センターだけで入る方法としてソレがありますから」
「それで、合格の見込みは?」
「努力次第でしょうね」
 進路希望調査票に『国立埼玉大学』に書き込み、母親と共に部屋を後にする。
「母さん、何を言われた?」
「貴方の学校生活」
「そうけ。まぁ問題はないから大丈夫さね」
 教室で分かれ、部室へと向かう。
「あー終わった」
 ドアを開けるとそこには何もしない彼女達がいた。
51 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/07(月) 01:36:09.35 ID:iNlcN09z0
「あれ? 練習してるんじゃなかったのか?」
 てっきり練習をして休憩でもしているのかと思ってみれば、楽器のセットもせず、ただ椅子に座るだけの彼女達。
「練習するも何も仮にも部員が教師に親諸共呼び出されてるのよ? 心配で練習が手に付く筈もないでしょ?」
 口を尖らせて言う澪。
「心配することでもないだろう? 高が教師に呼び出された程度の事じゃないか?」
「何処がだ。全く心配する身にもなってよ」
 溜息を吐き、席を立つ澪。
「さぁ、練習練習。問題なく戻ってきたみたいだし、私たちの最後のライブも近い。此処で頑張らないと去年の二の舞よ!」
 鶴の一声とまではいかないが、けいおん部の面々は自分たちの楽器をセットし始める。勿論、儂自身は何時も通り本を読んだりするだけなのだが。

 そして、進路を決めた5月から早くも4か月が過ぎたる頃。

9月
 夢。朦朧とした意識の中、携帯の着信音が聞こえる。起きなければ……
「……今何時だか知ってる?」
 部長の律だ。
「さぁ~何時でしょう?」
「時計はある?」
「……おはようクーヤ。今何時だい?」
 …………あぁ、可愛いなクーヤは。
「で、目次君。何時だった?」
「……さぁ?」
 既に10時が過ぎていた。因みに開祭式は8時30分から。
「『さぁ?』じゃないでしょ!? 文化祭だってのに遅刻!? しかも今まで寝てたなんて聞いたことない!」
「そりゃ儂ですから」
「これ以上神経逆撫でするような事を言って私に学校で殴られる前にさっさと準備して学校に来なさい」
「嫌です」
「殴るよ? グーで。しかも角手かメリケン用意しておくよ?」
53 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/07(月) 02:20:34.28 ID:iNlcN09z0
 流石に冗談が過ぎた。電話越しからでも怒りが伝わってくる程に声は低くなっていた。
「分かった分かった。今から行くからあと2時間ほど掛かる」
「確か自転車で45分だったよね最速記録」
 何という地獄耳だろうか、そんな下らないことまで覚えているとは。
「そんなこと言ったっけか?」
「イッタヨ? ブシツデ」
「そうけ。まぁそれがどうしたって?」
「今からソレの新記録挑戦して貰える?」
 嫌だと言えば確実に殺られる。
「OKOK。最高速でどれくらい出せるか分からないが頑張ろうじゃないか」
「分かったら速攻で来なさい」
 電話を終えると、衣紋掛けにかけた制服を持ち、風呂場へと向かう。
「あー寝癖酷いな……使いたくはないがヘアアイロン使うか……」
 所謂爆発パーマで、かなり凄惨な状態になっていた。取り敢えず霧吹きで髪の毛を濡らして櫛を入れる。
「あーもー引っかかるなぁ……」
 櫛入れが終わったところで、ヘアアイロンで髪の毛をストレートにしていく。そして後ろで髪を束ねる。
「さて、行きますか……」
96 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/07(月) 09:17:44.37 ID:iNlcN09z0
 制服を鞄に詰め込み、ヘルメットを付ける。つまり服装は『私服』だったりする。時間的に誰も居ない家に鍵を掛け、弟が乗っている原付のエンジンを付ける。免許? そんなものは無い。無い状態で警察に厄介になると免許が暫く取れなくなったりするがー。まぁ大丈夫だろう。
「行くのは良いとして、何処に停めようか……」
 まぁ公園の裏手にでも停めておけば何も問題はない。はず。多分。きっと。大丈夫だろう。うん……大丈夫だよな?
「Zoom-Zoom-Zoom 走る喜びぃ~♪」
 普段自転車で通う道を原付で通るのは何処か新鮮だった。普段は感じない風、普段はしないエンジン音、普段は嗅ぐことのない排ガスの臭い、それらが普段の単調な道に彩りを添えて呉れる。
そして秋らしい風景もまた一層と美しい垂れる稲穂はとても明るく輝いていて、街路樹は恋い焦がれたかの様に色を染めつつあった。学校に居る間に無免許で運転するのはこれが最初で最後。
そしてまた来年、大学に合格して余裕があれば部活に顔を出そう。その時はまた駄目な先輩として笑って今日の話をしよう。皆が楽しく過ごせると信じる今日の話を。

 ……

 学校近くにある公園に原付を停め、公衆トイレの個室で制服に着替える。運の良いことにこの公園は衛生的で臭わず、特に苦労はしなかった。ジーンズからスラックスに履き替え、上のポロシャツはワイシャツに。
『君とGo Tight! 正体不明の Show Time♪』
 着替えが丁度済んだ頃に目覚めから2度目の着信音が鳴る。今度は梓だった。
「もしもし? どうした?」
「あ、先輩。今何処ですか?」
「ト・イ・レ」
「……あ、すみません! また後でかけ直します!」
「あー大丈夫大丈夫。着替えてただけだから。もう終わったし」
「そうですか。それはそうと先輩、早く来てください」
「何かトラブル?」
「何でもアンプにトラブルがあったそうで、分からないって……」
「んー、了解。も少しで付くから待ってなー」
 私服を鞄に仕舞い込み、軽く伸びをする。
「……ふう。それでは赴こうか。我が戦場へ」


99 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/07(月) 11:23:06.15 ID:iNlcN09z0
 学校に到着してみれば既に12時近く。けいおん部のライブは確か14時だったはずだ。取り敢えずはトラブルを解消するために部室へと向かう。
「どうもー。ニコニコ借金払い、粗雑なAfter Service、手抜き工事の目次工業でーす」
 軽いジョークを混ぜながらドアを開けると、そこにはムスっとした律と澪、苦笑いを浮かべる紬と梓。唯は見当たらない。
「遅い」
「遅いのもSpecial Serviceとなっておりまーす」
「グーで殴るよ?」
「OKOK落ち着こうか。それに女の子が角手なんてモノを装備しちゃいけないな。マジで危ないから。いや、ホントソレ痛いから」
「直せ。もう時間ないから火急的且つ速やかに修理しろ」
「……人にモノ頼む態度じゃないが、仕方ない。で、何が悪いんだ?」
 状況把握の為に問題点を聞く。トラブルを解消する第一歩だ。
「音が出ないんだ。確かにこっちに持ってくるまでは平気だったハズなんだけどさ」
「音が出ないのな。ボリュームは確かめたか?」
「確かめた」
「接続は?」
「問題ない」
「コード断線してなかったか?」
「予備のコード使ったけど変化なし」
「唯のギターとかで音が出るか試したか?」
「それでも駄目」
 問答法から得た情報を整理して問題点を割り出していく。澪のベースやコードに問題はなく、アンプそのものに問題がある。となれば内部の接触不良か。
「10分ほど掛かるが問題ないな?」
「ライブに間に合って、最後のリハーサル出来れば問題ないな」
「了解」
 鞄に仕舞ってあるツールボックスからプラスドライバー、半田鏝と半田を出す。恐らく何かの拍子で中の銅線が外れただけのはずだ。応急処置としては問題ない筈だ。


101 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/07(月) 11:37:01.51 ID:iNlcN09z0
 アンプのカバーしているビスを取り外し、中身を取り出す。原因は予想通り銅線が一本外れていた。
「あー、ほらコレ。外れてるだろう?」
 指で差して問題の部分を見せる。
「コレが外れてたのか……でもなんで?」
「付け方が甘かったか、長く使ってたかのどっちかじゃないかね?」
「ふーん」
 修理が終わり、文化祭メインイベントとも言うべき我らがけいおん部のライブが数分後に迫った講堂の舞台袖。
「さて、儂から言う必要もないだろう? さわちゃんが付いてたんだ、問題もないさ」
 最後のライブということもあって、緊張の色が中々取れない4人。とそれを感じ取ってオドオドとする小さな1人。流石に仕方ないと言えば仕方ない。
「泣いても笑っても最後のライブだ。思いっきり楽しんでこいよ。今までそのためにやってきたんだろ?」
「そうよ。目次君の言うように皆頑張ってね! もしも去年みたいなことになったら後日コスプレ大会するからね!」
「さわちゃん。そりゃ逆にプレッシャーになるだけ」
「あらら」
 そんな小さなやり取りに『プッ』と吹き上げる唯。
「あははは! そうだよね、私たちこれで最後なんだもんね。女子高生として胸張って最後頑張ろう!」
「……だな」
「そうだよな」
「そうね」
「です!」
 唯の一言でさっきまでの雰囲気は何処へやら。今はやる気に満ち満ちていた。
『次はけいおん部、放課後ティータイムによるバンド演奏です』
「さぁ行ってこい! お前らの思い出を歌ってこい!」
「「「「「行ってきます!!!!!」」」」」

……
…………
………………

文化祭が終わり、体育祭も何事もなく過ぎ、かといって儂は勉強することなく2学期の学期末を迎えていた。


102 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/07(月) 11:45:38.16 ID:iNlcN09z0
12月
「えー、君たちの中にはこの冬休みが終わるとセンター試験が待っている人も居るでしょう。その人達はセンター試験に向けて是非とも頑張って下さい。また推薦等で内定した人達も勉強を怠らないように」
 テンプレートにあるような言葉を受験生に渡し、解散となった教室。放課後行く宛もない自分はまたけいおん部へと足を向ける。
 部室では既に挨拶をほぼ済ませていたようで、センターを受ける面々は参考書を片手にしていた。
「じゃ、また来年。良いお年を」
「ん、じゃあな」
 受験勉強に忙しく、もう他人の事を構っている余裕が出てこないのだろうか。それとも……
 それとも……

 もう部活に興味はないのだろうか……?

そして勉強することなく儂は新年を一人酒で迎えるのだった。
554 :目次@携帯 ◆index/9a7s :2009/09/11(金) 21:01:08.37 ID:rDsSY67cO
 年が明けてから三が日が過ぎた。嗚呼、数日も経てばセンター試験が待っている。儂は何をしただろうか?
否、何もしてはいない。何も努力していないことをしていたのだ。勉強、運動、部活、趣味、特技、生活、何もかもが中途半端……これでは単なる厨二病だ。
 さて、そんな自分の事はどうでもいいとしよう。しかし気になるのはけいおん部の面々だ。雰囲気が鋭く、露骨になったのは去年別れてからだった。
澪は兎も角として、唯や律からさえもその雰囲気が滲み出ていた。
「……ふぅ」
 机に投げ置かれていたスケッチブックを開く。
 はらり……はらり……
 紙が擦れる音と共に彼女達の姿が歪んだ構図で描かれていた。笑顔、泣き顔、寝顔……茶をする一コマ、演奏する一コマ。
それらが様々な画材や写真によってスケッチブックに切り取られていた。
「…………梓に電話しておくか……」


556 :目次@携帯 ◆index/9a7s :2009/09/11(金) 21:25:08.98 ID:rDsSY67cO
 さて、携帯電話は何処にうあっただろうか? 確か枕の脇にあったはずなのだが……あれ……?
 落ち着け。KOOLになれ。まずすべき事は携帯電話に電話しよう。えー……
「良い頃はよおはようさんっと」
『こちらはMUUダケドです。おかけになった電話は電波が届かねぇとこにあるか、携帯の充電すっかり忘れて電池切れになってる馬鹿だから後でかけ直せ』
「馬鹿でさーせん」
 さて困ったことになった。携帯が見つからない以上は部屋を掃除しよう。勉強なんてする気は皆無なのだから、せめて掃除でもして、携帯を見つけて電話をしよう。
 そして2時間程経った頃。携帯はベッドと壁の間から救出されたのだった。
「中野……中野……っと」
 この電話があのようなことの引き金になるとはこの時は知る由も無かった。