841 :目次@携帯 ◆index/9a7s :2009/07/21(火) 01:24:58.34 ID:XTNYvcTcO けいおん!旅行記-序章- 「夏休みどこ行く?」 律の唐突な一言から事は始まる。 「え?りっちゃん。合宿に行って、プール行って、それで……」 「いや、まぁそうだけどさ。その合宿先をどうするって話だよ」 「それもムギちゃんの別そ……」 唯のボケに律のボルテージは低い沸点を越えるのは造作もなかった。 「だーかーらー! その別荘をどうするって話だよ!」 「去年と同じで良いんじゃない?」 流石に埒が明かないと思った律は貸し主に話題を振る。 「ムギー。今年の別荘って去年と同じ?」 「うーん……去年は一番小さい別荘だったから、もう少し大きい別荘の方が良いんじゃないかしら?」 「去年より大きいってことは例の?」 「まだ分からないわね」 847 :目次@携帯 ◆index/9a7s :2009/07/21(火) 01:44:06.94 ID:XTNYvcTcO 「そかー」 「じゃ、皆。今日ラストの練習するぞ」 澪の一言に何とも嫌そうに顔を歪める唯と律。 「テスト勉強教えてやらないぞ!?」 「あーい……」 ………… そして練習も終わり、ソファに寝転ぶ律。 「あー疲れた……」 汗が光り、リボンを緩めて開いた胸元が艶かしい……が若干残念なのが二つの山。 「疲れたのは分かるけどな、あれ程ドラムが走り過ぎだってのに」 「あれくらいの方が良いって言ってるじゃんよ」 「……少しは改善することを覚えてくれよ」 「それじゃ、帰りましょ」 「あ、皆さん待って下さい。今、ギター仕舞いますから」 855 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/07/21(火) 03:02:28.38 ID:suZajOOw0 けいおん!旅行記-第壱章- そして月日は過ぎた。昼休み、唯と律が独力でテスト勉強に挑むと言ったあの日。律はガトーショコラで澪を釣り、唯は妹の憂に教わり、テストをパス。 そして月日は過ぎた。放課後、全員で買い物に出かけたあの日。合宿の資材を買うのだと意気揚々とした梓を尻目に水着を買った。 そして月日は過ぎた。夏休み、海も近い山の別荘に付いたこの日。けいおん部の面々はその別荘に圧巻された。 「おおおおお! こりゃまた一段とすげえな……」 まるで欧州の家をそのまま移したかのようなその造りは、周りの雰囲気から浮くことなく、しかし存在感を失わせない別荘としてそこに鎮座していた。 その凄さに梓も開いた口を塞ぐごとが出来ずにいた。 「これが去年言ってた、借りれなかった別荘だね?」 去年は希望の別荘が借りれず、一番小さな別荘を借りるになってしまい、今回は曰くの別荘だと唯は思った。が、ムギは少し困った顔をした。 「ごめんなさい。その別荘は今年もダメだったの」 その一言に違和感を感じる唯。 「え……? どゆこと?」 苦笑いを浮かべる紬。 「多少狭いと思うけど……がまんしてね?」 その一言に一同は驚愕する。 『『まだ上があるのか……!?』』 「ま、何はともあれ。荷物片付けよーぜ。話はそれからだ」 「そうだね」 「あ、澪先輩。荷物多いでしょうし手伝いますよ?」 「良いよ梓。大した量でもないし」 「なら梓。私の持ってくれよ?」 「律先輩、力あるんですから自分で持って下さい!」 「冷たいなぁ……」 951 :目次@携帯 ◆index/9a7s :2009/07/21(火) 14:36:55.39 ID:XTNYvcTcO 「今回は中身もバージョンアップか……」 別荘の内装はログハウス調をメインに背景色に合わせた色のモダンインテリアで揃えられており、余り目立たないように機能美を重視していた。 「にしてもムギちゃん。毎度毎度、食料とか持って来なくても良いの?」 「平気よ。空きの別荘の食材傷ませるくらいなら使っちゃいなさいってことだから」 「へー……」 「ま、荷物置いてこようぜ。ムギ、部屋はどこ?」 「二階よ。鍵は部屋の中に置いてあるから」 「じゃ、荷物置いてリビング集合な」 律の一言が合図だった。荷物を置きに行くはずだというのに、荷物を置き去りにして二階へと走る唯と律。 「端部屋は私のモンだぁぁぁ!!!」 418 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/07/21(火) 23:29:49.09 ID:suZajOOw0 一瞬にしてその場から姿を消した二人に唖然とする梓。 「……澪先輩。アレなんですか?」 「気にするな。部屋が早い者勝ちなだけだから。それより……」 「それより?」 「私たちも部屋決めようか」 苦笑しながら律の荷物を持つ澪。やはり幼馴染故に世話を焼いてしまうらしい。そんな姿を見た梓は改めて澪を尊敬し、紬は悶えていた。 「あ、じゃ私は唯先輩の持っていきますね」 そして、気遣いを知る由もないもう一方の勝負の軍配は律に上がっていた。 「よし!今年は私がこっちの部屋だ!」 「りっちゃんフライングして狡いよー」 「何言ってんだよ唯。勝負の世界は常に非情なのだよ」 勝ち誇り、胸を張る律。しかし胸を張るには二つの山は実に残念だった。 「んじゃ、荷物取りに行こう」 「そうだね。荷物置きっぱなしだもんね」 まるで、タイミングを見計らっていたかのように他の面々も二人の荷物を持って二階へと昇ってくる。 「律、唯、荷物持ってきてやったぞ。まったく、梓を見習って大人しくしたらどうだ?」 呆れる澪から荷物を受け取り、返す言葉は御礼ではなかった。 「良いじゃんよー澪のケチー」 ゴン! と鈍い音が廊下に響き、律の頭には大きなコブが煙をたてながら膨らんでいた。 「ありがとね。あずにゃん」 「い……いえ、それよりもちゃんと荷物位持って行って下さいよ。他の先輩にも迷惑ですよ?」 「うん、気をつけるよ」 しかし反省の言葉は余りにも棒読みすぎた。 467 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/07/22(水) 00:07:32.42 ID:beEtg8Cx0 「じゃ、荷物片付けたらリビングな」 各々が自室へと入る。部屋も昨年の別荘に比べ、広くなり様々備品も置かれている。まるで一種のペンションの様だ。そして澪がリビングに戻った時、その風景に驚愕した。 そこには、寂しげな二つ山を堂々と張った水着姿の二人が居たのだ。 「よーし、遊ぶぞー!」 「おーっ!!」 無論、そこで止めない澪ではない。止めなければ遊ぶ。しかも疲れ切るまで遊んで、練習すらしないだろう。 「うおおおおおおい!!」 「なんだよ澪?」 不満げに口を尖らせる唯と律。 「遊ぶのは練習してから! まったく……去年と変わんな」 「えー」 「遊びたーい」 ブー垂れる二人。この調子だと堂々巡りしかねない。ちょうど5人とメンバーは奇数。民主主義の名のもとにすることは一つ。 「それじゃ多数決しよう。私は練習が先!」 「「遊ぶ!!」」 ここまでは予想通り。梓も練習をすると言ってくるだろう。紬が練習しないで遊ぶという裏切りをする可能性も低い。 「練習がいいですっ」 後は紬が練習と言ってくれれば、数の暴力が発動する。 「ムギはどうす……ムギその格好は?」 そこには確かに紬が立っていた。が、その見た目は澪の期待を裏切った。涼しい格好にしては肌の露出が多い。つまり水着だ。 「遊びたいでーす」 裏切り者は居たのだ。期待していただけに大きい裏切りだった。 『まさかの裏切り!!』 そしてけいおん部一行は海へと行くのだった。