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メイド女帝 真夜  謎の小袋 ◆PzD3ftv2xo - (2009/09/29 (火) 21:23:48) のソース

650 :謎の小袋 ◆PzD3ftv2xo :2009/09/23(水) 19:32:44.11 ID:7A63/0nBO
メイド女帝 真夜 

ある日、お父様が応接間に私を呼びつけました。 
何事かと急いで向かうと、そこには父と共にメイド服の女性がいました。 
真夜「本日より、僭越ながらお嬢様の身の回りのお世話をさせていただきます、多津美 真夜と申します。」 
女性-真夜さん-は深々と頭を下げる。 
真夜「ふつつか者ですが、どうぞ宜しくお願い致します。」 
紬「あの…それはお嫁さんが旦那さんに言う台詞ですわ。」 
頭を上げ、キョトンとした顔で私を見つめる真夜さん。 
しばらくすると、何かに納得したような素振りをして、彼女は言いました。 
真夜「ふつつか者はお嫁さん専用ワード…勉強になります。」 
…もしかしてこの人、天然なのかしら? 


651 :謎の小袋 ◆PzD3ftv2xo :2009/09/23(水) 19:52:00.99 ID:7A63/0nBO
真夜「早速、お部屋のお掃除をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」 
紬「ええ、構いませんわ。では、ついていらして下さい。」 
私の部屋に向かう間、私達はお互いについて色々と話しました。 
紬「えっ!?じゃあ真夜さんって、まだ二十歳なの!?」 
真夜「…やっぱり、老けて見えますよね…。」シクシク 
紬「老けてるだなんて、ネガティブ思考はいけませんわ!大人の女性に見られる事は、むしろ誇るべき事ですよ!」 
真夜「はい!ありがとうございます、お嬢様!」 
紬「あ、あの…『お嬢様』は止めてもらえないかしら?なんだかかしこまってしまって話しづらいわ。」 
真夜「…では、なんとお呼びすれば…?」 
紬「そうね…友達からは『ムギ』って呼ばれてるから、真夜さんもそう呼んで下さる?」 
真夜「かしこまりました、ムギ…さん。」 


654 :謎の小袋 ◆PzD3ftv2xo :2009/09/23(水) 20:11:14.58 ID:7A63/0nBO
私達は部屋に着く。 
真夜「おじょ…ムギさんは危険ですから、しばらく中には入らないで下さい!」 
さすがにまだ呼び方がぎこちな…危険!? 
あれ?お掃除するだけよね?何が危険なの!? 
どこからともなく掃除道具を取り出し、勇み足で私の部屋に入っていく真夜さん。 
中なら何やら凄い物音がしてくるわ…。 
一体何をしているの!?お掃除よね!? 
音が止み、しばらくすると清々しい表情の真夜さんが出てくる。 
真夜「終わりましたわ!おじょ…ムギさん!」 
ああ…なんだか中を見るのが怖いわ…。 
恐る恐る部屋をのぞき込むと…。 
さっきの惨状が繰り広げられたと思われる音からは想像出来ないくらいに綺麗になっていた。 
まるで新築みたいだわ! 
まさか、この短時間で、しかもたった1人でリフォームしたのかしら!? 


12 :謎の小袋 ◆PzD3ftv2xo :2009/09/23(水) 21:43:44.72 ID:7A63/0nBO
次の日 

5連休で学校は休み。 
私はみんなと映画を見に来ていた。 
何か後ろに気配を感じるけど…気のせい気のせい! 
唯「ねえねえ!『しんぼる』見ようよ『しんぼる』!」 
澪「えと、『バラッド』にしないか?」 
律「女だらけで恋愛ものはちょっとなあ…おっ!『サマーウォーズ』まだやってるとこあった!これにしよーぜ!」 
梓「あの、私は『20世紀少年』が見たいです。」 
紬「あらあら。みんなバラバラねえ。」 
唯「ムギちゃんはどんなのが見たいの?」 
紬「そうねえ…あれなんてどうかしら?」 
私はあまり宣伝されていない映画のポスターを指した。 
律「あんま有名じゃねーの選んだな、ムギ。」 
紬「あら、そうなの?でも、みんなが言ったのは全部見ちゃったし…。」 
律「でもまあ、あれはあんま面白くなさそうだし…。」 
はっ!殺気!! 


21 :謎の小袋 ◆PzD3ftv2xo :2009/09/23(水) 22:13:26.96 ID:7A63/0nBO
りっちゃんの方を見ると、その背後に恐ろしい形相の真夜さんが立っていた! 
やっぱり付いて来てたのね…。 
真夜「お嬢様の提案を無碍にするとは…許さん!」 
律「うわあ!!」 
澪「見えない聞こえない見えない聞こえない見えない聞こえない見えない聞こえない…!」 
梓「あわわわわ…。」 
唯「りっちゃん逃げて~!」 
紬「真夜!止めなさい!」 
私は真夜さんに怒鳴りつける。 
真夜「はっ!…申し訳ありません!」 
自分の過ちに気付いて、土下座で謝る真夜さん。 
って、こんな街中で土下座しないで! 
紬「もういいから!土下座は止めて!」 

その夜 

真夜「私…とんでもない事を…。」 
ああ…凄く落ち込んでるわ。 
なんて声を掛けたらいいか…。 
真夜「やっぱり、向いてないのかも…。辞めようかな…。」 
紬「そっそんなこと無いわ!」 
私は思わず叫びながら彼女の部屋に入る。 


34 :謎の小袋 ◆PzD3ftv2xo :2009/09/23(水) 23:20:27.02 ID:7A63/0nBO
真夜「お嬢様…!あの、今日は本当に…。」 
紬「今日はちょっと頑張り過ぎちゃっただけよ!それだけ私を大切に思ってくれてるのよね?」 
真夜「お嬢様…!」 
私はその後、泣き出した真夜さんが泣き止むまでそばについていてあげた。 
漫画とかだと、この後恋に発展したりして…。 
いえいえ、現実でそんな事、あるわけないわよね。 

次の日 

私は真夜さんと新しい服を買いに来た。 
真夜「お嬢様!こちらはいかがでしょう?」 
紬「これもいいわ~。」 
さんざん迷って、結局全部買って帰る事にした。 
真夜さんが先に荷物を置きに帰り、私も帰ろうとした頃、私は男の人達に話しかけられる。 
男A「彼女!今から俺らと遊び行かねー?」 
紬「あの、用事がありますので…。」 
男B「いいじゃんか!行こーぜ!」 
男C「そーそー。楽しい事しかしねーし。」 
紬「あの、困ります!」 


39 :謎の小袋 ◆PzD3ftv2xo :2009/09/23(水) 23:44:42.83 ID:7A63/0nBO
真夜「おい。」 
そこに、真夜さんがやって来る。 
男B「あ?なんだて…。」 
すべてを言い終わる前に、男Bは真夜さんの裏拳で吹っ飛んでいく。 
男C「てめえ!なにしや…。」 
男Cも真夜さんの平手打ちで吹っ飛んでいく。 
真夜「汚い手で…。」 
男A「な…待てよ、もう何もしねーって!」 
真夜「お嬢様に…触るな!」 
男Aは、真夜さんの正拳突きを顔面に食らって吹っ飛んでいく。 
真夜さん…カッコいい…! 
真夜「ご無事ですか?お嬢様。」 
紬「ええ…ありがとう。」 
なんだろう、真夜さんを見るとドキドキするわ。 

その夜、紬の部屋 

真夜「お嬢様、お食事の用意が出来ました。」 
紬「………。」ぼー 
真夜「お嬢様?」 
紬「えっ?ああ、ご飯ね!すぐ行くわ!」 
私は慌てて部屋を出る。 
真夜さんの事を考えると胸が苦しくなる。 
もしかして、私…。 


45 :謎の小袋 ◆PzD3ftv2xo :2009/09/24(木) 00:14:42.49 ID:SVDK1amKO
真夜「紬お嬢様…愛しています」 
紬「いけないわ!主と使用人が、こんな事…!それに、女同士で…!」 
真夜「お嬢様…!」 

真夜「…お嬢様!」 
はっ! 
ゆ、夢…だったの? 
嬉しいような、残念なような…。 
真夜「さあ、起きて下さい!早く学校に行く準備をしませんと、遅刻してしまいますよ!」 
そうだったわ。 
昨日で連休は終わり、今日からまた学校に行く日々が始まる。 
あわただしく準備をして、私は学校へと向かう。 

放課後 

唯「えっ!ムギちゃん好きな人が出来たの?」 
紬「そうなの~」 
律「えっ誰々?執事見習いの人とか?」 
梓「なんか、ムギ先輩の事だから、女の人が好きになったとか言い出しそうですけどね」 
紬「あらあら、どうして分かったの?」 
梓「マジですか!?」 


347 :謎の小袋 ◆PzD3ftv2xo :2009/09/25(金) 22:54:52.11 ID:GKXH+CZEO
唯「ね~ね~、ムギちゃんの好きな人ってどんな人?」 
紬「真夜さんっていう、この間のうちのメイドさんよ~」 
みんなの表情が固まる。 
律「ああ、あの人ね…」 
澪「あの人なんだ…」ガタガタ 
梓「あ…あの人…ですか…」ビクビク 
唯「なんかわかるかも!あの人カッコいいもんね~!」 
律澪梓(いやいやむしろ怖いから!) 
唯ちゃん以外、みんななんだか怯えてるみたい。 
まあ、あんな出会い方すれば、普通怖い人だと思うわよね。 
紬「凄く仕事熱心で、いつも私の為に色々尽くしてくれるのよ。ちょっと度が過ぎちゃうのが玉に瑕だけど」 
律「ふ~ん、ムギ専属のメイドさんってとこか」 
紬「そうなの~」 
私はそれから、彼女の魅力を余すところなくみんなに話した。 
呆れられるかと思ったけど、みんな意外と熱心に聞いてくれた。 


377 :謎の小袋 ◆PzD3ftv2xo :2009/09/26(土) 03:40:19.20 ID:MEbuWlxSO
部活終了後、私達は一緒にケーキ屋さんに行った。 
澪「おっ、新作が三種類もある!美味しそうだなあ…」 
律「ああ、こうしてまた太っていくのね、澪ちゃん?」 
澪「うっ…それは言わない約束だろ?」 
みんなでケーキに舌鼓を打ち、それぞれの家路につく。 
ところが、家に向かう途中、目の前に現れた黒ずくめ達に、私は連れ去られてしまう。 

琴吹邸 

紬お嬢様の帰りが遅い。 
遅くなるにしても、連絡は必ずしてくる筈なのに、未だに連絡すらない。 
おかしな事に巻き込まれてなければいいけど。 
しばらくすると、何やら周りが慌ただしくなる。 
斎藤「おお、多津美君、ここにいましたか。実は少々、厄介な事になりましてな。…紬お嬢様が、誘拐されてしまったのですよ。」 
どうやら私の悪い予感が的中してしまったらしい。 


378 :謎の小袋 ◆PzD3ftv2xo :2009/09/26(土) 03:56:34.26 ID:MEbuWlxSO
真夜「お嬢様は無事なんですか?犯人の要求は?」 
斎藤「落ち着いて下さい。犯人は要求さえ呑めばお嬢様は無事に解放すると言っていました。なので、今の所は手を出さないでしょう」 
真夜「とりあえずは無事なんですね…良かった」 
斎藤「それで、犯人の要求ですが、三億をこの時間までにこの場所に持って来いとの事です。」 
斎藤氏は、受け渡し場所の書かれた紙と、三億の入ったアタッシュケースを渡してきた。 
真夜「私が、行くのですか?」 
斎藤「ええ。メイドに持って来させろと言う要求でしたので、貴女にお願いします。お嬢様を、頼みますよ」 
真夜「はい!」 
私はアタッシュケースを受け取ると、受け渡し場所へと急いだ。 

倉庫内 

私をさらった男の人達は、向こうで何か話している。 
今なら逃げられる。 
とは言っても、怖くて足が動かない。 
それに、逃げようとしたら何をされるか分からない。 
私はおとなしく助けを待つ事にした。 


109 :謎の小袋 ◆PzD3ftv2xo :2009/09/28(月) 20:53:14.29 ID:7AHtNM03O
しばらくすると、外から車の音がして、誰かが倉庫に入ってくる。 
あれは…真夜さん! 
犯人A「金は持ってきたか?」 
真夜「この中に。お嬢様を返してください」 
犯人B「金が先だ」 
真夜さんは、身代金の入ったアタッシュケースを犯人に手渡す。 
すると、犯人グループが真夜さんを取り囲む。 
真夜「…何のつもりですか?」 
犯人A「お嬢様を無事に帰すとは言ったが、メイドの無事は保証してないぜ?」 
犯人B「本物のメイドなんて、裏じゃ高く売れるからな。」 
そんな…そんな事、させない! 
私は犯人の1人に体当たりをして倒す。 
紬「真夜さん逃げて!」 
犯人A「このガキ!」 
怒った犯人Aがナイフを取り出し、私に斬りかかってくる。 
真夜「お嬢様!」 
真夜さんが私を庇い、背中を斬りつけられる。 
犯人Aは、真夜さんの露わになった背中を見て怯む。 
真夜さんが犯人Aの方をゆっくりと振り返る。 
その背中には、絡み合う竜と蛇の刺青が施されていた。 


119 :謎の小袋 ◆PzD3ftv2xo :2009/09/28(月) 21:21:50.76 ID:7AHtNM03O
これって確か…『巽組』の…! 
『巽組』というのは、現在関西圏の暴力団の元締めである一家だ。 
真夜さんはきっと、そこのお嬢さんなんだろう。 
真夜「紬には隠しとくつもりだったんだけどね…お前等のお陰で台無しだよ。落とし前付けて貰うよ!」 
真夜さんは犯人グループに立ち向かう。 

数分後 

パトカーのサイレンが鳴り響く。 
警察が倉庫に入ってきて、犯人グループを連行していく。 
私は思い出していた。 
小学校低学年の時、私は金持ちの娘という理由でいじめられていた。 
その時いつも私を助けてくれる上級生の女の子がいた。 
そう、それが真夜さんだったの。 
紬「あの時も、今も…助けてくれてありがとう…真夜お姉ちゃん」 
真夜さんは照れ臭そうに頬をかきながら言う。 
真夜「あの時も言っただろ?礼なんかいいって紬…あっいえ、おじょ…」 
紬、と呼んだ事に気づいて、慌てて言い直そうとする真夜さんの口に指を当てる。 


123 :謎の小袋 ◆PzD3ftv2xo :2009/09/28(月) 21:53:26.24 ID:7AHtNM03O
紬「紬でいいわ。確かに今は私のメイドさんだけど、それでも、私の恩人の真夜さんである事に代わりはないんですもの」 
真夜「じゃあ、紬には敬語も止めるよ。堅苦しいの好きじゃないし」 
紬「それは私が…」 
今度は私の口に真夜さんが指を当てる。 
真夜「恩人の言う事、聞けないの?」ニコニコ 
紬「もう…意地悪」 

次の日 

私が誘拐された事がニュースで流れたのを見たのか、教室に入った途端に軽音部のみんなが集まってくる。 
律「ムギ!ごめんな、あたしらが一緒に帰ってれば…」 
紬「まあまあ、無事だったんだから。そんなに気にしないで?」 
澪「体は大丈夫?酷い事されなかった?」 
紬「うん、平気よ。真夜さんが守ってくれたから」 
唯「そっかぁ~。そういえばあのメイドさん、なんか強そうだもんね!」 
紬「うふふ、とっても強いのよ~!」 
放課後、私は真夜さんとの出会いや、色々な事をみんなに話した。 


127 :謎の小袋 ◆PzD3ftv2xo :2009/09/28(月) 22:13:50.82 ID:7AHtNM03O
琴吹邸 

真夜「お帰り、紬」 
紬「ただいま、真夜さん」 
真夜「…今までお嬢様だったから、ちょっと違和感あるわ」 
紬「私もだわ~。やっぱり…」 
真夜「戻す気ないけどね」ニコニコ 
紬「もう…意地悪」 
今の私達は主人と使用人って立場だけど、いつか、恋人同士になりたいな…。 
…なんてね。 
真夜「紬、ちょっとこっち向いて」 
紬「えっどうし…!」 
振り返った私に、真夜さんはキスをしてきた! 
真夜「フフ。もしかして、ファーストキスだった?」 
紬「…もう!本当に意地悪なんだから!」 



終わり