「和「こんにちは」 ◆u37hGboKQKUS」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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472 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/08(土) 18:43:16.20 ID:ppoz3TIOO
和「こんにちは」
澪「和?どうしたんだ?」
和「唯に教科書を貸していたんだけど…居ないのね」
澪「皆は楽器屋だよ。私は用事があったから残ってるんだけど…」
和「いつ帰ってくるか分かる?」
澪「そんなに時間は掛からないと思う。待つ?」
和「…良いの?」
澪「もちろん。お茶淹れるよ。座って待っててくれ」
和「あ、ありがとう…」
473 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/08(土) 18:46:48.78 ID:ppoz3TIOO
和「へぇ…美味しいわね」
澪「むぎには感謝してるよ。いつもお茶もお菓子も持ってきてくれて」
和「毎日だからね…」
澪「いつでも来てくれて良いんだぞ?」
和「でも、私が来ても邪魔じゃない…?」
澪「こういうのもなんだけど、部活は最初はティータイムから始まるんだ」
澪「練習の時でも聴いて感想を言ってくれれば参考に出来るし」
澪「それに、唯が会いたがってるから」
475 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/08(土) 18:52:12.92 ID:ppoz3TIOO
和「唯が…?」
澪「何だかんだで幼馴染だ。唯も寂しいんじゃないかな」
和「そうなんだ」
澪「本当にたまに、で良いから唯のために遊びにきてくれ」
和「うん…時間を見つけて、来るから…」
和(唯のため…か)
和(じゃあ、澪は…?)
477 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/08(土) 18:55:18.52 ID:ppoz3TIOO
澪「おかわり要る?」
和「え、あ、お願い」
澪「それにしても遅い…ごめんな和」
和「ううん、気にしてないわ…」
澪「…」コポコポ…
和「…」
澪「どうぞ」
和「ありがとう…」
和(どうしよう…二人きりなのに…何か、話題とか…)
479 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/08(土) 18:58:31.87 ID:ppoz3TIOO
和「み、澪」
澪「ん?」
和「唯はちゃんとやってる?」
澪「遊びたがってまともに練習しないんだけど…」
澪「上達が凄く早いんだ。見ていて嫉妬するくらい」
澪「和が言ってた『集中すると他の事が目に入らない』っていうのも分かるよ」
和「…上手くいってるのね。幼馴染としてちょっと心配だったんだけど…」
和(唯には、ちゃんと居場所があるんだ…)
483 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/08(土) 19:01:57.81 ID:ppoz3TIOO
和「あの子が、音楽か…」
澪「?」
和「音楽とは無縁だった子が、ちゃんとライブまで出来るようになったのね…」
和「これが才能…かな」
澪「…はい」ポン
和「え…?」
澪「弾いてみる?ギターじゃなくてベースだけど」
和「澪…」
486 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:05:01.33 ID:ppoz3TIOO
澪「唯はギターに触れて、『大切な場所を見付けた』って言ってたよ」
澪「和もどうかな?」
和「澪…ありがとう。じゃあちょっとだけ、良いかな…?」
和「あ、でもこれって左利き用よね?」
澪「初めてやるんだろ?だったら右も左も関係無いよ」
488 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:08:14.03 ID:ppoz3TIOO
和「ん、えと…」
澪「指の形はこう。なかなか上手くいかないな?」
和「両手一緒に動かすなんてやったことないもの…よいしょ…」
和「もう駄目。、澪、一回何か演ってみせて?」
澪「いいぞ。何かリクエストはあるか?」
和「そんな、分からないわよ。何でも良いからお願い」
和「やっぱり上手いわね」
澪「まぁ、一応経験者だから。もういいのか?」
和「ええ、ありがとう」
489 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:13:59.87 ID:ppoz3TIOO
バタン
律「遅くなりました!」
澪「皆、遅いぞ!」
律「いやーごめんごめん!唯があっちこっち寄り道するもんだから…」
唯「そんなんじゃないよ~あの香りを嗅ぐと誰でも…あれ、和ちゃん?」
和「教科書貸してたでしょ?あれ返してほしくて」
唯「あーごめんね…すっかり忘れてたよ…はい」
493 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:16:55.65 ID:ppoz3TIOO
和「はい、確かに。じゃあ私は帰るわね?」
唯「ばいばい和ちゃん~」
律「じゃーな!」
和「あ、澪!」
澪「どうした?」
和「今日は本当にありがとう。また、いつかお願いしても良い?」
澪「もちろん。私で良ければ」
和「ありがとう」バタン
唯「何かあったの?」
澪「ちょっとな。さ、練習するぞ」
495 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:20:20.51 ID:ppoz3TIOO
あれから私は澪の家を訪ねたりして、何度かベースを触らせてもらった
初めの内はどちらかというとお喋りがメインだったのに、
いつの間にか、私は本格的に澪に教えてもらうようになった
なんとなく恥ずかしいから、唯達には黙っていてもらったんだけど
496 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:24:06.37 ID:ppoz3TIOO
新歓が終わったある日のこと
律「新歓ライブお疲れー!」
唯「お疲れー!」
和「…」
澪「…和?」
和「…お疲れ様、澪」
澪「ありがとう。でも、どうした?」
和「何でもないわよ。ありがとう」
497 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:27:02.00 ID:ppoz3TIOO
唯「りっちゃん!乾杯の音頭をお願いします!」
律「あーごほん!私達軽音部は、新歓ライブにて最高の演奏をしました!お疲れ様です!」
律「あとは新たな部員が入ってくることを祈りましょう!乾杯!」
唯「かんぱ~い!」
紬「乾~杯~!」
澪「和…?」
和(私達『軽音部』は、か…)
501 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:38:08.41 ID:ppoz3TIOO
和(そうよ…私、軽音部の人間じゃないもの…)
和(澪にベースを教えてもらって…それだけ)
唯「和ちゃ~ん?」
和「…何?」
唯「元気ないね?」
和「そんなことないわよ。あ、ライブお疲れ様」
唯「うん、ありがとう…」
和「?」
唯(何だろう…?)
508 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:48:41.88 ID:ppoz3TIOO
和「私はもう帰るわね」
律「そうか?お疲れー」
和「皆、今日は本当にお疲れ様。それじゃあね」
唯「…ねぇムギちゃん」
紬「なぁに?」
唯「変だったね…和ちゃん」
紬「そうね…何だか元気が無いように見えたけど…」
澪「私が行ってくるよ」
511 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:01:57.13 ID:ppoz3TIOO
唯「私も行くよ!」
律「はいはい、皆でお留守番」
唯「なんで~?」
律「澪が行くって言ってるんだ。何かあるんだろ」
唯「う~…和ちゃ~ん…」
512 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:04:40.65 ID:ppoz3TIOO
澪「和!」
和「あれ澪…どうしたの?」
澪「それはこっちの台詞だ。何があったんだ?」
和「何でも無いわよ。それより澪は戻らないと」
和「私は、ちょっと疲れちゃったから」
澪「…なぁ和」
和「何?」
澪「軽音、一緒にやろう?」
和「…」
513 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:10:24.97 ID:ppoz3TIOO
和「何、言ってるのよ」
和「私は生徒会に所属してるから、出来ないわよ」
澪「部活は仕方ないけど…たまには皆でやるとか」
澪「唯はすごい、って言ってただろ?」
澪「和だって、かなりの上達ぶりを見せてくれたよ」
澪「私の代わりだって、やれる」
澪「だから…な?」
和「…何でそんなに必死なの?」
澪「…和と…一緒に音楽がやりたいから」
和「…遠慮しておくわ。私に音楽なんて、合わないと思うから」
516 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:14:20.75 ID:ppoz3TIOO
ガチャ
澪「…」
律「澪!」
唯「和ちゃん、なんて?」
澪「何でもないって…」
律「んー…わっかんないなー」
紬「大丈夫よ。きっと、いつか話してくれるから」
澪「…」
和(分かってる…原因は…)
和(疎外感だ…)
和(皆あんなに楽しそうで、私だけが…)
517 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:21:27.37 ID:ppoz3TIOO
それから私は何となく気まずくなってしまって、軽音部に顔を出さなくなった
教室での澪との会話も、どこかぎこちない
澪の家を訪れることもなくなっていった
唯一気がかりだった新入部員も無事入ったようで、それだけは良かったんだけど
そうして月日は流れていった
518 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:26:20.02 ID:ppoz3TIOO
和(桜高祭が近付くと、やっぱり仕事量は増えるわ…)
和(澪達、頑張ってるかな…)
……!…!
和(騒がしいわね…何かしら?)
和(…救急車?)
「…誰が…?」
「軽音……だって…」
和「…!」ダッ
520 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:31:25.95 ID:ppoz3TIOO
バンッ
和「澪っ!」
唯「…のど、がぢゃん…」
床に座り込んでいる唯…傍らに律、紬…あの子は、新入部員の子…
澪が、いない…
和「律!みお、澪は!?」
律「…運ばれたの、澪だよ」
唯「さわちゃん先生が、付き添いで…」
律「詳しいことは何も分かってないんだ。とにかく今はさわちゃん待ちだよ…」
521 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:37:06.41 ID:ppoz3TIOO
その後私達は、良い知らせが来ることを信じて、長い長い時間を過ごした
さわ子「皆…居る?」
和「先生!澪は!?」
さわ子「落ち着きなさい。私もご家族の方に出来るだけ話を聞いてきたから、今から説明するわ」
さわ子「まず、澪ちゃんの容態は今も意識不明。状態は良くないわ」
律「なんで、澪が…?」
さわ子「重い病を患っていたのよ、澪ちゃんは。家族以外誰にも話さなかったらしいの」
さわ子「今の技術じゃ治療は不可能で、病院暮らしでの延命しか出来ない病気でね」
さわ子「そんな暮らしをするくらいなら、普通に生きることを望んだそうよ」
さわ子「だから……澪ちゃんは、いつ死ぬか分からない体だったの…」
澪は、話してすらくれなかったんだ
522 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:43:07.20 ID:ppoz3TIOO
唯「助かるよね…?澪ちゃん死なないよね…!?さわちゃん先生!」
さわ子「…」
律「変な冗談言うなよさわちゃん…」
さわ子「冗談なんかじゃないわ…」
梓「面会は、出来ないんですか…?」
さわ子「謝絶状態よ。私達に出来ることは、何もないの…」
さわ子「皆…最悪の状態も、覚悟して頂戴…」
澪が私を軽音に誘ったのは、この時のため?
524 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:46:59.51 ID:ppoz3TIOO
突然突きつけられた現実に、皆言葉を発する事が出来ない
いつも、いつでも居た大切な人がこんなにもいきなり…
さわ子「…下校時間よ。気持ちは分かるけど、今日は家に帰りなさい」
梓「もう、私達も帰りましょう…」
唯「…」
律「何で…」
紬「澪ちゃんなら…きっと大丈夫。だから今日の所は…」
527 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 22:15:32.54 ID:xkA8+kB1O
翌日
唯「おはよう、りっちゃん、ムギちゃん」
紬「…唯ちゃん」
唯「昨日は、ごめんね。皆だって澪ちゃんの事心配なはずなのに…」
律「こっちこそごめんな。それにさわちゃんにも、謝らないと…」
唯「うん…」
紬「さ、行きましょう」
和(澪…なんで、何も話してくれなかったの…?)
和(こんな、いきなり会えなくなるなんて…)
和(澪に…会いたいのに…)
533 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 22:21:46.06 ID:xkA8+kB1O
放課後
唯「あずにゃん…」
梓「…こんにちは唯先輩、律先輩に紬先輩も」
唯「昨日はごめんね、先輩なのに情けなかったね…」
律「悪かったよ、梓」
梓「いえ…気にしないでください…」
紬「お茶を淹れるから、皆待ってて」
唯「ありがと、ムギちゃん…」
535 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 22:28:08.34 ID:xkA8+kB1O
律「これから、どうする?」
紬「そうね…面会謝絶である以上、絶対に会いに行くわけにはいかないから…」
唯「それに…学園祭…どうしようか…?」
梓「辞退、した方が良いんじゃないでしょうか…」
律「そう、だな…仕方ないよな…」
540 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 22:47:41.74 ID:xkA8+kB1O
数日後
紬「…まだキャンセルしてないの…?」
律「…うん…」
唯「りっちゃん…」
梓「私は…やっぱり澪先輩の復帰に期待してしまいます…」ガタッ
唯「…何してるのあずにゃん?」
梓「手入れです」
梓「澪先輩が帰ってきて、愛用のベースに埃が積もってたら大変ですから」
律「梓…」
梓「澪先輩、練習中に倒れてしまいましたから、大きな傷が結構付いてしまってるんですよ」
梓「私は、澪先輩を信じてますから」
541 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 22:55:51.56 ID:xkA8+kB1O
唯「私も手伝うよ、あずにゃん」
梓「はい」
唯「……あれ…これ何?」
梓「手紙、ですか?」
律「どーした?」
梓「ケースに手紙が入ってたんです」
律「…開けてみるか?」
紬「もしかして、私達に…?」
唯「開けてみるね…」スッ
唯「…『和へ』…?」
543 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:03:44.22 ID:xkA8+kB1O
生徒会室
和(澪…)
バタンッ
唯「し、失礼します…」
和「皆…どうしたの?」
唯「和ちゃん、澪ちゃんの手紙が見つかったんだ」
唯「ケースの中に手紙が入ってて。ごめんね、読んじゃったんだけど…はい」
和(澪から、私に…?)ペラッ
545 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:10:34.58 ID:xkA8+kB1O
『和へ』
『ケースに入れていつも大事に持ち歩いてたから、これを読むのは私の遺品を整理している所かな』
『前に軽音を一緒にやろうって言ってたことだけど、あれって本気のつもりだったんだ』
『もちろん和と一緒に音楽を、って考えもあったんだけど、和の寂しそうな顔を見ていられなかった』
『その気持ちはきっと最後まで変わらないよ』
『ベースを買うお金も簡単に出せるものじゃないだろうし、私のベースを使ってもいいから…』
『たまには唯達に混ざって軽音を楽しんでみないか?』
『皆ならきっと良くしてくれる』
『和なら出来るよ』
『それと、病気のこと最後まで話さないでごめん』
『今まで本当にありがとう』
548 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:14:16.63 ID:xkA8+kB1O
和「澪…」
唯「和ちゃん…」
和「わ、私は…」
律「その手紙、和宛だからな。どうするかは和次第だぞ」
紬「用事はそれだけなの。それじゃ」
梓「失礼します」
和(私が、唯達と…?)
550 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:18:37.87 ID:xkA8+kB1O
律「よし、行くぞ」ビリビリ
紬「りっちゃん、それ何?」
律「講堂使用のキャンセル申請書」ポイ
梓「戻って練習しましょう」
紬「ええ」
唯「…和ちゃん…」
551 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:23:14.19 ID:xkA8+kB1O
和(澪の容態は全く良くならない)
和(講堂使用に関する申請は手間も掛かるし、生徒会にも迷惑)
和(そういう面を考えるなら…)
和(でも、それは私が澪の居場所を奪うだけじゃない…)
和(そんなこと、私には…)
澪『今まで本当にありがとう』
和「………終わらせたくない」
552 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:28:00.67 ID:xkA8+kB1O
唯「…」
紬「唯ちゃん、やっぱり気になる?」
唯「うん…和ちゃんの事もそうだけど…」
唯「澪ちゃんが居ないのに…」
律「あいつは多分、そういう事は望んでないよ」
律「あの手紙、どう見ても自分が死ぬ事を前提にしてるよな」
律「相当思いを込めたはずなんだ」
紬「あの澪ちゃんが、『死ぬ』なんて一番怖い事を背負ってきたのよ?」
梓「…そんな澪先輩の言葉です。私達が出来ることをしましょう」
律「和が来たら迎えてやって、ライブを成功させることだな」
梓「私は、そう思います…」
555 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:31:27.67 ID:xkA8+kB1O
唯「…うん、やるよ」
ガチャ
和「…皆…」
唯「の、どかちゃん…」
和「私に、ベースをやらせて」
和「精一杯頑張って、絶対に迷惑掛けないから」
律「…練習するぞ、和」
和「…」コクン
唯「和ちゃん、音楽やったことあるの」
和「ベースだけは、ね。聞いてから使えるかどうか評価して」
557 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:34:32.40 ID:xkA8+kB1O
唯「和ちゃん…いつの間に…」
和「たまに澪のベースを借りて練習させてもらってたわ」
和「少しでも、軽音部の皆に近付きたくて…寂しいのは嫌だったから…」
紬「確かに目立つ所はあるけど…これなら充分間に合いそうね?」
律「練習、詰めていくぞ!」
558 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:37:22.28 ID:xkA8+kB1O
私は生徒会の人間だ
桜高祭が近付くにつれ、仕事量は増えていく
それでも、今も意識が無い澪のため、全力で練習に打ち込んだ
皆も、私の練習に付き合ってくれた
やれるだけのことはやったんだ
560 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:40:28.99 ID:xkA8+kB1O
桜高祭 ~講堂~
和「…ふぅ」
律「緊張してるか?」
和「まあね。人の前に立つことなんて無かったから」
紬「練習したし、きっと大丈夫」
梓「頑張りましょう」
唯「頑張ろ、和ちゃん!」
「続いては、軽音楽部、『放課後ティータイム』によるライブです」
568 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/09(日) 00:03:47.90 ID:ugbdR2H0O
澪は、間に合わなかった
直前にもご家族の方に連絡を取ったけど、未だ目を覚ますことすらないという
…幕が開いた
行こう
律(和…行けるな!?)
和(大丈夫!)
律「……1、2、3!」
569 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/09(日) 00:07:19.68 ID:ugbdR2H0O
大丈夫だ
全部練習通り
指もしっかり動く
あれほどあった緊張は全く無い
私は、やれる
570 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/09(日) 00:13:34.40 ID:ugbdR2H0O
唯(澪ちゃん…)
梓(私達に出来ることは、これだけです)
紬(今はただ、私達の全力を…)
律(思わず病院のベッドから飛び出して『混ぜろ!』って言いたくなるような…)
和(私達の最高のライブを!)
唯(お願い、届いて!)
律(澪!)
梓(澪先輩…)
紬(目を覚まして…)
和(……澪)
ワァァァァ……
「軽音楽部の皆さん、ありがとうございました。続いては…」
和「私達の演奏、聞こえたかな…澪…」
572 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/09(日) 00:19:19.67 ID:ugbdR2H0O
和「あれから一年ね」
和「色々大変だったのよ。私なんて生徒会の仕事サボってライブに参加してたんだから」
和「でも、それ以上のたくさんの物が手に入ったわ」
和「あの時、澪が一人で部室に残っていなかったら」
和「あの時、澪が私を追いかけてくれなかったら」
和「間違いなく今の私は無かった」
和「言い始めたら、キリが無いわ」
和「ふふっ、照れないでよ、もう」
576 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/09(日) 00:27:17.74 ID:ugbdR2H0O
澪「…照れてない」
和「そうかしら?」
澪「…そうだ」
和「もう、拗ねないでよ」
澪「…」
私達の演奏がどう届いたのかどうかは分からないけど…
澪は今も生きている
ただ寝たきりの生活になり、延命措置を受けないため、残り僅かな命を削って生きている
いつか、近いうちに別れは来るんだ
579 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/09(日) 00:31:08.07 ID:ugbdR2H0O
和「明日、桜高祭なのよ」
和「ライブの練習があるから、もう行くわ」
澪「…」
和「応援しててね、澪。私達のライブ、絶対成功させてみせるから」
澪「…うん…頑張れ…」
観客に音を届けるのは私達5人の仕事
澪は現在、作詞作曲を担当している
そして、明日が放課後ティータイム最後のライブとなる
あの時のままの、傷の入ったベースを背負い直し、退室した
和「行ってくるわね、澪」
472 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/08(土) 18:43:16.20 ID:ppoz3TIOO
和「こんにちは」
澪「和?どうしたんだ?」
和「唯に教科書を貸していたんだけど…居ないのね」
澪「皆は楽器屋だよ。私は用事があったから残ってるんだけど…」
和「いつ帰ってくるか分かる?」
澪「そんなに時間は掛からないと思う。待つ?」
和「…良いの?」
澪「もちろん。お茶淹れるよ。座って待っててくれ」
和「あ、ありがとう…」
473 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/08(土) 18:46:48.78 ID:ppoz3TIOO
和「へぇ…美味しいわね」
澪「むぎには感謝してるよ。いつもお茶もお菓子も持ってきてくれて」
和「毎日だからね…」
澪「いつでも来てくれて良いんだぞ?」
和「でも、私が来ても邪魔じゃない…?」
澪「こういうのもなんだけど、部活は最初はティータイムから始まるんだ」
澪「練習の時でも聴いて感想を言ってくれれば参考に出来るし」
澪「それに、唯が会いたがってるから」
475 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/08(土) 18:52:12.92 ID:ppoz3TIOO
和「唯が…?」
澪「何だかんだで幼馴染だ。唯も寂しいんじゃないかな」
和「そうなんだ」
澪「本当にたまに、で良いから唯のために遊びにきてくれ」
和「うん…時間を見つけて、来るから…」
和(唯のため…か)
和(じゃあ、澪は…?)
477 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/08(土) 18:55:18.52 ID:ppoz3TIOO
澪「おかわり要る?」
和「え、あ、お願い」
澪「それにしても遅い…ごめんな和」
和「ううん、気にしてないわ…」
澪「…」コポコポ…
和「…」
澪「どうぞ」
和「ありがとう…」
和(どうしよう…二人きりなのに…何か、話題とか…)
479 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/08(土) 18:58:31.87 ID:ppoz3TIOO
和「み、澪」
澪「ん?」
和「唯はちゃんとやってる?」
澪「遊びたがってまともに練習しないんだけど…」
澪「上達が凄く早いんだ。見ていて嫉妬するくらい」
澪「和が言ってた『集中すると他の事が目に入らない』っていうのも分かるよ」
和「…上手くいってるのね。幼馴染としてちょっと心配だったんだけど…」
和(唯には、ちゃんと居場所があるんだ…)
483 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/08(土) 19:01:57.81 ID:ppoz3TIOO
和「あの子が、音楽か…」
澪「?」
和「音楽とは無縁だった子が、ちゃんとライブまで出来るようになったのね…」
和「これが才能…かな」
澪「…はい」ポン
和「え…?」
澪「弾いてみる?ギターじゃなくてベースだけど」
和「澪…」
486 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:05:01.33 ID:ppoz3TIOO
澪「唯はギターに触れて、『大切な場所を見付けた』って言ってたよ」
澪「和もどうかな?」
和「澪…ありがとう。じゃあちょっとだけ、良いかな…?」
和「あ、でもこれって左利き用よね?」
澪「初めてやるんだろ?だったら右も左も関係無いよ」
488 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:08:14.03 ID:ppoz3TIOO
和「ん、えと…」
澪「指の形はこう。なかなか上手くいかないな?」
和「両手一緒に動かすなんてやったことないもの…よいしょ…」
和「もう駄目。、澪、一回何か演ってみせて?」
澪「いいぞ。何かリクエストはあるか?」
和「そんな、分からないわよ。何でも良いからお願い」
和「やっぱり上手いわね」
澪「まぁ、一応経験者だから。もういいのか?」
和「ええ、ありがとう」
489 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:13:59.87 ID:ppoz3TIOO
バタン
律「遅くなりました!」
澪「皆、遅いぞ!」
律「いやーごめんごめん!唯があっちこっち寄り道するもんだから…」
唯「そんなんじゃないよ~あの香りを嗅ぐと誰でも…あれ、和ちゃん?」
和「教科書貸してたでしょ?あれ返してほしくて」
唯「あーごめんね…すっかり忘れてたよ…はい」
493 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:16:55.65 ID:ppoz3TIOO
和「はい、確かに。じゃあ私は帰るわね?」
唯「ばいばい和ちゃん~」
律「じゃーな!」
和「あ、澪!」
澪「どうした?」
和「今日は本当にありがとう。また、いつかお願いしても良い?」
澪「もちろん。私で良ければ」
和「ありがとう」バタン
唯「何かあったの?」
澪「ちょっとな。さ、練習するぞ」
495 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:20:20.51 ID:ppoz3TIOO
あれから私は澪の家を訪ねたりして、何度かベースを触らせてもらった
初めの内はどちらかというとお喋りがメインだったのに、
いつの間にか、私は本格的に澪に教えてもらうようになった
なんとなく恥ずかしいから、唯達には黙っていてもらったんだけど
496 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:24:06.37 ID:ppoz3TIOO
新歓が終わったある日のこと
律「新歓ライブお疲れー!」
唯「お疲れー!」
和「…」
澪「…和?」
和「…お疲れ様、澪」
澪「ありがとう。でも、どうした?」
和「何でもないわよ。ありがとう」
497 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:27:02.00 ID:ppoz3TIOO
唯「りっちゃん!乾杯の音頭をお願いします!」
律「あーごほん!私達軽音部は、新歓ライブにて最高の演奏をしました!お疲れ様です!」
律「あとは新たな部員が入ってくることを祈りましょう!乾杯!」
唯「かんぱ~い!」
紬「乾~杯~!」
澪「和…?」
和(私達『軽音部』は、か…)
501 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:38:08.41 ID:ppoz3TIOO
和(そうよ…私、軽音部の人間じゃないもの…)
和(澪にベースを教えてもらって…それだけ)
唯「和ちゃ~ん?」
和「…何?」
唯「元気ないね?」
和「そんなことないわよ。あ、ライブお疲れ様」
唯「うん、ありがとう…」
和「?」
唯(何だろう…?)
508 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 19:48:41.88 ID:ppoz3TIOO
和「私はもう帰るわね」
律「そうか?お疲れー」
和「皆、今日は本当にお疲れ様。それじゃあね」
唯「…ねぇムギちゃん」
紬「なぁに?」
唯「変だったね…和ちゃん」
紬「そうね…何だか元気が無いように見えたけど…」
澪「私が行ってくるよ」
511 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:01:57.13 ID:ppoz3TIOO
唯「私も行くよ!」
律「はいはい、皆でお留守番」
唯「なんで~?」
律「澪が行くって言ってるんだ。何かあるんだろ」
唯「う~…和ちゃ~ん…」
512 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:04:40.65 ID:ppoz3TIOO
澪「和!」
和「あれ澪…どうしたの?」
澪「それはこっちの台詞だ。何があったんだ?」
和「何でも無いわよ。それより澪は戻らないと」
和「私は、ちょっと疲れちゃったから」
澪「…なぁ和」
和「何?」
澪「軽音、一緒にやろう?」
和「…」
513 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:10:24.97 ID:ppoz3TIOO
和「何、言ってるのよ」
和「私は生徒会に所属してるから、出来ないわよ」
澪「部活は仕方ないけど…たまには皆でやるとか」
澪「唯はすごい、って言ってただろ?」
澪「和だって、かなりの上達ぶりを見せてくれたよ」
澪「私の代わりだって、やれる」
澪「だから…な?」
和「…何でそんなに必死なの?」
澪「…和と…一緒に音楽がやりたいから」
和「…遠慮しておくわ。私に音楽なんて、合わないと思うから」
516 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:14:20.75 ID:ppoz3TIOO
ガチャ
澪「…」
律「澪!」
唯「和ちゃん、なんて?」
澪「何でもないって…」
律「んー…わっかんないなー」
紬「大丈夫よ。きっと、いつか話してくれるから」
澪「…」
和(分かってる…原因は…)
和(疎外感だ…)
和(皆あんなに楽しそうで、私だけが…)
517 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:21:27.37 ID:ppoz3TIOO
それから私は何となく気まずくなってしまって、軽音部に顔を出さなくなった
教室での澪との会話も、どこかぎこちない
澪の家を訪れることもなくなっていった
唯一気がかりだった新入部員も無事入ったようで、それだけは良かったんだけど
そうして月日は流れていった
518 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:26:20.02 ID:ppoz3TIOO
和(桜高祭が近付くと、やっぱり仕事量は増えるわ…)
和(澪達、頑張ってるかな…)
……!…!
和(騒がしいわね…何かしら?)
和(…救急車?)
「…誰が…?」
「軽音……だって…」
和「…!」ダッ
520 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:31:25.95 ID:ppoz3TIOO
バンッ
和「澪っ!」
唯「…のど、がぢゃん…」
床に座り込んでいる唯…傍らに律、紬…あの子は、新入部員の子…
澪が、いない…
和「律!みお、澪は!?」
律「…運ばれたの、澪だよ」
唯「さわちゃん先生が、付き添いで…」
律「詳しいことは何も分かってないんだ。とにかく今はさわちゃん待ちだよ…」
521 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:37:06.41 ID:ppoz3TIOO
その後私達は、良い知らせが来ることを信じて、長い長い時間を過ごした
さわ子「皆…居る?」
和「先生!澪は!?」
さわ子「落ち着きなさい。私もご家族の方に出来るだけ話を聞いてきたから、今から説明するわ」
さわ子「まず、澪ちゃんの容態は今も意識不明。状態は良くないわ」
律「なんで、澪が…?」
さわ子「重い病を患っていたのよ、澪ちゃんは。家族以外誰にも話さなかったらしいの」
さわ子「今の技術じゃ治療は不可能で、病院暮らしでの延命しか出来ない病気でね」
さわ子「そんな暮らしをするくらいなら、普通に生きることを望んだそうよ」
さわ子「だから……澪ちゃんは、いつ死ぬか分からない体だったの…」
澪は、話してすらくれなかったんだ
522 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:43:07.20 ID:ppoz3TIOO
唯「助かるよね…?澪ちゃん死なないよね…!?さわちゃん先生!」
さわ子「…」
律「変な冗談言うなよさわちゃん…」
さわ子「冗談なんかじゃないわ…」
梓「面会は、出来ないんですか…?」
さわ子「謝絶状態よ。私達に出来ることは、何もないの…」
さわ子「皆…最悪の状態も、覚悟して頂戴…」
澪が私を軽音に誘ったのは、この時のため?
524 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 20:46:59.51 ID:ppoz3TIOO
突然突きつけられた現実に、皆言葉を発する事が出来ない
いつも、いつでも居た大切な人がこんなにもいきなり…
さわ子「…下校時間よ。気持ちは分かるけど、今日は家に帰りなさい」
梓「もう、私達も帰りましょう…」
唯「…」
律「何で…」
紬「澪ちゃんなら…きっと大丈夫。だから今日の所は…」
527 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 22:15:32.54 ID:xkA8+kB1O
翌日
唯「おはよう、りっちゃん、ムギちゃん」
紬「…唯ちゃん」
唯「昨日は、ごめんね。皆だって澪ちゃんの事心配なはずなのに…」
律「こっちこそごめんな。それにさわちゃんにも、謝らないと…」
唯「うん…」
紬「さ、行きましょう」
和(澪…なんで、何も話してくれなかったの…?)
和(こんな、いきなり会えなくなるなんて…)
和(澪に…会いたいのに…)
533 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 22:21:46.06 ID:xkA8+kB1O
放課後
唯「あずにゃん…」
梓「…こんにちは唯先輩、律先輩に紬先輩も」
唯「昨日はごめんね、先輩なのに情けなかったね…」
律「悪かったよ、梓」
梓「いえ…気にしないでください…」
紬「お茶を淹れるから、皆待ってて」
唯「ありがと、ムギちゃん…」
535 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 22:28:08.34 ID:xkA8+kB1O
律「これから、どうする?」
紬「そうね…面会謝絶である以上、絶対に会いに行くわけにはいかないから…」
唯「それに…学園祭…どうしようか…?」
梓「辞退、した方が良いんじゃないでしょうか…」
律「そう、だな…仕方ないよな…」
540 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 22:47:41.74 ID:xkA8+kB1O
数日後
紬「…まだキャンセルしてないの…?」
律「…うん…」
唯「りっちゃん…」
梓「私は…やっぱり澪先輩の復帰に期待してしまいます…」ガタッ
唯「…何してるのあずにゃん?」
梓「手入れです」
梓「澪先輩が帰ってきて、愛用のベースに埃が積もってたら大変ですから」
律「梓…」
梓「澪先輩、練習中に倒れてしまいましたから、大きな傷が結構付いてしまってるんですよ」
梓「私は、澪先輩を信じてますから」
541 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 22:55:51.56 ID:xkA8+kB1O
唯「私も手伝うよ、あずにゃん」
梓「はい」
唯「……あれ…これ何?」
梓「手紙、ですか?」
律「どーした?」
梓「ケースに手紙が入ってたんです」
律「…開けてみるか?」
紬「もしかして、私達に…?」
唯「開けてみるね…」スッ
唯「…『和へ』…?」
543 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:03:44.22 ID:xkA8+kB1O
生徒会室
和(澪…)
バタンッ
唯「し、失礼します…」
和「皆…どうしたの?」
唯「和ちゃん、澪ちゃんの手紙が見つかったんだ」
唯「ケースの中に手紙が入ってて。ごめんね、読んじゃったんだけど…はい」
和(澪から、私に…?)ペラッ
545 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:10:34.58 ID:xkA8+kB1O
『和へ』
『ケースに入れていつも大事に持ち歩いてたから、これを読むのは私の遺品を整理している所かな』
『前に軽音を一緒にやろうって言ってたことだけど、あれって本気のつもりだったんだ』
『もちろん和と一緒に音楽を、って考えもあったんだけど、和の寂しそうな顔を見ていられなかった』
『その気持ちはきっと最後まで変わらないよ』
『ベースを買うお金も簡単に出せるものじゃないだろうし、私のベースを使ってもいいから…』
『たまには唯達に混ざって軽音を楽しんでみないか?』
『皆ならきっと良くしてくれる』
『和なら出来るよ』
『それと、病気のこと最後まで話さないでごめん』
『今まで本当にありがとう』
548 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:14:16.63 ID:xkA8+kB1O
和「澪…」
唯「和ちゃん…」
和「わ、私は…」
律「その手紙、和宛だからな。どうするかは和次第だぞ」
紬「用事はそれだけなの。それじゃ」
梓「失礼します」
和(私が、唯達と…?)
550 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:18:37.87 ID:xkA8+kB1O
律「よし、行くぞ」ビリビリ
紬「りっちゃん、それ何?」
律「講堂使用のキャンセル申請書」ポイ
梓「戻って練習しましょう」
紬「ええ」
唯「…和ちゃん…」
551 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:23:14.19 ID:xkA8+kB1O
和(澪の容態は全く良くならない)
和(講堂使用に関する申請は手間も掛かるし、生徒会にも迷惑)
和(そういう面を考えるなら…)
和(でも、それは私が澪の居場所を奪うだけじゃない…)
和(そんなこと、私には…)
澪『今まで本当にありがとう』
和「………終わらせたくない」
552 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:28:00.67 ID:xkA8+kB1O
唯「…」
紬「唯ちゃん、やっぱり気になる?」
唯「うん…和ちゃんの事もそうだけど…」
唯「澪ちゃんが居ないのに…」
律「あいつは多分、そういう事は望んでないよ」
律「あの手紙、どう見ても自分が死ぬ事を前提にしてるよな」
律「相当思いを込めたはずなんだ」
紬「あの澪ちゃんが、『死ぬ』なんて一番怖い事を背負ってきたのよ?」
梓「…そんな澪先輩の言葉です。私達が出来ることをしましょう」
律「和が来たら迎えてやって、ライブを成功させることだな」
梓「私は、そう思います…」
555 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:31:27.67 ID:xkA8+kB1O
唯「…うん、やるよ」
ガチャ
和「…皆…」
唯「の、どかちゃん…」
和「私に、ベースをやらせて」
和「精一杯頑張って、絶対に迷惑掛けないから」
律「…練習するぞ、和」
和「…」コクン
唯「和ちゃん、音楽やったことあるの」
和「ベースだけは、ね。聞いてから使えるかどうか評価して」
557 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:34:32.40 ID:xkA8+kB1O
唯「和ちゃん…いつの間に…」
和「たまに澪のベースを借りて練習させてもらってたわ」
和「少しでも、軽音部の皆に近付きたくて…寂しいのは嫌だったから…」
紬「確かに目立つ所はあるけど…これなら充分間に合いそうね?」
律「練習、詰めていくぞ!」
558 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:37:22.28 ID:xkA8+kB1O
私は生徒会の人間だ
桜高祭が近付くにつれ、仕事量は増えていく
それでも、今も意識が無い澪のため、全力で練習に打ち込んだ
皆も、私の練習に付き合ってくれた
やれるだけのことはやったんだ
560 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/08(土) 23:40:28.99 ID:xkA8+kB1O
桜高祭 ~講堂~
和「…ふぅ」
律「緊張してるか?」
和「まあね。人の前に立つことなんて無かったから」
紬「練習したし、きっと大丈夫」
梓「頑張りましょう」
唯「頑張ろ、和ちゃん!」
「続いては、軽音楽部、『放課後ティータイム』によるライブです」
568 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/09(日) 00:03:47.90 ID:ugbdR2H0O
澪は、間に合わなかった
直前にもご家族の方に連絡を取ったけど、未だ目を覚ますことすらないという
…幕が開いた
行こう
律(和…行けるな!?)
和(大丈夫!)
律「……1、2、3!」
569 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/09(日) 00:07:19.68 ID:ugbdR2H0O
大丈夫だ
全部練習通り
指もしっかり動く
あれほどあった緊張は全く無い
私は、やれる
570 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/09(日) 00:13:34.40 ID:ugbdR2H0O
唯(澪ちゃん…)
梓(私達に出来ることは、これだけです)
紬(今はただ、私達の全力を…)
律(思わず病院のベッドから飛び出して『混ぜろ!』って言いたくなるような…)
和(私達の最高のライブを!)
唯(お願い、届いて!)
律(澪!)
梓(澪先輩…)
紬(目を覚まして…)
和(……澪)
ワァァァァ……
「軽音楽部の皆さん、ありがとうございました。続いては…」
和「私達の演奏、聞こえたかな…澪…」
572 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/09(日) 00:19:19.67 ID:ugbdR2H0O
和「あれから一年ね」
和「色々大変だったのよ。私なんて生徒会の仕事サボってライブに参加してたんだから」
和「でも、それ以上のたくさんの物が手に入ったわ」
和「あの時、澪が一人で部室に残っていなかったら」
和「あの時、澪が私を追いかけてくれなかったら」
和「間違いなく今の私は無かった」
和「言い始めたら、キリが無いわ」
和「ふふっ、照れないでよ、もう」
576 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/09(日) 00:27:17.74 ID:ugbdR2H0O
澪「…照れてない」
和「そうかしら?」
澪「…そうだ」
和「もう、拗ねないでよ」
澪「…」
私達の演奏がどう届いたのかどうかは分からないけど…
澪は今も生きている
ただ寝たきりの生活になり、延命措置を受けないため、残り僅かな命を削って生きている
いつか、近いうちに別れは来るんだ
579 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/09(日) 00:31:08.07 ID:ugbdR2H0O
和「明日、桜高祭なのよ」
和「ライブの練習があるから、もう行くわ」
澪「…」
和「応援しててね、澪。私達のライブ、絶対成功させてみせるから」
澪「…うん…頑張れ…」
観客に音を届けるのは私達5人の仕事
澪は現在、作詞作曲を担当している
そして、明日が放課後ティータイム最後のライブとなる
あの時のままの、傷の入ったベースを背負い直し、退室した
和「行ってくるわね、澪」
580 : ◆u37hGboKQKUS :2009/08/09(日) 00:33:32.45 ID:ugbdR2H0O
終わりです