最近の議論の行方

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最近の議論の行方 - (2014/03/23 (日) 05:12:03) の1つ前との変更点

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<p>「メタメタの日」<a href="http://ameblo.jp/metameta7/entry-11800156726.html" style="text-decoration:none;color:rgb(0,0,0);">a×b=b×a―交換法則について(3)</a></p> <p> http://ameblo.jp/metameta7/entry2-11800156726.html#comment_module</p> <p>で行なわれた議論を紹介する。まずブログの記事を原文のまま引用する。</p> <p>「メタメタの日」<a href="http://ameblo.jp/metameta7/entry-11800156726.html" style="text-decoration:none;color:rgb(0,0,0);">a×b=b×a―交換法則について(3)</a></p> <p>  3×4=4×3</p> <p>上の式を見たら、たいていの人はあたりまえだと思う。</p> <p> 何故イコールが成り立つのかと理由を問われたら、だって両辺が(という用語を使うか、左も右も、と言うかの違いはあっても)どっちも12じゃないかと答えるか、かけ算では交換法則(という専門用語を忘れていなければ)が成り立つから、と答えるだろう。</p> <p> さらに、左辺の3と右辺の3は同じか、と問われたら、同じに決まっているじゃないかと答えつつ、何か落とし穴があるのか、だから数学は嫌なんだと不審感を顔に浮かべるだろう。</p> <p>確かに、3×4=4×3であるように、3=3であり、4=4である。</p> <p> しかし、×の左(前)にある左辺の3は「かけられる数」と言い、×の右(後)にある右辺の3は「かける数」と言う(同様に、左辺の4は「かける数」、右辺の4は「かけられる数」)と、小学2年の秋に教わったことになっているが、覚えている人は少ないだろう。(「かけられる数」は、後に「被乗数」、「かける数」は「乗数」と教わる。)</p> <p>つまり、3×4=4×3 の式は、3と4の数の意味も明記すれば、</p> <p> 被乗数3×乗数4=被乗数4×乗数3</p> <p>となる。</p> <p> しかし、「かける数」という言葉はまだしも、「かけられる数」という言葉は、たいていの人は忘れているだろうし、言葉は忘れていなくても、3×4のいったいどっちが「かけられる数」で「かける数」かは途惑うだろう。</p> <p> 「掛ける」という言葉を「掛け算」の意味で使うことは昔からあったが、「かけられる数」という言葉は、明治時代にmultiplicandの訳として「被乗数」という用語が作られてから教科書や学校では使われるようになった。しかし日常生活では馴染みがない。おまけに「掛ける」とはどういう動作かわからない。(私の解釈は「「掛ける」のココロ」)</p> <p> そんな事情があるから、3×4=4×3の左辺の3と右辺の3には、「かけられる数(被乗数)」と「かける数(乗数)」という違いがあると言われてもピンとこないのは当然だと思う。</p> <p>しかし、かけ算を「同数累加」で教えていた時代(1980年代半ばまで)は、被乗数は同数累加の「同数」、乗数は「累加数」であった。</p> <p>つまり、</p> <p>  3×4=3+3+3+3=●●●+●●●+●●●+●●●</p> <p>  4×3=4+4+4=●●●●+●●●●+●●●●</p> <p>ということだった。</p> <p> 左辺の3は、●●●というモノの個数であり、右辺の3は、●●●●というモノを加えるハタラキの回数となる。モノとハタラキでは大変な違いがある。しかも、乗数(かける数)は倍数のことだから、3×4は「3の4倍」、4×3は「4の3倍」となり、明らかに左辺と右辺の意味は違う。</p> <p>そう言われて、3×4=4×3という式を見直しても、やはり左右の3や4にそんな違いがあるとは思えない。どう見ても同じ3であり、4である。</p> <p> 日本の算数教育では、遠山啓が、かけ算を同数累加で「定義」することに反対し、3×4の答えを「3+3+3+3」で求めても「4+4+4」で求めてもよいと、同数累加をかけ算の答の求め方の一つにまで貶めた。(「6×4、4×6論争にひそむ意味」『遠山啓著作集・数学教育論シリーズ5』114~121頁、初出は『科学朝日』1972年5月号)</p> <p>そして、現在の日本の算数教科書のかけ算の導入は、遠山の考えの線に沿っている。</p> <p> 被乗数・乗数という用語は、×記号の左右の数の単なる呼び名としか思えない場合もある。ところが、×の左右のどちらを被乗数・乗数とするかは、19世紀の欧米では、左を被乗数、右を乗数とする解釈が大勢であったが、20世紀になると逆の解釈が大勢になったという変化があった(日本では、19世紀後半に欧米から教わった通りに、今でも×の左が被乗数、右が乗数だが)。</p> <p>詰まるところ、被乗数・乗数の区別は、乗法が同数累加の簡便算として生れた母斑かもしれないと思えてくる。</p> <p>被乗数・乗数という概念が不要であることは、素因数分解の場合にはっきりする。</p> <p>  30=2×3×5</p> <p>のように、素因数が3つ以上ある場合に、因数を被乗数・乗数に区別することは無意味である。であるならば、</p> <p>  6=2×3</p> <p>と素因数が2つの場合にも、被乗数・乗数を区別することは無意味であろう。</p> <p> かけ算の2つの数について、被乗数・乗数という意味を捨象して、因数×因数と理解する行き方がある。かけ算は、被乗数を乗数回累加することではなく、2つの因数から1つの積を決定する演算と理解する(2つの因数から積の数値の決まり方は、2つの因数の数だけ縦横2次元にドットを並べたアレイ図のドット数となる)。</p> <p> 現代中国の小学数学(日本の算数)のいくつかの教科書がこの方式である。(掲載したのは、人民教育出版社小学教室編著『九年義務教育六年制小学教科書 数学第三冊』17,18頁、2001年)</p> <p>つまり、</p> <p>  3×4=4×3</p> <p>の交換法則の理解は、次の2通りとなろう。</p> <p> (1)被乗数3×乗数4=被乗数4×乗数3(同数3×累加数4=同数4×累加数3)</p> <p>    乗数3×被乗数4=乗数4×被乗数3(累加数3×同数4=累加数4×同数3)</p> <p>(2)因数3×因数4=因数4×因数3</p> <p>(1)の左右の辺は異なる事態を表しているが、結果(積)が等しいから、等号が成立している。</p> <p> (2)式の数は、(1)式の数の被乗数・乗数の意味を捨象して、数をさらに抽象化している。左右の辺で表された事態は同一の事態であり、表記の仕方が異なるだけである(結果は当然等しい)。</p> <p>つまり、伝統的な(1)の交換法則の式を抽象化したのが(2)式ということになるが、逆に(1)を具象化すると、次の(3)式になる。</p> <p>(3)1あたり量3×いくら分の量4=1あたり量4×いくら分の量3</p> <p> (3)は、遠山啓らの数学教育協議会が1950年代後半から提唱した「量の理論」に基づく式である。「数」についての交換法則ではなく、具体的な「量」についての交換法則だから、例えば、以下のようになる。</p> <p>  1人あたり3個×4人分=1人あたり4個×3人分</p> <p>  3km/h×4h=4km/h×3h</p> <p>  単価10円×500個=単価500円×10個</p> <p>  1匹あたり8本×3匹=1匹あたり3本×8匹</p> <p> いずれも左右の辺が表している事態は異なるが、かけ算の結果(積)が等しいから、等号が成立している。左右の辺が表している事態が異なるということでは、(1)の場合と同様だが、(1)は抽象的な数の式だから、</p> <p> </p> <p>                    ●●●</p> <p>被乗数3×乗数4=●●●+●●●+●●●+●●●=●●●</p> <p>                    ●●●</p> <p>                    ●●● </p> <p> </p> <p>                   ●●●●</p> <p>被乗数4×乗数3=●●●●+●●●●+●●●●=●●●●</p> <p>                   ●●●●</p> <p> </p> <p> と、合同なアレイ図でイメージすることができ、同一のアレイ図に対する分節(見方)の違いと解釈することが可能となる。つまり、被乗数を乗数に、乗数を被乗数に交換できるから交換法則が成り立つという理屈になる。</p> <p> しかし、(3)式は、具体的な量の式だから、左辺と右辺の異なる事態はどこまでいっても異なる事態のままで同一の事態にはならない。「1あたり量」の数値を「いくら分の量」の数値に、「いくら分の量」の数値を「1あたり量」の数値に交換することはできない。(さやえんどう型で、さやの外枠を外すことができないから、アレイ図のようにさやの数と1つのさやの中の豆の数を交換して見ることができないということになる。)こういう理屈から、銀林さんは、「1あたり量×いくら分」の乗法では「交換法則は成り立たない」と言った。(『算数の本質がわかる授業②かけ算とわり算』11頁、2008年)</p> <p> つまり銀林さんは、「1人あたり3個×4人分」の式の数量を入れ替えて、「1人あたり4個×3人分」と書くと違った状況になるから、量のかけ算では交換法則は認められないと考えるようだ。</p> <p> しかし、銀林さんの師の遠山啓は、「1人あたり3個×4人分」の状況でも「トランプ配り」を考えて「1回あたり4個×3回」と書けば「1あたり量4×いくら分の量3」の式を表せることを示した。(前掲論文、1972年初出)</p> <p>つまり、</p> <p>  1人あたり3個×4人分=1回あたり4個×3回</p> <p>という形で、</p> <p>  1あたり量3×いくら分の量4=1あたり量4×いくら分の量3 </p> <p>という「量についての交換法則」が成り立つとしたわけだが、正直なぜこんな面倒なことをしなければならないのかと思ってしまう。</p> <p> 遠山さんは数教協の実質的な初代委員長(小倉金之助さんが発足時の委員長)、銀林さんは2代目委員長で、去年まで委員長だったのが小林道正さんだが、小林さんの考えはずっと鮮明である。</p> <p>  3個/皿×4皿=12個</p> <p>  4皿×3個/皿=12個</p> <p> 上のどちらの式も正しいとする。(小林道正『数とは何か』46頁、2012年、ベレ出版)この考え方は、私たちがネットでずっと言い続けてきたものだ。社会では、</p> <p> 「単価×個数」の式も、「個数×単価」の式も、</p> <p> 「速さ×時間」の式も、「時間×速さ」の式も、</p> <p> 「密度×体積」の式も、「体積×密度」の式も、</p> <p>両方の式が使われている。</p> <p>量についての交換法則は、</p> <p> </p> <p>(4)1あたり量3×いくら分の量4=いくら分の量4×1あたり量3</p> <p> </p> <p>で、良いではないか。</p> <p>つまり、3×4=4×3 のかけ算の交換法則の伝統的な理解は、</p> <p>(1)被乗数3×乗数4=被乗数4×乗数3</p> <p>  (乗数3×被乗数4=乗数4×被乗数3)</p> <p>だが、数については、</p> <p>(2)因数3×因数4=因数4×因数3</p> <p>量については、</p> <p>(4)1あたり量3×いくら分の量4=いくら分の量4×1あたり量3</p> <p>でいいのではないか。</p>
<p style="text-align:justify;">「メタメタの日」<a href="http://ameblo.jp/metameta7/entry-11800156726.html" style="text-decoration:none;color:rgb(0,0,0);">a×b=b×a―交換法則について(3)</a></p> <p style="text-align:justify;">  http://ameblo.jp/metameta7/entry2-11800156726.html#comment_module</p> <p style="text-align:justify;">で行なわれた議論を紹介する。まずブログの記事を原文のまま引用する。</p> <p style="text-align:justify;">「メタメタの日」<a href="http://ameblo.jp/metameta7/entry-11800156726.html" style="text-decoration:none;color:rgb(0,0,0);">a×b=b×a―交換法則について(3)</a></p> <p style="text-align:justify;">  3×4=4×3</p> <p style="text-align:justify;">上の式を見たら、たいていの人はあたりまえだと思う。</p> <p style="text-align:justify;"> 何故イコールが成り立つのかと理由を問われたら、だって両辺が(という用語を使うか、左も右も、と言うかの違いはあっても)どっちも12じゃないかと答えるか、かけ算では交換法則(という専門用語を忘れていなければ)が成り立つから、と答えるだろう。</p> <p style="text-align:justify;"> さらに、左辺の3と右辺の3は同じか、と問われたら、同じに決まっているじゃないかと答えつつ、何か落とし穴があるのか、だから数学は嫌なんだと不審感を顔に浮かべるだろう。</p> <p style="text-align:justify;">確かに、3×4=4×3であるように、3=3であり、4=4である。</p> <p style="text-align:justify;"> しかし、×の左(前)にある左辺の3は「かけられる数」と言い、×の右(後)にある右辺の3は「かける数」と言う(同様に、左辺の4は「かける数」、右辺の4は「かけられる数」)と、小学2年の秋に教わったことになっているが、覚えている人は少ないだろう。(「かけられる数」は、後に「被乗数」、「かける数」は「乗数」と教わる。)</p> <p style="text-align:justify;">つまり、3×4=4×3 の式は、3と4の数の意味も明記すれば、</p> <p style="text-align:justify;"> 被乗数3×乗数4=被乗数4×乗数3</p> <p style="text-align:justify;">となる。</p> <p style="text-align:justify;"> しかし、「かける数」という言葉はまだしも、「かけられる数」という言葉は、たいていの人は忘れているだろうし、言葉は忘れていなくても、3×4のいったいどっちが「かけられる数」で「かける数」かは途惑うだろう。</p> <p style="text-align:justify;"> 「掛ける」という言葉を「掛け算」の意味で使うことは昔からあったが、「かけられる数」という言葉は、明治時代にmultiplicandの訳として「被乗数」という用語が作られてから教科書や学校では使われるようになった。しかし日常生活では馴染みがない。おまけに「掛ける」とはどういう動作かわからない。(私の解釈は「「掛ける」のココロ」)</p> <p style="text-align:justify;"> そんな事情があるから、3×4=4×3の左辺の3と右辺の3には、「かけられる数(被乗数)」と「かける数(乗数)」という違いがあると言われてもピンとこないのは当然だと思う。</p> <p style="text-align:justify;"> しかし、かけ算を「同数累加」で教えていた時代(1980年代半ばまで)は、被乗数は同数累加の「同数」、乗数は「累加数」であった。</p> <p style="text-align:justify;">つまり、</p> <p style="text-align:justify;">  3×4=3+3+3+3=●●●+●●●+●●●+●●●</p> <p style="text-align:justify;">  4×3=4+4+4=●●●●+●●●●+●●●●</p> <p style="text-align:justify;">ということだった。</p> <p style="text-align:justify;"> 左辺の3は、●●●というモノの個数であり、右辺の3は、●●●●というモノを加えるハタラキの回数となる。モノとハタラキでは大変な違いがある。しかも、乗数(かける数)は倍数のことだから、3×4は「3の4倍」、4×3は「4の3倍」となり、明らかに左辺と右辺の意味は違う。</p> <p style="text-align:justify;"> そう言われて、3×4=4×3という式を見直しても、やはり左右の3や4にそんな違いがあるとは思えない。どう見ても同じ3であり、4である。</p> <p style="text-align:justify;"> 日本の算数教育では、遠山啓が、かけ算を同数累加で「定義」することに反対し、3×4の答えを「3+3+3+3」で求めても「4+4+4」で求めてもよいと、同数累加をかけ算の答の求め方の一つにまで貶めた。(「6×4、4×6論争にひそむ意味」『遠山啓著作集・数学教育論シリーズ5』114~121頁、初出は『科学朝日』1972年5月号)</p> <p style="text-align:justify;">そして、現在の日本の算数教科書のかけ算の導入は、遠山の考えの線に沿っている。</p> <p style="text-align:justify;"> 被乗数・乗数という用語は、×記号の左右の数の単なる呼び名としか思えない場合もある。ところが、×の左右のどちらを被乗数・乗数とするかは、19世紀の欧米では、左を被乗数、右を乗数とする解釈が大勢であったが、20世紀になると逆の解釈が大勢になったという変化があった(日本では、19世紀後半に欧米から教わった通りに、今でも×の左が被乗数、右が乗数だが)。</p> <p style="text-align:justify;"> 詰まるところ、被乗数・乗数の区別は、乗法が同数累加の簡便算として生れた母斑かもしれないと思えてくる。</p> <p style="text-align:justify;">被乗数・乗数という概念が不要であることは、素因数分解の場合にはっきりする。</p> <p style="text-align:justify;">  30=2×3×5</p> <p style="text-align:justify;"> のように、素因数が3つ以上ある場合に、因数を被乗数・乗数に区別することは無意味である。であるならば、</p> <p style="text-align:justify;">  6=2×3</p> <p style="text-align:justify;">と素因数が2つの場合にも、被乗数・乗数を区別することは無意味であろう。</p> <p style="text-align:justify;"> かけ算の2つの数について、被乗数・乗数という意味を捨象して、因数×因数と理解する行き方がある。かけ算は、被乗数を乗数回累加することではなく、2つの因数から1つの積を決定する演算と理解する(2つの因数から積の数値の決まり方は、2つの因数の数だけ縦横2次元にドットを並べたアレイ図のドット数となる)。</p> <p style="text-align:justify;"> 現代中国の小学数学(日本の算数)のいくつかの教科書がこの方式である。(掲載したのは、人民教育出版社小学教室編著『九年義務教育六年制小学教科書 数学第三冊』17,18頁、2001年)</p> <p style="text-align:justify;">つまり、</p> <p style="text-align:justify;">  3×4=4×3</p> <p style="text-align:justify;">の交換法則の理解は、次の2通りとなろう。</p> <p style="text-align:justify;"> (1)被乗数3×乗数4=被乗数4×乗数3(同数3×累加数4=同数4×累加数3)</p> <p style="text-align:justify;">    乗数3×被乗数4=乗数4×被乗数3(累加数3×同数4=累加数4×同数3)</p> <p style="text-align:justify;">(2)因数3×因数4=因数4×因数3</p> <p style="text-align:justify;"> (1)の左右の辺は異なる事態を表しているが、結果(積)が等しいから、等号が成立している。</p> <p style="text-align:justify;"> (2)式の数は、(1)式の数の被乗数・乗数の意味を捨象して、数をさらに抽象化している。左右の辺で表された事態は同一の事態であり、表記の仕方が異なるだけである(結果は当然等しい)。</p> <p style="text-align:justify;"> つまり、伝統的な(1)の交換法則の式を抽象化したのが(2)式ということになるが、逆に(1)を具象化すると、次の(3)式になる。</p> <p style="text-align:justify;">(3)1あたり量3×いくら分の量4=1あたり量4×いくら分の量3</p> <p style="text-align:justify;"> (3)は、遠山啓らの数学教育協議会が1950年代後半から提唱した「量の理論」に基づく式である。「数」についての交換法則ではなく、具体的な「量」についての交換法則だから、例えば、以下のようになる。</p> <p style="text-align:justify;">  1人あたり3個×4人分=1人あたり4個×3人分</p> <p style="text-align:justify;">  3km/h×4h=4km/h×3h</p> <p style="text-align:justify;">  単価10円×500個=単価500円×10個</p> <p style="text-align:justify;">  1匹あたり8本×3匹=1匹あたり3本×8匹</p> <p style="text-align:justify;"> いずれも左右の辺が表している事態は異なるが、かけ算の結果(積)が等しいから、等号が成立している。左右の辺が表している事態が異なるということでは、(1)の場合と同様だが、(1)は抽象的な数の式だから、</p> <p style="text-align:justify;"> </p> <p style="text-align:justify;">                    ●●●</p> <p style="text-align:justify;">被乗数3×乗数4=●●●+●●●+●●●+●●●=●●●</p> <p style="text-align:justify;">                    ●●●</p> <p style="text-align:justify;">                    ●●● </p> <p style="text-align:justify;"> </p> <p style="text-align:justify;">                   ●●●●</p> <p style="text-align:justify;">被乗数4×乗数3=●●●●+●●●●+●●●●=●●●●</p> <p style="text-align:justify;">                   ●●●●</p> <p style="text-align:justify;"> </p> <p style="text-align:justify;"> と、合同なアレイ図でイメージすることができ、同一のアレイ図に対する分節(見方)の違いと解釈することが可能となる。つまり、被乗数を乗数に、乗数を被乗数に交換できるから交換法則が成り立つという理屈になる。</p> <p style="text-align:justify;"> しかし、(3)式は、具体的な量の式だから、左辺と右辺の異なる事態はどこまでいっても異なる事態のままで同一の事態にはならない。「1あたり量」の数値を「いくら分の量」の数値に、「いくら分の量」の数値を「1あたり量」の数値に交換することはできない。(さやえんどう型で、さやの外枠を外すことができないから、アレイ図のようにさやの数と1つのさやの中の豆の数を交換して見ることができないということになる。)こういう理屈から、銀林さんは、「1あたり量×いくら分」の乗法では「交換法則は成り立たない」と言った。(『算数の本質がわかる授業②かけ算とわり算』11頁、2008年)</p> <p style="text-align:justify;"> つまり銀林さんは、「1人あたり3個×4人分」の式の数量を入れ替えて、「1人あたり4個×3人分」と書くと違った状況になるから、量のかけ算では交換法則は認められないと考えるようだ。</p> <p style="text-align:justify;"> しかし、銀林さんの師の遠山啓は、「1人あたり3個×4人分」の状況でも「トランプ配り」を考えて「1回あたり4個×3回」と書けば「1あたり量4×いくら分の量3」の式を表せることを示した。(前掲論文、1972年初出)</p> <p style="text-align:justify;">つまり、</p> <p style="text-align:justify;">  1人あたり3個×4人分=1回あたり4個×3回</p> <p style="text-align:justify;">という形で、</p> <p style="text-align:justify;">  1あたり量3×いくら分の量4=1あたり量4×いくら分の量3 </p> <p style="text-align:justify;"> という「量についての交換法則」が成り立つとしたわけだが、正直なぜこんな面倒なことをしなければならないのかと思ってしまう。</p> <p style="text-align:justify;"> 遠山さんは数教協の実質的な初代委員長(小倉金之助さんが発足時の委員長)、銀林さんは2代目委員長で、去年まで委員長だったのが小林道正さんだが、小林さんの考えはずっと鮮明である。</p> <p style="text-align:justify;">  3個/皿×4皿=12個</p> <p style="text-align:justify;">  4皿×3個/皿=12個</p> <p style="text-align:justify;"> 上のどちらの式も正しいとする。(小林道正『数とは何か』46頁、2012年、ベレ出版)この考え方は、私たちがネットでずっと言い続けてきたものだ。社会では、</p> <p style="text-align:justify;"> 「単価×個数」の式も、「個数×単価」の式も、</p> <p style="text-align:justify;"> 「速さ×時間」の式も、「時間×速さ」の式も、</p> <p style="text-align:justify;"> 「密度×体積」の式も、「体積×密度」の式も、</p> <p style="text-align:justify;">両方の式が使われている。</p> <p style="text-align:justify;">量についての交換法則は、</p> <p style="text-align:justify;"> </p> <p style="text-align:justify;">(4)1あたり量3×いくら分の量4=いくら分の量4×1あたり量3</p> <p style="text-align:justify;"> </p> <p style="text-align:justify;">で、良いではないか。</p> <p style="text-align:justify;">つまり、3×4=4×3 のかけ算の交換法則の伝統的な理解は、</p> <p style="text-align:justify;">(1)被乗数3×乗数4=被乗数4×乗数3</p> <p style="text-align:justify;">  (乗数3×被乗数4=乗数4×被乗数3)</p> <p style="text-align:justify;">だが、数については、</p> <p style="text-align:justify;">(2)因数3×因数4=因数4×因数3</p> <p style="text-align:justify;">量については、</p> <p style="text-align:justify;">(4)1あたり量3×いくら分の量4=いくら分の量4×1あたり量3</p> <p style="text-align:justify;">でいいのではないか。</p>

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