さて、待機組となったお姉さま(性別不明)は、現在緊急事態に陥っていた。
そのトラブルの原因は、先刻口にしたカレーである。
食べた直後は問題がなかったが、どういう訳か今になって腹部に反乱の狼煙をあげたのだ。
額に脂汗を浮かべながら、お姉さまは他の仲間に一言入れて近くの民家へと入っていく。
玄関をくぐり、直感で見つけたトイレに潜り込むと、その安全地帯へと一気に腰を下ろした。
(まったく、冗談じゃないわよ)
チャイナ服のスリットを上手にたくし上げ、どこにも接触しないよう細心の注意を払う。
やがて最大の危機を乗り切ったお姉さまに、新たな刺客が舞い降りた。
その敵は巧みにお姉さまの身体の中を駆け抜けると、とある一点にて襲撃を開始。
思わぬところからの痛みに、お姉さまは思わず胸を押さえた。
「くぅ……ぃッ、った」
山脈の頂上から心臓に向けて、針を刺したかのような痛みが響く。
もちろん性癖はMなどではないお姉さまにとって、この激痛は本当に苦しい。
ひざに頭を押さえつけながら、お姉さまは声を殺して苦痛に意識を集中させる。
仮に悲鳴をあげてしまった場合、仲間達は迷わずこの中に突入してくれるだろう。
だが、前部を晒したこの状態に、彼らは何と言うだろうか。
(冗談、じゃ、な、い、って)
自分にはそんな趣味はない。
光り輝く道を残したり、アッーな展開にされたり、空気やりたい放題だったり。
そんな濃ゆいキャラになど、なってたまるものか。
(大丈夫。私は乙女として越えちゃいけない線は越えない)
この強い意志で、先端部を中心に広がる追撃隊をねじ伏せていく。
すると、あれだけ猛威を振るっていた胸の痛みが、自然と和らいでいった。
高く鳴り続けていた心臓も、今はゆっくりと速度を落としている。
「ふぅ……ようやく収まったか」
「お姉さまよ。安心するのはまだ早いぞ。事件現場を見よ」
「うわぁ! ど、どこから出てくるんだお前はッ!」
股間からにょっきりと現れたディーに青龍刀を突き刺しながら、お姉さまは胸をなでおろす。
と、ここで妙な手触りを感じる。無意識に触れた左手が直接肌に触れ、しかもなぜか湿っているのだ。
しかも、ちょっとだけネバネバしているのと、懐かしくて甘い匂いまでする。
事実を確かめるべく、自らの胸元に視線を下ろすお姉さま。
警戒せずに下げた目線の先には、酸でも浴びたかのように溶けたパッドと、腹部だけ穴の開いたチャイナ服。
「……」
「恐ろしいぐらいに溶けておるな」
「……」
「ちなみに、我はおっきいおっぱいも好きだが、お姉さまぐらいのちっぱいぱいも大好きだ」
「……」
「ところで、この溶かした液体が何処から出たか、我はそろそろぶっちゃけたいのだが……」
「……言うな」
言わなくても解る。なにせ、自分の身体だ。
目を背けようにも、未だに垂れ流し状態であることは肌で感じている。
どうやら間違いない。なぜか大きくなった胸に装飾してある、ピンクな突起物から溢れているそれは――
「「母乳だ」」
声が重なる。片や沈んだように。片や賛美歌を歌うかのように。
ピンクな先端目掛けて手を伸ばすディーを踏み潰しつつ、お姉さまは頭を抱えて思考を高速回転させる。
「まてまてまてまて! 私の胸から何か出てきた。うん、それは認めよう。
けど、何で私なんだ!? 他にもうってつけの存在とかいたんじゃないのか!?
というか、私はマジで性別どっちなんだ!? 女? 男? えっと、母乳ってどっちもでる……
いやいやいや。それ以前に、どうして突然母乳が出てきたのよ! 二段階ぐらい飛ばしてるわよ!
それと、なんでその母乳が洋服とかパ……パッドとか溶かしちゃうわけ!?
つーか、よくよく考えたら一人称がいつのまにか私になってて、しかも違和感ないってどういう事!?」
一つの疑問を口にした途端、芋蔓式のように次々と疑問がわきあがってくる。
頭を左右に振り、軽く錯乱状態に陥っているお姉さま。
その肩にそっと手を置いて、ディーは珍しく真面目な顔を作った。
「お姉さまよ……原因はともかく、一つ良い事が判明したぞ」
「な、何? 良い事って何よ? この状態でどんないい事が起こるのよ!?」
涙目のお姉さまを抑え、こほんと咳をしたディーは真剣な瞳で口を開く。
「逆に考えよ。これにより、お姉さまはえぐれ乳と巨乳の両方の属性を手に入れたと考えるのだ」
「……」
「それともう一つ、その母乳は浴びた物をなんでも溶かすらしい、例外はお姉さま自身という事か」
「……」
「ちなみに、定期的に母乳を出さないと、お姉さまの中で暴発して結構危険らしい。これだけは注意だ」
「……」
「どうだ。我のおっぱいソムリエセンスもなかなかのものだろう。さて、服も新たな物にせねばなるまい……ソイヤ!」
沈黙を続けるお姉さまを無視しして、ディーは至極真面目な顔で解った事を述べていく。
そして軽く指を鳴らすと、お姉さまの服装をチャイナ服からメイド服へと変化させた。
物言わぬまま下を向き続けるお姉さまに気付かずに、ディーは本当に嬉しそうな顔で何度も頷いた。
「そのメイド服の胸の部分に、特別にマジックテープで開閉できる部分を作っておいた。
これならば、咄嗟の時に母乳弾幕を張ることが出来るぞ……うむ。我ながら良いセンスをしている」
お姉さまは淡々と自らの胸に手をやり、マジックテープの有無を確認する。
テープをはがすと、そこには何十にも重ねられたパッドが姿を現していた。
「その特製パッドならば、お姉さまの母乳を一時的に抑えられる。溶ける事はあるまい。
また、普段母乳が溜まっていない……えぐれ胸状態の時も、胸の厚みが変わらぬよう自然とパッドが補充される」
トイレの窓を開けながら、ディーは一仕事終えた顔を覗かせる。
肩を震わすお姉さまの気配など、未だに気付く気配がない。
「そうであった。その姿になったらこれをやらなくてはなるまい」
踏み込んではいけない線を越えたことも気付かず、両手を口に添えてお姉さまに向き直る。
「よ!パッド長!」
とりあえず、無意識な暴発を防ぐのも兼ねて、お姉さまはディーに母乳弾幕を浴びせる。
溶けていくデイーの顔は、どこか達成感に満ちた顔だった。
【昼】【C-3 市街地】
【お姉さま@ギャルゲロワ】
【装備】:青龍偃月刀、ディー、冥土服(メイド服)
【所持品】:支給品一式、支給品一式(他ランダムアイテム1)
【状態】:健康、やや怒り
【思考・行動】
基本行動方針:殺し合いに乗ってる人間を止め全員での脱出。
0:ちょ、私にどうしろっていうのよorz
1:しばらくここで待機。残月とルーキーが心配。
2:戦う覚悟。
3:あのルーキーって男、大丈夫だよな?
4:ハクオロの姿をした参加者……候補のロワは三つ(ギャルゲ・葉鍵・アニロワ1st)か。
5:パンタローネの様子がおかしい 。
※容姿はパッドち……というかまんま東方の十六夜咲夜です。
※性別は未だ不明。
※ディーにより東方キャラに変わる力を得ました。何に変わるかはディーの気分次第。確率的には咲夜が高い。
やばすぎる能力には制限がかかってます。
※ディーは制限により弱まっています。そしてそれが原因でちょっと逝ってます。
※ギャルゲ版最速の人の死体を見つけると、もしかしたらディーの力が少し復活するかもしれません。
また、その後ディーがどれだけ協力してくれるかは、次の書き手さんにお任せします。
※カレーは完食しました。今のところ平気の様子。ディーのお陰?
※胸はパッドです。
※ディーも性別についてはしりません。
※母乳弾幕が使用可能になりました。設定や詳細は後の書き手さんにお任せします。