――きっとこれは、ガラにもないことをしようとした罰なんでしょうね。 だいたい、私がマーダーでなかったこと自体、特大の死亡フラグよ。 どう考えたって1stの時のような無差別マーダーが期待されてたはずだもの。 爆弾の1つも仕込まないで、やってることは罪滅ぼしと対主催。 あまつさえ、狂気フラグを立てるどころか、へし折る側に回ろうとして……。 そこにこれ幸いと微かな希望を見出してごらんなさい。すぐに死ねること請け合いよ。 適度に見せ場も貰えたし、このまま私の死が特大の鬱に繋がるなら、頃合なのかもしれないわ。 彼女の行く末を見届けられないのは、ちょっと残念だけど……ね。 だけど。 彼女のことについては、負けを認めるにしても。 実はもう1つだけ、心残りがあるの。 まだこのまま死ぬわけにはいかない理由があるの。 ちょっと聞くけど……このロワ、誰か対主催、ちゃんと進めてるの? 「対マーダー」じゃなくて「対主催」。いい、ここの所は大事よ。混同しちゃいけない所よ。 マーダーに反発して戦ってる人はきっと居るとしても、誰かちゃんと主催の思惑とか考察してるの? 私以外に誰か、首輪の解析とか、会場からの脱出方法とか、考えてるの? ……きっと、誰も進めてないわね。 いいえ、進める気があっても噛み合ってないのね。直感的に分かっちゃう。 空に向かって放たれた攻撃とかが、いつかどこかに繋がるのかもしれないけれど……それだけじゃ足りない。 ああ、ぶっちゃけちゃうけど、別に脱出エンドそのものに固執する気はないわ。 でも現時点で優勝エンドに決まってしまうのも、勿体無さ過ぎる。 かといって、裏設定開示や主催側の内紛で無理やり脱出に引っ張られるのも、かなり萎える。 もうちょっと……もうちょっと人数が減るまで、どちらに行くのか分からない状態でなきゃならない。 狂気と正気の狭間でみんなが揺れ動くためにも、微かな希望は存在しなきゃいけない。 そしてその、吹けば飛びそうな小さな希望の火は、私の手元にある。 私の名前は『ボマー』。 誰が名付けたかは知らないけれど、自他共に認める『爆弾魔』、よ。 この隔離された閉鎖空間からの脱出については、完全に門外漢だけど…… ――爆弾を解析し、分析し、解除するに当たって、これ以上の『キャラクター』がいると思う? ☆ ☆ ☆ 「死ぬかと思った、と言わざるを得ない」 海の中から這い上がりながら、その見事な肉体美を誇る男・シルベストリは溜息をついた。 旅館ごと弾け飛び転移を強要され、吹き飛ばされた先は海の上。 必死に泳いで泳いで泳ぎ抜いて、ようやく海辺の温泉エリアに戻ってきた所である。 はっきり言って彼の視点からは、何が起こったのか見当もつかない。 見当もつかないが……とりあえず、温泉に戻らねば、とは思った。 何しろ仲間が集まる拠点なのだ。そして彼はそこを「守る」役目を請け負ったのだ。 「……建物は吹き飛んだと言わざるを得ない。 そして、ここで風邪を引かないためにも、温泉に入らざるを得ない」 海水をたっぷり吸い込んだマントと仮面を脱ぎ捨て、手荒に絞って手近にあった洗面器の中に入れておく。 開始時同様、素っ裸になったシルベストリは、そして…… 温泉傍の洗い場スペースで、その蠢く「モノ」と出会った。 ☆ ☆ ☆ たった1回、実際の爆発を見れれば十分だった。 最初の見せしめの時には、爆破自体が不意打ちだったわ。だから見逃してしまった。 でも、絶対に起こると分かっている爆発なら、絶対に見逃したりはしない。じっくりと観察できる。 ま、集中し過ぎてたのと、同時に別の考えごとしてたのが私の敗因になっちゃったんだろうけど……。 あの男の言葉に、私は敗北した。 鋼線にでもなく、技術にでもなく――言葉に。そして発想に。私は敗北した。 持ち上げて落とす。落とすために持ち上げる。それがセオリー。 そして、終わらないことこそが不幸。終わることが出来ないことこそが不幸。 ……まさにその通りだ、と、不覚にも思ってしまった。 ああ言われてしまえば、あれ以上足掻いても無意味なだけ。より深く傷を広げるだけ。 仮に状況をひっくり返せたとしても、惨めなだけ。 用意された極上の鬱展開を前に潰せなくなってしまったのは、ふふふっ、LS書き手のサガかしらね。 そこまで読んで仕掛けてくるんだから、もう、白旗を上げるしかないわよ。 だから――抵抗のために使えるはずだった『力』は、別のことに使おうと思った。 私自身の力ではなく、スタンドDISCによる借り物の力でしかなく…… しかし同時に、「全ての能力が揃った」スタンド。 それを、この戦い「以外」の所に使おうと思った。 ☆ ☆ ☆ じたばたしていたコイキングが湯船に飛び込み、タコが踊りながら後退りする。 ブリが水面を打つ音が悲鳴のように響き渡り、小さな鯛焼きがコソコソと物陰に隠れる。 彼らは野生の勘で察知したのだ。 「それ」に近づいてはならないと。「それ」は死を齎す存在だと。 キュラキュラと、キャタピラの軋む音が近づいてくる。小さな影が、物陰から姿を現す。 「……コッチヲ……ミロォ~~!」 奇妙な声。 その正体に思い至った時、シルベストリは血の気が引くのを感じた。 「これは……逃げるべきだと言わざるを得……」 漫画ロワ書き手の彼にとっては、よく知った存在。 『シアーハートアタック』。 吉良吉影のスタンド「キラークィーン」第二の爆弾。 自動的に人間の体温を追尾する無敵の戦車。 狙われれば苦戦必至、承太郎のスタープラチナをもってしても破壊しきれぬ絶対的な強度。 「…………」 だが……何かがおかしい。 腰を浮かしかけたシルベストリは、異変を感じて湯煙の中で目を凝らす。 逃げ遅れる危険が増すのを承知で、そのシアーハートアタックをじっと見つめる。 ……無敵のはずの戦車のボディに、ヒビが入っていた。 片方のキャタピラが、外れかけていた。 戦車に刻まれた髑髏のレリーフにも損傷があり……その欠けた部分に、何か引っ掛かっている。 何かを引っ掛けて、ズルズルと引き摺っている。 満身創痍のボロボロの姿で、それでもなお、「それ」を落とさないよう、必死に這いずっていた。 「……ミツ……ケ……タゾ……! ニンゲン……ノ……タイオン……!」 「これ、は……!」 シルベストリの脳裏に、JOJO第四部のとあるシーンがよぎる。 それはシアーハートアタックが使われた場面ではない。キラークィーンが大暴れした場面でもない。 むしろ、キラークィーンの被害者の姿。殺人鬼・吉良吉影の犠牲になった1人の少年の姿。 「これはむしろ、『重ちー』の、『ハーヴェスト』の最期の……!」 「コッチ……ヲ……ミロ……ォ……!」 呆然と、口癖すら忘れて呟くシルベストリの目の前で、シアーハートアタックはついにその動きを止めた。 ボディに入ったヒビ割れが広がり、割れ、壊れ、砂のように崩れ落ちていく。 無敵のはずの自走戦車が、あっけないほど簡単に自壊していく。 後に残されたのは……1つの首輪。 軽い音を立てて落ちたそれは、カラカラとシルベストリの足元まで転がっていって、そして…… パカッ、とまっぷたつに割れて、動きを止めた。 ☆ ☆ ☆ 実のところ……首輪は、恐ろしくシンプルな構造だったわ。 それこそ、私の持つ爆弾技術を使えば一瞬で分解できてしまうような、そんな雑な作り。 流石に自分の首元に嵌った首輪は、作業も面倒だし鏡も無かったし、そう簡単には行かなかったんだけど…… 私の手元には、もう1つ、別の首輪があった。 開始早々に死体から入手した首輪。名前も所属ロワも知らない人の首輪。 これを使って、私の発見を伝えなければ。 『首輪は簡単な構造である。首輪は構造を知ってれば中学生でも解除できる。 首輪には、なんと盗聴器すらついていない。主催者側は、首輪のことをさほど重視していない』 ……このメッセージのどれだけの部分が伝わるかは、私にも分からないわ。 でも、私はやれるだけのことをやった。 自分の身体を盾に、相手の死角に隠れるようにして、キラークィーンの腕と小さな爆発を用い、首輪を分解。 キラークィーン第二の爆弾、シアーハートアタックにそれを委ねる。 自爆機能を破壊した上で、みんなとの集合の約束をしていた温泉の方に、密かに送り出した。 きっと「あの首輪」を受け取った人は、その内部構造を理解できる。素人でも一目で構造を理解できる。 元から簡単な構造だったところに加えて、私が「理解しやすいように」分解しておいたのだから。 理解さえできれば、あとは命を預け合える仲間と、ほんのちょっとの勇気があればいい。 誰に出会い、誰に届けてくれるかは完全に賭け。 下手をすればマーダーに見つかり、そこで全てが止まってしまうかもしれない。 下手をすれば誰かに出会う前に私が死に、どこにも届かずに終わってしまうかもしれない。 けれども、私はやれるだけのことはやったのだ。 ……ああ、別に贖罪のつもりはないわ。今さら誰かを救おうなんて気もない。 そんなつもりなら、この力を使ってこの束縛から脱している。 マスク・ザ・ドS氏を倒して、コ・ホンブックちゃんを助け出している。 そんなつもりじゃなくて。 贖罪のためでもなく―― 不幸を脱するためでもなく―― どこかの誰かを、一旦持ち上げるために。 その後に落ちるやもしれぬ危機に陥れるために。 天秤の揺らぎを、まだ止めないために。 この「書き手ロワ」という「不幸」を、どこまでも引き伸ばすために。 ああ……でも流石に、コ・ホンブックちゃんが泣き喚く姿を見せつけられると、心が痛むわね。 そんなこと言う資格は無いんだろうけれど、せめてこの子だけでも救いたかった。 あるいは、この気持ちもあの男の想定内なのかもしれない。 シアーハートアタックのことも分解した首輪のことも、全て分かった上で見逃してくれたのかもしれない。 全く、何て恐ろしい男―― 【 B O M B ! 】 ☆ ☆ ☆ 「……どこの誰かは知らないが……これは、受け取らざるを得ない」 シルベストリは落ちていた首輪を拾い上げる。 こうして見れば一目瞭然。 外装が2つに割れ、内部の機械や爆薬らしきものが露出し、首輪の構造がこれ以上ないほどよく分かる。 分解防止のための回路もないようだ。盗聴器らしきマイクも見当たらない。 この分解された首輪と、首に嵌っている首輪を見比べて、適切な部分を適切な方法で壊せば――! 「……だが、その前に身体を温めざるを得ない。ここで風邪を引いたら元も子も無いと言わざるを得ない」 だがとりあえず、今シルベストリ1人で出来ることはあまり無い。 その首輪を大切そうに洗面器に入れて置くと、彼は再びその見事な肉体を温泉に沈めるのだった。 【昼】【H-8 温泉・露天風呂(混浴)】 【シルベストリ@漫画ロワ】 【状態】:全裸。 【装備】:なし。 【道具】:支給品一式、白手ぬぐい、覆面&マント@FFDQロワ(海水で湿ってる)、 『闇その2@スパロワ』の首輪(分解され内部構造がよく分かる) 【思考】 基本:サ ー ビ ス シ ー ン 担 当 1:海で泳いで冷えたので、温泉で身体を温めざるを得ない。 2:風呂から上がったら改めて首輪のことを調べざるを得ない。 3:みんなが帰ってくるのを待たざるを得ない ※容姿はシルベストリ@からくりサーカスです。 ※両目があります。金玉絶賛引き上げ中です ※覆面&マントを装備した場合、外見が荒くれ仮面(FFDQロワ参照)になります。 ※以下のものが気持ち良さそうに温泉で泳いでいます。 たいやき(Lv99コイキング)@ニコロワ、ブリ@アニロワ2nd、タコ@漫画ロワ 鯛焼き(THE FIRST@ライダーロワが焼いたもの。なぜか「およげ!たいやきくん」状態) ※温泉少女の支給品一式、モンスターボール@ニコロワが放置されています。 |181:[[影の参入者]]|投下順に読む|183:[[第二次スーパー書き手大戦 第183話 了承!!]]| |181:[[影の参入者]]|時系列順に読む|183:[[第二次スーパー書き手大戦 第183話 了承!!]]| |139:[[罪と罰~全てはフラグ・ビルドのために~]]|シルベストリ|197:[[静かなる~Ge-道~]]| |163:[[絶望可憐少女達]]|&color(red){ボマー}||