生物資源のバーコード管理
生態系の評価が人員的にも予算的にも、そして時間的にもかなり大きなプロジェクトにならざるを得ないことは、自然保護活動においてひとつの障壁となっていたが、DNAバーコードを利用した生物資源の管理がそれを解消する一つの方策となりうる。水系のみならず、森林や湿地などほかの場所でも応用することができるように思える。
アメリカ式の保全生物学を背景とした環境倫理学においては、少人数・低予算でも高精度で生態系を評価することができるこのDNAバーコードを用いた手法は革新的なものとして位置づけられるだろう(もっとも自然保護において、生態系の評価軸は遺伝的多様性のみではなく、景観などの文化的要素も含むが)。
水系の生態系保護に関しては、以下の内容が印象的であった。
アメリカ式の保全生物学を背景とした環境倫理学においては、少人数・低予算でも高精度で生態系を評価することができるこのDNAバーコードを用いた手法は革新的なものとして位置づけられるだろう(もっとも自然保護において、生態系の評価軸は遺伝的多様性のみではなく、景観などの文化的要素も含むが)。
水系の生態系保護に関しては、以下の内容が印象的であった。
- 藻場の種類と水深をファクターとして、藻場生物層で生物は明瞭に棲み分けている。また、一時利用種が藻場生物層の主要構成因子であること。
- 部分的な藻場再生では水域生態系は回復せず(大阪湾など)。藻場と周辺の生物相は一体であり、回復したい魚種に適した藻場の選択が重要。
- アメリカの各州では、水産試験場でDNAバーコードを管理する施設がある
食害 ニホンカモシカとツキノワグマの場合
獣害とひとくくりにされがちである、野生動物による農作物への食害も、それぞれの動物種の摂食行動を調査することにより、その傾向に合わせた対策をとることが可能である。
たとえば、ニホンカモシカは餌を少しずつ食べながら移動する動物種(ウィーン・シフト戦略)であり、ツキノワグマは餌がなくなるまでその場所にとどまる習性(ウィーン・ステイ戦略)を持つ。また、前者は山中に充分な食料があるときにも、栄養価の高さ・乾物率の高さ(タンパク質・炭水化物含料が高い)を満たす農作物を“おやつ代わり”に食べていることは後者と対照的である(さらにいえば、カモシカの場合、個体のあいだで畑に行くことに慣れているものと慣れていないもののの差が大きい)。また、ブナの実が凶作であるほど、有害駆除されるクマの数が増える=里に降りてくる個体が増えるが、クマが駆除されるのは7-9月のあいだであり、ブナの実が結実する前であることを考えると、クマがあらかじめどのようにブナの凶作を予知するのかは興味深い。(cf.カマキリが卵を産みつける高さと積雪量の関係)
たとえば、ニホンカモシカは餌を少しずつ食べながら移動する動物種(ウィーン・シフト戦略)であり、ツキノワグマは餌がなくなるまでその場所にとどまる習性(ウィーン・ステイ戦略)を持つ。また、前者は山中に充分な食料があるときにも、栄養価の高さ・乾物率の高さ(タンパク質・炭水化物含料が高い)を満たす農作物を“おやつ代わり”に食べていることは後者と対照的である(さらにいえば、カモシカの場合、個体のあいだで畑に行くことに慣れているものと慣れていないもののの差が大きい)。また、ブナの実が凶作であるほど、有害駆除されるクマの数が増える=里に降りてくる個体が増えるが、クマが駆除されるのは7-9月のあいだであり、ブナの実が結実する前であることを考えると、クマがあらかじめどのようにブナの凶作を予知するのかは興味深い。(cf.カマキリが卵を産みつける高さと積雪量の関係)
昆虫の自然免疫調整機構
昆虫の生体防御は自然免疫のみによってなされていることについて、数年前から興味深く思っていた。カイコの免疫系についての論文で知ったのが最初で、それも「昆虫はストレスによって外傷もなく死んでしまう現象(講義のなかではハイイロゴキブリが例としてあげられていた)」についてのものだった。そのうえで、自然免疫の活性調整を担う[サイトカイン]の一つが、昆虫の発育阻害ペプチド(Growth-blocking peptido:GBP)であることは興味深い(GBPはアミノ酸25基という、動物サイトカインのなかでも最小のもの。重要な生理機能(細胞増殖活性、血球活性化作用、幼虫麻痺作用、心筋収縮活性、そして初期発生過程での頭部形態形成など)を担っている)。寄生バチによる寄生によって発見されたGBPが、非寄生下(注射もせず、強制発現措置もとらず)では、なにをきっかけに産生され、何のフィードバックによって調整されうるのか。
- 昆虫がどのようなプロセスで、ストレス死するのか?→神経系への負荷、免疫系への影響
気孔のシグナル伝達機構
[気孔>気孔の開閉システム:ATPを利用して、プロトンポンプが作動。]のシグナル伝達機構は、複雑にからまりあっていて、シンプルにまとめることはできない。東京の電車・地下鉄のように、単線ではなく複線で行われる(新橋駅から新宿駅へ行くときの地下鉄の経路のように)。動物がいくつものホルモンで恒常性を保つのと同じである。
シグナル分子として活性酸素(ROS)があげられる。
たとえば、ソラマメ(日本一のソラマメ生産地は、鹿児島県)におこる、ソラマメしみ症に感染した個体は、アブシジン酸(ABA)に対する感受性が非常に弱い。
シグナル分子として活性酸素(ROS)があげられる。
たとえば、ソラマメ(日本一のソラマメ生産地は、鹿児島県)におこる、ソラマメしみ症に感染した個体は、アブシジン酸(ABA)に対する感受性が非常に弱い。
- NOは血管拡張因子 アルギニン→シトルリン+NO
- 一酸化炭素(NO)が動物において血管拡張作用を持っていることについては知っていたが(ノーベル賞)、植物においても、活性酸素の活性発現にかかわっているものとは知らなかった。
- 進化のプロセスで、動物と植物の両者が同じ物質(それも自らにとって毒素となる物質)を、重要なシグナル分子として作用させていることは興味深い。
- 鹿児島はソラマメの日本一の生産地。「鹿児島県民のソウル・フード」
- 生理学は化学がわからないと非常にきついものがある
沖縄県産特産物の機能性成分
- フェノール化合物…抗酸化能
- ノビレチン…発ガン抑制物質など
- クルクミン…肝保護作用などの生体調節
ところで、以上3つの特産物が、沖縄県民にどのようなかたちで食されているのか(1985年から2000年までのあいだにどのように消費量が変化したのか)。そして、すでに本土で、どのようなかたちで食されているのかは気になる。また、「医食同源」が基軸となっている沖縄の食文化が、欧米化の影響を受けてどのように変化したのかということも気になる。これはフード・ファディズムと関連すると思われるが、体に良いものを食べることだけが医食同源ではなく、○○はあるお祭りのときにだけ食べる、○○と××を食べ合わせない、という制限・節制のほうにむしろ重点がある(はずである。「食のタブーを持たない民族が存在しないことから考えても」)。
アメリカ農業経済史
アメリカの農業を知れば知るほど、日本の農業の特殊性が際だつように思える。
例えば、4エーカー(アメリカ・アイオワ州の100分の1、「俺の家のバックヤードより狭いよ、HAHAHA」)で、300万ドル/年(アイオワ州の農家の3倍)を稼ぎ出す農家(たとえばイチゴ農家)が、栃木県にはたくさんあること。
例えば、アメリカでは、農場の後継者が自分の子供だとは限らないこと。第三者に平気で売られる。だから、子供がある農場を受け継ぐときには、「親から農場を買い取る」というプロセスがある(18歳を過ぎたら一人立ちをして、親とは同居しない。農場でも、二つの家がある。アメリカが移民と開拓地の国である伝統があるのだろう)。
アメリカでは1980年代から、契約農業の進展によって世界一、BigでStrongな農業が実現された。しかしそれが、GoodでFrendryな農業とは限らない。
例えば、4エーカー(アメリカ・アイオワ州の100分の1、「俺の家のバックヤードより狭いよ、HAHAHA」)で、300万ドル/年(アイオワ州の農家の3倍)を稼ぎ出す農家(たとえばイチゴ農家)が、栃木県にはたくさんあること。
例えば、アメリカでは、農場の後継者が自分の子供だとは限らないこと。第三者に平気で売られる。だから、子供がある農場を受け継ぐときには、「親から農場を買い取る」というプロセスがある(18歳を過ぎたら一人立ちをして、親とは同居しない。農場でも、二つの家がある。アメリカが移民と開拓地の国である伝統があるのだろう)。
アメリカでは1980年代から、契約農業の進展によって世界一、BigでStrongな農業が実現された。しかしそれが、GoodでFrendryな農業とは限らない。
- GDPで農業が占める割合は、日米ともに10パーセントに満たない。しかし、肥料・農薬、流通など関連産業を合わせると10パーセントは越える。
- アメリカでは若い人が契約農業(園芸、畜産)にコミットすることが多い。ただし、年の高い人は、穀物をやっている人が多い。穀物は契約農業の比率が低いので、そのせいでそのような年齢層になっている。また、合衆国政府はハイリスク・ハイリターンの農業についてどのように見ているのかといえば、優勝劣敗の新陳代謝のひとつの形態としてみなしている。アメリカ農務省ではとくに対策をとるつもりはない。
- アイオワ州では土地価格がバブル化している。とはいいながら、穀物価格はシカゴ市場では史上最高値を更新している。農業関係に投資をしている人は多い。
- なぜアメリカ大陸はコロンビア大陸ではないのか??
- 産業革命はイギリスで起こったが、ガソリン・エンジンが作られたのはアメリカ、アイオワ州。
●作物農家の年収と農業形態について(日米でだいたい共通)
ふつうの農家 3000万円
ほかの人とは異なる農業をやっている 5000万円
ほかの人とは異なる農業をやっていることを知られている 1億円
ふつうの農家 3000万円
ほかの人とは異なる農業をやっている 5000万円
ほかの人とは異なる農業をやっていることを知られている 1億円
