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前を向いて歩こう - (2007/11/02 (金) 14:53:57) のソース

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<font size="6">前を向いて歩こう</font>
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<p>学校の中庭にひっそりと佇む、小さな日本家屋。</p>
<p>見る人が見れば趣のある立派な庵。</p>
<p>でもきっと、大志や陽から言わせれば、“ただのボロ屋”。</p>
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ここは、学校の設備としては珍しいと思われる学校所有の茶庵だ。日本文化好きのこの学校の理事長が、この学校を設立すると決めた時に設置を決めたらしい。       「 横浜という土地柄、都会育ちで日本の文化に触れる機会のない生徒が多いに違いない。そんな生徒たちに、日本文化の素晴らしさを伝えたい」という、理事長の情熱がこもった施設だった。</p>
<p>それだけあって、中庭の環境は上々だ。              </p>
<p>春には桜が咲き誇り、夏には木々の緑が涼しげに揺れる。                </p>
<p>秋はすすきに紅葉。冬には山橘が寂しい光景に赤く浮き上がる。</p>
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静かで居心地がよく、中庭なのに日当たりもよいので、生徒や教員の憩いの場所となっていた。逆にここで派手に騒ごうものなら大問題で、中庭はあくまで“静かに、心安らかに”というのがこの学校で暮らす者たちの暗黙の了解となっていた。</p>
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そんな中庭の茶庵が、茶道部の活動場所だった。         茶道部はこの学校が創立された時からの部活の中でも最も古い類だ。活動は、文化祭でのお茶会を筆頭に、学外からのお客様を迎えたおもてなしのお茶会、出張茶会、講師の先生を招いた勉強会などだ。</p>
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<p>「―――小島君、よかった。いい所に。」</p>
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後ろから声をかけられ、小柄な黒髪の少年が振り向く。    振り返ったその先には、細くて赤いふちの眼鏡をかけて、長い髪を後ろでひとつにまとめた若い女性が立っていた。</p>
<p>「あ・・・西野先生・・・。どうしたんですか・・・?」</p>
<p>“小島君”と呼ばれた少年の声はあまりにも小さくて、消えてしまいそうな声。でもこれが、彼にとっては普通のボリュームだ。</p>
<p>「今日からいらっしゃる講師の先生がもうすぐお見えになると思うから、みんなにそろそろ部室に移動するよう放送部にアナウンス頼んでくれないかしら。」 </p>
<p>「はい・・・わかりました。」</p>
<p>「頼むわね。」              </p>
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