籠の中(その7)

598 名前:籠の中 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/09(土) 05:22:23 ID:fZ5RYXhe
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

夢を見ていた。
ずっとずっと、抱いていた夢。
あの人の、にいさんの本物の家族になるという夢。
たったそれだけの、ささやかな夢だ。
にいさんは。
月ヶ瀬真理は。
月ヶ瀬聖理を心から愛してくれている。
本物の妹。
正真正銘の家族。
そう、認めてくれている。
「さとりちゃんは“妹”じゃないでしょう!」
性酷薄なあの女が何度そう云っても。
「聖理は俺の妹だ」
迷うことなく、そう云ってくれたのだ。
綺麗な。
本当に綺麗な顔。
男の人なのに。
とても整っていて、そして優しい笑顔。
柔らかな瞳で。
「聖理」
そう呼びかけて貰えるだけで。
私の身体は歓喜に震え、身体の奥が甘く疼く。
私の髪を優しく撫ぜる大きな掌はとても暖かくて。
それだけ。
たったそれだけで心が安らぐ。
孤独な自分が暖かく満たされて往く。
魂に齎されるその快感は、とても言葉で語れるものではなかった。
今も昔も。
私を救ってくれたのはにさんだけだ。
にいさんに出逢って、私は自信をつけた。
私が私でいて良い。
そのことに卑下しなくなった。
『成金』
そう云って私を蔑んでいた級友達を力で服し、二度と侮蔑できぬようにしてやった。
歌。
にいさんが褒めてくれたもの。
認めてくれたもの。
別の意味での、私の価値。
有象無象の人間が私を認める一部位。
けれど、この人の為だけにある、私の声。
「にいさん」
そう呟くためだけに。
「愛してる・・・」
そう歌うためだけに。
この声は神様がくれたのだ。
どうして私は独りだったのだろう。
ずっと悩んでいた。
嘗ての私は、孤独である意味がわからなかった。
けれど、今なら理解できる。
一人。
私に必要な者は一人だけ。
それを気づかせる為に、神様は私を独りにした。
どうして私はイトコなのだろう。
実の妹ではないのだろう。
そう悩んだこともあった。
でも、それも解った。

599 名前:籠の中 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/09(土) 05:25:06 ID:fZ5RYXhe
この人と――
私のにいさんと合法的に結ばれるために。
そして家族でもあるように。
“血の繋がった他人”として、私は生を受けたのだ。
「にいさん」
眠る従兄に手を這わす。
私の瞳は潤み、頬が上気している。
「にいさん、知ってる?鶉ってね、イトコを最良の恋人にするんだよ?」
ぷちり。ぷちりと。
にいさんに纏わり付く衣服を剥がして往く。
「生物には種を残す本能だけじゃない。自己を残すと云う本能があるの・・・・」
かちゃり。かちゃりと。
にいさんに巻かれたベルトを外す。
「だからね、自己に似た他者――イトコを最も愛するんだよ」
頬を舐める。
すべすべしていて、とても柔らかい。
「近親相姦は動物にすらない。メイトアウトがあるのはインセストを防ぐため。兄妹で愛し合うのは
おかしいよね?愛しあって良い兄妹は、イトコだけなんだよ?」
首に腕を回し、耳たぶをしゃぶる。
「鳥にだって近親回避はあるんだよ?歌声が同じもの。羽の模様が近いものは、互いに避けるの」
唇をなぞる。
ぷるぷるしていて、見ているだけで喉がなる。
「でもね、適度に“近い”模様や、声を持つもの――イトコは最良の番いなの。自己を、そして種を
残すと云う撞着する本能を止揚できる相手だから」
そっと口付ける。
私の、ファーストキス。
「人間の間でも云うでしょう?身体を重ねるとき、最も具合が良いのはイトコ同士だって」
ジッパーを下ろす。
にいさんの、大きくて太い男の証がさらされた。
「これが――今から私の“中”に入るんだ・・・」
ごくり、と唾を飲んだ。
空気は乾燥していないのに、舌なめずりがとまらない。
「どんな、味なのかな・・・・?」
欲しい。
さきにこっちの口に入れてみたい。
そう思ったとき、すでに私の手はにいさんの身体に伸びていた。
初めて触れる男根は、思ったよりも柔らかく、ずしりと重い。
「・・・・・・美味しそう・・・・」
迷うことなく、先端に舌を這わせる。
「「ん・・・」」
瞬間。
にいさんと私の声が重なる。
「こういう、味、なんだ・・・・」
まだ、肉の味。
私は鈴のような裂け目を舌で刺激する。
「んん・・・・」
にいさんがくぐもった声をあげる。
「ふぅん・・・。こうすると、気持ち良いんだ?」
撫で、扱き、口に含み、舐めあげる。
「アハ。だんだん大きくなってきた♪」
眠りながらも感じているにいさんの様子を観察する。
どこが気持ち良いのか、少しでも学習しておかないと。
「ここと・・・・」
裏筋を舐め上げ。
「ここ」
先端を吸う。
にいさんの弱そうな部分。
声をあげる部分。

600 名前:籠の中 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/09(土) 05:27:49 ID:fZ5RYXhe
それを吸収して往く。
「私、舐めるの好きなんだ」
ぴちゃぴちゃと音をたてて舐めまわすと、自分でも信じられないくらい興奮する。
愛し合うって、自分の性癖を知るってことでもあるんだね?
先端からこぼれる透明の液体を飲み下す。
眠りながら感じるにいさんが愛しい。
「はぁ・・・・はっ・・・・」
「にいさん、息荒いよ?どんな夢を見てるのかな?」
きっと私の夢だよね?
ペニスを口に含み、吸い上げる。
ビクリ、ビクリと身体が揺れた。
「出るのかな?」
出たら一滴残らず飲んであげないと。
口内に力を込める。
総て吸い出してあげる。
「え」
その刹那、頭上から声がした。
愛しい愛しい、にいさんの声。
「さ、聖理・・・・?」
「おはよう。にいさん♪」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

言葉に出来ない。
今、僕が見ているものは、現実だろうか。
薄暗い部屋の中には僕と従妹だけ。
その従妹は身を屈め、僕の下腹部に吸い付いている。
「さ、聖理お前、なにし・・・・くぁっ!!」
従妹は答えるより早く。
僕のモノを口に含み、絶妙な力で吸い上げた。
「ぁ・・・・ああ、やめ・・・・・」
動けない。
手足の先が何かで固定されている。
「良い夢は・・・」
ぴちゃ。
「見れた?」
強烈な刺激。
僕は勃起していて、しかも酷く敏感になっていた。
「ぅ、あ・・・・・離れ・・・ううっ」
「キモチイイ?こうすると気持ち良い?」
「ひ・・・・あう・・・・」
何で?
なんでこんなことに?
突然の出来事と齎される快楽で頭が働かない。
「さと・・・・り・・・・は、はなれ」
「んー?良く聞こえないよ、にいさん。聖理になにかお願いがあるの?」
「・・・!!!!!!!」
コクコクと頷く。
口を開くと気を遣ってしまうかもしれない・・・・・!
「なぁに?聖理に何をおねだりするの?」
しゅっ、しゅっとちいさな手を上下させながら笑顔で語りかけてくる。
「うっ・・・ぁあぁ・・・・」
僕は首を振るので精一杯だ。
「にいさぁん。首を振ってちゃわからないよ?おねだりするの?しないの?」
「は、・・・・はなれ・・て・・・」
「あはは。聞こえないよ、にいさん。な・あ・に?」
じゅるり。
先端からこぼれる液体を吸う。
「美味しいな、コレ。病み付きになりそう・・・・♪」

601 名前:籠の中 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/09(土) 05:30:06 ID:fZ5RYXhe
「ひぅっ・・・!!」
まずい。
まずい。
まずい。
まずい!!!!
(このままじゃ・・・・出・・・・!)
射精する。
そう思った瞬間。
「――え?」
従妹は手を離す。
「冗談。離れれば良いんでしょう?」
にこにこと笑う。
「う、あ・・・」
僕は体を捩る。
中途半端に刺激されたせいで、意識が従妹に向かない。
「どうしたの、にいさん?苦しそうだよ?」
不安そうな顔を“造る”。
「な、なん・・・で、こんな・・・・・」
「こんな?にいさんが入ってきてくれたんだよ?聖理と云う、“籠の中”に」
「な、なに、云って・・・・おまえ、苦し・・・助け・・・・て・・・・」
「うん。にいさんがいなくて苦しかったの。だから助けてって云ったんだよ?」
「な・・・・」
絶句する。
驚いて従妹を見つめた。
「お、まえ・・・その格好・・・・」
「やっと気づいてくれた。もーにいさん。鈍感なのはだめだよ?」
そう云って僕を見おろす。
聖理は。
従妹は不思議な衣装に身を包んでいた。
ドレスとボンデージを掛け合わせたかのような、酷く淫靡な服装。
隠すべきを隠さず、肉の部分を際立たせるかのような意匠。
肉体に食い込むようなコルセットが、大きな胸を強調している。
レースのフリルと、黒皮のベルトが身体に巻きつき、幼くも妖艶な肢体を飾り付けていた。
「云ったでしょう?にいさんをもてなす準備をしてたって。この服、高かったんだよ?その手錠も、
結構いい値段したんだ」
「て、じょう・・・・」
云われて気づいた。
僕の体はベッドに括られているらしい。四肢の先端を寝具と繋いでいるのは、銀色に光るわっか。
「ど、どうして・・・こんな、こんなことを・・・・」
「にいさんが悪いんだよ?」
聖理は己の唇を舐める。
「にいさんが聖理に構ってくれないから、“籠の中”に入れることにしたの」
「籠の、中」
「そう。籠の中。にいさんがもともと囚われていた歪んだ籠なんかじゃない。愛し合う二人が入る、
永遠の籠に」
身体を寄せた聖理は、僕の顔に口を寄せる。
「や、やめろ・・・・!!」
慌てて顔をそらした。
妹と、口付けなどできるものか。
「にいさん、抵抗しちゃ駄目だよ?」
ぱん、と頬を叩く。
「にいさんはもう聖理のものなんだから、受け入れて」
「出来るか、そんなこと・・・・!!」
禁忌を。
唾棄すべきことを。
二度も犯せるものか。
「にいさん、抵抗するなら無理やりになっちゃうよ?」
従妹は笑う。
まるでそれを望んでいたかのように。

602 名前:籠の中 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/09(土) 05:32:07 ID:fZ5RYXhe
「ほんとはね、決めてたんだ」
「ぁぅっ!」
再び陰茎を甘く刺激する。
「どんな形であれ、にいさんと初めて結ばれるときは、レイプにしようって」
結ばれる?
レイプ?
なにを云ってるんだ?
「は、離れ、ろ。お、怒るぞ」
「アハハ。そんな可愛い顔で怒っても怖くないよ。――物欲しそうな顔してるね、にいさん。
にいさんはこれからは、その表情で聖理を見つめ続けるんだよ?」
妖艶な。
酷く妖艶な小悪魔じみた笑い。
聖理は僕を弄ぶように、快楽と刺激を与えて往く。
「ここと」
「うぁあっ」
「ここ」
「ひ、っ」
「弱い部分は、学習したから」
「どうして、どうしてこんなことを・・・・」
「どうして?」
聖理は手を止める。
「愛してるから結ばれる。それがおかしい?」
愛してる?
それは――
「お、俺を・・・?」
「当たり前でしょう?何度もそう云ったじゃない」
「――」

僕は。

それで。

漸く。

今まで抱いていた『齟齬』の正体に気づいた。
「にいさんだって聖理を愛してる。そうでしょう?」
「ち、違うっ!!!」
僕は叫んだ。
「お前は、大切な妹だ!“そんな風には”見れない!!」
「――なに、云ってるの?」
「う、あっ」
従妹は舌を這わせる。
「そんな風に見れない?“ここ”を“こんなに”しておいて、何云ってるのよ?」
「うぅっ」
乱暴な。
今までよりも乱暴な刺激。
「ふぅん。こうされるのも良いんだ?ヘンタイだね、にいさんは」
聖理は身体を寄せる。
ドレスによって際立った大きな胸がぷるんと揺れた。
「にいさん、聖理のおっぱい見てるときあったよね?腕組むと、嬉しそうにしてたでしょう?
知ってるんだよ?そのこと。それでも“そんな風に”見れないって云い張るの?」
聖理は大きな胸を陰茎に寄せる。
柔らかな。
とても柔らかな双丘が男根を挟み込んだ。
「にいさんの大きいから、聖理のでもはみだすね?」
「や、やめっ」
ぐにゅり。
形を変える従妹の乳房は、驚くほど気持ちが良かった。

603 名前:籠の中 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/09(土) 05:34:28 ID:fZ5RYXhe
「前に測ったとき、91センチあったんだけど、最近はブラが苦しいから、もっとあるかも。
嬉しい?にいさん?」
むにむにと扱きあげる。
もともとが器用な従妹は、すぐに僕を苦しめる所作を学習した。
気持ちよくするだけして、達しそうになると止める。
それを幾度も繰り返しすのだ。
「表情でわかるよ。絶対にイかせてあげない。にいさんが聖理を愛してるって素直に認めて、
満足往く“おねだり”が出来たら、イかせてあげる」
「い、いやだ・・・や、止めてくれ・・・・」
妹に。
大切な家族に!
もうこんなことはしたくないんだ!!
僕は泣いていた。
泣きながら喘ぐしかなかった。
「だ~め♪にいさんは聖理におねだりするようになるんだよ。聖理なしじゃいられない身体になるの。
にいさんは身体だけじゃなく、ココロまで“籠の中”に入るんだよ?」
自分の意思でね。
そう云って、双丘からはみ出した亀頭を舐め上げる。
「う・・・あ・・・いやだ・・・・いや・・・・だ・・・・・」
壊れる。
僕と云う人格が壊れてしまう。
嫌だ。
もう嫌だ。
「あ、ぁぁぁ・・・・」
「さぁ。云うのよ、にいさん。“聖理を愛してる”って。“イかせて下さい”って」
嫌、だ・・・・・。
もう・・・・。
もう何もかも。
首を振る。
快楽と嫌悪でまともに思考が働かなかった。
「強情だなぁ。涎まで垂らして、涙まで流して喜んでるのに」
聖理は身体を離し、机に向かって歩いて往く。
引き出しを漁り、『何か』を持って再び僕の許へ遣ってきた。

(・・・・・・え・・・・・・)

僕の動きが止まる。
「う、あ・・・・なんで、“それ”が・・・・」
僕は呆ける。
それしか出来ない。
力の入らない身体で『それ』を凝視した。
「あれ?にいさん“これ”がなんだか知ってるんだ?――そう。“媚薬”だよ。これを使って
にいさんを素直な良い子にしてあげる」
瓶。
小瓶。
僕の目に入る、見知った小瓶。
「あ・・・・あ・・・・・」

『隠し味』

あの日。
あの時。
あの場所で見た。
いつもと違った、理理の隠し味――
「う、そ・・・だ・・・・」
思い浮かぶ実妹の笑顔。

604 名前:籠の中 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/09(土) 05:36:58 ID:fZ5RYXhe
それを想起する僕の思い出が――

パキリと。

音をたてて折れたような気がした。
「は~い。あ~ん」
「・・・・・ぁ・・・・・」
ダレカが、
なにかヲ、
シヨウト
している・・・・・。
何も考えられない・・・・。
喉が鳴っていた。
何かを飲み下しているらしい。
「さあ、素直になるのよ、にいさん」
ダレカは誰かの手錠を外しながら笑う。
自由になった。
ジユウ?
籠の中にいるのに、自由?
(オンナ)
ああ、この感覚。
(オンナ)
『あの時』と同ジ火照り方ダ。
(オンナ)
あノ時?
(オンナ)
いつだっケ、そレは。
(オンナ)
僕は、何をシテルるんダっけ?
(オンナ)
おんな。
目の前にオンナがいる・・・・。
それだけで充分だった。
火照ったからだと。
腐った思考と。
膨張した獣欲。
僕は体を手放して、思うが侭に振舞った。
(熱い・・・・)
そう感じたのは身体にではなく、頬に。
何で泣いているんだろう。
自分のことなのに。
その理由がわからない。
それは多分、自分で自分が嫌になったからだろう。

僕は自分の心を、“籠の中”に押し込めたのだった――

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

4時半。
そんな時間に目が覚めたのは、温もりが無かったせいでしょう。
私の通常の起床時間は5時。
彼誰時に目を覚まし、大好きなお兄ちゃんの為に朝食を作るんです。
傍で眠るお兄ちゃんの顔はとても可愛らしくて。
その唇を舐め、唾を飲ませることから私の一日は始まります。
私はお兄ちゃんとひとつになるために生まれてきたので、その温もりが無いとすぐに気づくんです。
だから、今日もすぐに目を覚ましました。
「トイレかな?」
布団の中に兄の姿はありませんでした。

605 名前:籠の中 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/09(土) 05:39:00 ID:fZ5RYXhe
云ってくれれば、そっちのお世話もしてあげるのに。
部屋を出ておトイレに向かいます。もしも用を足しているなら手伝ってあげないといけません。
「お兄ちゃん、いる?」
ノブに手をかけると、扉は簡単に開きました。
「あれ?」
いません。お風呂でしょうか?
「お兄ちゃん、どこ?」
大きな声で呼びかけます。
お兄ちゃんは私を愛しているので、呼べば必ず出てきてくれるんですよ。
「お兄ちゃん、出てきて?」
おかしい・・・・。
「どうして、」
出てこないの?
「お兄ちゃん」
扉を開ける。
「お兄ちゃん」
開ける。
「お兄ちゃん!出てきてっ!!」
開ける。
開ける。
開ける。
開ける。
開ける。
「なんで・・・・・」
いないの?
家の中を総て見て、漸く兄がいないことに気が付きました。
「コンビニにでも、往ったのかな・・・・?」
だったら私を起こすはずです。
私の許可無く外出はしない。
そう誓って貰ったんですから。
私達は兄妹にして、夫婦です。
結婚式だって挙げたんです。
その『妻』である私に無断で外出するなんて、絶対に許されないことなんです。
それでも一応玄関に往きます。
「・・・・・なんで」
兄の靴は、ありませんでした。
「あ・・・」
私は、
「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
叫びました。
近くにあった花瓶を掴んで、叩きつけます。
「何で!?何でお兄ちゃんはいないの!?なんで私の許可無くいなくなるの!?私は妻だよ!?
お嫁さんだよ!?こんなこと、あって良いはずないでしょう!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
靴べらも、サンダルも、目に付くものは皆叩きつけます。
「・・・・・そうだ」
お兄ちゃんが勝手にいなくなるはずない。
きっと何かあったんだ。
私は自室に戻り、ケータイを鳴らします。
「繋がらない・・・・」
何て益体も無いケータイでしょうか。
思い切り叩きつけます。
「じゃあ、書置きは?」
台所に走ります。
兄は伝言を残す場合、冷蔵庫のホワイトボードか、テーブルの上にメモを残すからです。
「・・・・・あった」
とりあえず安堵しました。
私は四角い紙切れに手を伸ばします。なんて書いてあるのでしょう。読もうとします。
ですが。

606 名前:籠の中 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/09(土) 05:40:58 ID:fZ5RYXhe
「・・・・・なに、それ」
『聖理』
忌々しい名前が目に入った時点で、走り出していました。
お財布と、近くにあった『鋏』を掴み、家を出ます。
通りでタクシーを捕まえ、全速力で走って貰いました。
あの偽者の家は遠いです。
そのことが今まで嬉しかったのですが、今日は違います。
遠いことが許せない。
遠いことが我慢できない。
嫌な予感が消えませんでした。
長い時間をかけて漸く辿り着きました。
鉄柵の門には鍵がかかっているので、乗り越えます。どうせ玄関にも鍵が掛かっているに違い
ありません。ですから、窓硝子を叩き破って入りました。
家の中は真っ暗です。
偽者に相応しい、陰気ながらんどう。
私は記憶を頼りに偽者の部屋に向かいます。
「・・・・っ・・・・っ・・・・」
何か耳障りな声が聞こえてきました。
内容まではわかりませんが、偽者の悪声であることだけはわかります。
ぎゅうっと、私は鋏を握ります。
刃の長い、裁縫用の長鋏。
(もしも・・・・)
私の大切なお兄ちゃんに。
(何かしていたら・・・・)
この鋏で――

勢い良く扉を開きます。
「な・・・・」
私は立ち止まります。
「あんっ・・・!!あぁ!!良いよう、にいさぁあん!もっと!もっと聖理を突いてぇ!!」
なんで・・・・。
腰を振る一組の男女。
立ち込める臭い。
いやらしい服で着飾った雌猫と。
「ぅ・・・あ・・・・・・」
虚ろな瞳で涎を垂らす私の『お兄ちゃん』。
嫌な。
最も嫌な光景がそこにあった。
「あ・・・・」
私は鋏を握り締め。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

偽者に走り出していた。

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最終更新:2007年11月01日 00:42
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