目を開けば向日葵畑。
現実味の無い所に、未だ夢を見ているような感覚がした。
「…此処は何処だ?」
当然ではあるが、此処が自らの家である可能性はない。
ましてや友人の家でも無いだろう。となると誘拐か何かだろうか。
しかし誘拐だとしてもこの場所に放置などしておくだろうか。周辺に建物も無い場所で、身代金を要求できる訳も無い。
「…あら、起きたのねぇ、外の人間さん。お目覚めはどうかしら?」
「!?」
突然かけられた声に肩がはねる。
急いで振り返れば日傘を差した緑髪の女性が立っていた。
向日葵畑に凛として立つ彼女の姿は、とても美しいものに見える…が
「外の世界から来たの?
あのスキマ妖怪は乱暴で困るわねぇ、花畑に落とさなくても。」
外の世界やらスキマ妖怪やら謎の単語を口走る女性は決してマトモでは無いだろう。
「あの」といったのなら妖怪と繋がりがあるのか?
途端に恐ろしくなり、気が付けば花畑を走り去っていた。
「・・あら、せっかちさん。
向こうは…博麗神社だったかしら。そういえば前にも…」
走っても走っても建物が見つからない。
先程の女性は「外の世界の人間さん」と口走っていたが、つまりは此処は日本では無いのだろうか?
しかし日本語を喋っていたし…思考を繰り返すだけ無駄だと判断し、走るのも意味がないようなので歩くことにした。
大分歩いた所で石段を見つけた。
石段から上へと視線を追えば、鳥居らしきものが見える。どうやら神社のようだ。
…という事はやはり日本なのだろうか?
少なくとも神社には巫女やら神主やらの人物がいると考え、石段を上った。
「…あら、また外の世界からかしら」
やはりいた。巫女にしては露出が多いとは感じたが地方によって違うのだろう。自分の知っていることだけが常識とは限らないのだ。
取り敢えず、今は巫女の服装などどうでも良い。
「すまねぇが、今の日付を教えてくれないか。ついでに此処が何処なのかも。」
「…第百二十五期の葉月、五よ。ちなみに此処は博麗神社。」
「…さっぱりわからねぇ」
日付の現し方が地方では説明できなくなっている。
博麗神社、というのはこの神社の名前なのだろう。
「…外の世界、っつーのは何なんだ?」
「…説明は長くなるけど。」
巫女が言った事を説明するとこうだ。
俺の今いる世界は『幻想郷』。で、その幻想郷から見た外の世界が、俺のいた世界。つまりは日本やらなんやらだ。
幻想郷と外の世界には結界があるらしいが、なんらかの理由で結界を越えて入ってきてしまう人間もいる。
それが幻想入りした人間、つまり俺見てえな奴だ。
そんで、こっちの世界に来てから能力を持つ奴もたまにいるらしい。
俺の能力は『弱点を見抜く程度の能力』…役に立つのかというよりは、元々無かったか、それ。
「そんなところかな…住む場所とかは?」
「…ねぇ」
「…そしたらレミリアにでも頼むかな。レミリアの所にも半年前あんたみたいなのが来てね。」
「レミリア?」
「地図は渡すから。
紅魔館、って所。真っ赤なお屋敷だから行けばすぐわかるわ。
霊夢から紹介って言えば通じるわよ。
あと危なくなったら…まぁ能力でなんとかなるでしょ」
不安を残しつつも地図を渡され、神社を送り出された。
紅魔館とやらに行けばよいらしい。
日が暮れる前に館に着かねばと、紙を握り走り出した。
最終更新:2010年05月29日 15:12