とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part52

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EXTRA EDITION_2(上条さん地獄の10日間 二日目:美琴初めてのエプロン編)


 地獄の補習期間に入って三日目。
 補習期間であるにも関わらず、上条当麻は幸せだった。

 美琴が上条の勉強を見るのはコレが初めてではない。
 今までにも何度か機会があったのだが……。
 その時はどうしても恥ずかしさが先に立ってしまい、キツく当たってしまう事があった。
 だが、今は違う。
 美琴は上条を支えたいと願い、上条も美琴に応えたいと思っている。
 コレがこの二人の本来の姿なのだろう。

 イヤ……チョット、違うな……。
 アレが、あの仕掛けがなければ……もっとイチャイチャしてるはず。

(上琴)「「ウルサい!!!」」

 そんなに恥ずかしがらなくても……。
 今日は『イチャイチャ』させてあげる予定なんだけどな……。

(琴)「ホント!?」
(上)「もしウソだったら、タダじゃ済まさねえ」

 ハイハイ……。

 という事で、今日は土曜日。
 午前中は学校に行きそこで補習。
 昼からは【喫茶店エトワール】の裏で課題の勉強である。
 だが、その前に……シッカリ二人でイチャイチャお昼ご飯タイムを満喫してたりする。

(琴)「ハイ、当麻。ア~ン」
(上)「ア~ン。……モグモグ……うん、美味しいぞ」
(琴)「ホントはさ……私が作ってあげたかったんだけど……午前中に外せない用事があって……」
(上)「イイよ、イイよ。その気持ちだけで嬉しいよ。それに……美琴に『ア~ン』して貰うだけで……」
(琴)「えっ?」
(上)「いつものマスターの料理が数倍……美味しくなるから……(テレッ//////////)」
(琴)「(ポンッ!!!////////////////////)エヘッ、嬉しい。……ねぇ……当麻。(じーーーーーーーーーーーーーーッ)」
(上)「(こっ、この視線は……?)……あッ、そっ、そうだ。……じゃあ、美琴にも……ア~ン」
(琴)「ア~ン。……モグモグ……エヘッ、美味しいよ。当麻」
(上)「アッ、ほっぺにソースが……ペロッ……(チュ)……」
(琴)「ふえッ!?」
(上)「アッ、ごっ、ゴメン……。そっ、その……つい……」
(琴)(ほっぺに『ペロッ』て……、その後……軽く……き、キス……?)
(上)(し、しまった……。やり過ぎたか!? でッ、でも……美琴がカワイすぎて……つい……)
(琴)『(ボンッ!!!)プシューーーーーーーーーーーッ!!!』
(上)「わッ!? みっ、美琴ぉッ!? ……って、アレ? 漏電が、電撃が……来ない?」
(琴)「エヘ……、エヘ……、エヘヘ……」
(上)「オイッ!? 美琴ッ!! シッカリしろ!!! ……ん?(オレ、いつの間に右手を……? もう、ほとんど条件反射になってきてるなあ……)」
(琴)「エヘ……、当麻に、……当麻に、食べられちゃったぁ……」
(上)「え゛?」
(琴)「もう……お嫁に行けない……。当麻に……、当麻に食べられちゃったから……当麻のところにしか、お嫁に行けない……」
(上)「う゛……」
(琴)「当麻に食べられちゃった……、私、もうダメ……」
(上)「オイッ! 美琴ったら!? シッカリしろぉ~~~~!?」
(琴)「ふにゃぁ~~~~……」

 もう、桃色空間全開である。
 それを監視(覗き見とも言う)しているアッコさんも……。

(ア)「もう、好きにして……」

 と、既にサジを投げている。
 コレも勉強中の『イチャイチャ禁止令』の反動なのだろう。
 それにしても……あの仕掛けの反動はスゴいな……。
 ある意味逆効果になってるんじゃ……。

(上琴)「「あうあう……」」

 そんなこんなの騒動もあったが、時間になればあの山のような課題に取り組み始める。
 ……と言うより、取り組まないとまた例の仕掛けが作動してしまうので、やらない訳には行かないのだ。
 それに課題をこなしていく上で、ペナルティ・ボックスに上条が閉じ込められるのはタイムロスに繋がるのだから、出来る限り避けなければならない。
 それらの理由で、二人はペナルティを科せられないように、必死に課題に取り組むのであった。
 そして、夕飯近くになった頃……。
 チョットした事件が……。

(上)「ウーン……」
(琴)「あ、そこはね……ココをこうして……」
(上)「え?……ふんふん……」
(琴)「そしたらこうなって……」
(上)「うんうん………」
(琴)「そしたら、どうなる?」
(上)「えッ?」
(琴)「全部私がやっちゃったら意味がないでしょ?」
(上)「うッ……」
(琴)「ほら、頑張って」
(上)「う~ん……」
(琴)「……」
(上)「あ……もしかして……」
(琴)「……」
(上)「ココをこうすれば……」
(琴)「そうそう、やれば出来るじゃない、当麻」
(上)「なるほど、なるほど。……美琴の教え方がイイからだよ」
(琴)「当麻が頑張ってるからだよ。エヘヘ」

『ピピー、ピピー、ピピー、ピピー』

(マ)『嬢ちゃん、すまねえがチョット店まで来て貰えねえか?』

 マスターがいきなりインターフォンで呼びかけてきた。

(琴)「えッ!? 何? 何なのッ!?」
(マ)『ビックリさせてすまねえな。とりあえず店まで来てくれ。そしたら分かるから……』
(琴)「あ……ハイ……。一体何だろ?」
(上)「マスター、かなり慌ててたみたいだけど……」
(琴)「とりあえず行ってみるね。その間、ちゃんと自習しててよ」
(上)「ハイハイ、分かってますよ……」
(琴)「あ、そうだ! えいッ!!!」
(上)「えッ!? こっ、コラッ!? 美琴ッ? こんな風に抱きついたら、またペナルティが……」
(琴)「イイじゃない。どっちみち離れるんだもん。その前にちょろっとスリスリしとくのぉ~」
(上)「あ、あの……オレがペナルティ・ボックスに入る事は……考慮無しですかああああああああああぁぁぁぁぁぁッ!?」

 叫び声と共に、上条はペナルティ・ボックスへと吸い込まれていった。

(琴)「15分経つ頃には戻ってくるからねぇ~」

 そう言って、ご機嫌になった美琴は店の方へと歩いて行った。
 独りペナルティ・ボックスに閉じ込められた上条は……、『シクシク』と泣きながら自習に勤しむしかなかった。

(上)『ふ、不幸だ……』

 仕方無いよ。運命だもの……。
 さて、店の方に移動した美琴は……信じられない光景を目にする。
 何と……店がお客さんで、満席になっていた。

(琴)「ぅ、ウソ……? こんなの……信じられない」
(ア)「美琴ちゃん、サラッとキッツいコト言わないでくれる?」
(琴)「あ、アハ……アハハハハハ……」
(ア)「とは言え、ホント大忙しなのよ……」
(琴)「あ、あの……マスターは?」
(マ)「ああ……嬢ちゃん、すまねえな。急に呼び出したりしてよ」
(琴)「あ、マスター?」
(マ)「見ての通りなんでな。とても上条と嬢ちゃんの晩飯を作れそうにねえんだ。悪いがオレの代わりに作ってくれねえか?」
(琴)「え?」
(マ)「悪いが頼むよ。キッチンは裏にもあるからさ。材料は好きなもん持ってってイイから」
(琴)「あ……ハイ。分かりました」
(マ)「実はこの後、黄泉川がさ……若いの連れて来るって言ってやがるんでな。その準備もあるんで手一杯なんだよ」
(琴)「え? 黄泉川……さん?」
(マ)「昨日の一件が原因だろうな。あのバカ……言うなって言ってるのに……」
(琴)「でも……マスター、嬉しそう……」
(マ)「んなことねえよ。まぁ、若えのが来るのはイイんだけどな。大騒ぎになるのが目に見えてるからなぁ……っと、こうしちゃいらんねえ」
(ア)「アンタ、次のオーダー。カキフライ定食でデザートはコーヒーゼリー。アフターはコロンビア、それから……」
(マ)「……アイよッ。んじゃ、嬢ちゃん頼んだぜ」
(ア)「エプロンは裏のロッカーに入ってるから、それ使ってねぇ~」

 その忙しさに圧倒される美琴。
 だが、マスターとアッコさんはテキパキと接客をこなしてゆく。
 それを見た美琴は下手な手伝いはジャマになると判断し、裏からキッチンに回って必要な材料を調達する。

(琴)「さっきカキフライ定食がどうとか言ってたっけ。じゃあ、今夜のメインはそれにしよっと」
(琴)「あ、そうだ……。当麻に言わなきゃ……」

 そう呟くと、美琴は勉強している部屋の前で上条に呼びかける。
 まだ15分は経っていないので、上条はペナルティ・ボックスの中だ。

(琴)「当麻ぁ~、聞こえるぅ~?」
(上)『聞こえてるぞぉ~』
(琴)「お店が忙しくて、晩ご飯を私が代わりに作る事になったから、自習しててねぇ~」
(上)『ええッ!? み、美琴が作ってくれるのか!?』
(琴)「うん、そうだけど?」
(上)『そ、それって……もしかして……エプロン姿も……』
(琴)「あ……うん、見せたげる……ね……」
(上)『おッ、オレッ! 頑張るからッ!!!』
(琴)「あ、うん。じゃあ、頑張ってね」
(上)『ああッ!!! うわぁ~、すっげえ楽しみだなぁ~~~!!!』
(琴)「……どうしてか知らないけど……エラく張り切ってるわね? ……ま、やる気になってくれるのはイイことだわ」

 そう独り言を呟くと、美琴は勉強部屋の隣にあるキッチンに向かう。
 そして、ロッカーからエプロンを取り出して制服の上から羽織り、料理を始める。
 簡易のキッチンとはいえ、必要なモノは全部揃っていた。
 美琴はテキパキと準備を進めていく。
 下ごしらえを終え、後はご飯が炊きあがる時間に合わせてフライを揚げるだけである。

(琴)「うん、コレで準備OKね。じゃあ一度、当麻の様子を見に戻ろうかな?」

 そう言って、キッチンを後にして勉強部屋に戻る美琴。
 だが、この後起こるハプニングを全く予想だにしていなかった。

(琴)「『ガチャッ』当麻ぁ~、頑張ってる~?」
(上)「頑張ってます……よ……オオッ!?」
(琴)「え……どしたの?」
(上)(い、いきなり……かよぉ~!? でッ、でも……夢にまで見た……美琴のエプロン姿が……、今、目の前にぃ……。お、お、落ち着け、落ち着けオレッ!!!)
(琴)「ど、どしたの? 当麻……? 目が……怖いわよ?」
(上)「え? あ、イヤ……アハ、アハハハハ……(まさか、美琴のエプロン姿に我を忘れかけていたとは言えない……。でも、カワイいなぁ……)」
(琴)(なッ、何? 当麻が変なんだけど? 目も血走ってるし。あ……、そう言えば、エプロン姿が見たいって……さっきも言ってたわよね?)
(琴)「ど、どうかな?」
(上)「えっ!? なッ、何が?」
(琴)「だって……、見たがってたじゃない? 私のエ・プ・ロ・ン・す・が・た。エヘッ」

 そう言うと、美琴はクルッと一回転して頬に人差し指を当てて、カワイくウィンクをしてみせる。
 だが……それがいけなかった。

(上)『ズッキューーーーーーンッ!!!』
(上)「美琴ッ!!! おッ、おッ、オレッ!!!!! オレッ!!!!! ……もう、……もうダメだ!!! みっ、美琴ォッ!!!!!『ギュッ!』」
(琴)「キャッ!? えッ!? とっ、当麻ッ!? ……ふにゅう」
(上)「ごっ、ゴメン!! で、でも……美琴が、エプロン美琴がカワイすぎて……オレもう、抑えが……『ギュウッ!!!』」
(琴)「ふええッ!? 当麻ッ!!! そっ、そんな……いきなりッ!?(こっ、心の準備が……あッ、そんなに強く抱き締められたら……ダメになっちゃうよぉ……)」

 どうやら今の上条さんには、『美琴のエプロン姿』は刺激が強すぎたようです……。
 しかし……上条さんの『エプロン属性』……かなり重症のようですね。
 でも、お二人さん……何か忘れてません?

(琴)「ふにゅ……、当麻ぁ」
(上)「ゴメン、美琴……。……でもオレ……」
(琴)「うん……」
(上)「美琴、可愛すぎだよ……オマエ……」
(琴)「エヘッ、嬉しい……。ねぇ……当麻……」
(上)「うん?」
(琴)「わッ、ゎたっ、わたッ、私とそのッ、けっ、けけけけけけけ結婚したら……、毎日見られるよ……。エプロン姿……」
(上)「そんなコトになったら、上条さんは幸せ過ぎて死んでしまいますですよ……。ハイ……」
(琴)「バカ……。死んじゃったら意味ないじゃない……」
(上)「言葉の綾なんですけど、その通りでせうね。……だ、だから……」
(琴)「だから?」
(上)「死なないようになるまで、待って欲しいんでせうが?」
(琴)「え……?」

 その時……。
 『ガシッ』
 上条は何かに両肩を掴まれる。

(上)「え゛?」

 まだ勉強時間中ですよね。
 ペナルティ・ボックス行き。
 決定ですね。

(上)「ちょッ!? ちょっと待てッ!!! 待って下さいッ!! 後ちょっとだけでイイからッ!!! お願いだからぁッ!?」

 それは無理です。
 勉強時間中にイチャついたアナタが悪い。
 15分間、反省しなさい。
 そう言わんばかりの容赦ない行為に、上条はいつもの口癖を叫ぶしかなく……

(上)「ふッ、不幸だぁああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……ッ」

 と、美琴を置いて再びペナルティ・ボックスに吸い込まれていきました。

(琴)「……あ……」

 美琴はただただ、その様子を呆然と見ているしかないようで……。
 あれ?
 何か様子が変ですけど……?

(琴)(待って欲しいって……何を待つの? もしかして……、もしかして……でも、もしそうだったら……、どうしよッ!? どうしようッ!?)

(琴)「ふ、ふ……ふにゃああぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……」

『バチバチバチバチバチバチバチバチッ!!!!!!!』

 何を想像したのかは知りませんが、上条の『待って欲しい』の一言に過剰反応した美琴は、ふにゃー化して漏電してしまいました。
 部屋は、いざという時のために耐電仕様になっていたので、黒焦げにはならずに済みましたが……。
 運が悪い事にと言いますか、いつものパターンと言いますか、当然の『不幸』と言いますか……。
 何故か耐電仕様であるはずのペナルティ・ボックスの動作システムに漏電の影響が及んでしまい、上条はずっと閉じ込められ、エプロン装備の美琴とお手製の夕食をおあずけされ続けたのでした。

 結局、そんなこんなのドタバタ騒ぎの所為で、上条が言った『待って欲しい』が何を意味するのかは有耶無耶になってしまいましたとさ。

 ちゃんちゃん。


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