とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part04

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第4話『不幸な上条と幸せな美琴』


「御坂ー何飲む?」
「別になんでもいいわよ?適当に持ってきて。」

 またまた現在、上条と美琴は少し休憩を挟むことにしていた。

 よくよく考えれば起きてからまだ何も食べても飲んでもない。そのためお腹は減っているしのども結構乾いている。
 美琴としては空腹はまだ耐えることができるがのどの渇きは結構キツかった。

 それは上条も同じだったらしく何か飲むことに賛同、上条は部屋に設置してある冷蔵庫の中の飲み物を取りに行った。

 美琴がふと壁にかけてある時計を見ると現在の時刻は9時15分、2人がベッドで目を覚ましてから30分ほどが経過していた。
 未だ他の面々は目を覚ましていない。

「ほんとなんでこんなことになってんだろ……」

 美琴は小さくつぶやいた。
 パーティが始まって少し経ったところまでは思い出したがそこからどうやってこの状況につながったのかはまだ全くわからない。
 最初に上条が『気まずい』と言っていたことから美琴の不安は大きくなる。
 すると

「御坂、これでいいか?」
「え、あ、うん。」

 いいタイミングで上条がソファに戻ってきた。
 高級(っぽい)ホテルといってもちゃんと未成年が飲める飲み物も用意されていたようで上条はジュースの入ったペットボトルを持っている。

「ほいよ。」
「ん、ありがと。」

 美琴は隣に座った上条から500mlのペットボトルを受け取りふたを開け、何時間ぶりかの水分を補給する。
 冷たいジュースは美琴の体にしみ込んでいった。

「……ん?」
「どうした?あ、ひょっとしてそれ嫌いだった?」
「いや……」

 一口飲んでから美琴は違和感を感じた。
 ジュースの味ではない、ふたを開けたときの感触がおかしかったのだ。
 まるで一度開けたことがあったような……

「あのさ……」
「なんだ?やっぱ嫌いだったのか?」
「いや美味しかったけどさ、アンタひょっとしてこれ………飲んだ?」

 美琴は隣に座っている上条におそるおそる尋ねた。
 その質問に対して上条は特に表情も変えず

「え?ああ、さっき冷蔵庫から取り出した時に一口だけな、俺ものど乾いてたし2本も飲むと金かかるだろ?」
「うそ―――」

 まさかの間接キス、美琴の顔は瞬時に真っ赤になった。
 上条が『ホテルの飲み物は高いからなー。』とか言っていたがそんなこと全く耳に入っていかない。

 すると上条は美琴がおかしいことに気づいたらしく

「おい、なんか顔真っ赤になってるぞ?」
「え、あぅ……だって…」
「病気とかじゃないだろな。……なあ、もう飲まないのか?」

 そう言って上条は美琴の手にある飲みかけのペットボトルを指差してした。
 美琴としてはまだのどの乾きは潤っていないのでもっと飲みたいが上条が飲んでいたと知っては恥ずかしくて飲めたもんじゃない。

「あ、え、と、の、の?」
「何が言いたい……とりあえずもうちょっと飲ませてくれ。御坂の分はちゃんと残しとくからさ。」
「あ、ちょ…」

 そして上条は美琴の手からペットボトルを取り、何事もないようにそのまま飲み始める。
 ふたも開いていたし美琴が止める間もなかった。

「ぅあ……アンタ…それ……」

 ゴクゴクと上条はジュースを飲んでいく。
 これで上条も美琴と間接キスをしたことになった。

「……ふぅ、やっぱうまいなこれ…ってどうした?さっきから口ごもってるけど言いたいことあるならはっきり言えよ。」
「え……うん…大丈夫なんでもないから…」

 はっきり言え、と言われたってはっきり言えるわけがない。
 『アンタこれで私と間接キスしたことになったわよ?』なんて言ったら恥ずかしさのあまり気絶する。

 すると上条は手に持っているペットボトルに目を移し

「あ、ひょっとして間接キス?」
「ッ!!?」

 上条が気づいたようだ、ちょっとだけ顔が赤くなっているようにも見える。
 だが美琴は上条の何倍も真っ赤だった。

「なるほど……だから真っ赤になってたのか。って今も真っ赤だな。」
「うぅ………」
「で、もうコレ飲まないの?」
「ッ!?の、飲めるわけないでしょ!?」

 そう、飲めるわけがない。上条が飲んでいるのを見たのだから飲めば100%気絶する。
 だが矛盾ではあるが美琴的には飲んでもみたかった。

 そして美琴にはまた新たな疑問が生まれていた。

(ぜ、絶対おかしい!!普段のコイツなら気づくはずないのに……)

 美琴が不思議に思っている間に上条はペットボトルの中身を飲み干した。
 間接キスとわかっても上条は気にしないらしい。美琴は上条に女と思われていないように感じちょっと悲しかった。

「さて、飲み終わったし続き続き。パーティが始まって少しのところまで思いだしたんだろ?」
「う、うん……」
「っていうと俺は何してたっけな…………あ、そうだ……」
「?」


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


姫神「上条君……この状況は一体……?」

小萌「上条ちゃん……しばらくいない間に何をやらかしたのですか!?」

災呉「これ全員お前の知り合いなのか!?」

吹寄「上条!資金を出してくれた人がイギリスの女王様ってどういうことなの!?」

青ピ「上やん!!さっきのたくさんの女の子達とはどういう関係なんや!!!」

 美琴から電撃をくらいかけてから数十分後、上条はクラスメイト&先生に壁際に追いつめられ質問攻めに合っていた。
 どうやらイギリス女王様と知り合いというのがそうとう衝撃的だったようで全員鬼気迫る表情だ。
 ちなみに土御門はいろいろと忙しいらしく舞台裏に引っ込んでおり上条が標的になったのだ。

上条「い、いや、まあ、ちょっと……女王様とはいろいろあって知り合いになったんだよ。」

吹寄「そのいろいろを聞いているんだけど?」

上条「う……」

 この状況を説明しろ、と言われても非常に難しい。
 魔術のことは言わないほうがいいに決まっている、かといって魔術の話抜きでは実に話しづらい。
 どうするべきか、上条があれこれ考えていると

吹寄「ああもう!めんどうだからこっちから1つ1つ質問するわ!まずここにいるのは全員知り合い?」

上条「いや、俺の知らないやつもいる。」

吹寄「じゃあどんな人が来てるのよ。」

上条「えーと……有名なやつだけ言うとレベル5の第1位、第3位、第4位。あとさっきのイギリスの女王様に第1王女リメエア、第2王女キャーリサ、第3王女ヴィリアン……とかだな。」

 一人一人思い出しながら有名な人だけ名前を挙げていく。

 ちなみに今日はレベル5の第5位食蜂操祈と第7位削板軍覇も来ているのだが上条はその2人の存在を知らない。
 麦野とは浜面つながりで学園都市に帰ってきてから2度ほど会っている。
 上条が麦野と会った時の感想は『怒ったら怖そう』だった。

 とりあえず有名な人を言い終わりふと前を見ると上条のクラスメイト&先生たちは全員唖然としていた。

上条(まあレベル5とか女王様とかと知り合いっていたら普通こういう反応になるか…)

 みんなの反応を見て少し面白いかなー、とか思っていたら

青ピ「……上やん?上やんは校内に飽き足らず第3位の御坂美琴ちゃんに加え王女様達まで手にかけたってことなんか?そうなんやな?」

上条「…………え!?」

 青ピの目がギラつき始めた。
 なんで青ピが美琴のことを知っているのかは置いといてただならぬオーラがにじみでている。
 上条には青ピがアウレオルスクラスの強さを持っているように感じられた。

青ピ「これは……お仕置きせんとあかんみたいやな……」

上条「ま、まて誤解だ!話せばわかる!!」

 ついさっき面白いとか思ったことが嘘のようにヤバい状況に追い込まれる上条。
 青ピ&男子のクラスメイトはゆっくりと上条に近づいてきた。

青ピ「これは……どうするべきかなー……姫神はん?」

姫神「………死刑。」

 今日は久しぶりに巫女姿の姫神がポツリとつぶやいた次の瞬間には上条にクラスメイトが襲いかかっていた。
 容赦ない。

上条「なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

 こうして上条は自分の帰還記念パーティにもかかわらずクラスメイトsにフルボッコされるはめになった。


◇ ◇ ◇


 上条が大変な目に遭っている間に美琴は再び上条に会おうと会場内を歩き回って探していた。
 探していたのだが……

美琴「ひ、人が多すぎる……」

 全く上条が見当たらない。先ほど上条がいた舞台前にも行ってみたのだがすでに姿は見当たらなかった。
 ならばと急にいなくなったことを謝るため黒子達と一旦合流することを考え自分の席に戻ろうともした。
 しかし1つ問題があった。

美琴「なんで海原光貴が一緒にいるのよ……しかも結構仲良さそうだし……」

 美琴は海原が苦手だ。
 なのに自分の席では海原が黒子や固法と仲良さそうに会話していた。そのせいで黒子達とも合流できていない。

 ちなみに海原の中身はもちろんエツァリである。本物は来ていない。
 海原がこのパーティの際に少しでも美琴と話をして仲良くなろうと考えていることなど誰も知らない。

 それで結局上条を見つけるしかやることがなく、そこらへんをふらふら歩き回っていたのだ。
 そして美琴が上条を探し始めて数十分経ったところで

美琴「あ……」

 上条がいた。隅のベンチに1人で腰掛けており話しかける絶好のチャンスだ。
 ただなにやら疲れているように見える。

美琴(よ、よし行くわよ!素直に…素直に……)

 深呼吸を十分にしてから話しかけようと上条に近づく。それでも落ち着けるはずがなく心臓がバクバクいっているのがわかる。
 すると俯いていた上条がふいに顔を上げて美琴のほうを見てきた。

上条「あ……」

美琴「ッ!!」

 美琴は上条と心が通じ合ったような気がして顔が赤くなるのがわかった。
 気分を良くした美琴はせっかくなのでこちらから話そうとしたのだが

上条「ヴェント!お前まで来てたのか!?」

美琴「へ?」

 上条が見つけたのは美琴ではなく美琴の後ろにいたピアスが特徴の女性。
 上条はベンチから立ち上がると美琴を華麗にスルーしてヴェントというらしい人の元へと歩み寄った。

美琴「ちょ、アンタ……!」

 美琴は上条が横を通り過ぎる時引き止めようともしたがあまりに華麗なスルーだったので出かかった手が止まる。
 そんな美琴を他所に上条は

上条「もう舌は大丈夫なのか?フィアンマに思いっきりピアス引きちぎられてたけど……」

ヴェント「……お前か…つーか嫌なこと思い出させんな、魔術で治したに決まってんだろ。」

 そう言ってヴェントは上条に舌を見せた。

美琴(うわっ!舌にまでピアスって……というか魔術?)

 美琴が立っている場所からもヴェントの舌に長い鎖をつけた十字架を見ることができた。
 それは美琴にとって衝撃的だった。

上条「でも驚いたよ……まさかお前が来るとはな……」

ヴェント「来たくて来たわけじゃねぇよ!拉致られたんだよ!!」

上条「拉致られた……?」

 上条は驚きの表情を見せている。
 美琴にはなぜ上条が驚きの表情を見せているかはわからないがとりあえず早く会話を終わらせてほしかった。

 ちなみに上条が驚きの表情を見せた理由は実際にヴェントを戦い十分ヴェントの化け物じみた強さはわかっており、そのヴェントを拉致するなどどんな化け物なのか、ということで驚いていたわけだ。

上条「え……っと…誰に?」

ヴェント「ワシリーサとかいうミーシャの上司だよ……あの野郎ミーシャを助けてくれたお礼にパー
ティーに招待するとか言ったと思ったら次の瞬間には魔術使って飛行機に乗せやがって…じゃなきゃこんなとこに来るかよ!!」

 そういうとどこかへ歩いていった。
 どうやらヴェントという女の人は上条目当てではないらしい。それがわかった美琴は少し機嫌を取り戻す。

美琴(なんだただの知り合いか……よし今度こそ!)

 気合いを入れ直し美琴は上条に近づく、絶対に怒らないように、そして素直に話すことを心がけ

美琴「あ、あの!久しぶり……」

 勇気を出し、笑顔で上条に声をかけた。の、だが……

雲川「や、久しぶりね。」

上条「あ、雲川先輩!お久しぶりです。先輩も来てくれたんですね。」

 上条は再び美琴をスルー。今度も美琴の横を通り過ぎると雲川と言うらしい女性と会話を始めた。
 しかもやたら親しそうに。

雲川「まあこんな面白そうなことはないからね、それはそうと君と会うのは1週間ぶりかな?」

上条「多分そんなもんですね、最近は校内でも会えませんでしたもんね。」

雲川「やはり君を見てると飽きないな。それだけ君が面白いということだけど。もちろん良い意味でね。」

美琴「…………」

 とりあえずもう美琴は怒りが頂点に達しかけていた。2度もスルーされたのだから無理はない。
 本人は気づいていないのかもしれないが額の辺りからはパチパチと電気が漏れ出ている。

 そして上条と雲川とか言う女性が会話を終え、別れるの見届けると必死に怒りを抑えて三たび声をかけようとする。
 次にスルーされたら間違いなくキレる。

美琴「ちょっとアンタ……いい加減に…」

上条「あ……御坂!!」

美琴「ッ!!」

 三度目の正直、ようやく美琴は上条に気づいてもらえることができた。

 ――――――と、思ったのだが

???「いえ、ミサカはお姉様ではありませんよ?と、ミサカはアナタが間違っていることを指摘します。」

美琴「え」

 上条はまたまた美琴をスルーした。二度あることは三度あるとはよくいうものである。

上条「え?あ、わりぃ、御坂妹か。今日はゴーグルもかけてないし全くわからなかったよ。」

 上条が見つけたのは美琴ではなかった、美琴そっくりな少女、御坂妹だ。
 上条の言葉通り今日は軍用ゴーグルはつけておらず、さらに常盤台の制服ではなく私服を着ている。

 美琴は思わず物陰に隠れた。
 そしてそこから2人の様子をうかがう。

御坂妹「まあ確かにミサカとお姉様は瓜二つですがそれくらいわかってほしいですけどね、とミサカは不満を口にします。」

上条「いやほんとすいませんでした……にしても今日は制服じゃなくて私服か、新鮮でいいな。似合ってるぞ。」

御坂妹「!!……ふにゃー…とミサカは電気が漏れだし「うおおおおおおお!!!待て待て待て!!!」」

 御坂妹が漏電しかけたので上条は右手を伸ばし大慌てでそれを防いだ。

上条「な、なんで急に漏電しかけるんだよ……って気絶してるし…」

 御坂妹はなんだか幸せそうな顔をして動かなくなっていた。
 気絶しているので当然上条が受け止めている。

???「簡単なことですよ、あなたに『似合ってる』と言われたからです、とミサカは真相をお話しします。」

上条「え、あ……おまえら…」

 気絶した御坂妹を抱きかかえている上条の前に現れたのは3人の『妹達』、3人とも私服を着ている。

上条「俺が似合ってるって言ったから……?それは違うんじゃ?」

10039号「いえ、MNW(ミサカネットワーク)で我々はつながってますからね、間違いないです、とミサカは正しいことを証明します。」

上条「あ…そうか。で、なんで今日は私服なんだ?やっぱりパーティだからか?」

13577号「まあそれもありますが我々がクローンだとバレないようにするためです、とミサカは先陣を切って説明します。」

10039号「今回ミサカたちはお姉様の1歳年下の妹で4つ子という設定になってますから常盤台の制服を着ていると話が合わなくなりますからね、とミサカは理由を実にわかりやすく述べます。」

上条「なるほど……にしてもお前らの私服もいいな、似合ってるぞ。」

3人「「「!!…ふにゃー、とミサカは「そろって漏電すんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!!」……」」」

 そして10039号、13577号はMNWで御坂妹との記憶の共有により『似合っている』と言われることに耐性がありなんとか耐えた。
 しかし感情豊かな19090号は気絶してしまい意識のある2人の妹達が御坂妹と合わせて回収していった。

 これら上条と妹達のやりとりももちろんのごとく見ていた美琴は嫉妬心でいっぱいになっていた。
 さらに3度もスルーされた上、上条と自分以外の女の子が仲良さそうに会話していたことから不満も溜りに溜った。

 上条が妹達と別れるのを見ると容赦なく本日2度目の電撃の槍を無言で上条めがけて投げつける。

上条「いやー先輩に『妹達』も来てくれてるとはな、それにヴェントとは……予想外のやつが来てぎゃああああああああああ!!!!!!!!!!」

 上条は本日2度目の電撃を食らいかけた。
 ビビりまくっている上条に美琴はバチバチと電気をまといながら近づいて行く。
 さっき決めた『怒らない』、『素直になる』などは記憶からとっくに消え去っていた。

上条「お、おま、おま、おま…何を…」

美琴「あ・ん・た・は……私の存在を認識できんのかぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!」

上条「ええーーー!!!!!なんできれてるんでせうか!?それに意味がわかんねぇぇぇぇぇえええ!!!!」

 こうしてようやく2人は話すことができた。
 できたのだが……

美琴「意味がわからないって……なんでアンタは私を見つけられずに私意外の女の人は見つけられるのかしら?」

上条「え?いやお前……いついた?」

美琴「なっ……!」

 上条は全く自分を見てくれていなかった。
 美琴はそれがショックでもう我慢の限界だった。

美琴「そう……アンタは余程私の電撃をくらいたいわけね……」

 無視されたことに怒りが頂点に達し帯電しつつさらに上条に近づいたところ
 ギュ―――

美琴「へ?」

上条「み、御坂落ち着け!俺が悪かった!悪かったから少し落ち着こう!な?」

 上条は必死に美琴を落ち着かせようとした。
 しかし落ち着かせるためにとった行動の選択を間違えた。いやある意味正解だったのかもしれない。

美琴「お、お、お、落ち着けってアンタ……な、なんで、手…手…」

 上条は右手で美琴の右手をガッチリ握っていた。
 端から見ればただ握手しているように見えるが美琴としては大好きな人に手を握られているのだ。
 落ち着けるわけがない。

上条「なんでってこうでもしないとお前ビリビリするだろ!」

 そう言って上条は握る力を強める。
 これはもう美琴としてはたまったもんじゃない。

美琴「ぅあ……」

 顔を真っ赤にしてまともにしゃべれなくなってしまった。
 右手から上条の体温が伝わり荒れていた美琴の心を落ち着かせる。
 だが上条はそんなことなどわからず黙ってしまった美琴を見て若干慌てた様子を見せる。

上条「ど、どうした御坂?……あ…ひょっとして嫌「嫌じゃない」……じゃないんですね…」

 ここで美琴は考えた。
 この幸せな時間を少しでも長くするためにはどうすればいいかを。
 そして即ひらめいて即実行に移す。

美琴「あ、あの……落ち着くまでこのままでいていい……?」

上条「い、いいけど……」

 そして美琴は両手で上条の右手を包み込むように握った。

上条「へ?御坂?」

 上条は驚いたようだったがそんなことは関係ない。

 にぎにぎにぎにぎ…………美琴は両手で上条の右手を堪能し始めた。

美琴(これが……コイツの手……結構大きい…)

 周りのことなど気にしない、ただひらすら上条の右手をにぎにぎする。
 もう先ほどまでの怒りなど完璧に消し飛んでいる。

美琴(あ~……中学に入学してから今が1番幸せだわ……)

 ただ手を握るだけ、それが美琴にとって最上級の幸せだった。
 こんなことが最上級だったら付きもし合った場合はどんな幸せなのだろうかと言いたくなる。
 そして―――

上条「お、おい……」

美琴「や、もう少し……ま、まだ落ち着けてないし……」

上条「……いや御坂……周り見てみろ……」

美琴「へ……?」

 美琴は上条の手に夢中ですっかり忘れていた。
 ここはパーティ会場であり、周りには多くの人がいることを。

美琴「あ……」

 今更気づいてもすでに時遅し。
 2人を取り囲むように周りには多くのギャラリーができていた。
 一方通行や打ち止め、茶髪の少年にピンクのジャージの女の子、上条のクラスメイトなどなど……

 さらに嫉妬しているのだろうか、歯をガチガチと鳴らしている銀髪シスター、無表情が怖い巫女姿の女の子、何やらショックを受けている様子の二重まぶたの少女、笑顔だが笑顔ではない金髪シスター、睨みつけてくる三つ編み赤髪の少女、はっきりと感情が読み取れるほど機嫌が悪くなっている『妹達』などなど……
 さらにもっとよく見てみると

美琴「さ、佐天さんに初春さん……」

 にやにやしながらこちらを見ている後輩2人の姿まであった。

上条「な?だからそろそろ離して―――」

???「「何をやっとんのじゃあぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!」」

 大声とともにダブルドロップキックを左側からくらい、ドガッという音と一緒に上条は横へ吹っ飛んだ。
 そのせいで美琴は上条の手を離してしまった。
 そして着地した黒子はすぐさま美琴の元へ駆け寄ってきた。

黒子「お、お、お、お姉様……このような大勢の前で何をしていらっしゃるので!?」

フロリス「上条当麻!私というものがありな……じゃない、えーと、何やってんの!?」

上条「お、お前ら…何すんだ……」

 上条にドロップキックを食らわせたのは黒子とフロリス。
 すごいくらい見事に息の合ったダブルキックだった。

 すると黒子は美琴の肩に手を置き

黒子「お姉様!早く手を洗わないと!ほら早く!!」

美琴「え、いや、私としてはもう一生洗わなくてもい―――」

 美琴が言い終わる前に黒子はテレポート、目の前の景気がごった返していた会場からお手洗いへと変わった。

美琴「あぁ……」

 上条と離れてしまったことから悲しみの声が出てしまった。

黒子「ああ、じゃありませんの!ほら早く手を洗いになってください!!」

美琴「や、ちょっと!止めなさい黒子!!」

 黒子は美琴の腕を掴んで強引に手を洗わせようとするが美琴も必死だ。
 まあ黒子が洗わせようとしなければ普通に洗っていただろう。洗え、と言われれば尚更洗いたくなくなるものだ。
 そして美琴はめんどくさくなったので

美琴「止めなさいって………言ってんでしょうが!!」

黒子「ッッッッッッッッッッッッッ!!!!????!?!??」

 容赦なく黒子に電撃を浴びせた。
 もちろん軽めだが黒子は美琴に寄りかかりぐったりと動かなくなった。

美琴「全く……しょうがないわね。ん?今なんか聞こえたかな?」

 美琴が黒子をお手洗いから運び出そうとしているときに会場内でとある少年の悲鳴が聞こえたとかなんとか。

 それにしても……

美琴(アイツの手……温かかったな……もっと握ってたかったのに…)

 上条の手を握ったことを思い出し幸せに浸る。
 するとそこへ

???「げ、アンタ達ここにテレポートして来てたの?」

美琴「ッ!?」

 ふいに後ろから声がした。
 その方向はお手洗いの奥で誰もいなかったはず、美琴は慌てて振り向くとそこには

美琴「ッ!!む、結標……アンタなんでここに!?」

 美琴の後ろに現れた人物とは長い髪を2つに結んだ少女、結標淡希。どうやらテレポートしてきたようだ。
 そして今日も相変わらず露出度の高い服を着ている。

結標「あのね……お手洗いに来たんなら理由は1つでしょ?」

美琴「違うっつーの!そっちじゃなくてなんでこのパーティに参加してるのかってことよ!!」

 思わず声を荒げる美琴。
 美琴と結標も和解はしているのだが上条のことを考えている時に声をかけられたため動揺してしまったのだ。

 美琴の質問を聞いた結標はため息をついてから

結標「そりゃ招待されたからに決まってんでしょ?主催者のちっこい担任からね。って、さっきから当たり前のことばかり聞かないでほしいんだけど。ま、好きな男に手握られて浮かれてるんならしょうがないかもしれないけどね。」

美琴「ッ!!?」

 どうやら結標もさっきの『あれ』を見ていたようだ。
 図星を当てられた美琴は顔を紅潮させ黒子を床に落としそうになる。もはや顔が赤くなることがお約束になってきた。
 しかし美琴が素直に本当のことを言うわけがない。

美琴「そ、そんなわけないでしょ?この私があんなやつのこと好きなわけないじゃない。全く……何バカなこと言ってんのよ……」

 怪しさバリバリだ。結標から目をそらしているし思いっきり表情にも出ている。

結標「アンタも素直じゃないわね……じゃ、私が告白しようかしら。」

美琴「ッッッ!!!??!?な、な、な?」

 美琴は結標に完全に遊ばれていた。能力のレベルは美琴のほうが上でもどうやら話術のレベルは結標のほうが上のようだ。
 しかも美琴は今の発言を間に受けた。そして大きなミスを犯す。

美琴「そう、わかったわ!アンタもアイツねらいでパーティに参加したわけね!?アイツは絶対に渡さないんだから!!」

 口車に乗せられるとはまさにこのことである。

結標「アンタやっぱり上条当麻のこと好きなんじゃないの。」

美琴「へ?………あ!い、いや違っ、今のは……」

 今気づいてももう遅い。結標は実に面白いことを聞いたというようでにやにやと美琴を見ている。

結標「違うも何もアンタ今『アイツは絶対に渡さな「わあああああああああああ言うな言うな!!」い』……」

 美琴は大声で結標の声を遮った。紅潮していた顔はさらに赤くなってきている。
 思いっきり上条が好きだとバラしてしまったが結標しか聞いていなかったのが不幸中の幸いだ。

美琴「今私が言ったことは忘れなさい!!いいわね!?絶対よ!!?」

結標「え、あ、ちょっと!」

 それだけ言って美琴は黒子を背負い脱兎のごとくお手洗いから逃げ出した。
 その速度は聖人のスピードにも匹敵するものだったとか。

美琴「あーもう!なんでこう不幸なのよ!!」

 会場とお手洗いを結ぶ通路を走りながら美琴は思わず叫んだ。
 しかし美琴の手にはまだ上条と手を繋いでいた感触が残っており、言葉とは裏腹に幸せだった。


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