とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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 御坂美琴は街で開催されていたゲコ太のイベントを終えて満足な笑顔でいつもの自販機を通り過ぎようとしていた。
 すると高い背丈のツンツンした金髪サングラスの男が、美琴を見て急いで駆け寄ってくる。いかにも不良な相手は自分にナンパを仕掛けてくるつもりなのは、視線でわかっていた。さらにいい気分を台無しにされたことで気持ちも一気に下がった。
 美琴は不機嫌な表情に変えると、向かってくる相手を睨み付けた。だが相手はそう睨むんじゃないぜよと語尾におかしな言葉をつけて美琴に近づいた。
「お嬢様、あなたが噂の御坂美琴さんですか?」
「へえ~。私を超電磁砲だと知ってナンパを仕掛けてくるとはいい度胸じゃない、アンタ」
「まあまあ、そう敵意を出すんじゃないぜい。それに夏休みの最後、カミやんに抱きついた時に見てるはずなんだが…覚えてないかにゃー?」
 夏休みの最後、8月31日のことを言われ美琴は恥ずかしいが上条に抱きついた日のことを思い返してみた。
 すると上条を最初に見たとき、その横に二人の男が話していた光景を思い出した。さらにその二人のうちの一人の髪型とサングラスがあの時と似ていることを思い出し、ああと目の前の男のことに美琴は納得した。
「思い出した。確かあのバカと一緒にいたうちの一人よね?」
「そっ。んで俺の名前は土御門。舞夏の義理の兄だにゃー」
「えええ!? 土御門のお兄さんなの!?」
「そうだにゃー。一緒には住んでないが、部屋に来るたびに舞夏からは御坂さんのことは教えてもらってるぜよ」
「そ、そうなんですか……それで? 私に何か用があるんですよね?」
「察してくれて助かるにゃー。ああ、ちょっとだけ待ってくれぜよ」
 というと土御門は少し黙って固まった。しかしその表情は真剣であった。
 美琴は何をしたいのかわからず訊こうと思ったが、あまりにも真剣だったので聞くのをやめた。それからしばらくして、ふぅと息をつくと土御門は準備オーケーにゃーと言って美琴に近づき、ほとんど距離が開いていない位置で止まると顔を少しだけ近づけた。
「え…? あ、あの」
「悪いにゃー御坂さん。ちょっとした演技に手伝ってほしいんだけど、いいかにゃー?」
「演技…ですか? えっと、どう言った演技ですか?」
「ちょっと事情が複雑で舞夏の依頼なんだが、少しだけ説明するからしばらくこのままになるけど構わんかい?」
 どうやら演技はすでに始まっているようだ。
 知り合いの兄とはいえ、こうも馴れ馴れしくされるのはあまりいいものではない。しかし事情がある以上は仕方ないと、美琴はため息をつくとなるべく早めにお願いしますと嫌々頷くのだった。

 上条が土御門と美琴が一緒にいる姿を見たのは補習の帰り道であった。
 いつも通る自販機の近くで、美琴と土御門が会っているとは想像も出来なかった上条は、慌てて近くの自販機に隠れて二人の姿をうかがっていた。
(土御門と御坂…どういう組み合わせだよ)
 土御門から美琴の話をされたことはほとんどない。逆に美琴のことについて、訊いてくることはあった。
 しかしそれは美琴個人への興味ではなく、上条がどんな目にあっているかの不幸な笑い話で、だ。なのでこの二人の組み合わせは何かあっていないような違和感があったので、上条は二人の言動を見張ったのだ。
(それになんだか仲よさそうだし。あいつらって友達だったのか?)
 上条は自販機の影から二人を伺いながら友達なのかと疑問を抱いていると、見られている二人はいきなり動いた。
「んなぁ…??!!」
 なんといきなり土御門は美琴に顔を寄せたのだ。
(ま、まさか……キス!!??)
 上条の視点からは土御門の背中しか見えない。しかし顔を近づけた点と美琴が動かない点の二つを考えれば、キスをしているように見えなくもなかった。
 それに上条が知っている美琴は、上条以外の男に顔を近づけさせたりなんてしない。もし近づけようとするならば、美琴は容赦なく電撃を浴びせてくるはずだ。なのに土御門が近づいても顔を近づけられても、美琴は一切動かなかった。
(いや違う。あいつらはキスなんかしてない! 第一、俺は見てもいないだろう)
 何故だか上条は二人のキスを認めたくなかった。その理由は自分にもよくわからなかったが、どうしても認めたくなかったのだ。
 さらに美琴が土御門にキスを許したことが、少しだけ腹立たしい。美琴がキスをすることなど、知り合いの上条には関係のないことなのに。
 上条は自分の中にある謎の怒りを抱えながら、二人を睨むように見つめる。すると長いキスが終わったのか、土御門は顔を離して一歩下がった。
 そして上条は自販機の影から嬉しそうな顔をしている美琴の表情と笑っている土御門の顔を、見て唇をかみ締めた。
「それじゃあ、挨拶も終わったことだしどうしようかにゃー」
「少し喉が渇いたのでお茶にしませんか? ちょうど時間帯もいいですし」
「それもそうだにゃー。んじゃ、さっさといきますかにゃー御坂さん」
「はい、土御門さん」
 挨拶…それが意味するのは先ほどのキス。違うと思いたかったが挨拶を否定しなかった美琴と二人の嬉しそうな表情を見せられてしまっては、それしか考えられなかった。
「くそ…なんで御坂と土御門の怒ってるんだよ、俺は」
 悪態をついて上条は自販機を蹴っ飛ばした。しかし美琴のように蹴ってもジュースは出てこなかった。
 取り残された上条は二人が向かった逆方向の帰路に着こうと振り向こうとした。だが去っていった二人が気になって仕方なかった上条は、振り向くことなどできず二人の向かった方向を見続けた。
「………ちくしょう。なんなんだよ!」
 なぜこんなにも二人を気にして、二人に怒っているのか上条にはわからなかった、しかしそれの答えは二人を見ていればわかるような気がした。
 上条は片手にカバンを持って二人の後を追う。気持ちは一向に晴れないままだった。

 美琴と土御門が入ったのは街にある小さな喫茶店。
 チェーン店の喫茶店とは違い店の壁と机、椅子は木製で壁には絵画のレプリカらしきものが飾られていた。オーダーは店員が席まで取りに来てくれる。最近の喫茶店ではレジまで行って注文をするのが主流ではあるが、この喫茶店ではそうすることはしないのだろう。まるでお茶をするだけのファミレスだな、と上条は店員がいちいち席まで来てくれることに感心した。
 一方の土御門は前々から入っていたらしい。だが美琴はこの店は初めてらしく興味深そうに店内を見ていた。
 当然のことながら離れた場所から見ていた上条も美琴と同じでこの店は知らなかった。なので少しだけ興味深そうに店内の風景とメニューを見たりした。だがすぐにアイスコーヒーを注文して、今優先すべきだった二人の言動にすぐさま意識を戻した。
「くそ…見えるんだけど話は聞こえないな。でもこの席以外だとばれるだろうし」
 二人の席と上条の席はとても離れていた。しかし上条の席からならば二人に気づかれず、上条が一方的に二人の姿を見ることが出来る配置であった。なので美琴が興味深そうに店内を見えている様子やそれを見ている土御門の顔も見えていた。
「ったく。なんで仲がいい二人を見て上条さんは怒らなければならないのでせうかね?」
 二人を見てから上条はそれがずっと謎だった。部外者である上条が二人の仲を考える必要などないはずなのに、上条は二人の仲を気にせずにはいられなかったのだ。
 上条から見れば美琴も土御門も大切な友人の一人だ。
 美琴は上条が困ってる時は助けてくれる世話好きな年下の可愛い女の子だ。普段は怒ってばかりだが、どんな些細なことでも困っている場合には優しく手を差し伸ばしてくれる。黙っていれば可愛いし、笑顔も素敵だと思っている。普段はそんな態度をとらないが、時折そんな可愛い態度には上条も可愛い女の子だと強く意識はしていた。
 そして最近はほとんど毎日出会う存在もあった。街を歩いていれば声をかけてくるし、下校時には先ほどの自販機の前によくいたりする。不思議なことに学校の友人と会う以上に会っている存在であった。
 一方の土御門に関しては、謎が多く事件の時では敵か味方かよくわからない曖昧なやつだが、日常では上条の大切な友人の一人であった。デルタフォースの一員であり学校内では親友と呼べる存在だ。その正体は魔術師でありスパイでもあるが、それに関しては今は保留としておこう。
 上条から見れば土御門も外見だけならもてる分類には入る。しかし魔性のシスコンであるので、それと美琴とではリンクしない。きっとこれが土御門と美琴が付き合っていることでの違和感だろう。
 しかしそれで済ませていいのか、もっと違うものを感じているのではないかと上条の頭は訴えかけてくる。だから上条は導き出せた答え以外の答えに、胸の気持ちが晴れないままだったのだ。
「……………なんなんだ」
 自分の感情の変化に戸惑いながら、行き場のない怒りの上条は唇を噛んだ。
 楽しそうに談笑する二人はそんなことも知らずに、話に花を咲かせている。話をする土御門とそれを笑う美琴、どこからどうみてもカップルな二人を見て上条はふと考えた。あそこにいるのが自分と美琴だったらどうなるだろうか、と。
 上条が想像するに、きっとあのような楽しそうな談笑にはならない気がした。いつも上条は美琴を怒らせたり、困らせたり、助けを求めたりしている。だから談笑になる以前の問題なのだろう。
 でも、それでも土御門を自分に置き換え、話す内容を無視して照らし合わせてみた。他愛ない話をして、それに美琴は頷いたり笑ったり怒ったり様々な反応を仕返してくる。上条も同じように頷いたり笑ったりして、二人でお茶をしながら話をする。
 想像上だけだが決して悪くない。むしろしてみたいと思った。
「……………御坂」
 そう思うと上条はいても立ってもいられず、カバンを持って席を立つと二人の席へと向かう。
 もう二人が楽しそうに話している光景を見ていられなかった。談笑をしてみたいと思ってしまった今では二人を見ているだけで、出来なかった自分に腹が立ち、談笑の相手である土御門がそこにいるのが許せなかった。
 でも上条はまだこの気持ちが一体なんのか、いまだにわからないわ。だが考えて一つだけわかったことがあった。
 きっと腹立たしく思っているのは美琴にもだろう。土御門には出来て、自分にはしてくれない。自分勝手な考えだがそれが許せなかったのだろう。
「おい、御坂」
 そして席の前に立つと上条は美琴の腕を引いて、強引に立たせると机に伝票を置いて土御門を睨んだ。
「御坂はもらってく。それとこれも払っといてくれ。金はあとで返す」
「了解にゃー。あと御坂さんをもらってくならどうぞどうぞ。俺はもう用を済ませたから、大丈夫だぜよ」
「……そうかよ」
 こんな時でも相変わらずの態度に上条は殴ってやろうかと思ったが、美琴がいるのと店の中であったためやめた。もし店の外で美琴がいない場面であれば、上条は迷いなく土御門を殴り飛ばしていただろう。
 仕方なく睨むだけで済ませることにした上条は、行くぞというと美琴の腕を引いて店を出口まで歩いていく。
「痛いって。ちょっと、強引に引っ張らないでよ」
「…………」
 強引だったのが痛いらしく、美琴は上条に抗議の声を上げながら手を離そうとする。しかし上条はそれを無視して、掴んだ手の力をさらに強めると店の出口の戸を荒っぽく開けて店を出た。そして上条は美琴の腕を引いて適当な場所に向かって、来た道を戻っていった。

「ずいぶんと強引なんだにゃーカミやん」
 店に一人取り残されてしまった土御門は、相変わらずへらへらとした態度を崩さない。
 美琴がいなくなってしまったというのにそれを追おうとはせず、傍観者として怒っている上条が美琴を強引に連れて行くのを見ていた。出口に出ても土御門は窓から見えた二人を見続け、見えなくなったところで注文しておいたコーヒーに一口だけ口をつけた。
「これで満足かにゃー、舞夏」
 というと後ろの席に座っていた大人しめの洋服を着た少女が、土御門とは向かい側の席に座った。
「上出来だよー。さすが兄貴だと感激したー」
「これぐらい俺にかかればどうってこともないぜよ。でも当分はカミやんに睨まれ続ける学校生活を送りそうで、面倒な気がするけどにゃー」
「でもこれを頼めるのは兄貴しかいなかったからなー」
 向かい側の少女は土御門の義理の妹の土御門舞夏であった。
 いつも着ているメイド服ではなく、今日は普通の洋服を着ていた。だがこれは変装なので彼女の私服ではなく、この変装のためだけに買った洋服であった。でも意外と似合っている服装は彼女の私服であってもおかしくなかった。
 舞夏は何も注文していなかったので、メニューを見て近くの店員を呼ぶと適当なものを注文した。ちなみにそれを払うのは兄の土御門である。
「それにしても舞夏がこんなことを思いつくとは、思いもしなかったにゃー」
「まー何も知らない兄貴はそうだろうなー。でも上条当麻と御坂によく会う私からすれば、こうでもしないと見ていられなくてなー」
「言いたいことは大体わかるにゃー。あの二人は俺から見てもお似合いだぜい。もっともカミやんだけがそれに気づいていなかったようだけど」
「それは仕方ないことだよ兄貴ー。なんていったって、色々な女からアピールされても一向に気づかないのが上条当麻なんだからなー」
「同感。でも気づかない御坂さんだってなかなかに鈍感なのかもしれないぜい?」
 土御門はニヤニヤ笑いながら出て行った二人が向かった方向を見た。
「それも言えてるなー。気づかないのは上条当麻だけじゃないみたいだしー」
「カミやんは御坂さんを意識していることとアピールされていないこと気づかず、御坂さんはカミやんが常に意識していることに気づいていない。こうしてみても、やっぱりカミやんの鈍感がよく目立ってるぜよ」
「でもそれがまた面白いんだなー。お子様らしい不器用な両想いをしている二人が、何も気づかず無意識に意識している光景がー」
 そういって舞夏もニヤニヤと笑った。
 そう二人はとっくに気づいていた。しかし今はいない鈍感な二人は土御門兄妹の言った事にはまだに気づいていなかった。

 上条が腕を引いてやってきたのは最初の自販機の前であった。そこまでやってきて上条は美琴の腕を開放した。
「悪い。ちょっと強引だったか?」
「痛いって言ってるでしょうが、この馬鹿! 少しぐらい加減しなさいよ!」
「ああ、悪い………」
 怒っているのは見て取れた。一般常識で考えても、いきなり説明もなしに強引に腕を引っ張られては怒りもする。
 さらには自分の都合で引っ張ってきて痛いという抗議の言葉も聞かなかった。思い返してみて上条は強い罪悪感は感じてしまい、ごめんと今度は頭を下げて謝った。
 美琴は言いすぎたかなと呟くと、謝ったからいいと上条に頭を上げるように促した。
「それで、なんで私を強引に連れ出したの?」
「……………」
 いきなり確信を訊かれ、上条はなんと言えばいいか戸惑った。
 当然、素直に土御門と話している光景を見ているのが嫌だったとは言えない。何故ならそれは自分の都合でしかなく、言えば美琴に幻滅されるような気がしたからであった。
 上条は長い間に沈黙を保った後に別にと言って顔を背けた。何かよい言い訳を考えたが、結局は誤魔化すのが一番だと判断した。
「アンタね。私はいきなりアンタに引っ張られてここに来たの。だったら私に何かあるなら言わなきゃわからないでしょ? ほら、言いなさいよ」
「別になんでもねえって。あれは………そう、あいつがナンパしてたから助けてやっただけだ」
「あのやりとりのどこがナンパに見えるのよ。それにアンタ、あの相手が土御門さんだっていうの知ってたじゃない? ならなんで私を助ける必要があるのよ」
「……………」
 美琴の言い分は正論だ。二人は仲良く話していただけでナンパではない。さらに上条は土御門の友人であり、土御門がおかしなこともしないのを知っていた。上条が助ける理由は、ない。
 上条はもう一度黙り込むと、どうだっていいだろと曖昧な答えを述べるしかなかった。
「それよりもお前は土御門と何を話してたんだよ?」
「別にそこまで重要な話じゃないわよ。自販機の前で『追われてるからカップルのふりをして欲しい』って言われて、喫茶店に入っただけよ。それからはアンタの話や妹の土御門の話をしてもらったのだけど、そこで覗いていたアンタが乱入してきたってわけ」
「ばれてたのかよ。なら、あのキスも演技だったのかよ?」
 上条が見た土御門と美琴のキスをしていると思える光景を見たのはここであった。もしかしたら適当に歩いてきたと思っておきながら、本当はここでそれを問い詰めたかったからここに来たのかもしれない。だが歩いていた時、上条は特に意識はしていなかったので真実は自分でもわからなかった。
 しかしキスの件は訊いておきたかったのが事実だ。それに関しては自分が一番わかっていた。
「キス…? なんのことかしら?」
「とぼけるんじゃねえよ。お前と土御門はここで顔を寄せ合って、キスしてたじゃねえかよ」
 あの光景を思い出すだけで美琴と土御門の二人に腹がたった。
 そんなことも知らない美琴は何を言ってるのときょとんとしてしまったが、しばらくして思い出したのか、あれのことねと納得して頷いた。
「あれはキスじゃないわよ。土御門さんが周りに聞こえないようにって、顔を寄せてきただけよ」
「は…? 寄せた…だけ?」
「そうよ。いくら知り合いの兄だからって、私がキスを許すと思う?」
 美琴という人物を考えれば、知り合い程度にキスなど許すわけない。というよりも親友であっても美琴は許さないだろう。
 今更だが冷静に考えればどうってことはない答えであった。
 それがわかると上条は胸のうちにあった怒りの渦が消えてしまい、肩の荷が下りた。
「アンタ、まさかと思うけどそれを聞きたいがために私を引っ張ってきたわけ?」
「まあそれもあるけどな」
 はぁーと自分の空振りに呆れてしまった。
 しかし今の上条の言葉に違和感を覚えた美琴は、あれと疑問を感じて先ほどの言葉を思い返してた。
「ねえ、『それもあるけどな』ってことは、それ以外にも何かあるの?」
「……………ないです」
「冷や汗をかきながら、そっぽ向いてるくせによく言うわね。だけど残念なことにアンタには答えると言う選択肢しかないわよ?」
 ビリビリと自分の周りに青い光を発する。言わないと言えば、これが雷撃の槍に変わってしまうことは決定的であった。脅しに折れた上条は言います言いますと慌てながら何度も頷いた。
「はぁー。くだらないことだけど、いいか?」
「いいから言いなさい。全てはそれから判断するわ」
 わかったよと言うと上条は後ろ髪をボリボリと掻いた。そして、まったくと一言文句を言って
「お前と土御門が話してる光景を見て、すげえ腹が立ったんだよ。俺と一緒にいる時には出来ないことをあいつとやってたからさ、すげえムカついた。それでいても立ってもいられなくて気づいたらお前を連れてここに来てた」
「………」
「それだけじゃない。俺はお前とあんな風に話したいとさえ思った。内容なんてどうだっていい。さっきお前が土御門と話していたようなことが俺と御坂もしてみたいと思った。そしたらきっと、ってどうしたんだ御坂?」
 上条の思ったことを聞いて、美琴は真っ赤になってしまった。何か間違ったこと言ったかな、と上条は赤裸々に語ってしまったことを後悔した。
 そしてごめんなさいとまた頭を下げようとした瞬間、美琴は雷撃の槍を上条に放った。もちろん、当たったら生きていないので右手で打ち消して上条はすぐさまスイマセンでしたと土下座した。
「ああああ、アンタ! 自分がなにを言ったのかわかってるの!?」
「申し訳ありませんでした!! この上条当麻、御坂美琴様を怒らせることをしたことを深くわびると」
「そういう意味じゃないわよ! それよりも、早く立て!!」
 命令口調プラス土下座している上条を一発蹴るという、悪いお嬢様の風格を持った美琴を前に上条は、はいただいまとびくびくしながらすぐさま立ち上がって気を付けをした。
(こわいですこわいですこわいです! 御坂が何かに目覚めたみたいで怖いです!)
 上条はその姿勢を保ったまま、顔を真っ赤にして睨んでくる美琴が次に何をしてくるかにおびえた。なんとも情けない光景であるが、命の危険以上の恐怖を感じていた上条には、この光景を誰かに見られるよりも美琴がこれから何をするかが心配でならなかった。
 そして美琴はすーはーと深呼吸すると、アンタと上条を指差して、
「これからお茶をしに行くわよ。そこで話をする。内容は…アンタが決めなさい。よし決まったら行くわよ。はい付いて来る付いて来る」
 言葉マシンガンの弾丸が一気に上条に襲い掛かってきた。もちろん、あまりにも展開が早く決まってしまったので上条はしばらくの間、放心状態になってしまった。そんな上条の事情も知らない美琴は真っ赤になりながら上条の腕を引っ張ると、また街の方向へと戻っていくのであった。
「はぁー。これは不幸になるのかどうか、上条さんにもわからない展開です」
 どうしてこうなってしまったのか、鈍感な上条には当然わからない問題であった。
 ちなみに、上条は自分の抱いていた感情の正体が美琴と土御門への嫉妬であることにも一切気づかなかったのであった。


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