仮想と現実というと、最近の青少年犯罪における「現実と仮想との混同」を原因とする議論を思い浮かべる。 コンピューターの爆発的普及に伴う、ヴァーチャル空間云々に乗って、それまで存在していたテレビや映画、小説の影響といったものを超えるTVゲームによる悪影響説だ。
確かに、リアルな表現でしかもインタラクティブに格闘技や殺人などが描かれていくTVゲームをやり玉に上げることは思わず納得させられるかもしれない。 しかし、そこにはやはり大人的解釈が存在し、「本当はよく分からないのだけど、そう考えれば納得出来る」と言ってひとまず議論を終了させようとする棚上感がつきまとう。
実際、大人達でもTVゲームに夢中になっている人は、「現実と仮想との混同」によって簡単に殺人を犯す、といった解釈について疑問を抱くのではないか。
そんな中、TVゲームの影響について色々と言及している香山リカさんの見識を発見。(なぜか建築雑誌のGAですが。) 香山さんは、少年達のカウンセリングを通して、問題の本質を「現実世界における想像力の欠如」ではないかと言っている。 ゲームの世界では、とても自由な発想力で謎を解き、どんな局面も難なく乗り切っていくのに、一歩現実の中に踏み出すと、とたんに硬直化してしまう少年達。
きっと情報化された社会の中で、幼い時から大人社会の実体に触れる機会が多くなり、「ウソ社会的」な現実に対する虚構感が生まれるのだろう。大人達は、すでにシュミレーション化された社会のなかで、泳ぎ廻る精神力(と言うか、社会に対するあきらめ?)が身についているので、そんなデリケートな子供達の感情など気づかないのだ。
子供の内はある閉ざされた空間で、じっくりとウソの社会に堪え忍んでいく忍耐力を育てる必要があるのでしょうか?
99.09.05/k.m
カテゴリー-その他