「君が残した光」(2008/11/13 (木) 21:41:27) の最新版変更点
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*君が残した光 ◆0O6axtEvXI
白と青の制服を赤く染め、なのはは一人ホテルへ向けて足を進める。
だが、その足取りは重い。肉体的な疲労はある程度取れたとはいえ、やはりあんな悲惨な現場を見てしまっては精神的につらい。
自分を纏う血の臭い、それが男の、身長から考えるに恐らくは少年であろう死体の姿を思い出させる。
「ごめんなさい……」
もはや何度目になるか、謝罪の言葉を口にする。
その謝罪をするたびに、少年を救えなかった罪の意識が彼女を襲う。
どうすることもできなかった、それは理解している。しかしそんなことで自分を許すことはできなかった。
必ず加持や他の人たちを救う。それが彼への償いになるはずだ。
その心に決意を宿し、多少時間をかけながらも加持の待つホテルへと足を進め――
『あー、あー、マイクテスト、マイクテスト』
「……!?」
『みんなおはよう、今日は天気の気持ちいい朝だね、いまはどんな気分かな?』
「あ……放送……?」
最初、この島に連れてこられる前に聞かされた言葉を思い出す。
確か、禁止エリアというものと死亡者を発表すると……
慌ててなのはは地図とペンを取り出す。この情報は絶対に必要だ、名簿を失っていることに改めて自分のミスの大きさを感じるが、今はメモを取ることが最優先だ。
『それじゃあ禁止エリアの発表と行こう』
なんとか準備は間に合った、最初の無駄話は自分のような参加者のためだったのか?
などと考えてしまい自己嫌悪に陥る。
このような殺し合いを始める人間にそんな気遣いがあるものか、一瞬でもそんなことを思ったことに加持や仲間達、あの少年に謝罪する。
『一度しか言わないからよぉく聞いておくんだよ? 午前7:00から――』
挑発的な口調に顔を顰めながらも、放送で告げられたエリアにチェックを入れていく。
あとから時間を書き込み、一息つこうとするが声はまだ止まらない。
『そしてもう一つ、お待ちかねの死者発表だよ』
「―――っ」
小さく息を飲む。
最低一人は名前を呼ばれることを自分は知っている、その一人以外の名前は呼ばれないでいてほしいが……
とはいえ、あの少年の知り合いがショックを受けてしまうことに変わりない。こんなところでもこの殺し合いの嫌らしいシステムを認識させられてしまう。
とにかく今はメモだ、名簿がない以上名前を書いていくしかない。
『涼宮ハルヒ』
ハルヒ、あまり聞かない名だが、男性の名前としてはあまり似つかわしくないように思える。
ならば他にも殺された人間がいるのか、鉛筆を持つ手に力が入る。
『モッチー』
……別の次元世界の人間だとしたら、この名前の可能性もあるだろうか?
やはり男性の名前とは思いにくいが、可能性はありそうだ。
『フェイト・T・ハラオウン』
「………………え?」
動きが止まる。
『日向冬樹――ゼルガディス=グレイワーズ』
放送はまだ続いているが、そんなものすでに耳に入っていない。
メモを取っていた手は「フェイト」と書いた時点で止まっており、わずかに震える筆先が意味をなさない点を紙に記していく。
「フェイト、ちゃん……?」
初めて出会った時は、敵だった。
――申し訳ないけど、いただいていきます
自分の呼びかけにも、耳を貸してはくれなかった。
――話し合いで、解決しない?
――話しても何も変わらない……意味がない
それでも、諦めず語りかけた。
――友達に、なりたいんだ。だから、つらいのも苦しいのも、半分ずつ!
その言葉は、届いたんだ。
――少しだけ、わかったことがある……友達が泣いてると、同じように自分も悲しいんだ
――フェイトちゃん!
それから、ずっと、
――ちっ、仲間か!?
――……友達だ
ずっと、ずっと一緒に、
――いくよ、フェイトちゃん、はやてちゃん!
――うん!
いつも、一緒に、
――もう、なのはは無茶ばっかりするんだから
ずっと、闘ってきたのに。
――同じ空は久し振りだね、なのは
もう――会えない……?
「フェイト、ちゃん……フェ、イ……ちゃ……あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
どれだけの間、泣いていただろうか。
数分だったかもしれないし、一時間近くはこうしていた気もする。
冷静に考えればあんな大声で泣いていながらその場にとどまっているなど、この場ではどうぞ殺してくださいとでも言っているようなものだ。
その程度のことにさえ、今のなのはは気づけない。
ただひたすら泣きじゃくり、少女としての感情のみを出して友の死を嘆く。
そのままであれば、誰かが来るまでへたり込んだままだっただろう。
変化を与えたのは、やはり友の言葉だった。
――必ずヴィヴィオを助けよう! 一緒に!
「ヴィ、ヴィオ……!」
そうだ、こんなところでへたり込んでいる場合じゃない。
まだこの島にはヴィヴィオがいるのだ、戦う力など持っていない幼い少女が。
「助け、ないと……ヴィヴィオ……」
気力を振り絞りその場に立ち上がる。
放送の前よりもはるかに重くなった足で、ホテルへと一歩ずつ、ゆっくりと歩を進める。
「ヴィヴィオ……ヴィヴィオ……!」
ヴィヴィオを救う、それだけがいまの彼女を支えていた。
だが、他の者が見たらこう思うだろう。
『ヴィヴィオという参加者に助けを求めている』と。
不屈の心を持った少女。
その心が闇に屈するまで、あと――
【B-4 街道/一日目・朝】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(小)、強い悲しみと決意 、制服が血まみれ
【持ち物】基本セット(名簿紛失) ディパック
ハンティングナイフ@現実 コマ@となりのトトロ
【思考】
0.ヴィヴィオをはじめとしたみんなを守りたい。誰にもこれ以上死んでほしくない
1. ホテルに向かい加持と合流する
2.ホテル、デパート方面に向かい仲間を増やし、ヴィヴィオやほかのひとの情報を得る
3.フェイトちゃん……!
*時系列順で読む
Back:[[悪魔は再び]] Next:[[殺戮を大いに行う涼宮ハルヒのための団]]
*投下順で読む
Back:[[悪魔は再び]] Next:[[殺戮を大いに行う涼宮ハルヒのための団]]
|[[上と、下(後編)]]|高町なのは|[[師匠と、弟子]]|
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*君が残した光 ◆0O6axtEvXI
白と青の制服を赤く染め、なのはは一人ホテルへ向けて足を進める。
だが、その足取りは重い。肉体的な疲労はある程度取れたとはいえ、やはりあんな悲惨な現場を見てしまっては精神的につらい。
自分を纏う血の臭い、それが男の、身長から考えるに恐らくは少年であろう死体の姿を思い出させる。
「ごめんなさい……」
もはや何度目になるか、謝罪の言葉を口にする。
その謝罪をするたびに、少年を救えなかった罪の意識が彼女を襲う。
どうすることもできなかった、それは理解している。しかしそんなことで自分を許すことはできなかった。
必ず加持や他の人たちを救う。それが彼への償いになるはずだ。
その心に決意を宿し、多少時間をかけながらも加持の待つホテルへと足を進め――
『あー、あー、マイクテスト、マイクテスト』
「……!?」
『みんなおはよう、今日は天気の気持ちいい朝だね、いまはどんな気分かな?』
「あ……放送……?」
最初、この島に連れてこられる前に聞かされた言葉を思い出す。
確か、禁止エリアというものと死亡者を発表すると……
慌ててなのはは地図とペンを取り出す。この情報は絶対に必要だ、名簿を失っていることに改めて自分のミスの大きさを感じるが、今はメモを取ることが最優先だ。
『それじゃあ禁止エリアの発表と行こう』
なんとか準備は間に合った、最初の無駄話は自分のような参加者のためだったのか?
などと考えてしまい自己嫌悪に陥る。
このような殺し合いを始める人間にそんな気遣いがあるものか、一瞬でもそんなことを思ったことに加持や仲間達、あの少年に謝罪する。
『一度しか言わないからよぉく聞いておくんだよ? 午前7:00から――』
挑発的な口調に顔を顰めながらも、放送で告げられたエリアにチェックを入れていく。
あとから時間を書き込み、一息つこうとするが声はまだ止まらない。
『そしてもう一つ、お待ちかねの死者発表だよ』
「―――っ」
小さく息を飲む。
最低一人は名前を呼ばれることを自分は知っている、その一人以外の名前は呼ばれないでいてほしいが……
とはいえ、あの少年の知り合いがショックを受けてしまうことに変わりない。こんなところでもこの殺し合いの嫌らしいシステムを認識させられてしまう。
とにかく今はメモだ、名簿がない以上名前を書いていくしかない。
『涼宮ハルヒ』
ハルヒ、あまり聞かない名だが、男性の名前としてはあまり似つかわしくないように思える。
ならば他にも殺された人間がいるのか、鉛筆を持つ手に力が入る。
『モッチー』
……別の次元世界の人間だとしたら、この名前の可能性もあるだろうか?
やはり男性の名前とは思いにくいが、可能性はありそうだ。
『フェイト・T・ハラオウン』
「………………え?」
動きが止まる。
『日向冬樹――ゼルガディス=グレイワーズ』
放送はまだ続いているが、そんなものすでに耳に入っていない。
メモを取っていた手は「フェイト」と書いた時点で止まっており、わずかに震える筆先が意味をなさない点を紙に記していく。
「フェイト、ちゃん……?」
初めて出会った時は、敵だった。
――申し訳ないけど、いただいていきます
自分の呼びかけにも、耳を貸してはくれなかった。
――話し合いで、解決しない?
――話しても何も変わらない……意味がない
それでも、諦めず語りかけた。
――友達に、なりたいんだ。だから、つらいのも苦しいのも、半分ずつ!
その言葉は、届いたんだ。
――少しだけ、わかったことがある……友達が泣いてると、同じように自分も悲しいんだ
――フェイトちゃん!
それから、ずっと、
――ちっ、仲間か!?
――……友達だ
ずっと、ずっと一緒に、
――いくよ、フェイトちゃん、はやてちゃん!
――うん!
いつも、一緒に、
――もう、なのはは無茶ばっかりするんだから
ずっと、闘ってきたのに。
――同じ空は久し振りだね、なのは
もう――会えない……?
「フェイト、ちゃん……フェ、イ……ちゃ……あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
どれだけの間、泣いていただろうか。
数分だったかもしれないし、一時間近くはこうしていた気もする。
冷静に考えればあんな大声で泣いていながらその場にとどまっているなど、この場ではどうぞ殺してくださいとでも言っているようなものだ。
その程度のことにさえ、今のなのはは気づけない。
ただひたすら泣きじゃくり、少女としての感情のみを出して友の死を嘆く。
そのままであれば、誰かが来るまでへたり込んだままだっただろう。
変化を与えたのは、やはり友の言葉だった。
――必ずヴィヴィオを助けよう! 一緒に!
「ヴィ、ヴィオ……!」
そうだ、こんなところでへたり込んでいる場合じゃない。
まだこの島にはヴィヴィオがいるのだ、戦う力など持っていない幼い少女が。
「助け、ないと……ヴィヴィオ……」
気力を振り絞りその場に立ち上がる。
放送の前よりもはるかに重くなった足で、ホテルへと一歩ずつ、ゆっくりと歩を進める。
「ヴィヴィオ……ヴィヴィオ……!」
ヴィヴィオを救う、それだけがいまの彼女を支えていた。
だが、他の者が見たらこう思うだろう。
『ヴィヴィオという参加者に助けを求めている』と。
不屈の心を持った少女。
その心が闇に屈するまで、あと――
【B-4 街道/一日目・朝】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(小)、強い悲しみと決意 、制服が血まみれ
【持ち物】基本セット(名簿紛失) ディパック
ハンティングナイフ@現実 コマ@となりのトトロ
【思考】
0.ヴィヴィオをはじめとしたみんなを守りたい。誰にもこれ以上死んでほしくない
1. ホテルに向かい加持と合流する
2.ホテル、デパート方面に向かい仲間を増やし、ヴィヴィオやほかのひとの情報を得る
3.フェイトちゃん……!
*時系列順で読む
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