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「類は友を呼…びすぎてませんかちょっと?」(2009/09/20 (日) 21:40:52) の最新版変更点
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*類は友を呼…びすぎてませんかちょっと? ◆qYuVhwC7l.
「ケロボール、というアイテムだそうですよ。
これを使って出来る事は、先ほど見せたショック光線に加えて、物体転移光線に、瞬間移動、さらに手に持って操作する事で飛行能力を得る事も出来るとか」
「……言葉の意味はわからんが、凄い自信だ」
竜頭蛇尾な戦いから数分後、スグルはようやく自分に追いついたゼロスから、自分が持っていたディパックから発見したという謎の支給品についての解説を聞いていた。
ついさっきまではそれなりの火勢が周辺を襲っていたのだが、謎のオタマ超人が周辺の破壊活動を行っていたお陰でその炎のほとんどは消えうせている。
その為に、ゼロスは落ち着いてこの便利アイテムの説明ができている訳だが、そこは元より頭のあまりよろしくないスグルの事。
複雑なケロボールの機能を理解できるわけもなく、ただただ唸って首を捻ってみせるだけだ。
そんな筋肉男の様子はさておき、ゼロスは自分の確認の意味も含めてさらに機能解説を行う。
「えーと…物体転移光線というのは、使用者の半径20Mにいる物体に当てる事でそれを同じく半径20Mの別の場所へ移動させる事が出来るそうです。
僕もそれのお陰で、燃えている瓦礫なんかを別の場所へ移す事でスムーズにスグルさんに追いつく事ができたわけで…
ああ、でもどこに移動させるかの設定はできずにランダムなようですね」
「グ、グムーっ……」
「瞬間移動に関しては、悪魔将軍の元にたどり着くのに使えるのではと思ったのですが…
どうやらこれが使えるのは放送毎に一度だけな上に、どこにワープできるかはわからないという物のようで。
いささかギャンブル性が強すぎて使えませんよねぇ?」
「……………」
「スグルさん、起きてますかー?」
「う、うむ! 寝てはおらんぞ!」
ゼロスがそれなりに心のこもった(?)解説を行ってみても、超体育会系の正義超人相手には暖簾に腕押し。
これが氷の精神を持つファイティングコンピューターだったならばまた別の結果が待っていただろうが、
超人連中のなかでも特に頭の出来がよろしくないキン肉マン相手ではそれも無理もない事か。
一瞬だけ溜息をついたゼロスを見て流石に悪いと感じたのか、スグルは自分からもこの黒いボールに関する話題を振ってきた。
「それにしてもそんな便利そうな物が支給されているとは、驚いたのう」
「僕としては、こんな便利な支給品を手に入れていたのに使っていないどころか存在自体に気づいていなかったスグルさんの方に驚きましたよ」
「いや、そう言われてもな…私の元々の支給品はもう調べてしまった後だったし、それを支給されていたディパックもヴィヴィオちゃんと出会った時に近くに置いてあっただけだったしのう」
スグルが回想するのは、第一回放送直前、高等学校にてヴィヴィオと初めて遭遇した時の事だ。
スグルが持っていたディパックの内訳は元々自分が持っていた一つに加え、その時に物言わぬ死体と化した涼宮ハルヒというらしい少女が持っていた物が一つと、その場に放置されていたもう一つの三つ。
話を聞くに、どうやら自分が見かけた新手の悪魔超人『キョン』(正確には超人ですらない一般人の高校生らしいが)が、涼宮ハルヒに手を掛けた後で忘れていった物らしい。
自分の知り合いの命を奪ってしまった殺人者がどんな心境であったか、などはスグルの知る由もない。
とりあえず置いてあるのならばと回収した後で、中に入っている基本支給品が二つあった事に気づき、あの悪魔超人はすでにもう一人の参加者に手を掛けていたのでは…と怒りに震えたのを覚えている。
ディパックだけを幾つも持っていてもしょうがないので、中身だけ一つに纏めて適当に突っ込んでおいたのだが、その時にまだ確認していない支給品が混じったのであろう。
これが元々誰の物であったのかはわからないが、無理に考える必要もない。
ともかく、そんな微妙に言い訳じみた正義超人の話を聞いてもゼロスが浮かべる苦笑の色は変わらなかった。
「……だからと言って支給品を調べようともしなかったんですか貴方は」
「うむ、我々超人には元々武器など不要だからな…そこまで考えが回らなかったわい」
言葉と同時に何度か腕を折り曲げ力瘤を作って見せるも、ゼロスは呆れたような視線と笑顔を浴びせてくるだけだ。
そのまま何ともいえぬ空気を流しているばかりでもいられない、とスグルは別の話題を振ってみせる。
「そ、それよりじゃゼロスくん。そこの、オタマ超人の事なのだが……」
そう云いながら指さすのは、先ほど自分に襲い掛かりゼロスの一撃であっさりと気絶した謎の人物(仮)。
幾らなんでもあのまま地面に寝かしておく訳にもいかないだろう、とすぐ傍の建物の壁にもたれ掛かからせているが、未だに目を覚ます様子は無かった。
「ああ、そうですね…ですがほとんど情報交換もしないままに襲い掛かってきたんでしょう? 僕としては、この魔物はすでにゲームに乗っているとみて間違いないと思うのですが」
「う、うむ。確かにこのオタマ超人には怪しい部分が多いが、それでもいくつか気になる事があっての……
しかしゼロスくん、その超人は全く目を覚ます様子を見せないが…まさか先ほどの光線で死んでしまったんじゃないのか?」
そんな事を聞くスグルの顔は、僅かに青ざめている。
碇シンジの死に触れた事で人の生死に敏感になっているのだろうか、と考えたゼロスだが、ひとまずは笑顔を浮かべて彼を安心させる事に努めた。
実際、スグルの心配しているようなことは何一つ起こっていないのだ。
「いえ、息もしていますし心臓も問題なく動いていますからね。ただ気絶しているだけですよ」
「そ、そうか…ならいいんじゃが…しかしそのショック光線というのは凄い威力だな。こうもあっさり超人を気絶させてしまうとは…」
「うーん、それならいいんですが、どうもそうじゃないみたいなんですよねぇ。
解説書が入っていたので一通り目を通してみたのですが、これに搭載されているショック光線は、せいぜい相手を痺れさせる効果しかないようなんです。
ま、ただでさえ色々な機能があって便利な支給品ですからね。攻撃にまで有用となるのは不公平でしょうし」
「む? じゃがゼロスくん、実際にこのオタマ超人は痺れるどころか気絶しているではないか?」
「ああ、それなんですが…」
頭を捻っているスグルに答えながら、ゼロスは気絶している謎のオタマに近づいてその体を検分する。
体についている傷は、既に処置済みである全身の裂傷、肩や頬に僅かな傷がある程度で軽傷極まりないが、この場合の問題は別にあるのだろう。
意識を失ったまま浅い呼吸を繰り返しているその様子は、『気絶』というよりは『睡眠』に近かった。
「おそらく彼、スグルさんと会うまでに物凄く体力を消耗していたんじゃないでしょうか? 足も酷く汚れていますし、休まずに走り続けたのか、それともどこかで戦い続けていたのかはわかりませんが…」
「むぅ…疲労が溜まりに溜まっていたために、簡単な衝撃で意識を失ってそのまま眠ってしまった、と見るのが正しいという訳か」
「ええ。殺し合いに乗っていた彼が、一体何をそんなに必死になっていた事やら…」
「………その事なんじゃがな、ゼロスくん。どうやらこのオタマは、『軍曹』という人を探していたらしい」
本当に疑問を持っているのか疑わしい微笑みを浮かべながら首をかしげるゼロスに、スグルはこのオタマから聞いた一つの情報を話す。
『あぁ!? 僕がぶっ殺すのは怪しい奴だけですぅ!! いいから軍曹さん達を探す邪魔するんじゃね~ぞこのブタ野郎!!』
破壊行動を繰り返す事と人を探す事がどう結び付くのかは中々理解が及ばなかったが、
自分が駆け付けた事を思えば、ひと騒動を起こす事で周りの注目を集め、目当ての人間が来るのを待ち構えていたのかもしれない。
ともかく、このオタマ超人はなりふり構わない程にその人物と会う事を求めていたのだろう。
「『軍曹』、ですか? ……そういえば、そんな名前が名簿に載っていましたね。確か『ケロロ軍曹』とか……」
それを聞いたゼロスはしばらく考える素振りを見せた後で、一つの事実に気づいてポンと手を打った。
「なるほど、大体わかってきました。このオタマさんですが、おそらく名前は『タママ二等兵』というのでしょう」
「な、なにーっ!? なぜそんな事がわかるんじゃゼロスくん!?」
「いえいえ、簡単な推理ですよ♪」
驚きの表情のスグルに対して、ゼロスがその結論に至るまでの過程を丁寧に説明しだす。
「実は僕、この殺し合いが始まってから『ドロロ兵長』という人物に会っているんです。彼もこのタママさんと似た姿をしていましてねー。
彼もまたスグルさんに似て、正義感にあふれたセイギノミカタのようだったんですが、結局その後に第三者の来襲があった事もあって別れてしまい…」
ゼロスの言う事に、何一つ嘘は無い。ただ、いつものようにいくつか『言っていない』事があるだけだ。
「そしてもう一人、似た名前を持った『ガルル中尉』という人物は、既に第二回放送にて死亡が確認されています。
残る二つの名前は、『ケロロ軍曹』に『タママ二等兵』。そしてこちらのオタマジャクシさんは『軍曹』という人物を探していたとなれば、もう答えは一目瞭然でしょう」
「ふ、ふーむ…なるほどのぅ」
まるで数学の授業で出された証明問題を解くかのように、ゼロスのスラスラと流れる解説を聞いて思わずスグルが呻いた。
そこまで分かっているのなら、このオタマ超人が『タママ二等兵』という名なのは確定したような物だろう。
だが、それがわかった所でここではさほどの意味もない。
そう結論付けたゼロスは、気絶しているオタマジャクシ改めタママへとその指を向ける。
「じゃあ、とりあえず目を覚まされる前に始末して置きましょうか」
「ああ、始末じゃな……って待て待て待てぇーーいっ!? い、いくらなんでもそれはひど過ぎないかゼロスくん!?」
余りにも何でもない事のように飛び出した物騒な単語を思わず一度は聞き流したスグルだが、その意味を正確に理解すると慌てて過激な事をやろうとしている神官を引きとめる。
対するゼロスは、微妙に眉をひそめながらも相変わらず張り付いた笑顔のままでセイギノミカタに尋ねた。
「おや、どうして引きとめるんですか? さっきまでの言動を見ても、このタママさんがゲームに乗って、他人を殺そうとしているのは確実でしょう。
だったら、新たな犠牲者を生まないうちに始末しておくのがいいと思いますが」
「そ、それは確かにそうだが……だが何も問答無用で殺す事はないだろう!? そ、それでは、君もまるで、殺し合いに乗っているような物ではないかーっ!」
わなわなと震えながらのスグルの一言を聞いて、ゼロスは思わず声を出して笑うのを抑えた。
今となっては自分の知り合いはリナしかいないが、彼女はおそらく自分がこのゲームに乗っていると認識しているだろう。
もう早くに退場してしまった人物ではあるが、ゼルガディスもまた自分に対して同じ評価を下している筈だ。
なによりゼロス自身、こんな無駄な『首輪』などがなければゲームに乗る事自体に決して否定的では無かっただろう。最も、自分をこんな空間に押し込めた主催者を許す気がないのは同じだが。
だというのに、目の前のセイギノミカタは自分が殺し合いに否定的だと思い込んでいる。
元々意識してそう思い込ませるようにしていたとはいえ、魔族であるゼロスに本来の性質とは正反対の評価を抱いているスグルの様子が妙に滑稽に映った。
閑話休題、いくらなんでもこの場で笑いだす訳には行かない。
それでも平常時の微笑みを消すことのないままに、ゼロスは逆にスグルへと質問する。
「では、スグルさんはタママさんをどうしたいのですか? このまま生かしておいても、間違いなく彼は他の誰かを殺そうとするでしょうし」
「そ、それは……殺し合いを止めるように説得すればいいではないか!!」
「僕達が、ですか? しかし出会ったばかりで、彼について何一つ知らない僕らがどう説得できるというんです?」
いかにも正義の味方らしい、綺麗で理想的なスグルの考え方に別種の笑いを浮かべながら、さらに追及を続ける。
そろそろこのセイギノミカタも『グムーッ…』と口を噤む頃合いだろう。
だが、ゼロスの予想に反して、正義超人キン肉マンは、尚も決意の表情を浮かべたままでこう言った。
「確かに、我々には不可能な事だろう! だが、それを出来るかもしれない人物がいるではないか!!」
目の前のゼロスの肩を掴んで、熱い心を抱いたままスグルはゼロスの説得を続ける。
真剣な光を宿した瞳で、僅かにたじろいだ様子の神官を見つめたキン肉マンは、やがて気絶しているタママを指さすと高らかに叫んだ。
「このタママとやらが探していた、ケロロ軍曹ならば…タママが何かしらの執着を抱いている様子のケロロ軍曹という者ならば、考えを改めさせる事が出来るかもしれないだろう!?」
スグルは、錯乱していたタママの様子とゼロスの解説を聞きながら一つの事を考えていた。
それは、このタママ二等兵というオタマ超人は、ケロロ軍曹を守るために殺し合いに乗っているのではないか、という仮説。
『街を破壊して探し人を探す』というなりふりの構わなさから見ても、タママはケロロという人物、いやおそらくは名前や彼等の姿から見てカエルの超人に対して何かしら強い思いを抱いているのだろう。
自分たちなら無理でも、おそらくタママ二等兵というオタマの事をよく知っているであろうケロロ軍曹ならば、頑なな決意を崩すことが出来るのではないか?
スグルはそう予想したのだ。
「タママの行動を見るに、この炎の町の中にケロロ軍曹という人物がいた可能性は高い!
私は今からこの町の中を回ってケロロ軍曹を探す!! ゼロスくん、もう少しだけ、私がケロロ軍曹を探してくるまでの間だけでいい!! タママ二等兵の命を奪うのは、もう少し待ってくれないか!?」
そう言うや否や、スグルはゼロスの肩から手を離すと、未だに火の手が上がっている遠くの街並みを見つめる。
デパート周辺から西、街の中心部は未だに炎の海の灼熱地獄といって差し支えない惨状だ。
だが、そんな地獄を前にしても正義超人キン肉マンは足をゆっくりと進める。
「頼んだぞゼロスくん! 私は、何としてでもケロロ軍曹を見つけ出してくるからなーっ!!」
その叫びを合図にして、スグルは足に力を込め、炎の街へ向かって全速力で駆けだしていく。
走りながら、脳裏に一瞬浮かんだのは一人の少年の姿。
目の前で残酷な死の舞踏を踊った彼の姿は、セイギノミカタの頭から離れる事がない。
キン肉マンは、もうどんな人間だろうと、死に行く人間を見たくはなかった。
だからこそ、正義超人はこの身を焼く灼熱の炎の中でも、この喉を焦がす灰色の煙の中でも、苦しみに耐えながら動き続ける。
「おーーーいっ!! ケロロ軍曹とやらーーっ!! いたら返事をしてくれーーっ!!」
探し人の名を全力で叫びながら、キン肉スグルは躊躇うことなく死地へとその身を投じていった。
※
「………やれやれ。スグルさんにも、困ったものですねぇ」
事態の成り行きを呆然と見ている事しか出来なかったゼロスは、ようやくどうにか思考力を取り戻すと、彼と共にいる内に何度付いたかしれない溜息を付く。
その顔に浮かんでいる笑顔も苦笑の色合いが強くなっていたが、やがてそれもいつもの胡散臭い物へと変わると、視線を落として足元にいる人物を見やる。
適当な壁に上半身を乗せているオタマジャクシは、未だに目を覚ます気配を見せない。
その様子をじっと観察しながら、ゼロスは顎に手を当ててこの先『自分がすべき事』を考える。
(スグルさんは『すぐに戻ってくる』などと言っていましたが、これだけ広い街の中ですからねぇ…戻ってくるまでにかなり時間がかかるのは間違いないでしょう。
その上で、目当てのケロロ軍曹が見つかってくれるかというと…これもかなり微妙な所ですねぇ。
火事からはもう長い時間は経っていますし、タママさんがどう考えたのかは置いておいて、もうここからは離脱していると考えるのが正しいでしょうね。
つまり、残念ながらスグルさんの決意は無駄になる可能性が高い。それでも諦めずにあの人は、炎の町の中で人探しを続けるでしょうが…ま、死にはしないでしょう)
そこまで一気に思考したゼロスは、一旦脳をクールダウンさせて、大分暗くなってきた空を見上げる。
もういくつかの星を確認できるほどになったそこをニコニコと見つめながら、ゼロスは冷たい心で更に思考を進めた。
(考えてみれば、これは『チャンス』かもしれませんね。良くも悪くもセイギノミカタなスグルさんは、もうしばらくはここに戻ってはこない。
その間に……目覚めたタママさんを『取り逃がして』しまったり、『正当防衛の結果』その命が失われてしまう『事故』が起こる可能性も大いにあり得る)
表面上に浮かべるものはあくまで友好的な微笑みでありながら、その頭の中で構築されている予定はどこまでもドス黒く、残酷だ。
首輪の解除が行える参加者を探しているゼロスにとって、無軌道に参加者達の命を奪っていくタママの存在は邪魔でしかない。
自分の障害となる者の命を奪う事に、魔族は何の抵抗も抱かない。
だが、目の前のタママが無残に死んでいく様子を楽しげに想像しながらも、ゼロスは『まだ』その命を奪い取る気は無かった。
(こういう状況では、情報が何よりも貴重ですからね……そうですねぇ。セイギノミカタのいない間に、『僕なりの方法』でお話を聞かせてもらいましょうか)
一つの結論を出したゼロスは、ニコニコ笑顔を浮かべながら再びタママを見下ろす。
哀れな犠牲者は、先ほど見た時と変わらぬままの姿で眠っていた。
その小さな体を苦もなく抱き上げると、ゼロスはきょろきょろと辺りを見回して彼と『お話』出来そうな施設を探す。
やがて、すぐ傍に建っていた『診療所』を見つけると、ゼロスの笑みはさらに深みと黒さを増した。
表向きでは友好的な笑顔を浮かべながら、腹の内ではドス黒い思考を巡らせる。
こんな人物を、人はこう評するだろう。
そう、『腹黒』と。
【B-8 診療所付近/一日目・夜】
【ゼロス@スレイヤーズREVOLUTION】
【状態】絶好調
【持ち物】デイパック(支給品一式(地図一枚紛失))×2、草壁タツオの原稿@となりのトトロ、ケロボール@ケロロ軍曹)
【思考】
0:首輪を手に入れ解析するとともに、解除に役立つ人材を探す
1:スグルが帰ってくるまでの間、診療所でタママから『自分なりの方法』で情報を聞く。その結果タママがどうなったとしても――――
2:A.T.フィールドやLCLなどの言葉に詳しい人を見つけたい。
3:悪魔将軍の元へ向かい、スグルとの勝負を見届ける。自分が積極的に戦闘に参加する気はない。
4: 主催者が興味を抱きそうな『戦場』に赴き、彼等と接触を図りたい。
5:ヴィヴィオとスグルの力に興味。
6:セイギノミカタを増やす。
【タママ二等兵@ケロロ軍曹】
【状態】疲労(大)、全身裂傷(処置済み)、肩に引っ掻き傷、頬に擦り傷、気絶中
【持ち物】ディパック(水消費)、基本セット、グロック26(残弾0/11)と予備マガジン二つ@現実
【思考】
0、軍曹さんを守り、ゲームを止める。
妨害者及び殺し合いに乗っている疑いが少しでもある者を排除。
1、東回りに火事を避けて市街地に向かい、ケロロたちを捜す。
2、その後はギュオーやウォーズマンの下へ向かう?
3、草壁メイ・草壁サツキの仇を探し出し、殺す。
4、ウォーズマン、ギュオーに一目置く。
5、ギュオーを気に入っているが、警戒を怠らない。
6、自分の妨害をしたブタ男(キン肉スグル)に強い怒り。
7、救急車を運転していた参加者を殺す。
8、脱出の後、クルルに頼んでサツキや親しき者を生き返させる装置でも作らせる。
9、8の案をケロロに伝える。
※色々あってドロロの存在をすっかり忘れています(色々なくても忘れたかもしれません)。
※加持がサツキから盗んだものをグロック26だと思っています。
※ネブラ入りディパックのミサイルを流れ弾だと思っています。
※少しでも疑いのある者を殺す過程で、誤殺してしまっても、証拠の捏造・隠滅+クルルによって生き返せるハズなので、問題無いと考えています。
※街で自分を轢きかけた救急車の運転手(姿は見ていない)を殺し合いに乗った人物と判断しました。
【補足説明】
【ケロボール@ケロロ軍曹】
ケロン星驚異の科学力の全てが詰まった、最強の侵略兵器の一つ。
本来ならば、ケロン人の緊急信号をキャッチする、チリやゴミなどからパソコンやベッドなどを精製するなどなど不可能な事は無いと思われるほど多種多様な機能を搭載している。
やろうと思えば一瞬で地球を消滅させる事も出来るとか。
しかし、本ロワではその機能が著しく制限され、使用できるのは以下の四つのみとされている。
・ショック光線
相手を痺れさせる光線を発射する。殺傷能力はほとんど無く、あくまで体が痺れる程のビームしか撃てない。
ただし威力はそれなりにあるので、酷く消耗しきっている相手に使用すれば気絶させる事も出来る。
・物体転位光線
この光線を浴びた対象は、使用者から半径20M以内の別の場所まで一瞬で転位させられる。
殺傷能力は皆無で、これを受けてもダメージを負う事は無い。光線の射程距離も半径20Mまでとなっている。
・瞬間移動能力
使用者及びその周辺にいる人物を会場内の別の場所へワープさせる。
放送から次の放送までの6時間の間に、一度だけしか利用できない。さらに、会場内のどの場所に出るかは完全なランダムとなる。
・飛行能力
使用者が手に持っているときのみ、飛行能力を得る事が出来る。速度は生身で走るよりも少し速い程度。
もしも飛行中にケロボールが手を離れたら、その時点で飛行能力は失われ落下する。
*時系列順で読む
Back:[[他人の話はちゃんと最後まで聞きましょう]] Next:[[詐欺師兎は奇妙なパソコンを前に頭を捻る]]
*投下順で読む
Back:[[他人の話はちゃんと最後まで聞きましょう]] Next:[[詐欺師兎は奇妙なパソコンを前に頭を捻る]]
|[[他人の話はちゃんと最後まで聞きましょう]]|キン肉スグル|[[詐欺師兎は奇妙なパソコンを前に頭を捻る]]|
|~|ゼロス|[[]]|
|~|タママ二等兵|~|
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*類は友を呼…びすぎてませんかちょっと? ◆qYuVhwC7l.
「ケロボール、というアイテムだそうですよ。
これを使って出来る事は、先ほど見せたショック光線に加えて、物体転移光線に、瞬間移動、さらに手に持って操作する事で飛行能力を得る事も出来るとか」
「……言葉の意味はわからんが、凄い自信だ」
竜頭蛇尾な戦いから数分後、スグルはようやく自分に追いついたゼロスから、自分が持っていたディパックから発見したという謎の支給品についての解説を聞いていた。
ついさっきまではそれなりの火勢が周辺を襲っていたのだが、謎のオタマ超人が周辺の破壊活動を行っていたお陰でその炎のほとんどは消えうせている。
その為に、ゼロスは落ち着いてこの便利アイテムの説明ができている訳だが、そこは元より頭のあまりよろしくないスグルの事。
複雑なケロボールの機能を理解できるわけもなく、ただただ唸って首を捻ってみせるだけだ。
そんな筋肉男の様子はさておき、ゼロスは自分の確認の意味も含めてさらに機能解説を行う。
「えーと…物体転移光線というのは、使用者の半径20Mにいる物体に当てる事でそれを同じく半径20Mの別の場所へ移動させる事が出来るそうです。
僕もそれのお陰で、燃えている瓦礫なんかを別の場所へ移す事でスムーズにスグルさんに追いつく事ができたわけで…
ああ、でもどこに移動させるかの設定はできずにランダムなようですね」
「グ、グムーっ……」
「瞬間移動に関しては、悪魔将軍の元にたどり着くのに使えるのではと思ったのですが…
どうやらこれが使えるのは放送毎に一度だけな上に、どこにワープできるかはわからないという物のようで。
いささかギャンブル性が強すぎて使えませんよねぇ?」
「……………」
「スグルさん、起きてますかー?」
「う、うむ! 寝てはおらんぞ!」
ゼロスがそれなりに心のこもった(?)解説を行ってみても、超体育会系の正義超人相手には暖簾に腕押し。
これが氷の精神を持つファイティングコンピューターだったならばまた別の結果が待っていただろうが、
超人連中のなかでも特に頭の出来がよろしくないキン肉マン相手ではそれも無理もない事か。
一瞬だけ溜息をついたゼロスを見て流石に悪いと感じたのか、スグルは自分からもこの黒いボールに関する話題を振ってきた。
「それにしてもそんな便利そうな物が支給されているとは、驚いたのう」
「僕としては、こんな便利な支給品を手に入れていたのに使っていないどころか存在自体に気づいていなかったスグルさんの方に驚きましたよ」
「いや、そう言われてもな…私の元々の支給品はもう調べてしまった後だったし、それを支給されていたディパックもヴィヴィオちゃんと出会った時に近くに置いてあっただけだったしのう」
スグルが回想するのは、第一回放送直前、高等学校にてヴィヴィオと初めて遭遇した時の事だ。
スグルが持っていたディパックの内訳は元々自分が持っていた一つに加え、その時に物言わぬ死体と化した涼宮ハルヒというらしい少女が持っていた物が一つと、その場に放置されていたもう一つの三つ。
話を聞くに、どうやら自分が見かけた新手の悪魔超人『キョン』(正確には超人ですらない一般人の高校生らしいが)が、涼宮ハルヒに手を掛けた後で忘れていった物らしい。
自分の知り合いの命を奪ってしまった殺人者がどんな心境であったか、などはスグルの知る由もない。
とりあえず置いてあるのならばと回収した後で、中に入っている基本支給品が二つあった事に気づき、あの悪魔超人はすでにもう一人の参加者に手を掛けていたのでは…と怒りに震えたのを覚えている。
ディパックだけを幾つも持っていてもしょうがないので、中身だけ一つに纏めて適当に突っ込んでおいたのだが、その時にまだ確認していない支給品が混じったのであろう。
これが元々誰の物であったのかはわからないが、無理に考える必要もない。
ともかく、そんな微妙に言い訳じみた正義超人の話を聞いてもゼロスが浮かべる苦笑の色は変わらなかった。
「……だからと言って支給品を調べようともしなかったんですか貴方は」
「うむ、我々超人には元々武器など不要だからな…そこまで考えが回らなかったわい」
言葉と同時に何度か腕を折り曲げ力瘤を作って見せるも、ゼロスは呆れたような視線と笑顔を浴びせてくるだけだ。
そのまま何ともいえぬ空気を流しているばかりでもいられない、とスグルは別の話題を振ってみせる。
「そ、それよりじゃゼロスくん。そこの、オタマ超人の事なのだが……」
そう云いながら指さすのは、先ほど自分に襲い掛かりゼロスの一撃であっさりと気絶した謎の人物(仮)。
幾らなんでもあのまま地面に寝かしておく訳にもいかないだろう、とすぐ傍の建物の壁にもたれ掛かからせているが、未だに目を覚ます様子は無かった。
「ああ、そうですね…ですがほとんど情報交換もしないままに襲い掛かってきたんでしょう? 僕としては、この魔物はすでにゲームに乗っているとみて間違いないと思うのですが」
「う、うむ。確かにこのオタマ超人には怪しい部分が多いが、それでもいくつか気になる事があっての……
しかしゼロスくん、その超人は全く目を覚ます様子を見せないが…まさか先ほどの光線で死んでしまったんじゃないのか?」
そんな事を聞くスグルの顔は、僅かに青ざめている。
碇シンジの死に触れた事で人の生死に敏感になっているのだろうか、と考えたゼロスだが、ひとまずは笑顔を浮かべて彼を安心させる事に努めた。
実際、スグルの心配しているようなことは何一つ起こっていないのだ。
「いえ、息もしていますし心臓も問題なく動いていますからね。ただ気絶しているだけですよ」
「そ、そうか…ならいいんじゃが…しかしそのショック光線というのは凄い威力だな。こうもあっさり超人を気絶させてしまうとは…」
「うーん、それならいいんですが、どうもそうじゃないみたいなんですよねぇ。
解説書が入っていたので一通り目を通してみたのですが、これに搭載されているショック光線は、せいぜい相手を痺れさせる効果しかないようなんです。
ま、ただでさえ色々な機能があって便利な支給品ですからね。攻撃にまで有用となるのは不公平でしょうし」
「む? じゃがゼロスくん、実際にこのオタマ超人は痺れるどころか気絶しているではないか?」
「ああ、それなんですが…」
頭を捻っているスグルに答えながら、ゼロスは気絶している謎のオタマに近づいてその体を検分する。
体についている傷は、既に処置済みである全身の裂傷、肩や頬に僅かな傷がある程度で軽傷極まりないが、この場合の問題は別にあるのだろう。
意識を失ったまま浅い呼吸を繰り返しているその様子は、『気絶』というよりは『睡眠』に近かった。
「おそらく彼、スグルさんと会うまでに物凄く体力を消耗していたんじゃないでしょうか? 足も酷く汚れていますし、休まずに走り続けたのか、それともどこかで戦い続けていたのかはわかりませんが…」
「むぅ…疲労が溜まりに溜まっていたために、簡単な衝撃で意識を失ってそのまま眠ってしまった、と見るのが正しいという訳か」
「ええ。殺し合いに乗っていた彼が、一体何をそんなに必死になっていた事やら…」
「………その事なんじゃがな、ゼロスくん。どうやらこのオタマは、『軍曹』という人を探していたらしい」
本当に疑問を持っているのか疑わしい微笑みを浮かべながら首をかしげるゼロスに、スグルはこのオタマから聞いた一つの情報を話す。
『あぁ!? 僕がぶっ殺すのは怪しい奴だけですぅ!! いいから軍曹さん達を探す邪魔するんじゃね~ぞこのブタ野郎!!』
破壊行動を繰り返す事と人を探す事がどう結び付くのかは中々理解が及ばなかったが、
自分が駆け付けた事を思えば、ひと騒動を起こす事で周りの注目を集め、目当ての人間が来るのを待ち構えていたのかもしれない。
ともかく、このオタマ超人はなりふり構わない程にその人物と会う事を求めていたのだろう。
「『軍曹』、ですか? ……そういえば、そんな名前が名簿に載っていましたね。確か『ケロロ軍曹』とか……」
それを聞いたゼロスはしばらく考える素振りを見せた後で、一つの事実に気づいてポンと手を打った。
「なるほど、大体わかってきました。このオタマさんですが、おそらく名前は『タママ二等兵』というのでしょう」
「な、なにーっ!? なぜそんな事がわかるんじゃゼロスくん!?」
「いえいえ、簡単な推理ですよ♪」
驚きの表情のスグルに対して、ゼロスがその結論に至るまでの過程を丁寧に説明しだす。
「実は僕、この殺し合いが始まってから『ドロロ兵長』という人物に会っているんです。彼もこのタママさんと似た姿をしていましてねー。
彼もまたスグルさんに似て、正義感にあふれたセイギノミカタのようだったんですが、結局その後に第三者の来襲があった事もあって別れてしまい…」
ゼロスの言う事に、何一つ嘘は無い。ただ、いつものようにいくつか『言っていない』事があるだけだ。
「そしてもう一人、似た名前を持った『ガルル中尉』という人物は、既に第二回放送にて死亡が確認されています。
残る二つの名前は、『ケロロ軍曹』に『タママ二等兵』。そしてこちらのオタマジャクシさんは『軍曹』という人物を探していたとなれば、もう答えは一目瞭然でしょう」
「ふ、ふーむ…なるほどのぅ」
まるで数学の授業で出された証明問題を解くかのように、ゼロスのスラスラと流れる解説を聞いて思わずスグルが呻いた。
そこまで分かっているのなら、このオタマ超人が『タママ二等兵』という名なのは確定したような物だろう。
だが、それがわかった所でここではさほどの意味もない。
そう結論付けたゼロスは、気絶しているオタマジャクシ改めタママへとその指を向ける。
「じゃあ、とりあえず目を覚まされる前に始末して置きましょうか」
「ああ、始末じゃな……って待て待て待てぇーーいっ!? い、いくらなんでもそれはひど過ぎないかゼロスくん!?」
余りにも何でもない事のように飛び出した物騒な単語を思わず一度は聞き流したスグルだが、その意味を正確に理解すると慌てて過激な事をやろうとしている神官を引きとめる。
対するゼロスは、微妙に眉をひそめながらも相変わらず張り付いた笑顔のままでセイギノミカタに尋ねた。
「おや、どうして引きとめるんですか? さっきまでの言動を見ても、このタママさんがゲームに乗って、他人を殺そうとしているのは確実でしょう。
だったら、新たな犠牲者を生まないうちに始末しておくのがいいと思いますが」
「そ、それは確かにそうだが……だが何も問答無用で殺す事はないだろう!? そ、それでは、君もまるで、殺し合いに乗っているような物ではないかーっ!」
わなわなと震えながらのスグルの一言を聞いて、ゼロスは思わず声を出して笑うのを抑えた。
今となっては自分の知り合いはリナしかいないが、彼女はおそらく自分がこのゲームに乗っていると認識しているだろう。
もう早くに退場してしまった人物ではあるが、ゼルガディスもまた自分に対して同じ評価を下している筈だ。
なによりゼロス自身、こんな無駄な『首輪』などがなければゲームに乗る事自体に決して否定的では無かっただろう。最も、自分をこんな空間に押し込めた主催者を許す気がないのは同じだが。
だというのに、目の前のセイギノミカタは自分が殺し合いに否定的だと思い込んでいる。
元々意識してそう思い込ませるようにしていたとはいえ、魔族であるゼロスに本来の性質とは正反対の評価を抱いているスグルの様子が妙に滑稽に映った。
閑話休題、いくらなんでもこの場で笑いだす訳には行かない。
それでも平常時の微笑みを消すことのないままに、ゼロスは逆にスグルへと質問する。
「では、スグルさんはタママさんをどうしたいのですか? このまま生かしておいても、間違いなく彼は他の誰かを殺そうとするでしょうし」
「そ、それは……殺し合いを止めるように説得すればいいではないか!!」
「僕達が、ですか? しかし出会ったばかりで、彼について何一つ知らない僕らがどう説得できるというんです?」
いかにも正義の味方らしい、綺麗で理想的なスグルの考え方に別種の笑いを浮かべながら、さらに追及を続ける。
そろそろこのセイギノミカタも『グムーッ…』と口を噤む頃合いだろう。
だが、ゼロスの予想に反して、正義超人キン肉マンは、尚も決意の表情を浮かべたままでこう言った。
「確かに、我々には不可能な事だろう! だが、それを出来るかもしれない人物がいるではないか!!」
目の前のゼロスの肩を掴んで、熱い心を抱いたままスグルはゼロスの説得を続ける。
真剣な光を宿した瞳で、僅かにたじろいだ様子の神官を見つめたキン肉マンは、やがて気絶しているタママを指さすと高らかに叫んだ。
「このタママとやらが探していた、ケロロ軍曹ならば…タママが何かしらの執着を抱いている様子のケロロ軍曹という者ならば、考えを改めさせる事が出来るかもしれないだろう!?」
スグルは、錯乱していたタママの様子とゼロスの解説を聞きながら一つの事を考えていた。
それは、このタママ二等兵というオタマ超人は、ケロロ軍曹を守るために殺し合いに乗っているのではないか、という仮説。
『街を破壊して探し人を探す』というなりふりの構わなさから見ても、タママはケロロという人物、いやおそらくは名前や彼等の姿から見てカエルの超人に対して何かしら強い思いを抱いているのだろう。
自分たちなら無理でも、おそらくタママ二等兵というオタマの事をよく知っているであろうケロロ軍曹ならば、頑なな決意を崩すことが出来るのではないか?
スグルはそう予想したのだ。
「タママの行動を見るに、この炎の町の中にケロロ軍曹という人物がいた可能性は高い!
私は今からこの町の中を回ってケロロ軍曹を探す!! ゼロスくん、もう少しだけ、私がケロロ軍曹を探してくるまでの間だけでいい!! タママ二等兵の命を奪うのは、もう少し待ってくれないか!?」
そう言うや否や、スグルはゼロスの肩から手を離すと、未だに火の手が上がっている遠くの街並みを見つめる。
デパート周辺から西、街の中心部は未だに炎の海の灼熱地獄といって差し支えない惨状だ。
だが、そんな地獄を前にしても正義超人キン肉マンは足をゆっくりと進める。
「頼んだぞゼロスくん! 私は、何としてでもケロロ軍曹を見つけ出してくるからなーっ!!」
その叫びを合図にして、スグルは足に力を込め、炎の街へ向かって全速力で駆けだしていく。
走りながら、脳裏に一瞬浮かんだのは一人の少年の姿。
目の前で残酷な死の舞踏を踊った彼の姿は、セイギノミカタの頭から離れる事がない。
キン肉マンは、もうどんな人間だろうと、死に行く人間を見たくはなかった。
だからこそ、正義超人はこの身を焼く灼熱の炎の中でも、この喉を焦がす灰色の煙の中でも、苦しみに耐えながら動き続ける。
「おーーーいっ!! ケロロ軍曹とやらーーっ!! いたら返事をしてくれーーっ!!」
探し人の名を全力で叫びながら、キン肉スグルは躊躇うことなく死地へとその身を投じていった。
※
「………やれやれ。スグルさんにも、困ったものですねぇ」
事態の成り行きを呆然と見ている事しか出来なかったゼロスは、ようやくどうにか思考力を取り戻すと、彼と共にいる内に何度付いたかしれない溜息を付く。
その顔に浮かんでいる笑顔も苦笑の色合いが強くなっていたが、やがてそれもいつもの胡散臭い物へと変わると、視線を落として足元にいる人物を見やる。
適当な壁に上半身を乗せているオタマジャクシは、未だに目を覚ます気配を見せない。
その様子をじっと観察しながら、ゼロスは顎に手を当ててこの先『自分がすべき事』を考える。
(スグルさんは『すぐに戻ってくる』などと言っていましたが、これだけ広い街の中ですからねぇ…戻ってくるまでにかなり時間がかかるのは間違いないでしょう。
その上で、目当てのケロロ軍曹が見つかってくれるかというと…これもかなり微妙な所ですねぇ。
火事からはもう長い時間は経っていますし、タママさんがどう考えたのかは置いておいて、もうここからは離脱していると考えるのが正しいでしょうね。
つまり、残念ながらスグルさんの決意は無駄になる可能性が高い。それでも諦めずにあの人は、炎の町の中で人探しを続けるでしょうが…ま、死にはしないでしょう)
そこまで一気に思考したゼロスは、一旦脳をクールダウンさせて、大分暗くなってきた空を見上げる。
もういくつかの星を確認できるほどになったそこをニコニコと見つめながら、ゼロスは冷たい心で更に思考を進めた。
(考えてみれば、これは『チャンス』かもしれませんね。良くも悪くもセイギノミカタなスグルさんは、もうしばらくはここに戻ってはこない。
その間に……目覚めたタママさんを『取り逃がして』しまったり、『正当防衛の結果』その命が失われてしまう『事故』が起こる可能性も大いにあり得る)
表面上に浮かべるものはあくまで友好的な微笑みでありながら、その頭の中で構築されている予定はどこまでもドス黒く、残酷だ。
首輪の解除が行える参加者を探しているゼロスにとって、無軌道に参加者達の命を奪っていくタママの存在は邪魔でしかない。
自分の障害となる者の命を奪う事に、魔族は何の抵抗も抱かない。
だが、目の前のタママが無残に死んでいく様子を楽しげに想像しながらも、ゼロスは『まだ』その命を奪い取る気は無かった。
(こういう状況では、情報が何よりも貴重ですからね……そうですねぇ。セイギノミカタのいない間に、『僕なりの方法』でお話を聞かせてもらいましょうか)
一つの結論を出したゼロスは、ニコニコ笑顔を浮かべながら再びタママを見下ろす。
哀れな犠牲者は、先ほど見た時と変わらぬままの姿で眠っていた。
その小さな体を苦もなく抱き上げると、ゼロスはきょろきょろと辺りを見回して彼と『お話』出来そうな施設を探す。
やがて、すぐ傍に建っていた『診療所』を見つけると、ゼロスの笑みはさらに深みと黒さを増した。
表向きでは友好的な笑顔を浮かべながら、腹の内ではドス黒い思考を巡らせる。
こんな人物を、人はこう評するだろう。
そう、『腹黒』と。
【B-8 診療所付近/一日目・夜】
【ゼロス@スレイヤーズREVOLUTION】
【状態】絶好調
【持ち物】デイパック(支給品一式(地図一枚紛失))×2、草壁タツオの原稿@となりのトトロ、ケロボール@ケロロ軍曹)
【思考】
0:首輪を手に入れ解析するとともに、解除に役立つ人材を探す
1:スグルが帰ってくるまでの間、診療所でタママから『自分なりの方法』で情報を聞く。その結果タママがどうなったとしても――――
2:A.T.フィールドやLCLなどの言葉に詳しい人を見つけたい。
3:悪魔将軍の元へ向かい、スグルとの勝負を見届ける。自分が積極的に戦闘に参加する気はない。
4: 主催者が興味を抱きそうな『戦場』に赴き、彼等と接触を図りたい。
5:ヴィヴィオとスグルの力に興味。
6:セイギノミカタを増やす。
【タママ二等兵@ケロロ軍曹】
【状態】疲労(大)、全身裂傷(処置済み)、肩に引っ掻き傷、頬に擦り傷、気絶中
【持ち物】ディパック(水消費)、基本セット、グロック26(残弾0/11)と予備マガジン二つ@現実
【思考】
0、軍曹さんを守り、ゲームを止める。
妨害者及び殺し合いに乗っている疑いが少しでもある者を排除。
1、東回りに火事を避けて市街地に向かい、ケロロたちを捜す。
2、その後はギュオーやウォーズマンの下へ向かう?
3、草壁メイ・草壁サツキの仇を探し出し、殺す。
4、ウォーズマン、ギュオーに一目置く。
5、ギュオーを気に入っているが、警戒を怠らない。
6、自分の妨害をしたブタ男(キン肉スグル)に強い怒り。
7、救急車を運転していた参加者を殺す。
8、脱出の後、クルルに頼んでサツキや親しき者を生き返させる装置でも作らせる。
9、8の案をケロロに伝える。
※色々あってドロロの存在をすっかり忘れています(色々なくても忘れたかもしれません)。
※加持がサツキから盗んだものをグロック26だと思っています。
※ネブラ入りディパックのミサイルを流れ弾だと思っています。
※少しでも疑いのある者を殺す過程で、誤殺してしまっても、証拠の捏造・隠滅+クルルによって生き返せるハズなので、問題無いと考えています。
※街で自分を轢きかけた救急車の運転手(姿は見ていない)を殺し合いに乗った人物と判断しました。
【補足説明】
【ケロボール@ケロロ軍曹】
ケロン星驚異の科学力の全てが詰まった、最強の侵略兵器の一つ。
本来ならば、ケロン人の緊急信号をキャッチする、チリやゴミなどからパソコンやベッドなどを精製するなどなど不可能な事は無いと思われるほど多種多様な機能を搭載している。
やろうと思えば一瞬で地球を消滅させる事も出来るとか。
しかし、本ロワではその機能が著しく制限され、使用できるのは以下の四つのみとされている。
・ショック光線
相手を痺れさせる光線を発射する。殺傷能力はほとんど無く、あくまで体が痺れる程のビームしか撃てない。
ただし威力はそれなりにあるので、酷く消耗しきっている相手に使用すれば気絶させる事も出来る。
・物体転位光線
この光線を浴びた対象は、使用者から半径20M以内の別の場所まで一瞬で転位させられる。
殺傷能力は皆無で、これを受けてもダメージを負う事は無い。光線の射程距離も半径20Mまでとなっている。
・瞬間移動能力
使用者及びその周辺にいる人物を会場内の別の場所へワープさせる。
放送から次の放送までの6時間の間に、一度だけしか利用できない。さらに、会場内のどの場所に出るかは完全なランダムとなる。
・飛行能力
使用者が手に持っているときのみ、飛行能力を得る事が出来る。速度は生身で走るよりも少し速い程度。
もしも飛行中にケロボールが手を離れたら、その時点で飛行能力は失われ落下する。
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|~|タママ二等兵|~|
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