六月十七日、料理の練習

揺杏「……で、うちに来たと思ったら料理の練習に付き合え?」

誓子「だって、揺杏の方が私よりできるし」

揺杏「チカセンだってできないわけじゃないでしょーに」

誓子「とにかく、もう少しできてもいいかなって」

揺杏「んー……ま、いいけどさ」


揺杏(もしかして今日が自分の誕生日だって忘れてない?)

揺杏(……まあ、いいタイミングかもねー)


誓子「というわけで、よろしくお願いします」

揺杏「じゃあ、とりあえず最初の一歩から」

誓子「うんうん」

揺杏「買い物へゴー。材料ないし」



誓子「こんなにドッサリ買い込んだのはいいんだけど……」

揺杏「いっぱい作ったほうが練習になるっしょ」

誓子「なんで私の家に?」

揺杏「だってさ、チカセンちの方が広いでしょ」

誓子「それはそうだけど」

揺杏「さっ、早速始めよ始めよ」



揺杏「よし、出来上がり~!」

誓子「な、なんかすっごい大変だったんだけど……」

揺杏「そりゃこれだけ作ればね」

誓子「ローストビーフ、パスタにサラダにフライドチキンにフルーツ盛り合わせ……おまけにケーキまで」

揺杏「そろそろみんな来るんじゃない? 連絡しといたし」

誓子「みんな?」


爽「おまたー」

成香「わ、いい匂いがします」

由暉子「お邪魔します」


誓子「えっと、どうしたの急に」

揺杏「せっかくの誕生日だし、お祝いするしかないっしょ」

誓子「誕生日……もしかして私の?」

揺杏「もちろん」

誓子「じゃあ私、自分でパーティの料理用意してたってことじゃない」

揺杏「いやー、ちょうどいいかなーって思ってさ」

誓子「もう……」


成香「いまいち事情がわかりません。どういうことなんでしょうか?」

爽「チカが揺杏と料理の練習でもしてたんじゃないかな?」

由暉子「料理の練習ですか。誓子先輩は十分に上手いと思うんですけど」

爽「それはあれでしょ。食べさせたい相手がいるってことだ」

由暉子「……そういうことですか」


由暉子「揺杏先輩、今度私にも料理教えてもらってもいいですか?」

揺杏「いいよー」

誓子「……まあ、そうなるよね」


爽「それより早く食べよう。お腹空いたー」

成香「爽さん、そんな慌てなくても……」グゥ

爽「んー? 今の音はなんだろうねー」

成香「あうぅ……」カァァ


揺杏「二人とも、火花散らしてないで食べようぜ」

誓子「そうね、お父さんたちももうすぐ帰ってくるだろうし」

由暉子「お料理、運びます」


誓子(でも、料理ではユキには負けられないかな)

誓子(まったく……男の子なのに料理上手ってどういうことよ)

誓子(いつかまいったって言わせてやるんだから)
最終更新:2016年10月28日 02:09