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「んああっ!はうう、ど…どうっすか京太郎?気持ちいいっすか?」 「ああっ…モモの中…いやらしく絡み付いてくるぞっ……くっ!」 「あんっ、京太郎の…もっと大きくなったっすよ!はぁんっ!」 清澄の部室にて京太郎と桃子はお互いを抱き締めながら、快楽を求め合う。 京太郎が桃子に唇に舌を入れる。桃子もそれを受け入れるように舌を絡めた。 「京太郎……!好きっす…!本当に大好きっす!ああうっ!」 「俺もだよ、モモ……!俺もモモの事が…!」 愛の言葉を掛け合う度にモモの中で暖かい何かが徐々に膨らんでいく。 東横桃子と須賀京太郎……一見何の脈絡のない二人が何故こんな関係になったのか。この二人の出会いは春に遡る。 「やれやれ、早く帰らねーと怒られちまうよ!」 その日は目の前があまり見えなくなるほどの豪雨だった。 傘も遥か彼方に吹き飛び、京太郎は一人ずぶ濡れになりながら走り続けていた。 「チクショー、天気予報では小雨って言ってたのによ~!嘘八百並びたてやがってさ!」 京太郎は今日の朝に見たニュースに対して文句を呟きながら、信号に差し掛かる。 「おいおい、なんで俺がいくと信号が赤になるんだよ!」 点滅する信号を恨めしそうに眺めながら信号の前で待機する。そんな京太郎の視界に一人の少女が入った。 「あれ…信号が赤になったのに気がついてないのかな?」 京太郎が注意しようとした丁度その時、かなりのスピードを出した車がブレーキをかける事もなく その少女に向かってきた。 「まずい―――――!」 頭より身体が先に反応した京太郎はその少女に向かって走り出す。 ピイイイイイイ… 車はクラクションを鳴らしながらもスピードを緩める事なく突っ込んでくる。 「なむさぁぁぁぁぁぁん!」 京太郎は叫びながら、その少女を抱き締めると力の限り飛び込んだ。 幸いにも車は京太郎を避け、何事もなかったかの様に走り去っていった。 「ふう………間一髪だったぜ」 京太郎は大きくため息をはくと、その少女を見下ろす。 「何やってんだよお前!信号が赤だったのが見えなかったのか!?」 京太郎はその少女に大きな声で注意する。 「ご……ごめんなさいっす…雨が激しくて信号をよく確認できなかったっすよ…」 語尾に特徴のある少女は小さな声でそう京太郎に言った。 京太郎が再び注意しようとした瞬間、その少女はハッとした様な表情をした後、京太郎の顔をまじまじと見つめながら口を開いた。 「ア……アンタ、私の姿が……見えるっすか…!?」 これが…京太郎と桃子の初めての出会いだった。 信号での出会いの後、京太郎と桃子は近くの建物の下で雨宿りをしていた。雨の方は相変わらず激しく降り注いでいる。 「ほれ、暖かいうちに飲みなよ」 「あ…ありがとうっす」 桃子は京太郎から缶コーヒーを受けとった後、改めて京太郎の方に顔を向ける。 自分から存在をアピールした訳ではないのにも関わらず、この男は自分の事が見えている。 それは桃子にとって初めての経験だった。桃子は自分の事を非常に影の薄い人間だと認識していた。 昔の頃から自分からアピールをしなければ、周りの人達は彼女に気がついてくれなかったのである。 なのにこの男は自分の姿が見え、車にひかれそうな所を助けてくれた。 それは桃子にとって非常に重大な出来事であった。 「あの…本当になんであなたには私の姿が見えるっすか…?」 桃子は再び質問を京太郎にぶつける、それに対して京太郎はポリポリと頬をかいて桃子の顔を見る。 「なんでも何も、俺には普通に見えるんだが…? そもそも人の姿に見えるとか見えないとか…言っている事が理解出来ないんだけどさ」 確かにその通りである、桃子は京太郎に自分が非常に影の薄い人間である事。 そのせいで、今まで人に気が付いてもらえずにいた事を説明した。 「なるほどね、だからあの時に車はブレーキどころかクラクションも鳴らさなかったって訳だ。俺はてっきり雨のせいだと思ってたよ」 京太郎はコーヒーを一口飲み、外の様子を見る。雨の激しさは幾分かおさまってきている。 「本当にありがとうっす、あなたが助けてくれなかったら今頃私は…」 桃子は缶コーヒーを握りしめながら京太郎に礼を言う。京太郎は桃子の言葉に恥ずかしそうに頭をかいた。 「礼を言う事はないよ、俺はただ…当たり前の事をしただけだから」 「でも……」 「おっ、雨があがったみたいだな」 京太郎の言うとおり雨はすっかりやんでいた。京太郎は大きく背伸びをすると鞄を持ちあげる。 「じゃあ、俺は用事があるからいくよ!そっちの方も車に気をつけろよ!」 京太郎は桃子に微笑んだ後、おもむろに走り出した。 「ちょっと待って欲しいっす!」 桃子は思わず京太郎をひき止めてしまう。 本当はまだ桃子は京太郎と別れたくなかった、自分の姿が見え、そして自分を見失わない人と。 けれども、初めて出会う人間に対して交際を求めるなんて桃子には出来ない。 なら、せめて―――。 「あの……良かったら名前だけでも教えて欲しいっす!」 桃子は大きな声で京太郎に向かって叫んだ。もうこの人とは会えないなんて桃子は考えたくなかった。 だからもし、再び会う事ができたなら…自分から話かける事ができるかもしれない。 その時のために名前だけでも知りたかったのである。 「名前?別に名乗るほどじゃあ…」 「お願いっす!私は…あなたの名前を知りたいっすよ!」 大きな声を出しながら京太郎に名前を聞いてくる桃子。その姿に京太郎はしばらく無言になった後、大きな声で叫んだ。 「俺は京太郎!須賀京太郎だ!」 須賀京太郎、その言葉を聞いた桃子は小さく京太郎の名前を呟いた。 「須賀……きょうたろう」 「また雨が降らないうちに帰った方がいいぞ!そんじゃーな!」 京太郎は手を大きく振ると、再び走り出した。 「あっ、待ってっす!私は…!」 桃子は自分の名前を京太郎に伝えようとするが、すでに彼の姿は遠くに行ってしまった。 「京太郎…須賀京太郎…」 残された桃子は一人、京太郎の名前を繰り返し呟き続ける。 名前を繰り返す度に桃子の胸の中が大きく鼓動する。同時に切ない気持ちが桃子を襲ってくる。 なんで言えなかったっすか、自分の名前を京太郎さんに。これじゃあまた会ったとしても、 京太郎さんが私の事を忘れているかもしれないじゃないっすか。 「私のバカ」 桃子は自分の頭をコチンと軽く小突く。京太郎からもらった缶コーヒーはすでに冷たくなっていた。 その出来事から、しばらくの時が流れた。あれから桃子を取り巻く環境はかなり変わっていった。 加治木ゆみという麻雀部に所属する少女の勧誘により、桃子は鶴賀学園の麻雀部に入部する事となり彼女は一人ではなくなる。 加治木を始め、蒲原智美、津山睦月、妹尾佳織などの麻雀部の仲間達と共に行動する事が多くなった。 「ワハハー、それでなかおりん」 「あははは、智美ちゃんったらー!」 今日も桃子は麻雀部の仲間達と一緒に部室で会話に参加していた。 自分には関係と思っていた他の人達のさりげない会話、 桃子は自分を麻雀部に誘ってくれた加治木ゆみに感謝の気持ちで一杯だった。 なのに何かが足りない、自分を必要としてくれる人達がいるのに何故か気持ちが満たされない…。 桃子はふと窓の方を見る。 「どうしたモモ?何か考え事でもしているのか?」 桃子の様子に気が付いた加治木が桃子に声をかける。 「な、なんでもないっすよ先輩!気にしないでくださいっす!」 ごまかす様に手を振りながら笑い声をあげる桃子。自分の心が満たされない理由、桃子にはそれが分かっていた。 須賀京太郎、あの出会い以来、桃子の胸の中で京太郎の存在がずっと引っ掛かっている。 あの日から毎日の様に桃子は京太郎と出会った場所に行っているものの、 京太郎と再会する事が出来ない。 また京太郎に会いたい、そしてもっと話がしたいという感情が日増しに桃子の中で大きく膨らんでくる。 それは加治木や他の部員達と一緒に行動する様になってからも変わらなかった。 帰り道、桃子は再び京太郎と出会った場所に行ったが、やはり再会する事が出来なかった。 分かっていた事とはいえ、桃子の心に虚しさと切なさが突き刺さる。 「どうして、どうして京太郎さんに会う事が出来ないっすか?ずっと会いたいと思っているのに…」 ピチャン・・・ 桃子の目から涙が零れ落ちた。京太郎の事を思えば思うほど張り裂けそうな悲しみで一杯になっていく。 ただ、一回だけ会っただけなのに、自分の事を話しただけなのに。 なのに、何故…こんなにも会いたいと思ってしまうのだろうか。 桃子はもう気が付いていた、自分が京太郎に対して抱いている感情を。 桃子は、京太郎に恋をしてしまったのだ…自分の存在を見失わない彼に対して。 「神様、お願いっす…もう一度、もう一度あの人に会わせて欲しいっす…」 星空を見上げながら桃子は神にお願いをする。再び京太郎に出会えるように――。 「んっ……!はぁん……!ああっ……!」 その日の夜、桃子は自分の部屋で自慰に耽っていた。 いけない事だと桃子自身は思ってはいるが、頭の中が京太郎の事で一杯になると無意識のうちに自慰をしてしまう。 「だ……ダメっすぅ…!そんな激しくしちゃあ………あんっ!」 桃子は自分の胸の突起をコリコリと指で弾きながら、京太郎の顔を思い浮かべる。 「あんっ………ふわぁ…!」 乳首を刺激する度に桃子の身体がピクンッと震え、口から甘い声が漏れていく。 家族にバレないように桃子は必死で喘ぎ声を抑えようとするが、胸を弄っていくにつれて段々と声が大きくなってしまう。 (ダメっす…!こんな事をしちゃ……ダメなのに…!) 桃子はこれ以上はいけないと自分を説得するが、押し寄せる快感に次第に彼女の思考が麻痺していく。 さらなる快感を求め、桃子の手がショーツの中へと移動していく。ショーツの中はすでにぐっしょりと湿っている。 桃子は軽く深呼吸すると、ゆっくりと指を割れ目へと潜りこませた。 くちゃ…… 「ふわぁっ!」 指が割れ目の中へズブズブと入っていくにつれて桃子の身体がビクッビクッと大きく震えだす。 ぐちゃ…ぐちゃ…ぐちゃ… 桃子が指を出し入れする度に卑猥な水音が部屋の中で響き渡る。 「んっ!んんっ!んんっ!」 自分の口に手を当てながら桃子は必死に喘ぎ声を我慢する。 ──っと、もっと気持ち良くなりたい。 桃子は割れ目の中に入れる指を一本から二本へと増やし、さらに激しく膣内を掻き回した。 チュブッチュブッチュブッ……とさらに大きな水音がリズミカルに桃子の頭の中で響く。 「ああうっ! うっ、ああっ…!」 桃子は身体を大きく反らし、ぎゅっと目をつぶる。 (もう何も考える事が出来ないっす…!京太郎さんの事以外何も――!) 桃子は京太郎の顔を思い浮かべながら、指を激しくピストンさせる。 「ああっ!くる……なんかくるっす……!ダメっ…ダメぇ…!」 激しい波が桃子に押し寄せる、桃子は膣内のザラザラした部分を中心に指で激しく擦り上げてゆく。 そして……。 「んああああああああっ!」 桃子は身体を激しく痙攣させながら絶頂をむかえた。 膣壁が彼女の指をキュウキュウと締め付ける。 やがて激しい波がおさまり、桃子の身体を脱力感が襲ってくる。 「はあっ…ん……ああっ……」 桃子は天井を見上げながら肩で大きな息をして、絶頂の余韻に浸る。 身体の方はまだビクンッ…ビクンッ…と断続的に痙攣している。 ニュルッ……… 「ああうっ……!」 桃子は割れ目からゆっくりと指を抜いていく。指の周りには桃子のいやらしい液がべっとりと絡み付いていた。 「また……やっちゃったっす……」 桃子は溜め息を吐くとティッシュで指を拭き、ショーツを脱ぐ。 ショーツはすでに桃子の愛液によってビショヒショに濡れていて下着の役割を果たしていなかった。 「こんな所…京太郎さんに見られたら、きっとはしたない女の子だと思われるっすね…」 桃子は小さく独り言を呟きながら、下着をタオルの中に隠すと風呂場へと向かっていった。 『ヒック・・グスッ・・・』 ――そこで泣いているのは誰っすか? 『グスン・・・エック・・パパ・・ママ・・どこに行ったの・・?」 ――あれ?この子はもしかして……小さい頃の私? 『グスッ・・・一人ぼっちはいやだよぉ・・・』 ――昔から私は一人ぼっちだった…いつも皆を遠くから見ていただけだったっす… 『グスッ・・ママぁ・・パパぁ・・』 ――この時だって私は… 「う………ん……」 桃子はゆっくりと目を開くと、ベッドから起き上がる。どうやら、さっきの光景は桃子が見ていた夢だったようだ。 ふと、孤独感に襲われた桃子は毛布を握り締めながら窓を見る。 「嫌な夢を見ちゃったっす…子供の頃の夢」 子供の時からステルスだった桃子はよく両親とはぐれて迷子になっていた。いつも泣きながら両親が来るのを待っていた。 桃子にとってそれは思い出したくない思い出の一つだった。 (でも、今は違うっす…私には先輩が…麻雀部の人達がいるっす……だからもう一人ぼっちじゃないっすよ) 桃子はしばらくの間、無言でそう自分に言い聞かせ再び眠りについた。 そして時が流れ、桃子は麻雀大会予選の日をむかえる。 「ワハハー!今日は人が沢山いるなー!」 「な……なんだか緊張して来ましたよぅ…」 「うむ、だがプレッシャーに負けぬよう気を引き締めよう」 鶴賀麻雀部は会話をしながら会場の中を移動していく。 「モモ……ここで負ける訳にはいかない…お前の力を頼りにしているぞ」 加治木はポンと桃子の肩を叩きながら激励の言葉をかける。 桃子はそんな加治木に対して笑顔で返事をする。 「はい!先輩のため、麻雀部のために頑張るっすよ!」 自分を救ってくれた加治木の期待に答えられるよう、この大会で活躍しよう――桃子は自分にそう誓う。 今はあの人の事を忘れよう、今はただ…先輩のために頑張らなければ。 しかし、やはり緊張してしまったのか桃子は急にトイレに行きたくなってしまった。 「先輩、ちょっとトイレに行ってくるっすね」 「ああっ、早めに済ましてこいよ……モモ」 桃子は加治木に許可をもらうと、トイレへと向かう。 途中、色々な人達にぶつかってしまうが誰も桃子の存在に気が付く事はなかった。 「やっぱり人混みは嫌いっす……」 慣れている事とはいえ、やはり良い気分はしない。 トイレを済ませた桃子は小走りで先輩達の所へと向かう。 「早く先輩達のいる所に戻らないと……きゃっ!」 ドスン・・・ 桃子はまた人にぶつかってしまい、その場でしりもちをついてしまった。 「いたたたっす……」 「す、すいません!大丈夫ですか?」 「えっ…!?」 この声はもしかして…桃子は恐る恐る顔を上げる。 「あ……あなたは……もしかして…」 「はい?」 桃子の目に写った人物―――それはずっと会いたいと思い、願っていた須賀京太郎だった。 東横桃子と須賀京太郎……二人の運命は麻雀大会という場所において再び交わる事となった。
「んああっ!はうう、ど…どうっすか京太郎?気持ちいいっすか?」 「ああっ…モモの中…いやらしく絡み付いてくるぞっ……くっ!」 「あんっ、京太郎の…もっと大きくなったっすよ!はぁんっ!」 清澄の部室にて京太郎と桃子はお互いを抱き締めながら、快楽を求め合う。 京太郎が桃子に唇に舌を入れる。桃子もそれを受け入れるように舌を絡めた。 「京太郎……!好きっす…!本当に大好きっす!ああうっ!」 「俺もだよ、モモ……!俺もモモの事が…!」 愛の言葉を掛け合う度にモモの中で暖かい何かが徐々に膨らんでいく。 東横桃子と須賀京太郎……一見何の脈絡のない二人が何故こんな関係になったのか。この二人の出会いは春に遡る。 ---- 「やれやれ、早く帰らねーと怒られちまうよ!」 その日は目の前があまり見えなくなるほどの豪雨だった。 傘も遥か彼方に吹き飛び、京太郎は一人ずぶ濡れになりながら走り続けていた。 「チクショー、天気予報では小雨って言ってたのによ~!嘘八百並びたてやがってさ!」 京太郎は今日の朝に見たニュースに対して文句を呟きながら、信号に差し掛かる。 「おいおい、なんで俺がいくと信号が赤になるんだよ!」 点滅する信号を恨めしそうに眺めながら信号の前で待機する。そんな京太郎の視界に一人の少女が入った。 「あれ…信号が赤になったのに気がついてないのかな?」 京太郎が注意しようとした丁度その時、かなりのスピードを出した車がブレーキをかける事もなく その少女に向かってきた。 「まずい―――――!」 頭より身体が先に反応した京太郎はその少女に向かって走り出す。 ピイイイイイイ… 車はクラクションを鳴らしながらもスピードを緩める事なく突っ込んでくる。 「なむさぁぁぁぁぁぁん!」 京太郎は叫びながら、その少女を抱き締めると力の限り飛び込んだ。 幸いにも車は京太郎を避け、何事もなかったかの様に走り去っていった。 「ふう………間一髪だったぜ」 京太郎は大きくため息をはくと、その少女を見下ろす。 「何やってんだよお前!信号が赤だったのが見えなかったのか!?」 京太郎はその少女に大きな声で注意する。 「ご……ごめんなさいっす…雨が激しくて信号をよく確認できなかったっすよ…」 語尾に特徴のある少女は小さな声でそう京太郎に言った。 京太郎が再び注意しようとした瞬間、その少女はハッとした様な表情をした後、京太郎の顔をまじまじと見つめながら口を開いた。 「ア……アンタ、私の姿が……見えるっすか…!?」 これが…京太郎と桃子の初めての出会いだった。 信号での出会いの後、京太郎と桃子は近くの建物の下で雨宿りをしていた。雨の方は相変わらず激しく降り注いでいる。 「ほれ、暖かいうちに飲みなよ」 「あ…ありがとうっす」 桃子は京太郎から缶コーヒーを受けとった後、改めて京太郎の方に顔を向ける。 自分から存在をアピールした訳ではないのにも関わらず、この男は自分の事が見えている。 それは桃子にとって初めての経験だった。桃子は自分の事を非常に影の薄い人間だと認識していた。 昔の頃から自分からアピールをしなければ、周りの人達は彼女に気がついてくれなかったのである。 なのにこの男は自分の姿が見え、車にひかれそうな所を助けてくれた。 それは桃子にとって非常に重大な出来事であった。 「あの…本当になんであなたには私の姿が見えるっすか…?」 桃子は再び質問を京太郎にぶつける、それに対して京太郎はポリポリと頬をかいて桃子の顔を見る。 「なんでも何も、俺には普通に見えるんだが…? そもそも人の姿に見えるとか見えないとか…言っている事が理解出来ないんだけどさ」 確かにその通りである、桃子は京太郎に自分が非常に影の薄い人間である事。 そのせいで、今まで人に気が付いてもらえずにいた事を説明した。 「なるほどね、だからあの時に車はブレーキどころかクラクションも鳴らさなかったって訳だ。俺はてっきり雨のせいだと思ってたよ」 京太郎はコーヒーを一口飲み、外の様子を見る。雨の激しさは幾分かおさまってきている。 「本当にありがとうっす、あなたが助けてくれなかったら今頃私は…」 桃子は缶コーヒーを握りしめながら京太郎に礼を言う。京太郎は桃子の言葉に恥ずかしそうに頭をかいた。 「礼を言う事はないよ、俺はただ…当たり前の事をしただけだから」 「でも……」 「おっ、雨があがったみたいだな」 京太郎の言うとおり雨はすっかりやんでいた。京太郎は大きく背伸びをすると鞄を持ちあげる。 「じゃあ、俺は用事があるからいくよ!そっちの方も車に気をつけろよ!」 京太郎は桃子に微笑んだ後、おもむろに走り出した。 「ちょっと待って欲しいっす!」 桃子は思わず京太郎をひき止めてしまう。 本当はまだ桃子は京太郎と別れたくなかった、自分の姿が見え、そして自分を見失わない人と。 けれども、初めて出会う人間に対して交際を求めるなんて桃子には出来ない。 なら、せめて―――。 「あの……良かったら名前だけでも教えて欲しいっす!」 桃子は大きな声で京太郎に向かって叫んだ。もうこの人とは会えないなんて桃子は考えたくなかった。 だからもし、再び会う事ができたなら…自分から話かける事ができるかもしれない。 その時のために名前だけでも知りたかったのである。 「名前?別に名乗るほどじゃあ…」 「お願いっす!私は…あなたの名前を知りたいっすよ!」 大きな声を出しながら京太郎に名前を聞いてくる桃子。その姿に京太郎はしばらく無言になった後、大きな声で叫んだ。 「俺は京太郎!須賀京太郎だ!」 須賀京太郎、その言葉を聞いた桃子は小さく京太郎の名前を呟いた。 「須賀……きょうたろう」 「また雨が降らないうちに帰った方がいいぞ!そんじゃーな!」 京太郎は手を大きく振ると、再び走り出した。 「あっ、待ってっす!私は…!」 桃子は自分の名前を京太郎に伝えようとするが、すでに彼の姿は遠くに行ってしまった。 「京太郎…須賀京太郎…」 残された桃子は一人、京太郎の名前を繰り返し呟き続ける。 名前を繰り返す度に桃子の胸の中が大きく鼓動する。同時に切ない気持ちが桃子を襲ってくる。 なんで言えなかったっすか、自分の名前を京太郎さんに。これじゃあまた会ったとしても、 京太郎さんが私の事を忘れているかもしれないじゃないっすか。 「私のバカ」 桃子は自分の頭をコチンと軽く小突く。京太郎からもらった缶コーヒーはすでに冷たくなっていた。 その出来事から、しばらくの時が流れた。あれから桃子を取り巻く環境はかなり変わっていった。 加治木ゆみという麻雀部に所属する少女の勧誘により、桃子は鶴賀学園の麻雀部に入部する事となり彼女は一人ではなくなる。 加治木を始め、蒲原智美、津山睦月、妹尾佳織などの麻雀部の仲間達と共に行動する事が多くなった。 「ワハハー、それでなかおりん」 「あははは、智美ちゃんったらー!」 今日も桃子は麻雀部の仲間達と一緒に部室で会話に参加していた。 自分には関係と思っていた他の人達のさりげない会話、 桃子は自分を麻雀部に誘ってくれた加治木ゆみに感謝の気持ちで一杯だった。 なのに何かが足りない、自分を必要としてくれる人達がいるのに何故か気持ちが満たされない…。 桃子はふと窓の方を見る。 「どうしたモモ?何か考え事でもしているのか?」 桃子の様子に気が付いた加治木が桃子に声をかける。 「な、なんでもないっすよ先輩!気にしないでくださいっす!」 ごまかす様に手を振りながら笑い声をあげる桃子。自分の心が満たされない理由、桃子にはそれが分かっていた。 須賀京太郎、あの出会い以来、桃子の胸の中で京太郎の存在がずっと引っ掛かっている。 あの日から毎日の様に桃子は京太郎と出会った場所に行っているものの、 京太郎と再会する事が出来ない。 また京太郎に会いたい、そしてもっと話がしたいという感情が日増しに桃子の中で大きく膨らんでくる。 それは加治木や他の部員達と一緒に行動する様になってからも変わらなかった。 帰り道、桃子は再び京太郎と出会った場所に行ったが、やはり再会する事が出来なかった。 分かっていた事とはいえ、桃子の心に虚しさと切なさが突き刺さる。 「どうして、どうして京太郎さんに会う事が出来ないっすか?ずっと会いたいと思っているのに…」 ピチャン・・・ 桃子の目から涙が零れ落ちた。京太郎の事を思えば思うほど張り裂けそうな悲しみで一杯になっていく。 ただ、一回だけ会っただけなのに、自分の事を話しただけなのに。 なのに、何故…こんなにも会いたいと思ってしまうのだろうか。 桃子はもう気が付いていた、自分が京太郎に対して抱いている感情を。 桃子は、京太郎に恋をしてしまったのだ…自分の存在を見失わない彼に対して。 「神様、お願いっす…もう一度、もう一度あの人に会わせて欲しいっす…」 星空を見上げながら桃子は神にお願いをする。再び京太郎に出会えるように――。 「んっ……!はぁん……!ああっ……!」 その日の夜、桃子は自分の部屋で自慰に耽っていた。 いけない事だと桃子自身は思ってはいるが、頭の中が京太郎の事で一杯になると無意識のうちに自慰をしてしまう。 「だ……ダメっすぅ…!そんな激しくしちゃあ………あんっ!」 桃子は自分の胸の突起をコリコリと指で弾きながら、京太郎の顔を思い浮かべる。 「あんっ………ふわぁ…!」 乳首を刺激する度に桃子の身体がピクンッと震え、口から甘い声が漏れていく。 家族にバレないように桃子は必死で喘ぎ声を抑えようとするが、胸を弄っていくにつれて段々と声が大きくなってしまう。 (ダメっす…!こんな事をしちゃ……ダメなのに…!) 桃子はこれ以上はいけないと自分を説得するが、押し寄せる快感に次第に彼女の思考が麻痺していく。 さらなる快感を求め、桃子の手がショーツの中へと移動していく。ショーツの中はすでにぐっしょりと湿っている。 桃子は軽く深呼吸すると、ゆっくりと指を割れ目へと潜りこませた。 くちゃ…… 「ふわぁっ!」 指が割れ目の中へズブズブと入っていくにつれて桃子の身体がビクッビクッと大きく震えだす。 ぐちゃ…ぐちゃ…ぐちゃ… 桃子が指を出し入れする度に卑猥な水音が部屋の中で響き渡る。 「んっ!んんっ!んんっ!」 自分の口に手を当てながら桃子は必死に喘ぎ声を我慢する。 ──っと、もっと気持ち良くなりたい。 桃子は割れ目の中に入れる指を一本から二本へと増やし、さらに激しく膣内を掻き回した。 チュブッチュブッチュブッ……とさらに大きな水音がリズミカルに桃子の頭の中で響く。 「ああうっ! うっ、ああっ…!」 桃子は身体を大きく反らし、ぎゅっと目をつぶる。 (もう何も考える事が出来ないっす…!京太郎さんの事以外何も――!) 桃子は京太郎の顔を思い浮かべながら、指を激しくピストンさせる。 「ああっ!くる……なんかくるっす……!ダメっ…ダメぇ…!」 激しい波が桃子に押し寄せる、桃子は膣内のザラザラした部分を中心に指で激しく擦り上げてゆく。 そして……。 「んああああああああっ!」 桃子は身体を激しく痙攣させながら絶頂をむかえた。 膣壁が彼女の指をキュウキュウと締め付ける。 やがて激しい波がおさまり、桃子の身体を脱力感が襲ってくる。 「はあっ…ん……ああっ……」 桃子は天井を見上げながら肩で大きな息をして、絶頂の余韻に浸る。 身体の方はまだビクンッ…ビクンッ…と断続的に痙攣している。 ニュルッ……… 「ああうっ……!」 桃子は割れ目からゆっくりと指を抜いていく。指の周りには桃子のいやらしい液がべっとりと絡み付いていた。 「また……やっちゃったっす……」 桃子は溜め息を吐くとティッシュで指を拭き、ショーツを脱ぐ。 ショーツはすでに桃子の愛液によってビショヒショに濡れていて下着の役割を果たしていなかった。 「こんな所…京太郎さんに見られたら、きっとはしたない女の子だと思われるっすね…」 桃子は小さく独り言を呟きながら、下着をタオルの中に隠すと風呂場へと向かっていった。 『ヒック・・グスッ・・・』 ――そこで泣いているのは誰っすか? 『グスン・・・エック・・パパ・・ママ・・どこに行ったの・・?」 ――あれ?この子はもしかして……小さい頃の私? 『グスッ・・・一人ぼっちはいやだよぉ・・・』 ――昔から私は一人ぼっちだった…いつも皆を遠くから見ていただけだったっす… 『グスッ・・ママぁ・・パパぁ・・』 ――この時だって私は… 「う………ん……」 桃子はゆっくりと目を開くと、ベッドから起き上がる。どうやら、さっきの光景は桃子が見ていた夢だったようだ。 ふと、孤独感に襲われた桃子は毛布を握り締めながら窓を見る。 「嫌な夢を見ちゃったっす…子供の頃の夢」 子供の時からステルスだった桃子はよく両親とはぐれて迷子になっていた。いつも泣きながら両親が来るのを待っていた。 桃子にとってそれは思い出したくない思い出の一つだった。 (でも、今は違うっす…私には先輩が…麻雀部の人達がいるっす……だからもう一人ぼっちじゃないっすよ) 桃子はしばらくの間、無言でそう自分に言い聞かせ再び眠りについた。 そして時が流れ、桃子は麻雀大会予選の日をむかえる。 「ワハハー!今日は人が沢山いるなー!」 「な……なんだか緊張して来ましたよぅ…」 「うむ、だがプレッシャーに負けぬよう気を引き締めよう」 鶴賀麻雀部は会話をしながら会場の中を移動していく。 「モモ……ここで負ける訳にはいかない…お前の力を頼りにしているぞ」 加治木はポンと桃子の肩を叩きながら激励の言葉をかける。 桃子はそんな加治木に対して笑顔で返事をする。 「はい!先輩のため、麻雀部のために頑張るっすよ!」 自分を救ってくれた加治木の期待に答えられるよう、この大会で活躍しよう――桃子は自分にそう誓う。 今はあの人の事を忘れよう、今はただ…先輩のために頑張らなければ。 しかし、やはり緊張してしまったのか桃子は急にトイレに行きたくなってしまった。 「先輩、ちょっとトイレに行ってくるっすね」 「ああっ、早めに済ましてこいよ……モモ」 桃子は加治木に許可をもらうと、トイレへと向かう。 途中、色々な人達にぶつかってしまうが誰も桃子の存在に気が付く事はなかった。 「やっぱり人混みは嫌いっす……」 慣れている事とはいえ、やはり良い気分はしない。 トイレを済ませた桃子は小走りで先輩達の所へと向かう。 「早く先輩達のいる所に戻らないと……きゃっ!」 ドスン・・・ 桃子はまた人にぶつかってしまい、その場でしりもちをついてしまった。 「いたたたっす……」 「す、すいません!大丈夫ですか?」 「えっ…!?」 この声はもしかして…桃子は恐る恐る顔を上げる。 「あ……あなたは……もしかして…」 「はい?」 桃子の目に写った人物―――それはずっと会いたいと思い、願っていた須賀京太郎だった。 東横桃子と須賀京太郎……二人の運命は麻雀大会という場所において再び交わる事となった。

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