「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ハーメルンの笛吹き-62

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【上田明也の協奏曲18~聞こえてくるのは何時だって~】

ある日、穀雨吉静の兄を名乗る男性が訪ねてきた。
怪しい少年だった。

「吉静ちゃん。ちょっと、お兄ちゃんは、この吉静のお兄ちゃんと話し合わなければならないからな………ちょっと、茜さんのところで、待っていてくれるか?」
「うん、わかったの」

てちち、とパソコンに近づく吉静
電源をいれ、赤い部屋が発動し…吉静の姿が、消える

「…「赤い部屋」、ですか」
「驚かないんだな」
「僕も、都市伝説契約者ですから」

そうか、都市伝説契約者か。
ならば俺の敵なのだろう。

「彼方君と言ったな?少し、質問してもいいだろうか」
「構いませんよ」

にこにこと、男――といってもまだ子供だが――は笑っている。
………こうやって見ると、吉静に似ている。
彼が吉静の兄だと言うのは、きっと、嘘ではない。
……本当に、吉静の兄なのだろう。





「君は、中学生くらいに見えるが……ご両親は?」
「………いません……僕はよく覚えていないのですが、僕が幼い頃に亡くなった、と聞いています。多分、吉静が生まれてすぐの事だったんだと、思います」
「ふむ…」

 なるほど、親は居ない、か
 だからこそ、吉静もあんな施設にいたのだろうが

 ならば
 この、少年は

「…それなら、彼方君は、今、一人で暮らしているのかい?」
「はい。でも、先生に面倒見ていただいてますから」

 先生
 …やはりそれが、引っかかる





一般的にだが、子供を自分の思うとおりに操作している人間にろくな人間は居ない。
他人や物を操るという能力に特化した才能を持つからこそ、自分はそれを確信できた。
おそらく先生とやらは俺と同類、否、下手したらもっと悪い何かに違いない。

たとえ幾らゆがんでいようともこの少年を先生とやらが愛しているならば良い。
何も文句は言わない。
しかし、先生がこの純粋な子供を騙している可能性がある。

いいや、違うね。

絶対にこいつは騙されている。

今とれる手段として最も簡単な方法は問答無用でこいつをぶっ殺すことだ。

しかしそれは吉静ちゃんの信頼を裏切ることでもある。
約束を破ることでもある。

男一匹上田明也、その約束だけはまかり間違っても破ってはいけない。

「君の先生とやら…それが、信用できない」
「それにな」
「…それに?」
「世界中の幼女は、俺のものだ」

ついでに言ってみた。
やっべぇ、ドン引かれた。





「ロリコンはまだいいかもしれないけど…独り占め、はよくないと思います」
「なるほど、ロリコンはいいのか。話がわかる少年だ」
「…たくさんの女の子を囲うと言う事には、強い責任感が必要だと思います」

当たり前だ。
そしてその当たり前のことが解っているというのはよいことだ。
だが俺が女性を幸せにできないと思っているのだろうか?
まあ俺のことを知らないのだから仕方があるまい。

「全ての女性を養えるだけの経済力、それに、全ての女性を、平等に愛し、幸せにできなければならない」
「……アキナリさんには、それができるんですか?」
「できるさ」

これでも俺は愛され体質のモテカワジェントルマンだ。
その程度のことが出来ない訳がない。

「…そうですか」

でも、と
彼方は、軽く首を左右にふった

「…だと、しても……僕は、あなたに吉静を任せることに、不安を感じます」
「ほう?何故だい?」
「全ての幼女は自分のもの……吉静は、そんなあなたのエゴに巻き込まれた、ただ、それだけに思えるんです」

その通りだ。
だがその何が悪いだろうか?
エゴでも何でも今現在彼女が幸せならば問題ないではないか。





そっと
彼方の手が…剣の柄に、触れた

「あなたのエゴは、吉静を不幸にする」
「…不幸になんてしないさ。俺の命にかけてでも、幸せにしてみせる」

彼女を、二度と不幸の中に落としてなるものか
自分はその為に、彼女をあそこから助け出したのだから

「だが、少年……君は、たとえ暴力に訴えてでも、吉静ちゃんを俺に渡したくないようだな?」
「……先生が、言っていたんです。もし、吉静を保護している人が、都市伝説契約者で…そして、信用ならない相手ならば、力付くで吉静を連れ戻すべきだ、って」

…また、「先生」か
なるほど、この彼方と言う少年は、思考パターンの大半を、その「先生」によって支配されている
ならば……それさえ断ち切れば、こちらの味方に引きずり込む事も可能、か

………こっそりと、上田は苦笑する
自分も、甘くなったものだ
殺してしまえば、面倒事もなく早くすむと言うのに
だが、自分が今頭で思い描く悪戯の方が人殺しの何十倍も面白そうだった。

「来るなら、いつでも来たまえ」

少年の身体が一気に宙を駆けた。





剣による一閃。
人間の限界まで鍛えられた肉体。
中学生くらいの子供にしては鍛えられすぎている。
この年でここまで育ててしまえば、身体に過剰な負荷がかかってしまうだろうに。
まあしかし、銃弾を回避できる人間も居るまい。
俺はコートの下に隠している銃器を取り出し…………


――――――あれ?



ありませんね、銃器。
おっかしいなあ?
これはまずいぞー、あっはっはっはっは。
有るはずの物が無い。
異常事態か、異常事態であるということは都市伝説の仕業か?

何度も振るわれる剣を紙一重で躱しながら彼方の都市伝説について推測を巡らせる。





まずは会話で自分のペースを掴もう。
おい、と彼方に声をかけようとしても……声が出ない。
声が出ない。
有るはずの武器が無い。
俺の戦闘における手段が片っ端からつぶされていく。

「何をしようとしたかは知りませんが。あなたのペースに持ち込ませんよ」

俺がしようとしたことを彼方は理解していない。
理解出来なくても阻害できたということは、俺の意志に反応して俺に妨害をしかける都市伝説か。
だが、正体は未だわからない。

「卑怯といわれようが、何だろうが………僕は、あなたに勝ちます」

っとん、と距離をとる彼方
…一瞬、空間が歪んで

(――――んなぁ!?)

にょろろろろんっ、と
事務所の中に…突然、巨大な烏賊が、姿を現した
それは、一瞬で上田を捕え、締め上げてくる

まるで、以前遭遇した、X-No.0が呼び出した烏賊を思わせる、それ






ギリギリと、骨を砕くかのように締め上げてくる

――――ざっざっざっざっざっ、と
足音が聞えてくる
嫌な予感と共に、足音がする方向を見ると……そこには、信じられない光景が広がっていた

全裸兄貴の集団
アメリカで遭遇したそれと、全く同じ集団が…上田に向かってきているのだ
この集団も、巨大烏賊も………彼方が呼び出したと言うのか!?

「妹を、吉静を保護する為ならば、手段は選びません」

彼方の声が、どこか遠くから響く

「……先生なら、きっと。吉静の事も、僕のように強くしてくれるだろうから。僕は、吉静を幸せにしてみせる。」

解った。
こいつの都市伝説の正体が解ったぞ。

だがそれが本当ならば……まるで、悪夢じゃないか。
俺に対抗する手段はない。






とりあえず巨大烏賊に捕まっているこの状況をまずは何とかせねばならない。
この状況で必要以上のダメージを受ければこの後の戦闘に響きかねない。
もしかしたら、ここでのダメージは何の意味もなさない可能性もあるが……
それでも警戒に越したことはない。

「ぬ、……ぐあああああああああああああああ!!!」

と叫ぼうとしたのがやはり声が出ない。
どうやら骨が少しずつきしみ始めている。
隠し持っていた武器が無いのが痛い。
肉体的な意味でも痛い。
筋肉軍団はゆっくりと近づいてくる。
しかたない、か。

ゴキィ

自分の腕から気味の悪い音が響く。
俺は腕の関節を自分から外したのだ。
そのことによって一瞬だけゆるんだ烏賊の足から俺は何とか這い出した。

「おーぅ、アキナリさーん、黙って我々と一緒にハッテンナサーい!」

筋肉の集団が迫ってくる。
しゃべれない、武器も無い、腕も折れた、その腕の回復さえ遅くなっている。
絶体絶命。
だが、……あきらめる訳にはいかない。
しゃべれないので、すぐそこに居る彼方に向けて折れていない腕で中指を突き立ててみせる。
さて、せいぜい足掻かせて貰おうか。






ジリリリリリリリリリリリリリリリリ!
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!

――――――――俺が覚悟を決めたその時、突然非常ベルが鳴り響いた。
スプリンクラーの水が辺りに容赦無く降り注ぐ。
そして“傷一つ無いパソコン”がビショビショにぬれる。

「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!」

突然の大声。彼方に一瞬の隙が出来る。
その瞬間、事務所のドアが勢いよく開いた。
事務所に勢いよく飛び込んできたそれは俺の胸の上に乗っていた何かを思い切り蹴り飛ばした。
そして思いっきり転んだ。

「お前はミスしたんだよ。
 武器が無い、村正が使えないだけで俺はお前に勝つ目がなかった。」

嘘である。
ついでに言うとしゃべれないのも結構やばかった。

「お前は、……いや違うなあ、お前の都市伝説は俺に必要以上の攻撃をしかけてしまったんだよ。
 愚かなるかな、そこがバケモノの悲しき性だわな。夢だとさえ解ればわずかな切っ掛けで目も覚めるさ。」

事務所に飛び込んできた勇気ある助手を優しく抱きかかえると自分の後ろに下がらせる。

「とはいえ、こいつが助けに来ないと目を覚ませていたかは知らないけどな。
 ありがとう、お前の勇気で命を拾ったよ。“向坂境”、お前は最高の助手だ。」
「えっと……ありがとうございます。」
どうにか、反撃を開始できそうだ。







「安心しろよ、彼方。この子は何の能力も持っていない。」
「…………貴方の言葉は信用できません。先生も人の言葉は簡単に信用するなと……。」
「また先生か、やめておけやめておけ、大人は何時だって子供の敵だ。
 大人は子供を食い物にしようとするくそったれでくそったれな生き物だ。」
「先生は行き場のない僕の世話をしてくれた人だ……、それを侮辱するのは許せません。」
「はっ、泣かせるねえ。今だやれ向坂!」

当然大嘘である。
未知の攻撃に対して彼方に一瞬だけ隙ができる。

「はい!」

BANG!BANG!

「でも何をやれば!?」
「それで十分!」

その一秒に満たない時間で、俺は銃撃の準備を整えた。
俺は小型の銃を構えると彼方に向けて容赦無く鉛の弾を撃ち込み始める。
第一射、驚くべき反応速度で掠るだけに留めた。
第二射、あろうことか剣で弾いてきた。
俺は銃をその場に捨ててすばやく蜻蛉切を抜いた。

「向坂、俺の後ろで絶対に動くなよ!」
「わわわわわわ!?」

向坂が俺の後ろでジッとしていることを確認すると俺は再び意識を彼方に向けた。
すでに彼は俺の目の前に迫っていた。





「おいおい、俺は言ったはずだぜぇ?この子は無能力者だって。」
「嘘つきだって解っていた筈なのに……!」

ガキィン!
ガキガキィン!
火花が三回、空中で咲いては散る。
剣と刀が何度でもぶつかって、そのたびに手にしびれるような衝撃が走る。
都市伝説で強化された身体でも動きを目で追うのが精一杯。
ただし目で追えれば、蜻蛉切の力で身体が勝手に動いてくれる。

「でもお前はこうも思っている筈だ。
 実は、この向坂がすんごい能力を持っているんじゃないかってさ。
 でなければこんな都合良く俺を助けに来たりできないと思っている筈だ。
 でもそれがお前のミステイク。」

身体は動いているが村正の操作能力による自動操縦なので自由に思考可能である。
俺は空いているし塞がらない口でゆっくりと彼方に揺さぶりをかける。
そもそも思考とは言語によって規定される物だ。
ならば絶え間なく俺が話しかけていれば、俺によって思考の方向性は固定される。
幸い、スプリンクラーのおかげで俺を一瞬で眠らせた攻撃はできないみたいだし、今の内に勝負を決めるとしよう。




「く……、このままだときりがないみたいですね。」

何回か刀を合わせると彼方はすばやく後ろに飛び退く。

「でも、これならどうでしょう?」

彼方はいつの間にか被っていた帽子を深く被り直そうとする……が。

BANG!BANG!BANG!

俺は村正を捨てて服の袖から小型の拳銃を取り出す。
そしてそれで彼方の帽子を持っていた腕を撃った。
土壇場で躱されたか、向こうも俺の性格をそこそこ学んできているらしい。
何をするつもりか知らないがそんな必殺技使わせると思わないで欲しいものだ。
拳銃が弾切れになったのに気づくと俺は銃を投げつけて村正を手元にまで引き寄せる。
契約している以上、村正は何度だって俺の手元に戻ってくるのだ。

「卑怯さで俺に勝てると思うなよ!」
「笛吹さん。」
「何だ?」
「いくら何でもそれは子供相手に最低です……。」

まったくもってその通りだ。




「ほらほら、どうする彼方君?
 今此処で妹さんを見捨てて逃げても良いんだぞ?
 君の愛する先生に泣きつき給えよ、せんせー、悪辣な探偵にいじめられましたーって。
 とりあえず世間一般においては君は奪われた妹を取り戻そうと邪悪な誘拐犯に立ち向かう好青年だ。
 全身全霊で頑張り給え。」

とりあえず挑発。
安い挑発を何度も何度も繰り返す。
飛びかかってきたら村正で攻撃をいなし、絶妙なところで向坂をかばい、受けた傷は悪魔の能力で無理矢理回復する。
鍛え抜かれているとはいえ彼は人間だ、当然限界は訪れる。
後ろで向坂の頬が引きつっているが気にしない。
いつの間にかスプリンクラーは止まっていたが、彼方は頭に血が上っていてそんなこと気にしてはいないようだ。

「――――――――ッ!」
「おいおい、あまり離れないでくれよ!」

一定の距離から離れれば銃で撃つ。
一定の距離から近づけば村正でいなす。
向坂を狙おうとすれば身体を張って守る、そして出来た隙に村正をたたき込む。

そうして時間を稼いでいると彼方はまた向坂を狙って近づいてきた。
俺は向坂に向けられた剣を自らの腕に突き立てる。

「つ~かまえた。」
「――――また庇った!?」

スパッ
彼方の頬から赤黒い血が流れ落ちた。




距離を取った彼方に向けて俺は再び挑発と説教を始める。
年上の男として若者に説教してやるのも義務である。

「知っているか少年、男は守る物の大きさで強さが決まるんだ。
 少年が守っている物は何だ?
 先生の言葉?妹?多すぎるよ、もっとシンプルに行こうぜ。
 大好きな先生の言葉を守りたいなら今引き給えよ。
 君が死ねば、きっと、先生は悲しむに違いない。
 言っておくが俺は契約した都市伝説のおかげで大抵の傷はすぐ治るぞ?
 それにひきかえどんな小さな怪我でもお前が受けた傷は治らない。
 ジクジクジクジク痛み続けるだろうなあ、治癒系の都市伝説で丁寧に治さないとあとからすごく痛いぞお?
 まあもし君が先生より妹を優先するならば、俺と戦って……死ね。
 お兄さんは良い奴だったと妹さんには伝えておこう。」

……ってあれ?
いつの間にか彼方が居なくなっている。
あ、村正がいつの間にか手元から消え去っている。

「きゃあああああ!」
「上田さん、床に伏せて、僕に妹を渡してください。」

村正の呪いで手が血まみれになるのも構わずに彼方が向坂に刀を突きつけていた。
どうやら俺はしゃべくっている内に村正を盗まれたらしい。
そして向坂ちゃんも人質に取られたらしい。
なるほど、彼方君は驚異的な身体能力を持っていたんだったね。
いや、……正体は解らないが先ほど使おうとしていた都市伝説の能力か。





「おいおい少年、女性を人質にとるなんて見損なったぞ?」
「良いから早く妹を渡してください!
 さもないと、この子がどうなっても知りませんよ!」
「そうかそうか、古今東西追い詰められた悪役は人質をとるんだよなあ?」
「良いから早く!」
「ええ~ん、笛吹さあん!」
「うぅ……、仕方ないな。良いよ、俺の負けだ。お前に妹は返そう。」

赤い部屋を起動させる。
パソコンの電源が勝手に点いたかと思うと画面が真っ赤に染まる。

「少し待ってろ、今出てくるからさ。ときに少年、赤い部屋は好きかな?」
「何を言っているんですか?妙な事言っているとこの子を本当に切りますよ!
 そもそもそんな訳無いで……」
「そうか、それは残念だ。その回答はいいえと受け取らせて貰おう。」
「――――――――うわあああああああ!」

次の瞬間、彼方が耳を押さえ、目をつぶって転げ回る。
これが赤い部屋の能力②だ。
これは『赤い部屋のポップアップはいいえを押しても消えずに大量に出てくる』という性質を応用している。

俺の赤い部屋は好きか、という問いに「いいえ」と答えると一瞬で視覚と聴覚を奪われるのだ。






「恐らく君は今視界が真紅に染まり、耳には血も流れんばかりの大音声で『赤い部屋は好きですか?』と問われ続けているんだろうね。
 惜しかったなあ、あと一歩で君の勝ちだったのに。
 いやそもそも向坂が来なければ君は勝っていたんだ。
 ああ、本当に。
 本当に本当に、君は運がないね。
 向坂ちゃん、こっちに来なさい。今日は危ないから赤い部屋に隠れていてくれ。
 都市伝説の能力で君を君の家に直接送り返す。」

俺は転がっている彼方の首筋に手刀を打って気絶させると、向坂を赤い部屋の中に送り込んだ。
さて、向坂が居なくなれば俺はハーメルンの笛吹きの能力を使える。
流石に彼女の前で使えば俺の正体がばれてしまう。
それは良くない。
……さて、彼方君を荒縄でぐるぐる巻きにしてゆっくり洗脳を開始するとしよう。
え、なんで荒縄が有るかって?
――――縛るのも縛られるのも、良いよね!





二時間後。

「上田さん、ありがとうございました。」
「ああ、別に良いんだよ。吉静ちゃんに肉親が見つかったというのは喜ばしいことだ。
 君が大人になるまでは彼女は俺が責任を持って預かっているから、安心していてくれ。
 偶に会いに来てくれよ?彼女も喜ぶし。」
「はい、勿論です!」

洗脳完了である。
ハーメルンの笛吹きの子供を操る能力を上手く使えばこういうこともできるのだ。
とりあえず彼方君の頭には俺との戦闘の記憶や赤い部屋の“裏技”のことは残っていない。
彼は俺と誰の邪魔もなくここで穏やかに話し合いを行ったと思い込んでいる。
村正の呪いは俺が解除したし、特殊な薬を塗ったので彼の身体に傷は残っていない。
おそらく戦闘が有ったとは思われない筈だ。

ところで、洗脳はそれだけではない。
“先生”とやらへの不信感を少しだけ植え付けさせて貰った。
人間関係が壊れていくのを見ることは中々楽しい。
彼がもし、もう一度ここに来るのならばその時は明日真にしたようにゆっくりと“説き伏せて”やることにしよう。

何度だって何度だって脳髄をいじくり思考をもてあそぶとしよう。
だって、俺は「人を殺さない」と約束したのであって、「人を操らない」と約束した訳ではないのだから。

【上田明也の協奏曲18~聞こえてくるのはいつだって~fin】

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