これは、今からほんの2、3年前程の話
雪が降りしきる、一面銀世界のとある村
雪が降りしきる、一面銀世界のとある村
「・・・ハァ、今日も寒いなぁ・・・」
ざく、ざく、と積もった雪を踏みしめながら呟くのは、
寒さをしのぐ為に上着を着込んだ、小学校低学年くらいの少女
服の所為でまん丸になった身体を重そうにしながら、ゆっくりと足を運ぶ
寒さをしのぐ為に上着を着込んだ、小学校低学年くらいの少女
服の所為でまん丸になった身体を重そうにしながら、ゆっくりと足を運ぶ
「・・・・・あっ!」
と、突然足を速める少女
途中何度も倒れそうになりながら辿り着いた先には、
雪で埋もれてぐったりとしているキツネの姿があった
途中何度も倒れそうになりながら辿り着いた先には、
雪で埋もれてぐったりとしているキツネの姿があった
「可哀想・・・・」
ざくり、と膝をつけ、そっとキツネを抱き上げる
潤んだ青い瞳から涙が溢れそうになったが、ぐっと堪え、
潤んだ青い瞳から涙が溢れそうになったが、ぐっと堪え、
「・・・貴方を、癒してあげる」
静かに、囁いた
すると、彼女の身体から、積雪から、空から、あらゆる所から青く輝く光の粒が流れ出、
彼女の胸の中にいるキツネに注がれた
キツネはぴょこん、と何事も無かったかのように起き上がると、
少女に礼をするかのように鳴き声をあげ、雪の上を駆けていった
すると、彼女の身体から、積雪から、空から、あらゆる所から青く輝く光の粒が流れ出、
彼女の胸の中にいるキツネに注がれた
キツネはぴょこん、と何事も無かったかのように起き上がると、
少女に礼をするかのように鳴き声をあげ、雪の上を駆けていった
「よかった、元気になって・・・」
ほっと白い息を吐き、にっこりと天使のような笑みを浮かべた少女
そこへ
そこへ
「お嬢ちゃん、今のどうやってやったんだい?」
少女が振り向くと、そこには優しそうな初老程の男性が立っていた
「わからないの、いつからか、こんなことができるようになってて・・・」
「そうか・・・それはきっと神様がくれたんだよ」
「神様?」
「そう、誰かを救う為に、神様が君にその力を与えてくださったんだ」
「誰かを、救う・・・」
「君は、ご両親は・・・お父さんやお母さんは、何処へ?」
「ううん、私は一人で―――」
「なら私の所に来なさい。私と一緒に、色んな人を助けよう」
「そうか・・・それはきっと神様がくれたんだよ」
「神様?」
「そう、誰かを救う為に、神様が君にその力を与えてくださったんだ」
「誰かを、救う・・・」
「君は、ご両親は・・・お父さんやお母さんは、何処へ?」
「ううん、私は一人で―――」
「なら私の所に来なさい。私と一緒に、色んな人を助けよう」
す、と手を伸ばす男性
少女は小さな手を、彼の大きな手に委ねた
少女は小さな手を、彼の大きな手に委ねた
「私、色んな人を助けたい・・・癒してあげたい!」
こうして、彼女の新たな生活が始まった
「息子が、酷い熱で苦しんでいます!どうか・・・どうか、救いの手を!!」
「凄い火傷だが、まだ息がある! こいつを助けてやってくれ!」
「事故で腕と足の骨がいかれてしまった・・・これではもう、まともに暮らせん・・・」
「どんな病人でも、どんな怪我人でも!
神を信ずる“強い思い”があれば、この神の御子の力で癒しましょう!!」
神を信ずる“強い思い”があれば、この神の御子の力で癒しましょう!!」
すぐに少女の噂は隣村へと届き、そこでも病気や怪我を癒した
そして離れた町へ、さらに国境を越え・・・
彼女には、休みは与えられなかった
そして離れた町へ、さらに国境を越え・・・
彼女には、休みは与えられなかった
「ッハァ・・・ハァ・・・おじ、さん・・・もぅ・・・」
「もう少し頑張りなさい、まだ救いを求める人は沢山いるんだよ?」
「・・・う、うん・・・がん、ば・・・るぅ・・・・・・」
「もう少し頑張りなさい、まだ救いを求める人は沢山いるんだよ?」
「・・・う、うん・・・がん、ば・・・るぅ・・・・・・」
目を瞑り、すやすやと眠りにつく少女
男性はそっと彼女の頭を撫でると、立ち上がり、鞄の中の金庫をぽんと叩く
男性はそっと彼女の頭を撫でると、立ち上がり、鞄の中の金庫をぽんと叩く
「っくくく・・・全く、よく働いてくれたよ、この小娘は
そろそろ何処かの店にでも売ってしまおうか
それにしても、人間とは可哀想な生き物だ、救いがあると分かればどんな手を使ってでもそれを受けようと足掻き続ける」
「そんな人々をただ純粋に助けたいと願いながら、貴方に利用され続けたその子も可哀想ですわ!」
「ッ!?」
そろそろ何処かの店にでも売ってしまおうか
それにしても、人間とは可哀想な生き物だ、救いがあると分かればどんな手を使ってでもそれを受けようと足掻き続ける」
「そんな人々をただ純粋に助けたいと願いながら、貴方に利用され続けたその子も可哀想ですわ!」
「ッ!?」
今、ここには少女と男性、2人だけしかいない
咄嗟に、彼は己の背後を見た
赤く長い髪を風に靡かせる、黒いスーツの少女
咄嗟に、彼は己の背後を見た
赤く長い髪を風に靡かせる、黒いスーツの少女
「お、お前は何者だ――――」
「「組織」の名において、貴方を拘束します!」
「「組織」の名において、貴方を拘束します!」
彼女の指先から赤い光が放たれ、バチッ!!という音と共に、男性は雪の中に倒れた
赤い髪の少女は、眠っている青い髪の少女へと駆け寄る
赤い髪の少女は、眠っている青い髪の少女へと駆け寄る
「本当に、可哀想・・・こんなになるまでこき使われて・・・・・・・えっ?」
抱き上げた時、赤髪の少女は何かに気付いた
小さな少女を抱えた手に、力が篭る
小さな少女を抱えた手に、力が篭る
「・・・こ、この子・・・飲まれてる・・・・・?」
† † † † † †
(ローゼ>・・・こんな哀しい人生を、彼女に2度も送って欲しくない
そう思って、ワタクシは彼女を推薦しましたの・・・当時空きのあった、R-No.10に
(レクイエム>なるほど・・・道理で、「組織」結成時には見た事の無い顔だと思えば
(ローゼ>上位ナンバーでしたら、いつでもワタクシの目の届くところに彼女をいさせられますの
もう、あんな悪い人の手に渡らせはしませんわ・・・!
そう思って、ワタクシは彼女を推薦しましたの・・・当時空きのあった、R-No.10に
(レクイエム>なるほど・・・道理で、「組織」結成時には見た事の無い顔だと思えば
(ローゼ>上位ナンバーでしたら、いつでもワタクシの目の届くところに彼女をいさせられますの
もう、あんな悪い人の手に渡らせはしませんわ・・・!
込み上げる憤りを、紅茶と共に流し込むローゼ
ホットミルクを飲みながら、レクイエムはふと
ホットミルクを飲みながら、レクイエムはふと
(レクイエム>・・・なら、前から気になっていたんだが
“前任者”はどうしたんだ? つまり、元R-No.10は・・・・・ローゼ?
“前任者”はどうしたんだ? つまり、元R-No.10は・・・・・ローゼ?
かたかたと、ティーカップを持つ手を震わせるローゼ
普段朗らかな彼女からは見られないような、悲哀と恐怖に満ちた表情だった
普段朗らかな彼女からは見られないような、悲哀と恐怖に満ちた表情だった
(レクイエム>ど・・・どうか、したのか?
(ローゼ>初代R-No.10は・・・数年前、自身の部下数百人相当を虐殺して、行方知れずになりました・・・
(レクイエム>何っ・・・!?
(ローゼ>初代R-No.10は・・・数年前、自身の部下数百人相当を虐殺して、行方知れずになりました・・・
(レクイエム>何っ・・・!?
――――ん~! トップの姉貴の煎れる紅茶は最高だねぇ!
――――トップの姉貴ぃ! そんなことしてたら堅物の姉貴に怒らr・・・ってごめんなさい!?
――――やーだぁ、トップの姉貴ったらぁ! ヒャハハハハハハ♪
ローゼの脳裏に、初代R-No.10との楽しかった思い出が何度も何度も巡る
それだけ、彼女がそんなことをしでかすとは思えなかった
今でも、彼女には信じられない
それだけ、彼女がそんなことをしでかすとは思えなかった
今でも、彼女には信じられない
(ローゼ>どうして・・・今は、何処でどうしてらっしゃるの・・・?
ほろり、涙が頬を伝う
(ローゼ>・・・帰ってきて・・・ルート・ライフアイゼン・・・・・
...To be Continued