ID:Ztakjww0氏:お正月のひとコマ

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 元旦の鷹宮神社。柊かがみが、お正月の恒例となっている神社の手伝いでおみくじの販売をしていると、見知った顔が列に並んでいるのを見つけた。 「こなた?一人なのかしら」  その友人…泉こなたは眠たそうにあくびをしながら、列の先頭を眺めていた。 「かがみー、あけおめー」  順番が回ってきて、何ともしまらない新年の挨拶をしてきたこなたを、かがみは苦笑しながら迎えた。 「あけましておめでとう。眠そうね、今年はあんた一人?」 「うん、みんな別口で用事あるってさ。流石に徹夜明けは眠いよー」  再度あくびをしながら答えるこなたに、かがみも再度苦笑し、こなたの後ろの長蛇の列を思い出した。 「っと、今混んでるから、おみくじ引くならはやくすませちゃいましょ。話するなら後でね。もうすぐ休憩取れると思うから、裏手でまってて」 「おっけー…十番だよ」 「十番っと…はいこれ。良いのあたるといいわね」 「ありがとー。んじゃ後で」  かがみからおみくじを受け取り、こなたは売り場から離れていった。  次のお客の相手をしながらこなたのほうを見ると、暗い顔で肩を落としてる姿が見えて、かがみは思わず吹き出してしまった。 ― お正月のひとコマ ―  休憩時間に入ったかがみは、早速神社の裏手の方に行き、木にもたれかかって暇そうにしているこなたを見つけた。 「おまたせ、こなた」 「ううん、今来たとこー」  気の抜ける声でそう答えるこなたに、かがみは眉をしかめた。 「…なんだそりゃ」 「気にしない気にしない。一度言ってみたかっただけだから」  そう言いながらこなたは、持っていた袋から焼きトウモロコシを取り出して、かがみに差し出した。 「ほい、これ。手伝いしててお腹空いたでしょ?」 「お、さんきゅー。珍しいわね、あんたが奢ってくれるなんて」 「そう?まあ、たまにはね」  答えながら、こなたは自分の分のトウモロコシを取り出して噛り付いた。 「結構、味濃いねコレ」 「確かに、ちょっと濃いわね。ちょっと喉が渇くわ…これ、鳥居前の角の屋台のでしょ?」  かがみもトウモロコシを齧りながら、そう感想をもらした。 「…味でどこのかわかるとか…まあ、喉が渇いたなら、ほいコレ」  こなたは多少呆れた顔をしながら、別の袋からよく冷えた缶のウーロン茶をかがみに差し出した。 「ありがと…なんか準備いいわねえ」  かがみはお茶を飲みながら少し考え、そしてニヤッと意地の悪い笑みを浮かべた。 「ははーん、あんたアレでしょ。おみくじで凶が当たったから、神社の巫女に親切にしてチャラにしてもらおうとか考えてるでしょ?」 「えっ…な、何のことですかな…」  かがみの指摘に、こなたは冷や汗を垂らしながらそっぽを向いた。 「っていうか、わたしが何当たったかなんて分からないんじゃ…」 「分かるわよ。あんなに盛大に落ち込んでたらね」 「…ちぇ、見られてたのかー」  こなたはため息をついてトウモロコシにかぶりついた。それを見たかがみが苦笑する。 「トウモロコシ代返せ…なんて言ったりして」 「言わないよ。どんだけケチなんだよ、わたしは」  茶化すかがみに文句をいいながら。こなたは自分の分のお茶を飲んだ。 「まあ、理由はどうあれ親切にしてることに変わりはないんだから、いい事あるかもよ」  手に持ったトウモロコシを揺らしながらそう言うかがみに、こなたは憮然とした表情を見せた。 「それにしても、今年はさらに人増えてるみたいだね」  食べ終わったトウモロコシの芯を入れた、袋の口を縛りながらこなたがそう言うと、かがみは少し暗い顔をした。 「うん…不景気だもの」 「関係あるの?そういうの」 「あるわよ…これだけ長引くと、やっぱり何かにすがりたいって気分になるんじゃないかな。絵馬もそういうこと書いてるの多いし」  かがみはそこまで言って、大きくため息をついた。 「…時々、空しくなるのよね」 「空しく?」 「そう言う人たちに、わたし達が出来ることって無いじゃない。お払いとか、お守りとか、絵馬とかって気休めにしかならないし…神さまって曖昧すぎて当てになるか分からないし」 「…いや、かがみが言っちゃダメなんじゃないかな、それ…」 「しかも、それらはお金とってやってることだし…最近、こう思うようになったの。わたしは人の不幸でご飯を食べてるんじゃないかって」  かがみの言葉を聞いたこなたは、首を少しかしげ少し困った顔をした。 「…やっぱ、かがみは変なところで真面目だねえ」 「そうね。自分でもそうなんじゃないかなって思えてきたわ」 「…そんで、やっぱ優しいね」  付け足したこなたの言葉に、かがみは少し頬を染めてそっぽを向いた。 「な、なによ急に…ってか関係ないでしょ」 「いや、あるよ…わたしはこの人ごみ見て、絵馬とか見てもそんなことまったく思わなかったもの」  こなたはそっぽを向いたかがみの顔を覗き込むようにそう言って、ゆるく微笑んだ。 「それに、かがみのやれる事はあると思うよ」 「…え?」 「何にも出来ないとか思わずにさ、心の中ででもその人たちに少しでも幸せが来るようにって祈ればいいんじゃないかな」 「…そんだけ?」 「そんだけ。あとはここの神様のお仕事だし」  かがみはポカンとした表情を浮かべて、目の前の友人をしばらく眺め、そしてプッとふきだした。 「なによ。結局神頼みじゃない」 「そりゃそうだよ。だってここ神社だもん」  なんの悪びれも無くそう言うこなたに、かがみは声を出して笑った。 「…なんかちょっとスッとしたわ。ありがとう」  しばらく笑った後、かがみはこなたにそう礼を言った。 「どういたしまして。大した事言ってないと思うんだけどね」  頬をかきながらそう言うこなたに、かがみはこなたを真似るかのようにゆるく微笑んだ。 「内容云々じゃなくて、そう言うことを口に出せるかどうかだと思うわよ…たまに思うわね。あんたと友達になれて良かったなって」 「それは、たまにじゃなくいつも思ってて欲しいなあ…っていうか、今日のかがみは何時に無く素直だね」  かがみはあごの先に人差し指を当てて小首をかしげた。 「そう?…そうかもね」  そして、こなたの頭に手を置いて、笑いながらワシャワシャと動かした。 「まあ、お正月なんだしいいんじゃない?」 「やめれー…ってかわたしのいい加減さが移ったとか言わないでよー?」  こなたはかがみの手をどけようとしながらも、かがみと同じように笑っていた。 ― おしまい ― **コメント・感想フォーム #comment(below,size=50,nsize=50,vsize=3)
 元旦の鷹宮神社。柊かがみが、お正月の恒例となっている神社の手伝いでおみくじの販売をしていると、見知った顔が列に並んでいるのを見つけた。 「こなた?一人なのかしら」  その友人…泉こなたは眠たそうにあくびをしながら、列の先頭を眺めていた。 「かがみー、あけおめー」  順番が回ってきて、何ともしまらない新年の挨拶をしてきたこなたを、かがみは苦笑しながら迎えた。 「あけましておめでとう。眠そうね、今年はあんた一人?」 「うん、みんな別口で用事あるってさ。流石に徹夜明けは眠いよー」  再度あくびをしながら答えるこなたに、かがみも再度苦笑し、こなたの後ろの長蛇の列を思い出した。 「っと、今混んでるから、おみくじ引くならはやくすませちゃいましょ。話するなら後でね。もうすぐ休憩取れると思うから、裏手でまってて」 「おっけー…十番だよ」 「十番っと…はいこれ。良いのあたるといいわね」 「ありがとー。んじゃ後で」  かがみからおみくじを受け取り、こなたは売り場から離れていった。  次のお客の相手をしながらこなたのほうを見ると、暗い顔で肩を落としてる姿が見えて、かがみは思わず吹き出してしまった。 ― お正月のひとコマ ―  休憩時間に入ったかがみは、早速神社の裏手の方に行き、木にもたれかかって暇そうにしているこなたを見つけた。 「おまたせ、こなた」 「ううん、今来たとこー」  気の抜ける声でそう答えるこなたに、かがみは眉をしかめた。 「…なんだそりゃ」 「気にしない気にしない。一度言ってみたかっただけだから」  そう言いながらこなたは、持っていた袋から焼きトウモロコシを取り出して、かがみに差し出した。 「ほい、これ。手伝いしててお腹空いたでしょ?」 「お、さんきゅー。珍しいわね、あんたが奢ってくれるなんて」 「そう?まあ、たまにはね」  答えながら、こなたは自分の分のトウモロコシを取り出して噛り付いた。 「結構、味濃いねコレ」 「確かに、ちょっと濃いわね。ちょっと喉が渇くわ…これ、鳥居前の角の屋台のでしょ?」  かがみもトウモロコシを齧りながら、そう感想をもらした。 「…味でどこのかわかるとか…まあ、喉が渇いたなら、ほいコレ」  こなたは多少呆れた顔をしながら、別の袋からよく冷えた缶のウーロン茶をかがみに差し出した。 「ありがと…なんか準備いいわねえ」  かがみはお茶を飲みながら少し考え、そしてニヤッと意地の悪い笑みを浮かべた。 「ははーん、あんたアレでしょ。おみくじで凶が当たったから、神社の巫女に親切にしてチャラにしてもらおうとか考えてるでしょ?」 「えっ…な、何のことですかな…」  かがみの指摘に、こなたは冷や汗を垂らしながらそっぽを向いた。 「っていうか、わたしが何当たったかなんて分からないんじゃ…」 「分かるわよ。あんなに盛大に落ち込んでたらね」 「…ちぇ、見られてたのかー」  こなたはため息をついてトウモロコシにかぶりついた。それを見たかがみが苦笑する。 「トウモロコシ代返せ…なんて言ったりして」 「言わないよ。どんだけケチなんだよ、わたしは」  茶化すかがみに文句をいいながら。こなたは自分の分のお茶を飲んだ。 「まあ、理由はどうあれ親切にしてることに変わりはないんだから、いい事あるかもよ」  手に持ったトウモロコシを揺らしながらそう言うかがみに、こなたは憮然とした表情を見せた。 「それにしても、今年はさらに人増えてるみたいだね」  食べ終わったトウモロコシの芯を入れた、袋の口を縛りながらこなたがそう言うと、かがみは少し暗い顔をした。 「うん…不景気だもの」 「関係あるの?そういうの」 「あるわよ…これだけ長引くと、やっぱり何かにすがりたいって気分になるんじゃないかな。絵馬もそういうこと書いてるの多いし」  かがみはそこまで言って、大きくため息をついた。 「…時々、空しくなるのよね」 「空しく?」 「そう言う人たちに、わたし達が出来ることって無いじゃない。お払いとか、お守りとか、絵馬とかって気休めにしかならないし…神さまって曖昧すぎて当てになるか分からないし」 「…いや、かがみが言っちゃダメなんじゃないかな、それ…」 「しかも、それらはお金とってやってることだし…最近、こう思うようになったの。わたしは人の不幸でご飯を食べてるんじゃないかって」  かがみの言葉を聞いたこなたは、首を少しかしげ少し困った顔をした。 「…やっぱ、かがみは変なところで真面目だねえ」 「そうね。自分でもそうなんじゃないかなって思えてきたわ」 「…そんで、やっぱ優しいね」  付け足したこなたの言葉に、かがみは少し頬を染めてそっぽを向いた。 「な、なによ急に…ってか関係ないでしょ」 「いや、あるよ…わたしはこの人ごみ見て、絵馬とか見てもそんなことまったく思わなかったもの」  こなたはそっぽを向いたかがみの顔を覗き込むようにそう言って、ゆるく微笑んだ。 「それに、かがみのやれる事はあると思うよ」 「…え?」 「何にも出来ないとか思わずにさ、心の中ででもその人たちに少しでも幸せが来るようにって祈ればいいんじゃないかな」 「…そんだけ?」 「そんだけ。あとはここの神様のお仕事だし」  かがみはポカンとした表情を浮かべて、目の前の友人をしばらく眺め、そしてプッとふきだした。 「なによ。結局神頼みじゃない」 「そりゃそうだよ。だってここ神社だもん」  なんの悪びれも無くそう言うこなたに、かがみは声を出して笑った。 「…なんかちょっとスッとしたわ。ありがとう」  しばらく笑った後、かがみはこなたにそう礼を言った。 「どういたしまして。大した事言ってないと思うんだけどね」  頬をかきながらそう言うこなたに、かがみはこなたを真似るかのようにゆるく微笑んだ。 「内容云々じゃなくて、そう言うことを口に出せるかどうかだと思うわよ…たまに思うわね。あんたと友達になれて良かったなって」 「それは、たまにじゃなくいつも思ってて欲しいなあ…っていうか、今日のかがみは何時に無く素直だね」  かがみはあごの先に人差し指を当てて小首をかしげた。 「そう?…そうかもね」  そして、こなたの頭に手を置いて、笑いながらワシャワシャと動かした。 「まあ、お正月なんだしいいんじゃない?」 「やめれー…ってかわたしのいい加減さが移ったとか言わないでよー?」  こなたはかがみの手をどけようとしながらも、かがみと同じように笑っていた。 ― おしまい ― **コメント・感想フォーム #comment(below,size=50,nsize=50,vsize=3) - ほっこりできた &br() -- 名無しさん (2017-04-30 08:44:16)

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