風呂SS~そうじろう編

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風呂SS~そうじろう編 - (2007/12/01 (土) 23:42:19) のソース

ID:XOI8eVGG0氏とID:Y1KG2POC0氏による合作。
序盤はID:XOI8eVGG0氏によるもの。


「ねえ…そう君…」 
「ん?」 
「幸せになって欲しいね…」 
「うん、そうだな」 
 かなたの両手に優しく抱きかかえられた小さな赤ん坊。 
 よほど気持ちいいのか、湯船に使ったままうとうとしている。 
「はは、こいつこのまま寝ちまうんじゃないか?」 
「ふふふ、少なくとも今は幸せそうね?」 
「あぁ、そうだな。でも、心配しなくてもこいつはきっと幸せな人生を過ごしていくよ」 
 そうじろうは湯船に手を入れ、少しだけ空気に触れている赤ん坊の肩にお湯をかける。 
「どうして分かるの?」 
 かなたは不思議そうな顔で無精ひげの残る夫を見つめた。 
「簡単なことだよ!俺たちの娘じゃないか。これ以上の幸せがどこにあるんだよ?」 
 顔が熱くなっていくのが分かる。 
「俺と、なによりもかなたの産んだ生命(いのち)だ。こんなに幸せな奴はこの世界のどこにもいないよ!」 
 そういって豪快に笑うそうじろうを見て、目頭が熱くなる。幸せを感じる。ぬくもりを、暖かさを…。 
「ふふふ、そう君らしいね」 
「そうか?ははは、まさに幸せはここにある!そうだろ、こなた?」 
 その瞬間、小さいこなたが笑ったような気がすした。 



ここからはID:Y1KG2POC0氏による続き。



風呂は気持ちがいい。 
それにネタも思いつく。 

そう言えば家族三人そろって入った事もあったか。 
あれから随分と時間が経ったものだ。 

あのすぐ後に、お前は入院することになったんだよな。それで死んじまった。 
全く時間の過ぎるのは早いものだ。 
残されてしまったこなたは、もう高校三年生になる。 

あの時よりもずっと大きくなってるんだぞ。 
もう、昔のように高い高いは出来ない。少し切ないよ。 
それでもやっぱりお前に似たんだろうな、こなたのやつ、お前みたいに身長の低さを悩んでるんだ。 
お前に見せてやりたいよ。本当にお前にそっくりなんだぞ。 

約束したよな?こなたの髪を、お前の様にのばすんだって。ちゃんと守ってるぞ。 
こなたの髪の毛は、見事なくらいにお前の髪型に似たぞ。 
こなたのやつもあの髪型は気に入ってるようだし、多分しばらくはあのままだろうな。 

しかし、こなたは……。あいつは、俺との生活を幸せだと感じているのか? 
確かにあの時、俺はあいつは幸せな人生を送ると言った。 
でもな、不安なんだ。 

幼稚園、小学校、中学校。 
その時に通知表に書かれていたのは、『もっと友達を作りましょう。』とか『積極的に話してみましょう』ってな具合だった。 
……あいつ、あの時はきっと友達が少なかったんだろうな。 
楽しい筈の時にほとんど笑わず、つらい筈の時にほとんど泣かなかった。 
自分の思っていることを他人に表現するのが、どうしても苦手なようなんだ。 
不器用で育児なんてした事のない俺には、どうしてもこなたの我がままを聞いてやることが出来なかった。 
炊事や洗濯や掃除、そして空いた時間はこなたの相手をするだけではなく、俺の仕事も進めなくてはならなかった。 

だからきっとあいつは、いろんな事を我慢するようになったんだと思う。 
自分の思いをアピールすることを、あきらめてしまったのか。 
だとしたら、これほど悲しい事はない。 

でもな、最近はよく笑うんだ。 
どうやら高校では友達に恵まれているらしい。 
全く、これで少しは安心できたよ。 

後は……。 
泣くことを思い出して欲しい。 

それとも俺の心配しすぎなのか? 
どこか俺の知らないところで、こっそり泣いているのかも知れない。 

「こなたは今、幸せだと感じていると思うか?なあ……、かなた……。」 

その時、気配を感じた。 
その気配に懐かしさを感じ、浴室中をを見渡す。 

すると部屋の天井のすみに浮かぶぼんやりとした白い影が、まるで微笑んでいるかの様に俺を見下ろしていた。
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