肉を貫いて内臓まで達した衝撃は、不親切にもそのまま通過してくれずに体内で爆発する 前のめりに崩れかけた少女の顎を容赦なく蹴り上げる。 肋骨を踏み砕き、拳の腹で即頭部を打ち据え、そのまま壁面へ叩きつける。 明らかに意識を手放している相手に、しかし追い討ちの手は全く緩まない 脳髄を叩き潰そうと一歩を進め・・・・とっさに後方へ勢いよく転がる 手を当てたわき腹には灼熱、全身には悪寒。予期せぬ負傷に杏子は舌打ちをもらす いつもどおりの狩りの筈だった。使い魔を人気のある場所に誘導し、たっぷりと腹を満たしてもらう いつもどおりの手順であった、餌たちの中の1人が魔法少女であった事を除けば・・・。 まだ幼い少女の骸にすがりついて泣き叫んでいた、その姉らしき餌が、赫怒の視線で杏子を突き刺す 身の丈を超えるような長大な槍を構えて一直線に、衝撃波を撒き散らしながら突進してくる 少女の槍が杏子の腹部を不気味な音を立てて貫通する その勢いのままビルに激突し、夜の町並みに人口の地震を響かせる 意味のない勝利に咽び泣く少女に、紫色の装束を血で染め上げた杏子が嘲笑う 「つまんないのよね、あんたみたいなの。何もかも捨てる覚悟もないくせに、魔法少女になんかなっちゃてさ」 杏子の右腕に何かが生まれる。長大な槍。それは敵である少女の武器。 「見せてあげるよ。こんな私にふさわしい、浅ましい力だよ。他人の上前をはねる事しか出来ない ――――――――私の得意技だ」 異変を感じて飛びのこうとした少女の胸を、槍の穂先が貫いた。 額を大槌が叩き潰し、鉤爪が腹を抉りぬき、円月輪が脇の下から手首までを裂き割り、大太刀がその体を真っ二つに切り裂いた 人の形をしたボロ屑と化した少女の体から、ソウルジェムをはじき出す。口で咥えたそれを舌で弄び、光に分解して呑み込んだ。 満足げに口周りを舌で舐め取るその可愛らしい笑顔が、ふと不満げにひそめられた 育ち盛りの少女には、こんな夜食では物足りなかったらしい。 「そういえばあのマシュマロのやつ、マミの変わりに来てほしいって言ってたわよね」 行ってみる価値はあるかもしれない。退屈しのぎにはちょうどいいし、何より「美味しそうな物」がたくさんありそうだ 可愛らしい少女の横顔が、不気味な月光に照らされて、捕食者の笑みを形作った・・・・・。