埋め魔女ウメ子の大冒険
ウメ子は魔法少女である。
使命は特に無い。
使命は特に無い。
「さぁー、やっと私の出番が来たわね!」
まん丸メガネを光らせ、ウメ子ははりきっていた。
使命は無いが、出番が来たからには魔法を使いたい。
使命は無いが、出番が来たからには魔法を使いたい。
「やっぱここは困ってる人を探すべきよね!」
人助けこそ、魔法少女の王道だ。
魔法少女は困った人を助け、困った人は展開に困った作者を助けてくれる。
魔法少女は困った人を助け、困った人は展開に困った作者を助けてくれる。
「さぁさぁ、困ってる迷える子豚ちゃん達はどこかしらー?」
舌なめずりをしながら油断なく周囲に目を光らせるウメ子。
子供が泣き出したが、知ったことではない。
子供が泣き出したが、知ったことではない。
「いや、泣いてる子供が居たら気にしろよ!」
やってきたのは子羊のメウたんだ。
愛らしい外見にも関わらず、言葉遣いが汚い。
根は悪い子では無いのだが……ウメ子の使い魔だということが一番の汚点だろうか。
愛らしい外見にも関わらず、言葉遣いが汚い。
根は悪い子では無いのだが……ウメ子の使い魔だということが一番の汚点だろうか。
「やーよ、困ってても子供はイヤ。泣いてる子供とか、よだれベチョベチョで最悪ー」
「子供に優しくない魔法少女とか教育上困るっつーの! つーか泣かせたのテメーだろ!」
「あーん? 立春も過ぎたことだし、その体毛剃って涼しくしてあげよっか?」
「子供に優しくない魔法少女とか教育上困るっつーの! つーか泣かせたのテメーだろ!」
「あーん? 立春も過ぎたことだし、その体毛剃って涼しくしてあげよっか?」
いつの間にか持っていたバリカンをぶるんぶるん言わせるウメ子。
「お、おい、あそこにサイフを忘れて困っているオッサンが居るぜ!?」
あわてて話を剃らすメウたん。
その言葉通り、うっかり無銭飲食してしまったオッサンが店員に睨まれていた。
その言葉通り、うっかり無銭飲食してしまったオッサンが店員に睨まれていた。
「オッサン、いい歳して無銭飲食とか何のつもりだよ」
「す、すみません、すぐに家からサイフを取ってきますから!」
「とか言って逃げるつもりだろ? 警察に通報させてもらうからな!」
「そ、そんな……どうかご勘弁を!」
「す、すみません、すぐに家からサイフを取ってきますから!」
「とか言って逃げるつもりだろ? 警察に通報させてもらうからな!」
「そ、そんな……どうかご勘弁を!」
オッサン大ピンチ!
こんなことで前科がついてしまっては、オッサンの将来は真っ暗だ!
こんなことで前科がついてしまっては、オッサンの将来は真っ暗だ!
「出番だウメ子! 魔法であのオッサンのサイフを取り寄せるんだ!」
「ウッメー!(OKの意) さぁ行くわよ!」
「ウッメー!(OKの意) さぁ行くわよ!」
ウメ子は目を閉じると、梅の木の枝で出来た安上がりな杖を振り上げる。
さぁゆけっ! 自分の魔法を困ってる人達に見せびらかして、自己顕示欲を満足させるのだ!
さぁゆけっ! 自分の魔法を困ってる人達に見せびらかして、自己顕示欲を満足させるのだ!
「ショーチクバイショーチクバイ、ウメハサクラノゼンザジャナインダッテバヨー!!」
ウメ子が呪文を唱えると、大量のサイフが頭上からドバドバ現れる。
「えええええーーーっ!? これって全部あのオッサンのサイフーーーっ!?」
「んなわけないじゃん。……あったあった、これがあのオッサンのサイフね」
「んなわけないじゃん。……あったあった、これがあのオッサンのサイフね」
呆気に取られるメウたんを他所に、ウメ子はサイフの山からオッサンのサイフを掘り当てた。
「ほら、オッサン! これアンタのサイフでしょ!」
「あっ!? ほ、本当だ、キミがわざわざ届けてくれたのかい!?」
「あっ!? ほ、本当だ、キミがわざわざ届けてくれたのかい!?」
びらびらとサイフをオッサンの前に見せびらかすウメ子。
窮地を救われた喜びで、オッサンは涙ぐんでいる。
窮地を救われた喜びで、オッサンは涙ぐんでいる。
「ありがとう、ありがとう……キミのことは忘れないよ!」
「うんうん、それもいいけど肝心のアレも忘れないでね」
「えっ、アレって?」
「んもう、私の口から言わせる気なのぉ?」
「うんうん、それもいいけど肝心のアレも忘れないでね」
「えっ、アレって?」
「んもう、私の口から言わせる気なのぉ?」
ウメ子は顔を赤らめてクネクネしてみせる。
「その……オジサンには何がなんだが……」
「……ったく」
「……ったく」
ウメ子はオッサンの耳元に口を近づけると、そっと囁いた。
「謝礼よ、シャ・レ・イ♪ もちろん一割ね!」
「ええええええええええええーーーっ!?」
「ええええええええええええーーーっ!?」
念のために確認しておくが、
このサイフは拾った物ではなく、ウメ子が勝手に取り寄せたものである。
このサイフは拾った物ではなく、ウメ子が勝手に取り寄せたものである。
「なぁに、嫌なの? それなら私は別にいいんだけどー」
サイフをそのまま持って帰ろうとするウメ子。
「わ、分かった! 分かったからサイフ返してくれ!」
「ふふん、それじゃ1割……」
「ふふん、それじゃ1割……」
サイフを覗き込むウメ子だが……
「……にっ……にせんえんっ!!?」
入っていたのは野口が二人と、十円3枚だった。
「これじゃたったの200円にしかならないじゃない、このっ!」
オッサンにサイフを叩き返すウメ子。
「もうやってらんないわ、わたし帰る!」
勝手にぷりぷりと怒ったウメ子は、大股歩きでノシノシと帰っていった。
「……あー、オッサンよかったな、警察沙汰にならなくて」
「そ、そうだな、ありがとう羊クン」
「メウたんだぜ」
「そ、そうだな、ありがとう羊クン」
「メウたんだぜ」
メウたんとオッサンは互いにニヤリと笑うと、それぞれ別の道へ帰っていった。
その日、無銭飲食事件が町で多発したのは言うまでも無い