「○ドラリオン」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

○ドラリオン - (2009/08/23 (日) 09:31:58) のソース

            「一人と一頭、気ままに生きて気ままに戦い気ままに眠る」

「墓碑銘かい、そりゃあ?」

                          「わはは、それもいいなあ」

              -ある日の一人と一頭-

&ref(http://www35.atwiki.jp/mariari?cmd=upload&act=open&pageid=80&file=mariari2.jpg) 


*『其(そ)は太陽の獣』

金色(こんじき)が、眠りについていた。
吐息に巨獣の体躯は緩く上下する。ほんの一握りほどの木漏れ日の下の事、金色の正体は無論、この獣の持つ、脂の浅く、硬い、針金のような毛並みに浮かぶ、微かな光沢の波打ちである。
褐色(かちいろ)の毛並みに、濃く、そうして陽光の掃いた金色が、この、自然の埒外にある生物を、きらきらと薄い仮初めの静止に包み込んでいるのだ。

象ほどもある、巨大な量感の塊の眠りを、まして牙と爪持つ肉食獣のそれなど、森は、誰も妨げたりなど、せぬ。
ゆえの静寂が、彼を包み込んでいた。

しかも、肉食の獣が生来持つ、鷹揚が、彼からは解かれてある。
その眠りは、鞘に収められた刃の眠りではなく、砲身の焼けて鎮座する、機関銃の沈黙と停止である。
そういう、肉の身にして鋼の無機と重量を思わせる、死に、粘りつく、異様の空間を、彼は従えていた。

ドラリオン。

人に百獣を見出され、王、冠ぜられたライオンの、
それはつまるところ、畸形の一族であった。

成さねばならぬ事のあるがゆえ、トカゲの身にして、翼持ち、火を噴くようになった、竜の名を頂き、
遍く獣の万骨に似たる、竜の、その身の志を頂き、
そうして成った、獣たちの中の、畸形の一族であった。

その証左を示すかのように、首元に生やしたたてがみと、幾つもある、毛足の長い尾の、毛色だけが、甘く、自然に濁った白色をしている。
狼というよりは、犬の体躯と面構えであり、獅子というよりは、狐の毛色をした、尾と、たてがみである。

その尾の幾本かを地面に投げ出して、
地に伏す形で重ねた己の前足を枕に、軽く後ろ足を崩しながら、
最後に隠された一対の戦闘腕をたてがみの中で行儀よく折り畳み、そうして光のキマイラは眠っていた。

ぴるぴると、さえずりが青空を駆ける。
そよぎが緑海を渡り、彼の背にした一際大きな梢にも、葉ずれのざわめきを伝える。
日差しにぬくめられる事なき湿土から起こされた涼風が、森閑を、薙いだ。

何の前触れもなく、巨獣の目蓋が見開かれた。

「よう、ラキ」

風は、彼に与えられた懐かしい名を真新しく呼びかける、
彼に名を与えた、人間の到来を知らせていた。

/*/

「よお、ご主人。この間ぶり」

ラキは、予備動作なしにその四つ足で立ち上がった。迎える声には屈託がない。

そうして身を起こすと、やせぎすな主に比べて倍ほども頭が高く見えるのだが、
不思議な事に、降らせるまなざしにも、また、見下ろすような色は、なかった。

「生肉はどうだ。足りてるか?」
「おう、うまいぞ」
「なかなか来れなくて済まんな」
「きにすんな。俺は元気にやってて、ご主人も元気にやってた。だろ?」
「ああ……」

ああ、そうだな、と、その人間の男、天狐は笑った。

世界には、いつだって問題がひしめいているが、ここにこうしていられる以上、
つまりはそういう事なのだ。

この、人の手によって作り出された戦争の申し子を前にすると、
天狐はいつもシンプルな気持ちにさせられた。

死の気配を存分に引き連れているにも関わらず、態度に陰がなく、
何より迷いがない。

緑の枝葉と、風の、それらを揺らすに遮られ、一握の光をしか地に投げかけぬ、深い森の中、
濃い、褐色(かちいろ)の毛並みにも、節くれ立った茶色い樹皮や、チョコレート色に黒い湿土との、迷彩の効果の程こそあれ、
明るさを感じさせる要因は、ないはずなのに。

触れればその身の筋肉が、やさしいほどに、柔らかい。

「ブラッシングか?」

そう言うとラキはまた地に伏せた。
浴する事を知らない直毛は、ごわごわと固まっていて、相変わらず、硬い。
天狐もまた片膝をついてこれに寄り添い、ブラシを強く毛並みに通した。

支点を得るため触れた片手に、この獣の呼吸と鼓動が伝わってくれば、
ああ、身を預けてくれているのだな、と、実感も共に得られる。

巨獣の信頼は、人の信頼に似ているが、さらに比するなら、
日ごろよく手入れしてやってる兵器の手触りにも、近いところがあると思う。

無垢なのだ。

「いてて」
「うお、済まん」

毛の絡まりにブラシが掛かって、それでラキが体に力を入れた。
途端、ラキに触れていた手には、鋼のような筋肉の強張りが、一瞬だけれども、よぎっていった。
それは、ほぼ無制限の殺意の水面が、手にしていたコップの縁で、揺れたような感覚であった。

「たのむぜー」
「お、おお」

丁寧に毛の絡まりを解きながら、天狐はラキについて考える。

不思議な矛盾がラキに対する印象を束ねていた。

その身に滴る、無造作の殺意と、無垢なる態度と、
ああ、それは、ひょっとしたら同じ一つの根から来ているのかも知れない。

「これが終わったら、散歩するか」
「おう」

遍くすべてに照射する、へだてなきそれらのありように、
ふと、天狐は己たちに降り注ぐ木漏れ日の向こうを見上げる。

風が梢を揺らして光散らす。

天狐はまぶしそうに目を細めた。

/*/






L:ドラリオン = {
 t:名称 = ドラリオン(個人ACE)
 t:要点 = 栗毛,戦闘腕,巨大戦闘犬
 t:周辺環境 = 森林
 t:評価 = 全能力30
 t:特殊 = {
  *ドラリオンのACEカテゴリ = ,,,個人ACE。
  *ドラリオンの騎跨装備カテゴリ = ,,,動物兵器。
  *ドラリオンの森林・山岳防御補正 = ,,条件発動,(森林・山岳での)防御、評価+8。
  *ドラリオンの森林・山岳移動能力 = ,,,(森林・山岳での)移動時のAR1とする。
  *ドラリオンのアタックランク = ,,,AR15。
  *ドラリオンの人員輸送 = ,,,輸送可能(歩兵2名)。
  *ドラリオンの白兵距離戦闘行為補正 = 白兵距離戦闘行為,歩兵,条件発動,(白兵距離での)攻撃、評価+8。
  *ドラリオンの近距離戦闘行為補正 = 近距離戦闘行為,歩兵,条件発動,(近距離での)攻撃、評価+8。
 }
 t:→次のアイドレス = ドラリオンの群れ?(絶技),騎兵槍?(アイテム),山岳騎兵(職業),ドラリオンの騎士?(職業)
}







.