第13話 SOS団結成
「普通の人間には興味ありません! 宇宙人、未来人、超能力者は私のところへ来なさい! 以上!」
そのように支給品の拡声器で叫ぶのは、女子高生の涼宮ハルヒだった。
彼女は、殺し合いなど興味はなかった。
それよりも面白い人種を集めて、一緒に遊びたいという気持ちの方が強かった。
「……呼んだかしら?」
金髪に赤いリボンをつけた未来少女、石川 銅鑼美がハルヒに呼びかける。
彼女こそは、憎い実兄である銅鑼衛門を抹殺するために、未来からタイム魔人でやってきた”未来人”であった。
「……俺はザフト第二中隊のゴトウ。一体何だというのだ、この状況は……」
宇宙コロニーに住むザフト軍のモビルスーツパイロット、”宇宙人”のヒトシ・ゴトウもまたそこにいた。
「何をやってるんだ! 死にたいのか!?」
更に、天津市聖杯戦争のマスターのひとり、”超能力者”といって差し支えのないであろう固定の魔術師、斉木清十郎もそこにた。
彼は、ハルヒの行った演説に対し説教を始める。
「普通の女の子と、地味なお兄さんと、説教好きのおじさん……何よ、全然普通じゃない。
まあいいわ。これから、あなた達はSOS団のメンバーになってもらうわ!! 拒否したら、死刑だからっ」
可愛らしくウィンクするハルヒ。
「そうか、ならば、俺が銃刑に処してやろう」
「え――?」
無情な言葉と共に、辺りに銃声が響き渡る。
銃弾は綺麗にハルヒの心臓を撃ちぬいており、周囲に緊張が走る。
「相変わらず反吐が出そうな位に薄汚い男ね……お兄様ッッ!!」
その銃声の主を射抜くような瞳で見つめ、声を荒げたのは、銅鑼美だった。
「キ、キミ!? 大丈夫か!!」
すぐさまハルヒを抱き起す斉木だったが、既に彼女が事切れているのを悟ると、そっと彼女を横たえさせる。
「銅鑼美か……次はお前が死ぬ番だ」
ハルヒ殺害の犯人――未来戦士・石川銅鑼衛門は、拳銃ブローイングハイパワーの銃口を実の妹、銅鑼美へと向けた。
「これ以上、殺させてたまるか!!」
人殺しの銅羅絵門に対して、持ち前の正義感からか怒りをあらわにする斉木。
彼は、魔術回路を発動させると、銅鑼衛門へと跳びかかっていく。
だが、彼の動きは止まった。
「な――!?」
斉木は、自らの胸から剣の切っ先が生えているのを見て驚きの声を上げる。
そして、彼は血を吐いた。
斉木を背後から、日本刀で突き刺していたのは、ゴトウだった。
「……ナチュラルめ、俺は貴様達が我が故郷へと核を撃ち込んだ……あの血のヴァレンタインの悲劇を忘れんぞ」
ゴトウの中で、かつて、ナチュラル(普通の地球人)が自分たちコーディネーターの住む農業プラントに大量の核ミサイルを撃ち込み、滅ぼした。
その時の悪夢がよみがえる。
人々は、その悪夢の事を”血のヴァレンタイン”と呼んでいた。
彼もまた血のヴァレンタインで、家族や友人、多くの知り合いを失っており、ナチュラルへの激しい憎悪が彼の動力源であったのだ。
ゴトウは、斉木から日本刀を抜くと、その切っ先を銅鑼美へと向ける。
「次は貴様の番だ。女よ」
「……チッ、仲間割れか?
何だか面倒な展開になってきたな」
ああ、シラケたなぁ。
まるでそんな様子で呟くと、銅羅絵門は、その場を後にする。
「待ちなさい! お兄様!!」
逃げ出す銅鑼衛門を追おうとする銅鑼美だったが、行く手をゴトウに塞がれて舌打ちをした。
「おい、待て女! 次はキサマの番だと――何!?」
銅鑼美に向かい斬りかかろうとするゴトウだったが、自らの動きが封じられている事に気づき驚愕の声を上げる。
死にかけの身体で、ゴトウにしがみついていたのは、斉木だった。
「ふふふ……直触りだと、ピクリともうごけないだろう?
キミの身体をこの空間座標に固定した。もはや動く事は不可能。
どうかな? この僕の――斉木清十郎の”固定の魔術”の味は……げほっ」
「この……死にぞこないがぁ……!!」
歯噛みしながら、必死に斉木の戒めから逃れようとするゴトウ。
だが、身体中を鉄の鎖でぐるぐる巻きにされているかのように身動き一つできない事に戦慄を覚える。
「あなた!!」
斉木に声を掛ける銅羅美。
「行け!!」
だが、斉木はその一言で彼女の言葉を遮った。
「キミが兄を止めろ! 行けッ!!」
ゴトウと斉木を横切り、背を向けて走り去る銅羅美。
そんな彼女の後ろ姿を見送ると、斉木はポケットから黒い塊を取り出した。
「貴様!! そ、それは!!」
斉木が取り出したのは、手榴弾だった。
彼は、何のためらいもなく手榴弾のピンを口に咥えると、一気にソレを引き抜いた。
「や、やめろぉぉ!!!」
「キミは危険すぎる……ここで僕と一緒に死のう」
斉木が言い終わると同時に、辺りが爆炎に包まれた。
SOS団結成後、5分での崩壊であった。
最終更新:2015年01月26日 23:07