17話
「て、天道くん、あ、あの・・ありがとう!」
女子1番 愛沢 由希(あいざわ ゆき)は、男子12番 天道 衛(てんどう まもる)に礼を言った。
衛は、黙ったまま、愛沢の方に視線を向けると、荷物を背負い直す。
「あんた、こんな所を一人でフラフラして・・ちょっと危機感が足りないんじゃあないか?」
遊んだ左手をズボンのポケットに入れると、衛は、愛沢に身体を向けた。
「あの、人を探して居るの!」
「・・人・・ねぇ・・・」
「うん・・永井等くんなんだけど・・・天道くん見なかった?」
「・・・永井?」
「えっと、クラス委員の」
「・・あぁ・・・アイツか。悪いけど、見てないね」
「そう・・・」
「・・・・つーかさぁ、アンタ、俺のこと何も思わないの?」
「え?」
愛沢は、不思議そうな顔をする。
「俺もコイツみたく、アンタを殺そうとしてるかもしれないぜ?」
衛は、倒れてる男子9番 須崎 史々(すざき ふみふみ)に一度視線を向け、にやり、と笑った。
愛沢は、一瞬ドキリとした。
冷や汗を流し、少し考え込む。
「・・・うん。正直、クラスでは、怖いと思ってたけど・・・でも、私を助けてくれたし・・」
衛は、愛沢の目をじっと睨みつけるように見た。
「その言葉もボーっとしてた私に、もっと注意しろってことだと思う」
愛沢も衛の目を見つめ返した。
「・・・へぇ、意外と冷静なんだな。ちょっと驚いたよ」
「えへへ、そうかな?」
照れて笑う愛沢の頭にポンと手を乗せると、「さっきは、パニくってたのにな」と言い、ニっと笑った。
「むぅ・・・。(こやつ、結構意地悪な正確かも・・・)」
「ははは、永井だったけな、手伝ってやるよ、探すの。まあ、アンタが良ければ、だが。」
「・・え? いいの?」
「ああ、俺、別にやりたい事とか、ねーし・・・」
愛沢は、天道がクラスで孤立、というか、周りとの関わりを持とうとしなかったことを思い出した。
そして、その言葉に少し悲しいものを覚える。
「うん、一緒に行くのは、いいけど・・」
「ん?」
「私は、あいざわ ゆき! ちゃんと、名前で呼んでね」
キョトンとした衛だったが、噛み殺したように笑い、
「ククク、オーケー、オーケィ。 由希サン、よろしく頼むぜ」
そして、二人は、その場をあとにした。
(俺のこと・・・忘れてないよな?)
ぶっ倒れていた史々が誰に言うでも無く、呟いた。
最終更新:2012年01月04日 09:14