20話
「やっぱり、何処にも無いみたい」
女子12番 野村 澄子(のむら すみこ)、女子13番 浜本 りな(はまもと りな)、女子16番 美作 不二子(みまさか ふじこ)の三人が顔を向き合わせていた。
時刻は、既に夕刻で、世界がやみに染まろうとするところである。
三人は、プログラムの舞台であるこの島をぐるりと回って解決策を見出そうとしていたのだった。
「ここが島なら、どっかに船があると思ったんだけどねぇ」
一際大柄な体格のりなが行き詰ったように言う。
「うふふ、多分、陸から大分離れた海上にでも待機させてあるのでしょう。40人もの生徒と数十人の兵士の輸送ですからね」
不二子がキュッキュと拭ったメガネをかけ直す。
「でも、帰りの生徒は、一人よ? 別に船を待機させておく必要は、ないんじゃ?」
リーダー格の澄子が腕を組んで、二人と顔を見交わす。
「はあ・・・」
三人同時に、溜息をついた。
「でも、諦めたら、そこで終わりだわよ!」
りなは、バァンと二人の肩を同時に叩き、喝を入れる。
「何時もながら、りなの喝は気合が入ってるわねぇ」
「そうですよ、ちょっとは、手加減というものを学習して下さい、うふふ」
二人は、肩を擦りながらも多少元気が出たように笑い合った。
「あたしは、元気だけが取り柄なのよ! あっはっは・・・あれ?」
「りな、どうしたの?」
「いや、あそこに居るのは・・・」
不二子と澄子がりなの視線の先を見ると。
「うふふ、あれは・・・螺川くんですね」
延々と続くかのような錯覚を覚えそうな真っ赤な砂浜の向こう側に、夕日を浴びた男子19番 螺川 旋(らがわ せん)が立っていた。
最終更新:2012年01月04日 16:51