28話


「・・・海の家?」
浜辺でぽつりと軒を構えている色あせた海の家。
その前に立つのは、女子11番 二階堂 澪(にかいどう みお)だった。
夕日も既に沈み、辺りは闇が支配していた。

海の家の戸は、入ってくれと言わんばかりに開いておいた。
時折聞こえる波の音以外は、何も聞こえない。
澪は、警戒しつつも海の家の中を覗いた。
「・・・誰も居ないよ、ね」
誰に言うでもなく呟いた。

食事をとるテーブルと椅子が数組。カウンターの前に幾つかの椅子。奥の壁には季節外れの浮き輪などが掛けてあった。

フロアの奥にあった厨房をまたいで、従業員用の休憩室らしきものがあった。
休憩室は、他の部屋の床とは、一段高くなっており畳の座敷部屋になっていた。
「・・・ふう」
澪は靴を脱ぎ、畳の上に上がる。
荷物を置き、腰を下ろした。
「どうしよう・・・」
何も把握出来ぬままに島の中に放り出された。
そして、先ず目に入ったのは、血だらけの友人の死体。
澪は、パニック状態のまま島中を逃げ回り、偶然この場所に辿り着いたのだった。

"ぎゅるるるる~~"
「落ち着いたら、お腹減ったな・・・」
支給されたデイバッグを開けてみる。
「・・・銃?・・・にしては、スカスカな感じ・・・おもちゃ・・・ん?何だろ、コレ」
玩具の銃と一緒に紙切れを発見する。
品の良い和紙に筆文字でデカデカと書かれていた。
「・・・一撃必殺?・・・・くだらないわね」
澪は、つまらなさそうに玩具の銃をデイバッグの奥に突っ込むと、改めてデイバッグの中身を確認する。
他に入ってた目ぼしい物は、500mlとミネラルウォーターとカロリーメイトが1箱。
とてもじゃないが、1日も持たない。
「何か無いかな・・・」
澪は、さっきの厨房で、何か食べる物を探すことにした。
最終更新:2012年01月04日 16:56