29話
「痛たたた・・・・」
先ほど天道に殴られた頬を押さえながら、男子9番 須崎 史々(すざき ふみふみ)が暗い林道を歩く。
史々は、右手に持ったサーベルを乱暴に振り回し、わめく
「くそっ! くそっ! ムカつく! ムカつく!
天道の野郎・・・許さねぇ・・・・ぶっ殺してやる!」
ぶつぶつと天道への恨み言を呟きながら、歩みを進める。
"ガサッ"
何かが擦れる音がした。
史々は、ビクッと肩を震わせると、音のした方に目を向ける。
「・・・(あん?・・・だ、誰か居んのか?!」
心の中でそう呟くと、史々は静かに道から反れ、音のした方へ進んだ。
草は、史々の胸元辺りまで生い茂っていたものの、しんなりと柔らかなものであり、進行に邪魔なものではなかった。
史々は、音を立てないように手で草を掻き分けながら、音の原因を探す。
ふと、遠目に草むら中に少し開けた場所があった。
そこに、人影を見つける。
人影は、背を向けしゃがんでいた。
「・・・・(だ、誰だ!?・・・何やってんだァ?」
目を細めてみるも、少し遠くて、辺りは薄暗い、しかも背中越しでは、判別は困難である。
「・・・・(暗くて、よく見えねぇ」
人を見つけて、興奮したのだろう。
史々は、先程の愛沢襲撃の失敗も気にせず、ぐいぐいと進んでいった。
最終更新:2012年01月04日 16:56