39話


「螺川・・・だっけか? おまえ何やってんの?」
目の眩んだ螺川の背後から声を掛けたのは男子12番 天道 衛(てんどう まもる)であった。
その後ろに隠れるように女子1番 愛沢 由希(あいざわ ゆき)がいた。
「ッ・・・下がってな、由希サンよぉ」
天道はボクシングスタイルの構えを取って、抜刀している螺川を警戒する。
「おまえは・・・不良の・・・」
何とか視界の回復した螺川が天道を視界に入れる。
成績優秀、スポーツ万能、家柄もよい天道にとって、いつもサボってばかりの天道はクズのような存在であった。
名前も思い浮かばなかったが、だが、その存在だけは覚えていた。
「天道 衛です。よろしく・・・って名乗るのがプログラムの中ってのがすさんだ世の中って俺ぁ思うよ」
「そうだな。俺は驚いてるよ。天道がこんなにお喋りなヤツだって分かって・・・ボクシングか?」
「御名答。俺の親父がボクシング狂でね。ガキの頃からやってた」
「そうか・・・奇遇だな。俺もガキの頃からやってて誰にも負けないってものがひとつあってな」
抜いた刀を再び鞘に戻し、居合の構えを取る螺川。
『ザッ』
天道が足元の砂を蹴り上げる。
「ぐお!?」
砂のつぶてが螺川に直撃する。
その隙をついて、天道は素早く距離をつめる。
「卑怯者がぁ・・・させるか!!」
刹那の抜刀。
その瞬間、螺川の間合い一歩手前で天道はステップの軌道を反らす。
『チッ』
一閃が天道の眉間をかすめた。
真っ二つになる天道のサングラスとバンダナ。
天道の額の傷が露わになる。
「あめぇんだよ!!」
天道の右フックが螺川の頬に打ちこまれた。
そして、追撃の左アッパーが螺川のアゴを貫いた。
突き抜けるような衝撃が螺川を襲い、浮き上がる。
そのまま螺川は背中から海の家の土間に叩きつけられたのであった。
最終更新:2012年01月04日 17:00