姉さん女房

名古屋大学 文芸サークル 作品データベース内検索 / 「姉さん女房」で検索した結果

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  • 姉さん女房
    2004年12月20日(月) 21時11分-穂永秋琴    昔の人は信心深かった。これはまあ、皆さんのお爺様やお婆様のことをご覧いただければ分かると思います。今は科学の時代です。しかしながら、科学の時代になったのはほんの一昔前からにすぎないわけでして、それより前は神様仏様の時代だったわけですな。この神様仏様ゆうのはなんとも気まぐれな方々でして、ときには人助けなどもなさる。ところがあの方々の考えることと、人が考えることとは食い違うこともありまして、それで色んな面白い話も伝わっております。まァ、懲らしめかいたずらか、ほんとの勘違いかは我々凡人には分からんのですがね。  私がこれからお話しようと思うのはある一組の、歳の離れた夫婦の身に起きた出来事です。この夫婦、いつの時代の人だかは存じません。しかし昔の人たちには違いない。したがって信心深かったはずです。たといどんなに放蕩な男、奇特な女でありまし...
  • 初代アップ板作品1.
    ...時11分 穂永秋琴 姉さん女房 8 2004年12月21日(火)12時15分 K よくわからないもの 9 2004年12月21日(火)12時19分 K 何の音? 10 2004年12月21日(火)23時46分 穂永秋琴 眼から産まれた狂想詩 11 2004年12月22日(水)12時50分 無学 夢痕 12 2004年12月23日(木)16時10分 穂永秋琴 眼から産まれた狂想詩(2) 13 2004年12月25日(土)00時32分 ため 寒い雪の日 14 2004年12月25日(土)11時45分 無学 ランナウト 15 2004年12月27日(月)00時50分 不破頼堂 黒電話 16 2004年12月27日(月)15時56分 木塚百川 アカネ 17 2004年12月28日(火)23時54分 穂永秋琴 眼から産まれた狂想詩(3) 18 2004年12月31日(金)23時40分 K 爆発...
  • 堀君のお姉さんのこと
    2007年08月27日(月) 13時19分-K   お前の姉さん、この前、夜の繁華街でポン引きしてたぜ。    お前の姉さん。この前、えもいわれなかったぜ。    お前の姉さん、この前、藤野の姉さんだったぜ。    お前の姉さん、この前、お魚くわえたどら猫追っかけて、はだしで駆けてったぜ。    お前の姉さん、この前、人間やめてたぜ。    お前の姉さん、この前、塞翁が馬だったぜ。    お前の姉さん、この前、壷の中の飴玉とろうとして、握った手が支えて壷から手が抜けなくて困ってたぜ。    お前の姉さん、この前、捨てられた子犬のような目をしていたぜ。    お前の姉さん、この前、疾風のように現れて、疾風のように去っていったぜ。    お前の姉さん、この前、お前の母ちゃんでべそだったぜ。    お前の姉さん、この前、生きてたぜ。    お前の姉さん、この前、雨が降ってたぜ。    お前の姉さ...
  • モータル
    2011年10月15日(土)12時28分 - 御伽アリス      【目覚めと救いの章】    僕はそこにあったナイフを手に取った。ナイフは気が付いたらそこにあった。元々僕が持っていたのかもしれないし、誰かが落として行った物なのかもしれないし、たった今、急にどこかから出現したのかもしれない。でもナイフは当たり前のようにそこに存在していた。ナイフには誰かの血液が付いている、などということはなかった、おそらく。どうしてそんなことを思ったのか、僕はそのナイフの曇りのないきらめきが嬉しかった。そしてナイフの感触は僕にそれが現実の物であるということを伝えていた。これは夢ではない。僕は眠ってはいないのだ。    いつの間にか、僕はどこか別の場所にいた。辺りは明るく、静かだった。みんな眠っているのだ。ナイフを握る僕の手は震えていた。僕の中に恐怖があった。死ぬのは怖い。僕は震える自分の手を見てフウ、と息...
  • I love you. を訳しなさい(るり)
    2012年03月07日 (水) 09時29分-るり  問い:“I love you.”を訳しなさい。  制服は黒の長ズボンと、細いストライプの入った白色のシャツ。そこに黒のサロンを巻いて、新しい名札をつけたら、私も傍目には一人前のスタッフに見えた。黒く染め直した髪をアップにして、新品のアプリコットオレンジのチークをはたいたら、もうカンペキ。 「おはようございます!」  先にキッチンやパントリーに入っていた他のスタッフに挨拶をする。ここで、今日も私の新しい生活が始まろうとしていた。  早川店長がいつものスーツではなく、紺のジーパンにペールグレーのカーディガンという出で立ちで現れたのは、開店より三十分ほど前のことだった。 「あれっ店長、今日はお休みじゃなかったですか?」 「ん? あぁ、ちょっとトイレ借りに来た」  そうとぼけつつ、店長はさっそく電話の対応や書類の整理を始める。私が「仕事熱心な...
  • キノコ勇者外伝 魔王ミセナ・クロカータのサガ
    2007年03月11日(日) 23時37分-穂永秋琴  ***************************************************** 大好評連載休止中のリレー小説「キノコ勇者」、その第二部の外篇であります。まだ第一部を読んでない人はこのアップ板をさかのぼって読んでね。 ――多くの者に傷を残した王都転覆から三ヵ月後……。 国王オニドによって統一されていた人間の土地は、マッタンゴー、ティロピラス、メラノスポルムの三つの勢力に分かれてあい争っていた。 勇者シャンピニオンは、全てを一人で解決するため、聖魔剣の力を求めて各地の神殿を巡り歩き、「もう一人の勇者」プルアロータスは、都市ムーランで秘書官フラヴィダム、王女スキュアローサと再会を果たし、アルボア・ティロピラスのもとに投じるべく、北へ向かっていた。 そのころミセナは……それはこれから語られる外篇のうちに記されるこ...
  • 吸血鬼と銀の弾丸の村
    2011年03月16日 (水) 17時38分 - ikakas.rights    空腹で目が覚めた。夜明け前の、まだ暗い森の中。  頬に柔らかな土の温もりを感じる。昨日は確か……歩き疲れて、森の茂みの奥で寝たんだっけ。  眠る、か。  大分慣れてきたけど、やっぱり目が覚めたすぐ後は変な感じがする。頭がはっきり働かない、この感じ。  論理村を出るまで、夜とか、眠るとか、そういうことは全然知らなかったから、初めはどうして夜になると動けなくなるのかすごく不思議だったけど。まぁ、こういうものなのかな、って最近は思う。  起き上がり、とりあえず空腹を満たそうと近くの雑草を食べた。あんまりおいしくない。 「拓堵?」  私が名前を呼ぶと、 「あぁ」  茂みの向こうから拓堵がゆらりと顔を出す。  真っ黒なジャケットには袖が無く、肩が出ていて寒そうだ。そのくせきっちりと前を閉じた襟はマフラーのように高くて...
  • のりこごっこ
    2006年12月13日(水) 23時32分-川口翔輔   英語の授業中、僕は居眠りをして夢を見ていた。  その夢の中に、ずかずかと無遠慮に古川が入ってきた。古川は僕と同じクラスで英語の授業を受けている。その古川に僕は言ってやった。  「おい、入って来るときには『お邪魔します』くらい言えよ。礼儀を知らんのか」  古川はそう言われても面白そうに笑っている。僕だって本気でそう言ったわけではない。本当はうれしい。ただ、初めはその感情を押し隠して、あくまでドライにこう言うのが僕らの挨拶なのだ。  「おうおう、そう言うなよ鈴木、まあいいじゃん。だっておれもこの英語の授業つまんなくってさあ、つい来ちゃった」  そう言って古川は僕の隣に腰掛けた。僕らは二人して放り出してきた英語の授業の批判を始めた。  やがて古川がふらふらと立ち上がった。  「おれもう起きるわ」  古川は夢から出て行った。僕は「おう」と言...
  • 初代アップ板作品10.
    (ページ内通し番号・投稿日時・作者名・タイトル) 1 2007年04月04日(水)15時07分 渋沢庚 春 2 2007年04月05日(木)12時46分 K 死神との対話 3 2007年04月10日(火)16時23分 K あなたも素敵に変身できる? 4 2007年04月13日(金)16時20分 K 見つめ返してくる深淵 5 2007年04月16日(月)19時34分 鴉羽黒 フィクションt(パンとキャラメルと缶コーヒー) 6 2007年04月20日(金)00時19分 鴉羽黒 フィクションu(しげみネコの話) 7 2007年04月20日(金)15時04分 K 不在 8 2007年05月01日(火)17時50分 K 家庭の危機 9 2007年05月17日(木)17時17分 魔法司法 人々を導く光の神 10 2007年05月21日(月)01時31分 穂永秋琴 06年度卒業生置き土産! 後...
  • シンデレラ
    2008年01月09日(水) 17時35分-K  むかしむかし、とおいとおい国のある城下町に、シンデレラという、それはそれは不幸な乙女がいました。どれくらい不幸かといいますと、あだ名が本名になってしまうくらいなのでした。  前はシンデレラにはやさしいお父さんとお母さんがいたのですが、お父さんは山へ芝刈りに、お母さんは川へ洗濯に行ってしまいました。仕方がないので再婚して、新しいお父さんとお母さんがきましたが、なんということでしょう、実はそのお父さんとお母さんは本当のお父さんとお母さんではなかったのです。つまりにせもののお父さんとお母さんなのです。二人はとても意地悪く、すべての仕事をシンデレラにまかせて、自分たちは夜ごと、あやしく淫猥な儀式に耽っているだけでした。また連れ子のお姉さんたちも、夏と冬のイベントに間に合うようにシンデレラをこき使いBLマンガを描かせておきながら、自分たちは寝転がっ...
  • 追憶(お題『陽射し』『実際』)(苗之季雨)
    2012年03月10日 (土) 22時35分-苗之季雨  晴れた日は外に飛び出して、思いっきり駆け回りたくなる。九歳の幼い少年にとってはごく当然であるはずのそんな欲求も、周囲の者に言わせれば必ずしも歓迎されるものではないらしい。最近になって、ようやくそのことに気づき始めた。 「よい、しょっと!」  貞明(さだあきら)は高欄によじ登ると、そのまま庭先に飛び降りた。素直に階を使わないのは、人目を憚るためというよりは単にまだるっこしいからだ。それに、なんと言ってもこちらの方が断然わくわくする。  東宮様は、と遠くで女房の声が上がった。もういなくなったのがバレたらしい。貞明は顔をしかめ、急いで植え込みの陰に隠れる。見つかったら最後、またしても邸の中に連れ込まれてしまうから。  あなたは東宮――皇太子なのですから、下賤の者のような振る舞いをなさっては困ります。室内で大人しくしていて下さいませ。...
  • Kの海外アニメ研究 略して KKK
    2008年09月09日(火) 02時46分-K  最近見た海外アニメの中で、ダントツに印象に残ったのが、『ハンガリアン・フォーク・テイルズ』 (原題は『Magyar nepmesek』。ハンガリー人は自分たちのことをマジャルと呼ぶ)、ハンガリーの昔話をアニメ化したらしいが、要は『まんが日本昔ばなし』のハンガリー版。1978年から続いていて、何でも百話近くあるらしいが、今回見ることができたのはその中の6th seasonの13話。前評判も何もなく、同じ東欧でもチェコやロシアと違って、ハンガリーはアニメの伝統が特にないから(チェコにはマリオネットの伝統を受け継ぐ人形アニメの歴史が、ロシアには共産革命直後からのプロパガンダアニメの歴史があり、度肝を抜く作品がごろごろ転がっている)特に期待もせずに見たのが良かったのかも知れない。「見て知りそ、知りてな見そ」である。実際技術的にはたいしたこともなく、...
  • フィクションu(しげみネコの話)
    2007年04月20日(金) 00時19分-鴉羽黒    * 「ネコの声がするのよね、最近」  昼時、食堂。自分の昼食を食べ終えて一呼吸の後、口を開いた紫野川の台詞はそんなものだった。 「…?」  だからほうけたような顔をした城崎の反応はもっともだろうし、実際隣にいた弓子も同じような反応だった。  別に返答も求められていないだろうと吟は気にせずカツ丼に向かったが、城崎は律儀に言葉を返すつもりのようだった。  頬張っていたコロッケを飲み込んでから、改めて城崎が疑問を投げる。 「ネコって、喋るっけ?」  しかしその疑問は吟の抱いていたものとは違っていたらしい。 「声って言っても、言葉じゃなくて鳴き声でしょ」  的外れな疑問を口にした城崎に、弓子が冷静にツッコミを入れる。 「でも、愛猫家には自分のネコの言ってることが分かる人もいるって言うし」 「すてきな話よね」 「単に親バカならぬペットバカなだ...
  • 駅にいるちっさいおっさん
    2011年11月02日(水)02時03分 - K    がぶ飲みフルーツミルクが微妙な量残っていたので電車乗る前に一気飲み、ちょうど目の前にあったゴミ箱へシュート、俺は切符販売機に向かう。はずが、「いえ!」という声に思わず振り返る。なんだ? どこから聞こえた? 後ろには誰もいない。声はどうも、先ほど空のペットボトルを投げ入れた穴から聞こえたような気がする。よく見ると、パッと見にはゴミ箱にしか見えないそれは壁の腰くらいの高さのところにあるただの丸い穴で、どこにもゴミ箱とは書いておらず、普通は「ペットボトル」とか「カン」とか分別が書いてあるものだと思うのだが、そういう記述もなかった。そしてその穴の中からうんしょうんしょと出てきたのはちっさいおっさんだった。髭面の。  「おい、お前! 痛いじゃないか!」  そのおっさんが微妙に甲高い声でそう俺に叱りつける。いつでも殺せると思った相手にはいつでも...
  • うざい人たち
    2012年10月19日(金) 18 08-鈴生れい 注:「退屈をこじらせる」の続きです。一応こちらだけでも読めるとは思いますが、「退屈をこじらせる」を先に読まれることを推奨いたします。 篠山一族は出来不出来の差が激しい。 わたしの親父、篠山鉄朗は学校での勉強がからきしだったらしい。反対に体は丈夫であり、現在は祖父とともに畑を耕す毎日だ。 その弟、篠山次郎は病気がちだったが成績優秀で、都会に出て大手の電気製品メーカーに勤めている。現在課長だそうだ。 わたしの兄1号、篠山岳秋は運動音痴で製薬会社に勤めるエリート。兄2号篠山海人は高校を卒業してから畑仕事を仕込まれ中。 弟篠山大地は華奢でひ弱だが、勉学では全国模試ランカーだった。 そしてわたし、篠山空はというと・・・・・・。 「こ、これはひどい」 来て早速罵倒。これは殴っても文句は言われまい。 とは思うものの、流石に8・・・・・・9つも年下の女...
  • 再UP! 「走馬灯」
    2006年11月21日(火)22時27分-Κ    ある時ある所にある男がいました。  その男は、今まさに自殺しようとしているところです。どれくらいの「今まさに」かと申しますと、マンションの九階から飛び降りて現在だいたい二階ほど落ちたところ。つまり下から数えると七階付近。まあ、そんなところの「今まさに」なんです。  この男、年は二十歳。未来ある若者です、と申しても何の問題もございません。その彼が、夢と希望に満ちた青春を謳歌しているはずの彼が、どうしてよりにもよって自殺なんかをしたのでしょう。いったいそれはなぜでしょうか。  まあ、それはひとまずおいといて。  人は死ぬときに、彼が生きてきた人生を、まるで走馬灯のように見るといいます。彼もその短い人生を、懐かしさや悔しさを感じながら、今まさに眺めているのかもしれません。  今回は、少し失礼して、それを覗かせてもらうという趣向でございます...
  • 走馬灯
    2006年11月21日(火)22時36分-Κ    ある時ある所にある男がいました。  その男は、今まさに自殺しようとしているところです。どれくらいの「今まさに」かと申しますと、マンションの九階から飛び降りて現在だいたい二階ほど落ちたところ。つまり下から数えると七階付近。まあ、そんなところの「今まさに」なんです。  この男、年は二十歳。未来ある若者です、と申しても何の問題もございません。その彼が、夢と希望に満ちた青春を謳歌しているはずの彼が、どうしてよりにもよって自殺なんかをしたのでしょう。いったいそれはなぜでしょうか。  まあ、それはひとまずおいといて。  人は死ぬときに、彼が生きてきた人生を、まるで走馬灯のように見るといいます。彼もその短い人生を、懐かしさや悔しさを感じながら、今まさに眺めているのかもしれません。 今回は、少し失礼して、それを覗かせてもらうという趣向でございます。...
  • 萌える日々
    2012年10月24日(水) 20 51-鈴生れい 注:「退屈をこじらせる」「うざい人たち」の続きです。先にそちらをお読みください。 世間的には夏休みが明けてから最初の週末。 買い物に出ていた私が部屋に帰ると、学校が始まって以来顔を出していなかった萌が神妙な顔で部屋の真ん中にぽつんと座っていた。 暑かったのかクーラーがついている。わたしはクーラーをあまり使わないが、萌が来ると当然のようにつける。今度から電気代を請求しようか。クーラー代結構バカにならないのだから。 とはいえ、小5のガキがあまりに似つかわしくない顔で自分の部屋にいるというのは気分のいいものじゃない。勝手に入られることについてはもう慣れたが。 「おい、何してんだ」 買ったものを詰めた手提げ袋を机の上に置きながら、わたしはゆっくりとその場に腰かけた。9月に入ったとはいえまだ上旬、汗が不快に垂れてくる。 萌は黙ったままこちらを見...
  • ヘッケル博士! わたくしがそのありがたい証明の
    2008年02月14日(木) 23時02分-K  落ち着かない気持ちで、病院の廊下の硬いソファに腰かけ、あまりいい思い出のない臭いに鼻腔の奥をくすぐられていると、閉ざされたドアの向こう側から妻の叫び声が聞こえた。それは期待していたものとは違った。心の表面をざわざわとなでる毛羽立った沈黙を破って聞こえてくるはずだったのは、わたしたちの最初の赤ん坊の泣き声だったからだ。わたしは分娩室の戸を拳でどんどん叩いて、なにがどうした入れろ入れろと喚いていた。するとドアが勢いよくこちら側に開いたので、吹き飛ばされ廊下の壁に叩きつけられた。そしてその目の前を、気絶した妻がキャスターつきのベッドに乗せられて、どこかに運ばれて行ったのだった。呆然としてそれを見送っていると、「大丈夫ですか?」という声がして、手がさしのばされた。それは「確かにわたしは次亜塩素酸ナトリウムで歯を磨いていますがそれが何か?」というよう...
  • 供養
    2014月01月11日(土) 12 50-    斉藤羊 窓際の席は現実逃避に向いている。 古典の授業中、そう、ちょうど紫の上が出てくるあたり、先生には悪いけれど何も考えずに頬杖ついて外を見上げた。ああ今日も空は青い。 佳苗は普通の女子高生で、毎日ブレザーのちょっとかわいい制服を着て毎日を過ごす。そのほとんどは学校か家で消費されて擦り減っていく。擦り減ることでで生きていることを実感する。それに疑問を持ったことが無いとは言わないけれど、佳苗にとって現状に不満はなかった。 冬の空気は冷たくて透明で、遠くに立つビルすらぼやけることなく見える。これならすべてが見えるような気がする。すべてを知れるような、そんな予兆。佳苗は何かが飛び込むのを待つかのように口を開けて、そう思った。 佳苗の手からするりとシャーペンが零れ落ちた。 シャーペンの落ちた小さな音は、古典教師の朗読の声にかき消された。かき消された...
  • Cacao
    2012年02月14日(火)10時09分 - すばる       Bitter Valentine  私はその日、恋をしてしまいました。二組と合同で行った家庭科の調理実習、そこでその人と出会ってしまったのです。凛とした、整った顔立ち、くっきりとしたひとえに、透き通るような黒の瞳、真ん中わけの髪は目にかからない程度に長く、それに隠れた眉はやや細い。それ全部が、直球ど真ん中ストライク。完全に、一目惚れでした。 その人は器用にジャガイモの皮をむいています。私はそれを見ていて、危うく自分の指を切ってしまうところでした。慌てて自分の仕事に集中しようとするのですが、どうしてもその人の方に意識が飛んでいくのです。気が付けば、私だけ作業が大幅に遅れていて、グループのみんなに大変な迷惑をかけてしまいました。でもそんなことでしょげている場合ではないのです。何とかして、彼とお近づきになる方法を考えなくてはなので...
  • 現代子不語.
    2007年05月31日(木) 13時39分-穂永秋琴   君子は怪力乱神を語らない。(『論語』述而)  私は平素趣味が少なく、酒や歌など、大勢で楽しむことを良しとするものは、一つとしてすることができない。文章のほかに娯楽はないのだ。そこで心を遊ばせ耳を驚かせる事件を広く集め、妄言虚聞も記録して保存した。(袁牧『子不語』序)     1 路上画虎  各務原の仲原健作は、美術学校の学生である。虎の絵を描くことを好み、常々友人に「俺が描いた虎はみな画布から飛び出て人を食うのだ」と言っていた。ある日、仲間たちとの飲み会の帰りに、泥酔して高速道路の柱に虎の絵を描いた。虎は飛び出てこなかった。仲間たちがからかうと、彼は言った。 「これは虎、俺は大トラ。こいつは俺を恐れて出てこないのだ」  仲間たちは笑った。  のちに岡崎の会社員宮村孝義がここを通った。彼は虎の絵を見てつぶやいた。 「俺もこの虎のよう...
  • 山脈さんへの個人的用件
    2006年11月09日(木)00時13分-Κ    勝手に使って、ごめんね。  あと、集会のとき話した、「オタクは差別されているか?」という問題だけど、やはり「差別」という言葉が引っ掛かる。基本的に「差別」ってのは「自分では選べない境遇(肌の色、国籍、性別、セクシャリティ、ある種の宗教)が原因で不当な扱いを受けることだと思う(本当に自分で選んでいないかどうかは微妙なところがあるけど、大筋で認めてよい仮定だと思う)。あと、被差別者が発言力等の面で、社会的弱者であることも必要だと思う。となると、いわゆる「オタク」はどちらにおいても、当てはまらないようにぼくには思える。「オタク」は自分で選んでなるものと考えているし、オタクの発言力がないというのも、これだけ市場を作り上げておいて何を言う、ってかんじだよ。 ぼくが特に気に入らないと思っているのは「差別」という言葉を選択したときに、自然に発生する「...
  • tEEnAgEr
    2011年12月02日(金)03時03分 - 御伽アリス      ◆  空は青く澄みきっている。桜の蕾はまだ開かないけど、春の日差しを受けて少しずつ膨らんできている。風が吹く。千切った綿みたいな雲が流れていく。空気をいっぱいに吸い込むと、18歳の春の香りがした。みんな、流れて、流されて、進んでいく。俺たちは一瞬たりとも立ち止まることなんて許されず、常にどこかへと運ばれて行っているのだろう。  見慣れていたはずの校舎を見上げる。そこには卒業する今まで一度も見たことがなかった校舎の光景があった。嫌いだと思っていた学校。それでもどこか好きだった学校。あの玄関、あの教室、あの廊下、あの体育館、あのグラウンド。そこに俺がいたということを思い出せる。感じることができる。自然に暖かな微笑みがこぼれてくる。俺は校舎に背を向けた。まだ分からないけど、またここに戻ってくることがあるような気がする。だから、...
  • ブランコ
    2011年03月30日 (水) 23時48分 - 渋江照彦   ワタシの好きな人はナオキ君です。  ナオキ君はとっても優しい子で、何時でもワタシの事を気遣ってくれます。  「大丈夫?」  ナオキ君にそう言われる度に、私はとっても嬉しくなってしまいます。  ナオキ君は勉強も出来ます。  学校のテストは何時でも満点を取っています。  ナオキ君は頭が良いのです。  ナオキ君はスポーツも出来ます。  サッカーや野球、水泳だって出来ます。  走ったり泳いだりしている時のナオキ君はとっても生き生きとしていて、他の誰よりも格好良いです。  でも、やっぱり、一番格好良いと思うのは、ブランコを立ち漕ぎしている時のナオキ君です。  他の人がやっても格好良く無いのに、ナオキ君が立ち漕ぎしているととても格好良いのです。  ブランコにのっているナオキ君の姿を見ていると、ワタシは胸がドキドキしてしまいます。  だから...
  • クリケットの将軍様
    2009年02月14日(土)02時25分-カンパニール  純白のユニフォームが芝生のグラウンドに散っていく。フィールダーが守備に就き終わると、ゆっくりとした足取りで入場する2人のバッツマン。観客は万雷の拍手で彼らを迎え入れ、彼らがピッチ上、ウィケットの前に立ったのを合図に、静寂が辺りを支配し始める。 『50オーヴァー制300球限定1イニングマッチ。高句麗中学のファーストイニングの攻撃は、1番ガリー・李#1くん、2番ウィケットキーパー・李#2くん』  ウグイス嬢のアナウンスにかぶさるように鳴り響くサイレン。アンパイアが試合開始を宣言した。  球児たちの熱い熱い夏が今、始まる……。  全国中学校クリケット選手権大会2日目、2回戦第1試合(決勝)。聖明学園中等部対高句麗中学。緒戦より快進撃を続ける聖学に立ちはだかるは古豪・高句麗中。ファーストイニング、先攻・高句麗中レインボー打線の3時間半に...
  • キノコ設定集(たぶん)
    2007年03月01日(木) 00時06分-藤枝りあん  いろいろあるのよ。設定だけはね。 <属性> 木:デンドロン   雷:サードニ   火:フラム 水:クマティル   土:グレバ    風:ネブル 光:ペリュシド   闇:アトラト 月:アスタリス   虹:アークァート 鉱:クリッサ    毒:ヴェネ    菌:グリフォル  (捕捉1)下段の属性は付属属性と考えてもらえば結構です。       なので精霊神は存在せず、精霊王のみ。  (捕捉2)属性名=精霊神の名前       精霊王の名前=(適当につけてくだされ)  (捕捉3)属性もどこかから引っ張ってきたはずだけどソースの特定が出来ません。ごめん。  魔法:自身を有利にするもの   例)回復、補助(攻・守を上げる)、移動など  魔術;相手を不利にするもの   例)攻撃、補助(減力・状態異常)、封印、結界など  魔道:神の領域に踏み込む...
  • 終電の後発列車(2)
    2005年04月18日(月) 22時20分-木組    せっかくだから希沙はジャンルーカ達と話をしようと思ったのだが、テューンは「じゃーあー、ボークたちーぃは、部屋をー見―てくーるねーぇ」と、例によって間延びした声を残してコンパートメントを去っていった。列車が動きだし、席に座らざるをえなくなってしまった希沙は、仕方なく彼女らの去っていったほうを見やった。  ――その、扉を。  なんだか色々あったので忘れていたが、この列車、車両はひとつである。だからその扉の先は乗務員室のはずなのに、乗客は当たり前のように扉を出ていっている。前の扉も、後ろの扉も。実際希沙も、アイビスにつれられて、前の扉をくぐった。そうしたら、部屋どころか、教会があった。そこがアイビスたちの部屋だという。考えてみれば、これは相当不思議な事態だ。  ――あの二つの扉は、一体どこにつながっているのだろう。 (扉、かぁ…) “扉...
  • くしゃみ昔話(お題「くしゃみ」)
    2013年04月07日(日) 16 40-鈴生れい ある村に、くしゃみがうるさいおばあさんと、静かにくしゃみするおじいさんが共に暮らしておりました。 ある夜のこと、おじいさんとおばあさんの家から大きなくしゃみが聞こえてきました。それはそれは大きなくしゃみで、たまたま川の近くを通っていた青年が音に驚いて川に落ちてしまうほどでした。 その青年は翌朝水死体で見つかり、村は騒然としました。平和な村で起きた出来事であり、また青年は村の誰からも好かれていた好青年でありましたので、悲嘆にくれる者も真実を追求しようとする者もおりました。 多くの者は事故を疑いました。この平和な村で殺人を犯すものがいるはずないと、大半の村人はそう考えたのです。しかし真実を追い求める者はそれはおかしいと村長に申しました。 青年の足腰はしっかりしており、酔っぱらった形跡もなく、また平素から泳げないことを自覚し水場では気を付けてい...
  • 国のアスベスト対策の杜撰さを告発する
    2007年01月03日(水) 16時55分-Κ   むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがおったそうな。  おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に行ったそうな。  おばあさんが川で洗濯をしていると、川上のほうから、どんぶらこっこ、どんぶらこっこ、とそれはそれは大きなおなかをした妊婦が流れてきたんじゃと。そこでおばあさん、「これはこれは立派なおなかじゃ。もってかえって、じさまと一緒に食っちまおう」。  家に帰っておじいさんと一緒に、包丁でおなかを切ると、これは驚いた、おなかの中からそれはそれはかわいい、玉のような男の子が飛び出したんじゃそうな。  「この子は妊婦から生まれたので、妊婦太郎と名づけよう」  「それがよい、それがよい。お前は今日から妊婦太郎じゃ」  それからあっという暇もなく、十数年がたってしまい、妊婦太郎は立派な益荒男になったんじゃ。じゃがそんな折、妊...
  • 甘いだけの小説は書けるのか (水無原)
    2011年6月10日(金)15時53分 - 水無原    恋の妖精のお話し、知ってる?  体育館裏で告白する時、学年とクラスと出席番号、自分の名前を告げるの。  告白する日の昼休み、甘いお菓子を添えておけば大丈夫。  甘いものが好きな恋の妖精は、きっとあなたの恋を応援してくれる。  甘いものが好きです。  チョコレートパフェ、マンゴープリン、ラング・ドシャ、シュガータルト。  甘いだけのものが好きなのではありません。  チョコレートの苦味、マンゴーのクセ、バターの香り、黒糖の風味。  様々なスパイスが菓子の味に奥行きがでるのです。  甘いものが好きです。甘いお話も好きです。 「知ってる?あの話」 「妖精って、本当かな」 「ただの覗きなんじゃないの?」 「本当だって!あたし、叶えてもらったもん」  女子更衣室は噂の宝庫。言い切った委員長はとてもいい子です。長かった髪を切りボーイッシュになった...
  • 固有名詞の迷宮
    2005年01月17日(月) 16時02分-K   山田君が鈴木君に木村君と野口さんにしようといったので、山本君は安達君と沢村さんに中村のことを伝えに言った。それで西村と赤池が猪子さんを取り合ったため、長谷川が止めに入ったが、実は加世田君と林さんがデキていたので、事態は野村の手によって思わぬ方向へ。藤原の下に、安藤、後藤、伊藤、進藤、佐藤、江藤、工藤、加藤、近藤、斉藤、末藤、内藤、等からなる連合軍が形成されたが、伊東、鬼頭、砂糖(どうも実在するらしい。学習研究社が出版する月刊誌「nursing」に栄養士の砂糖さんが出てくるのだが、作ってんじゃないのか? とも思う)、果糖、液糖、オリゴ糖(ここら辺は確実にいない)、短刀、自民党、毛唐(こんな苗字があるとは毛頭思っていない)納豆、NATO、脳震盪(とうとうここまできてしまった)らによる連盟軍と、血みどろの戦闘(銭湯で先頭を切って)を繰り広げる...
  • 探偵部
    2011年08月19日(金)21時53分 - すばる    探偵部 僕がそんな奇妙なところに所属しているのは、言ってしまえば強引な勧誘に屈したからだ。しかも、なんだかんだで所属していながら僕はその活動内容がいまいち理解できていない。言ってしまえば、毎週集まってはなんか適当にだべっているだけである。大島さんに言わせると、探偵とは自らの目的として真実を探すのではなく、依頼を受けてそれを実行するものなのだそうだけど、その依頼とやらがないため何もやることがない。だったら何らかの形で依頼人を呼び込めばいいんじゃないかといったら、探偵とは常に日陰者だから、そんな表立った活動はできない、ときた。ここまで来ると、ほんといい加減にしてほしい。  でもそんな僕の認識は、ある事件をきっかけに覆ることとなった。 それは、世界のどこかで今も繰り返されているのであろう深淵に触れた、忘れもしない冬の事件。     ● ...
  • 『アグア・マラ』 Agua mala
    2005年12月03日(土) 17時03分-無学   まるで、空が壊れたみたい。 風雨は激しさを増すばかりです。 痛いほどの雨粒が、容赦なく体を叩きます。 ずぶ濡れの服も。張り付いた髪も。 もう気にならなくなるくらいに。  そんな白く霞んだ世界の中。 私はぼんやりと、川面を見下ろしていました。 川は刻一刻と荒れていきます。 猛り狂う水。怒りに震えるような。  ばらばら。 ばらばらと。 忙しない雨音が私の意識を掻き乱します。 これほどの雨が、一体どこから来るのでしょうか。 私はその答えを知っていました。 そう――。 これは、あなたの涙。 私はどれだけ許しを乞うてきた事でしょう。 ごめんなさい。 ごめんなさい。ごめんなさい。 でも、仕方がなかったのです。 ふたつの孤独。ねがいはひとつ。 唇は、選ばなければいけないから。 ふと足首に、異様な感触を感じました。 泥よりも冷ややかな感触。 私はぞっ...
  • 道の途中
    2009年09月08日(火)03時51分-K  行列は、この一面の起伏のない荒地の、地平線の向こう側から伸びてきて、その反対側の地平線の向こう側へと消えている。これは僕が生まれてからずっと変わらない、いくつかのことの一つだ。僕らはこの、今の季節には草すら疎らな荒野の真っ只中で、それ以外の方向は存在していないみたいな顔をしながら、律儀に一列に並び続けている。僕は右斜め前の地平線にある、小山を見るのが好きだ。だが、理由もなく前方以外の方向を見るのは禁じられているので、いつも眼だけを動かして、そちらを見る。  この行列は決して動かない。少なくとも僕が生まれてから、微塵も動いていないことは確かだ。中には、自分達は人間には感じられないほど僅かずつ前に進んでいるんだと主張する者もいる。周りの景色が一様で、基準点がないので、それに気付けないのだと。だが、殊僕に限れば、基準点は存在する。僕の右手には、僕...
  • 数取器
    2013年06月30日(日) 18 59-K 「いづれの御時にか、道を歩いている最中のことである。歩道脇においたパイプ椅子に、数取器を片手に座っているおっさんがいた。 ここまでは何の変哲も無い話だ。変哲好きの皆さん安心して。重要なのはここからです。 なぜ私がその男に注意を引かれたかと言うと、一見交通調査をしているかのように見えるそのおっさん、道行く人々を一心に眺めている割に、指の方は一切動いていなかったのだ。 それだけだったら、私も何も気がつかず、何にも知らずに通り過ぎていったのかも知れない。平和だ。ライプニッツの言っていた予定調和に支配された最善世界とはかくのごときものであろう。しかし、こんなことを私が語りはじめてしまっている時点で、それ以上の異常がすでに起きてしまっていることは必定。私がその男の目の前を幸か不幸か横切ろうとしたその瞬間、目敏い私の耳がカチッという音を捉えてしまったのだ。...
  • 安物のビニール傘をしっかり縛ろうと留め具を強く引っ張ったら紐がビローンと伸びて世の中にはもとに戻らない物もあるのだと思い知った
    2011年05月27日(金)20時55分 - K    雨が降り出して、彼女が  「ごめん。あたし、雨に溶けるんだ」  と寂しそうな、悲しそうな、そして何よりすまなそうな顔をして言ったとき、僕は彼女が何を言っているのか分からなくて、多分馬鹿みたいな顔をしていたと思う。あのとき僕が馬鹿な顔をしていなかったとして、例えば賢そうな顔をしていたとして、何かが良くなるわけじゃ少しもないんだけど、それでも僕はあのとき自分が馬鹿な顔をして彼女の瞳に映っていたであろうことを後悔し続けている。暗くて彼女の瞳に映った自分の顔は見えなかったけど、それで逆に想像の中の自分の間抜けな顔はますます間抜けになって、溶けていく彼女をただ茫然と眺めつづける。  三日後、彼女の葬式。空っぽの棺桶を前にして、僕はどんな顔をすればいいのか分からない。多分、これから一生、どんな顔をすれば分からないまま生き続けていくのだろう。皆が当...
  • 楽しい耳掃除
    2009年02月11日(水) 03時37分-K  耳の中がごそごそするんで耳掻きで耳を掻いていると  「痛いイタイイタイ!」  と叫び声がしたので、  「ごめんごめん、痛かった?」  と、俺は一体誰に謝っているのか? じっと手を見る。  いつまでも手を見つめ続けていてもせん無いことなので、恐る恐る耳掻きを耳に突っ込みなおすと、何者かが耳掻きの先を掴む感触が! 思わず引き出すと、一緒に引きずり出されてきたのは、なんと 小人さんであった。  「一体何をするんだよ! プンスカプンスカ」  俺はその小人さんを見て、一目で虫であると断じた。  「なんだ、虫か。いるんだよな、耳の中に飛びこむやつ。懐中電灯でおびき出せばよかった」  と電気蝿叩き(チキンなので電気を流したまま金属部分に触れると言う積年の野望はまだ果たしていない)を振りかぶると、  「おいおいおい! どう見ても虫じゃねえだろがよ。小人さ...
  • カラフル☆トーク(お題「掃除機」「色鉛筆」)
    2013年07月08日(月) 14 04-鈴生れい ※下ネタ?注意 「日紫喜さんを落としたい」 目黒ソージが話しかけてきた。その発言の意図がつかめず、僕は無言のままだ。 するとそれを肯定と受け取ったのか、ソージはそのまま続けてきた。 「いやぁ、こうなんつーかお高く留まってるじゃん? だからこう、なんつーかこうさぁ、あるじゃん」 突然何を言っているのだろうこの色狂いは。僕にそんな発言をする前にもっとやるべきことがあるだろう。まずは語彙力を高めてから出直してきて欲しいいや出直さなくていいそのまま回れ右して帰るんだ。 心中穏やかでない僕の前で、ソージの要領を得ない、得たところで大して意味もない発言は続く。 「とにかく、あの人を落としたい」 知らないよ、なんでそんなの僕に言うんだ、と叫びたかった。心底そこの窓からフライアウェイしたかった。でも僕の良識がそれを拒んだ。 無言のまま黙りこくる僕をどう思...
  • 大銭湯(黎明編)
    2005年01月12日(水) 09時45分-一角天馬    湯屋。   この国最大の保養施設。幾つもの入浴施設とそのための宿泊施設があわさった全国有数の宿泊施設。  つまりは要するにでっかいお風呂屋さん。    その廊下を一組の男女が歩いていた。  男の方は、顔はやや童顔だが目つきは鋭い、年はまだ二十歳にもなっていないのだが顔のせいで幼く見られ、表情のせいで年を取って見える。  服装は黒のロングコートの黒いズボンに黒い靴の全身黒ずくめ。  神無月 紫苑。  女の方は、柔らかい金髪に楽しそうな笑顔が似合う少女。  こちらは青年とは正反対に明るい衣服で身を包んでいる。  大和 撫子。  二人は値段次第で子供のお守りから世界戦争の阻止までこなす何でも屋のコンビ。  その世界でも関わるな、目も合わすな、解決するものもさらに悪化すると称えられている名コンビである。え、称えてない、気のせいだ。  とも...
  • 赤ずきんの裏事情
    2012年10月01日(月) 22 56-竹之内 大 そもそも、おばあさんのことなんて好きじゃなかった。いっつもむっつりと不機嫌そうにこっちをにらんでくるし。お小遣いをくれるんでなければ、いくらお母さんが言ったって行きたくもない。だってそう思わない? あなただって日曜日に森の奥にあるおばあさんの家にまでわざわざ行って、いかにも不愉快だという様子で鼻を鳴らしたり舌打ちしたりしてくるおばあさんと過ごすより、きれいに着飾って街へ出て、素敵な男の子たちと遊びたいって。私ってわがままなのかしら? ああ、でももちろんそんなのは無理なのよ。わかってる。だってお金がないんだもの。いまどき私だって好き好んでこんなダサい頭巾をかぶってるわけじゃない。お金がほしい。そう、あの指輪さえ手に入れば… あれを見つけたのは全くの偶然だった。何にもすることがないものだから、考えなしに箪笥の上に置かれていた小箱を開いて...
  • フィクションt(パンとキャラメルと缶コーヒー)
    2007年04月16日(月) 19時34分-鴉羽黒   *  古坂礼という人物について少し語る。  徒歩にして五分と離れていない近所に生まれた僕と礼は、だから当然のように小学校に入る前から友達だった。中学も当然同じで、幸か不幸か高校も同じ。この春で僕らの高校生活も二年目を迎え、つまり付き合いの長さは十年以上になる。昔のことを思い出すと大抵礼が隣にいるのもまあ、当然といえば当然のことだ。  女姉妹に囲まれているせいか、礼には思春期の男子にありがちな女子への敬遠はなかった。高校生となった現在でも仲のいい女子が多い。だからと言って男友達がいないわけではなく、自分のクラス内に限らず友達が多い。僕を除くと、クラス内では特に角嶋紳治という馬鹿と仲がいい。というか、僕とこの二人で最近はトリオのようになっている。  人物について。容貌は小柄で柔和、体力も見た目通り。決して馬鹿ではないのだがやる気と努力...
  • タップシューズに画鋲
    2009年05月06日(水)17時23分-17+1   1  タップシューズに画鋲。  わたしがスタジオをやめようと固く決心したのは、このときです。誰もいない更衣室、自分のロッカーの前でしばらくの間、わたしはじっとその金色の尖ったものを眺めていました。  子どもじみたやり口でした。におい取りのクッションの下に巧妙に隠されていたことが、事故ではないことを証明していました。昔の少女漫画のようなことが、本当にあるのだなと思いました。  正直、いつかこうなるだろうなと自覚していただけに、さして衝撃を受けることはありませんでした。兆候はそこかしこに現れていました。犯人も、おおかた予想がついています。  城ヒナミさん。  志尾アヅサさん。  真際リョウコさん。  この三人が、嫌がらせの主たるメンバーでした。  ヒナミさんもアヅサさんもリョウコさんも、阿知波先生と深い親交があった所為か、とうとう嫌がら...
  • 宿命の虜囚
    2006年06月27日(火)17時48分-魔法司法   あたしは一体なぜ囚われているのでしょう?  あたしがいるのは牢屋です。いいえ、あたしがずっと暮らしている場所は牢屋です。鉄格子により固く閉ざされた独房、あたしを見張る看守。毎日同じ穀物があてがわれ生かされています。そして独房での無為な日常が過ぎていきます。孤独に、静かに。あたしはなぜこんなところに閉じ込められているのでしょう?・・・理由は分かりません。  あたしが昔いた場所、この牢屋に来る前のこと。そこもやはり鉄格子の中でした。ただここと違うところがあるとすれば、そこにはお母さんがいました。兄弟姉妹がいました。独りではありませんでした。  幼いあたしはお母さんに尋ねました。 「どうしてあたしたちは牢屋にいるの?何か悪いことしたから牢屋に入れられたの?」  母さんは少し悲しそうな顔をして答えました。 「いいえ、あなたも私も生まれてからず...
  • へそで茶を沸かす(お題:やかん)
    2012年05月27日 (日) 14時35分-すばる  駅前で、へんてこな大道芸を見たんだ。そもそもそこは、そんなものをやって儲かるのかってこっちが不安になるくらいに田舎で、電車が一時間に一本とかいう駅なんだ。その時点で十分変なのに、やっている芸がこれまた滅茶苦茶なんだ。段ボールに、へそで茶を沸かすって書いてあって、しかも、その段ボールも、見物料を入れる缶も、これがまた汚いんだ。どこかのゴミ捨て場から拾ってきたんじゃないかって思えるようなやつで。それで、肝心の芸なんだけど、ふんどし一丁上半身裸のおっさんが、寝転がって力んでるんだよ。おなかの上には薬缶が置かれていて、おっさんは顔を真っ赤にして力を入れてるんだけど、もちろん何の変化もなくて、だけどおっさんは必死なんだ。そんなおっさんを、時々通り過ぎる人たちはみんな見て見ぬふりで、タイル張りの道端でやってたんだけど、おっさんの乗っている列のタイ...
  • 贈り物が欲しいなら
    2005年07月30日(土) 02時42分-穂永秋琴    なんの因果だか知らないが、あたしの席は教室の入り口のところになることが多い。鴻の江中学に通っていたときは確か通算五回。三期制だったから、都合九分の五ってことになる。御雨堂高校に入ってからも三回、入り口に席を貰った。高校は二期制で今は二年の後期だから、四分の三。うわ、中学のときの記録を超えちゃいそうだ。  そんなことはどうでもいいのだ。普段は。隣の春原なんか、教室入ってから歩く距離が少なくて良いなんて言ってる。うん、それには賛成だ。教科書ってやつは結構重いし、だから鞄を少しでも早く手放せるこの席は、少なくともその点じゃ窓際の席より恵まれている。  ただこの日ばかりは、どうも複雑な気分にさせられる。  御雨堂高校の廊下は土足仕様だから、靴箱って手が使えない。だから大抵の女の子は、入り口のところでそわそわしてる。あ、野沢ちゃんが乙...
  • 虎丸とトラマル
    2005年11月25日(金) 00時06分-皆既日食   彼の名前は高山虎丸。名前は「こがん」と読む。 市立滝浦中学2年、182センチの恵まれた体格をがっしりとした筋肉で覆った柔道部の新部長にして最強のエースである。 虎丸という名は、父が未熟児だった我が子に「強くたくましく育ってほしい」という切なる願いを込めてつけた名前だ。もちろん本人も気に入っている。 しかし彼をよく知る者は、ほとんどその名で呼ぶことはない。 「おーいネコさーん、メシ食おーぜー」 彼の名前は高山虎丸。名前は「こがん」と読む。 そしてあだ名を、「ネコさん」という。 「しっかしアレだなー、ネコさんの弁当はでけーよなー」 「ん」 「むしろネコさんがちっちゃい弁当を持ってたらおかしいだろ」 「ん」 「そっかーそれもそっかー」 がつがつと昼飯を大きな口にかっこむ。 食事終了。 「早っ!ネコさん早いよ!」 「そりゃあネコさんだからな...
  • キノコ勇者・40~
    2006年01月03日(火) 01時02分-月組   ――こうして、プルにとっての祭りは終わった。  結局、誰にも会えずじまいで一人寂しくフラフラと夜店を回り、気が付けば盛大に花火が打ち上げられて人々が盛り上がっていた。  世界の真ん中で独りぼっち。 「・・・よ、・・・っち」  プルは、自分が誰かに呼ばれている事に気が付いた。すると、彼の返事を待たずに今度はバシバシと背中を叩かれる。 「プ~ル~っち!!」 「何だよッ!」  怒りに任せて叫ぶプル。そしてすぐに青ざめた。  目の前にいるのは魔衆よりもある意味で恐ろしい女の子――ルスラ嬢。 「ほほぉ・・・白昼堂々寝ぼけておいて、起こされるや否や八つ当たりか」  にこにこ、と微笑むその瞳は殺意に彩られている。  しかし、それに思いっきりたじろいだ後、プルはふと疑問に思った――今、彼女は“白昼堂々”と言わなかったか? 「あ、あのさ、ル・・・シャンプ...
  • おもしろフラッシュバック倉庫(お題「倉庫」)
    2013年12月27日(金) 11 56-17+1 君ってそういうの好きだよねって言われる感じの音楽YouTubeでみて気に入ったけれど歌詞にある地名が分からない 玉川上水ってどこ 土地なの川なの ググッたところで空気は吸えやしない 生まれのアドバンテージ 指先から先まだ遠い 友だちバンドに憧れてたあのひとも、きっと、こんな気持ちだったのかななんて24日の符合 ふと、思い出すね 帰りの電車でシャッフル機能がいい仕事してくれた ありがとう、クリスマスソングがクチロロと、ももクロしかない我がiPhone タイムラインでは愉快に爆発願うひと 3人 生き生きしてる楽しそう お前たちが天国や地獄に行けると思うな タイムラインにはいない、今はいないひと 偶数 その中に知ってるひとがみんないるといいのに(あいつとあいつは除く) タワレコ寄ってCD買った。 奨学金で遊んで暮らしてる。 嫌な気分のときに新し...
  • これは便利!不幸の手紙例文集
    2006年06月14日(水)14時30分-Κ    (基本編)  この手紙は不幸の手紙です  この手紙を一週間以内に十人に出しなさい  手紙の文面は一切変えてはいけません  これを守らないと不幸になります  信じられないかもしれませんが、これを守らなかった田中健策さんという人が犬のうんこを踏みました  (基本中の基本。「手紙の文面は一切変えてはいけません」という部分と「信じられないかもしれませんが云々」の部分が矛盾しているのがお茶目である。「不幸」じゃなくて「棒」が来る場合もある)    (応用編)  この手紙は不幸の手紙です  この手紙を一週間以内に十人から受け取りなさい  手紙の文面は一切変わってはいけません  これを守れないと不幸になります  信じられないかもしれませんが、これを守れなかった田中健策さんという人が院試に落ちました  (いきなりぐっと難度があがりました。暇な友達が十人い...
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