『LOBS/Longrange Over Boost System』 ロングレンジオーバーブーストシステム、通称LOBS。別名、超長距離加速箒。 それが開発された背景には様々な事情が存在する。 先ず、最初にその装置は、メインに大型エンジンを2機。そして補助エンジンを4機、そしてさらにバランサーとして小型エンジンが2機搭載されている。 これにより、地面に対して垂直な姿勢を維持したまま、平行方向に飛ぶ事を可能とした。 形状は当初無骨なバックパックを予定していたが、人騎兵は象徴であり、デザイン性の高いモノでなくてはならない、と言う思想の元、翼をイメージした形が採用された。 しかしながら、コレにも限界があり、機械で出来た翼のようなもの、と言ったモノにしか為らなかった。 だが、それを技術者達は逆手に取った。 そう、無骨な翼で良い。機械美、機能美と言うモノを見せてやろうじゃないか。 基本バックパックから派生するは、伸縮性のあるダクトパイプ。 そして機能性を兼ねた曲がり、裾の広がった八本の箒を思わせるようなマフラー。 そうして誕生したのが、『LOBS』である。 箒、と名がついているのは、当初予定されていた完全な別パーツである、剣に由来する。 空を飛ぶ巨大な剣、その上に人騎兵を乗せる、と言うのが当初の予定であった。 その姿が箒に乗った魔女のようだから、と言う理由である。 しかし、その案は、先ず剣の上に立つ、と言う不安定さ、そして剣を飛ばすと言う技術的な欠陥により破棄された。 無論、TLOを使えば可能、とは言われているが、そのような都合の良いものは見つからなかったのである。 以下は技術者の一人のコメント。 「昨今の何でもかんでも、TLOに頼る風潮はどうか、と少し思う。 確かに、人騎兵はTLOだが、その武装、兵装全てをTLOにしなければ為らないと言うルールは無いんだし、 これまでのTLOを否定するのでは無く、我々の技術もTLOに追いつくべきだ」 だが、此処に来て、大きな問題が浮上した。 この「LOBS」そのものの問題だ。 そもそもこの「LOBS」は対レムーリア戦も視野に入れられた兵装なのだが、レムーリアでは科学兵器は動かないと言う事だった。 これには科学者達も両手を上げざるを得なかった、何せ根本的な問題である。 そんな科学者も多く現れた頃、科学者の一人が閃いた。 要するにレムーリア世界に対応させれば良いのだから、レムーリアから取り寄せたパーツを使えば如何か。 そう、「LOBS」全てのパーツをレムーリア産にする事は不可能だろう、しかし、一部分のみレムーリアから取り寄せたパーツを使えばどうだろうか。 そこからは試行錯誤の連続だった。10の失敗、100の失敗を繰り返し、何度も科学者達は挑戦を繰り返した。 そして、遂にある日、それは完成した。 それはアンタレスの技術を参考にしたものだった。 「機械生命体」 この生命体のDNAを「LOBS」のフレームに取り込む事により、レムーリアでも活動が可能になったのだ。 科学者達の執念の勝利の瞬間である。 こうして「LOBS」の実践投入が決定した。 そんな「LOBS」には幾つかの利点がある。 先ず、その機動性だ。 大型エンジンを二機搭載しているため、超長距離から接敵までの時間を極端に短縮出来る。 また、補助エンジンとバランサーのお陰で、態勢を自由に維持する事で、攻撃、防御を高速移動中に自由に行える。 その戦闘スタイルは従来までの戦闘と一線を画する。 また、この兵装が脱着可能である事。 戦場で接敵した際、即座にパージして身軽になれる。 また、準備さえしておけば、僅か数分で、人騎兵に装着が可能なのである。 この使い分け、自由度の高さが何より「LOBS」の売りなのだ。 また売りはもう一つある。 それはこれが現在の技術である、と言う事だ。 要するに、量産が可能……とまではいかないが、換えが効き、また同じモノが作れると言う事である。 これはアンタレスのようにワンオフで換えが効かず、失えばそれで終わり、と言うのとは違い、最悪使い潰し、次を用意、使用が可能と言う事を意味する。 決戦、特に連戦等に置いて、これ程心強い事は無い。 また、レムーリア等他世界での戦闘に置いては、こちらの世界で製作をしておき、あちらの世界に転送と言う形を想定している。 これにより、現地で即座に使用が可能になる。 「鋼鉄の翼、俺はそう名づけたいね。これで人騎兵は生まれ変わるよ。 今までの戦い方では限界があったからね、これからは俺達の技術と従来のTLOの力を融合させていく時代なのさ」