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「敢えてコイツに名前をつけるとしたら『Naglfal/死人ノ爪の船』と名づけるね。
時代遅れで、ポンコツだが、浪漫が詰まっている。
俺から言わせれば、芸術さ」
―――製作者は語る。
この船を見た者の反応等決まっている。
失笑、爆笑、苦笑。
そんな所だ。
理由は決まっている。この科学と魔法が闊歩する時代に、木できた船体、2本のマスト。
それでいて、一隻当たりは全長は十数メートルから30メートル。
その船が、真横に3隻固定されている。
既に笑うしか無い代物ではある――――――しかしながら。
実用性、と言う話になると全く別問題である。
そもそも船、特に帆船は非常に理に叶った乗り物だ。
今回製造されるケッチ、と呼ばれる帆船は、メインマストとその後方に少し低いミズンマストを持ち、その両方に縦帆を持つ。
また、バランスが良く小さいために操作も簡単なメインセイルを持つため、長距離の帆装も可能。
また、風上に向かえるだけでなく、舵を使用せずミズンセイルとジブだけでの操船も可能である。
要するに、魔法の力も科学の力も借りず、自然の力のみで航行が可能、と言う事だ。
また、このサイズでも小型で、I=D400人機、歩兵400人搭載が可能である。
当然ながら1隻に乗り切る筈も無く、3隻に渡って積み込む訳である。
また、通常これは船団として機能させるモノだ。
しかし、船同士を固定している“渡し”切り離す事により、小回りの効く小型船としても機能する。
上陸に際しては本来ならヘリコプターを使うわけだが、動けないので別の手段を使う。(当然ヘリコプターの搭載場所は完備されている)
主にボートでの上陸なのがそれに当たる。
同時に上陸援護船として、本来ヘリコプターが搭載される場所に陸軍の砲を10門取り付けた、重武装艦が存在する。
此方の船は船体こそ同じだが揚陸作戦をサポートする事が目的である。
当然ながら、これ等は船体が同じであるため、互換性が効くと言う事も大きなメリットである。
尚、これ等の船体は、通常時―――つまり戦時下で無い時は貨物船として使用されており、
最大で10万tの物資を緊急輸送する事が可能である。
「笑いたければ笑うが良いさ。
だが俺はコイツと、コイツを作った事に誇りを持っている。
人が産まれた原初の海と、その海を渡るために生み出された原初の船。
俺の仕事は、誇り高き仕事だ」