~第一話~
「…どういう意味だ…」
今、ハオは追ってきた葉達を倒し、グレートスピリッツを手に入れるところだった。
そしてシャーマンキングとなり、人類を滅ぼし、シャーマンだけの世界を作るはずだった。
ここにたどり着くまで千年もかかったが、それだけの価値があるものだ。
しかし……
「お前には足りないものがある。それが何か理解していない限りシャーマンキングになることができん」
「僕に…足りないものだと…」
ハオはグレートスピリッツが何を言っているのか分からなかった。
「お前は霊視ができ、陰陽術を使え、膨大な巫力もある。シャーマンとしてなら最強だろう。しかし
世界を滅ぼすことができても、支配することは不可能だ…」
グレートスピリッツの言いたいことは、力がすべてだと考えるハオにとって理解できないものだった。
だがここまできてグレートスピリッツを諦めるなど、できるわけがなかった。
「そこでお前には異世界に行ってもらう…」
「…異世界…だと…」
「そこでお前の足りないモノを見つけてくるがいい…それまでシャーマンキングになるのはお預けだ」
「おい…ちょっとまて…」
「それを見つけるためにその世界で何をするかは自由だ…」
「だから勝手に…!!…」
その時膨大な巫力がハオの周囲に集まりはじめた。
「それじゃあごきげんよう…」
「宇宙の果てのどこかにいる私のしもべよ!神聖で、美しく、強力な使い魔よ!私は心より求め訴えるわ!!
わが導きに答えなさい!!」
そして杖をふるった瞬間……
どがあーーーーーーん
爆発した……
「けほっけほっ…やっぱこうなったか…」
「おいまて!…なんかいるぞ!!」
「人間?」
「ルイズが人間を召喚したぞ!」
「しかもあのカッコ、平民だ!!」
爆発の中からあらわれたのは、長い黒髪の少年だった。少年は上半身裸の上からメイジとは違い旅人が使う
ようなマントを身に着け、腕に長方形に腕に巻く様のベルトが備え付けられ、手には大きなグローブをつけ、
独特なズボンをはいていた。
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」
誰かがそう呟くと、どっと笑い声が漏れた。
「ちょ、ちょっと間違えただけよ!」
「間違いって、ルイズはいつもそうじゃん」
「さすがはゼロのルイズだ!」
「うるさーい」
(何でよ…何で平民なんかがでてくるのよ!)
「あんた誰?」
ルイズに召喚された少年は周りを見渡していた。
(ここが…異世界?)
そこは見慣れない土地と服装をした人たちがいた。
「平民が貴族を無視してただで済むと思ってんの!?」
ルイズはただでさえサモンサーヴァントで平民を呼んでしまいイライラしているのに、その平民に無視されたことから、
怒りが込み上げてきた。
「…ハオ……朝倉ハオだ……」
ハオはこの世界については何も知らない。霊視して心を読むことができるが、サモンサーヴァントやら、平民やら自分の
世界とは違った感覚があるみたいなので、とりあえず返事をしておいた。
「ミスタ・コルベール!」
少女がそう怒鳴ると、人垣を分けて中年の男性が出てきた。
「なんだね、ミス・ヴァリエール?」
「あの!もう一回召喚させて下さい!」
だがあきれた顔つきでコルベールと呼ばれた男は許可しなかった。
「それはできない…この儀式はメイジとして一生を決めるもの…それをやり直すなど、儀式の冒涜だ」
わかっていたことだが、聞かずにはいれなかった。
そんなやり取りをしている間、ハオは霊視をこの場にいるものすべてに向けて、情報を集めていた。
(やはり霊視でこの世界のことをしるのは限度があるね…直接誰かに聞いたほうがよさそうだ)
そうしている間にも周りからは罵声が飛び交い、ルイズはこの怒りをさっき召喚した平民に向けた。
「なんであんたみたいな役立たずの平民が出てくるのよ!!」
「それは…僕に言ってるのかい?」
その一声で、騒がしかった広場が水を打ったように静まり返った。誰も文句を唱えられない、威圧感に溢れた声。
周りが茫然としている中最も早く事態の深刻さに気付いたのはコルベールだった。
この少年の威圧感…これは人間が出せるようなものではなく、生徒たちの中には顔は青くなり、手が震え、失神
する者までいた。
(やっと静かになったな)
「ここはどこだ?」
ハオは静かになったのを確認したあと威圧感は抑え、目の前にいる少女に話しかけた。
「こっ、ここはトリステイン魔法学院で!あんたは私が召喚したのよ!!」
(魔法?本当にここは異世界なんだな)
今も霊視を続けているハオは目の前の少女の話が嘘でないことを確認した。それにしても…
「召喚?」
「そうよ!あなたは私がサモンサーヴァントで召喚した使い魔なの!!」
どうやらグレートスピリッツは彼女がこの世界に呼び出したということにしたらしいが、目の前の少女は自分を使い魔にするつもりらしい。あの威圧を受けた後なのに虚勢を張ってくることから彼女は、相当の意地っ張りらしい。それに生きているものを使い魔にするなど自分の世界では考えられないことだった。
最も使い魔になるつもりなどかけらもないのだが……
そんなやりとりを脇で見ながらコルベールは、若干額に汗をかきながら得体の少年に対して警戒していた。
さっきの威圧感から、ただの平民でないことは確実だ。かといってマントをつけてはいるが、メイジといった感じで
もない。対応に困っていると…
「使い魔?……冗談じゃない…僕は未来王だ。そんなものに束縛される気はない」
ハオとしてはさっさと自分に足りないものとやらを手にいれ、グレートスピリットを手に入れたかった。
(何が未来王よ。こんな王族いるわけないじゃない!…仕方ない。さっさと終わらせよう)
ルイズはそう思いコントラクトサーヴァントを行うことにした。
「うるさーい!!…あんた感謝しなさいよね。わが名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエ
ール五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
どうやら目の前の少女は自分の話は聞かず、強引に使い魔にしようとしているらしい。
だが……
「ちっちぇな……」
心を読めるハオに不意打ちなど効くはずもなく、キスしようとしたルイズを横に移動して避けた。
そしてキスをしようとしたルイズはハオによけられ前のめりに転んでしまった。
「ちょっと何でよけるのよ!!しかも貴族に向かってちっちゃいですって!!」
ルイズはいつも魔法をつかえない、身長が低い、胸がないなどから、ゼロと呼ばれ、それにコンプレックスを
持っていた。それを平民にまで言われ怒鳴らずにはいられなかった。
「お前みたいなわがままなだけの小娘は、僕を使役する器じゃないんだよ……」
ハオの場合相手がだれであろうと使い魔になるつもりなどなかった。
しかしルイズは茫然とした。呼び出した使い魔に、これ以上ないくらいはっきりと使い魔になることを拒否されたのである。
なぜか魔法はすべて失敗して爆発するルイズにとって、このサモンサーヴァントだけは失敗するわけにはいかなかっ
た。ここで強力な使い魔を呼び出して、今までゼロとバカにしてきた周りを見返すつもりだった。その最後の望みが
潰えたのである。
目の前で呆然としている少女を無視し、とりあえずこの場で一番偉そうなコルベールと呼ばれていた男に話しかけた。
「この世界についていろいろと知りたい。ここの責任者に会わせろ」
使い魔の契約を拒否されるなど前代未聞の事態に、コルベールは自分では対処しきれず、学園長に会わせることにした。
最終更新:2008年01月28日 18:46